翔との出逢い
私は去年の冬至に月から地球の極夜の街に降り立った
冬至のこの日、僅か一時間だけ月と地球の北極に近いこの場所(グリーンランド)がチューブで物理的に繋がれ、私が地球に降り立ち前任者は月に帰って行く。
ちなみに月は自転して無くて地球にはいつも同じ面を見せている。
調査用に様々な機材を運ぶので船でなくてこんな方法になったらしい。
月と地球が物理的に繋がれるのだから自転の影響を受けにくい場所、かつ人目につきにくい極夜に交代となる訳だ。
私は出口の扉を開けて地球のグリーンランドに降り立つ。
なんだか期待と不安が入り交じり妙に興奮した。
エルフの耳は流石に目立つので細工をして地球人と同じ形にしてもらう。
私は諜報部活動がしやすい、情報が集まりやすい国として日本を選んだ。
私の一年間の諜報部活動は準備期間を経て日本で高校一年生の月島瑠那として始まった。
諜報部活動といってもやる事は普通の高校生として学校に通うだけだ。
ただ、定期的に集められた情報は月に向けて報告しなければならないんだけど・・・
『アナタが集めている情報は大して役に立たない』
そう言われてちょとムカついている。
だってしょうがないじゃない?
日本の高校生はやる事が多すぎて情報を集める時間が取れないんだから・・・
日本の高校生なんてバカ話しばかりで報告出来る情報なんて何もない。
「あぁ~~ 今晩の報告どうしよう? 」
私は教室から窓の外をぼんやり眺めていたら雨上がりの空に大きな虹がかかった。
・・・あの虹を歩いて渡ってみたいな・・・
ボ〜とそんな事を考えていたら・・・
「あの虹キレイだな。歩いて渡れないかな〜? 」
隣りの男子が何故かそんな事を口にしていた。
「えっ、なんで? 私も同じこと考えてた。」
私も驚いてつい口にしてしまった。
「へ〜、そうなんだ俺たち気が合うかもな? あっ俺、青木翔よろしくな。」
彼は頭をかきながら恥ずかしそうに私に語りかけてきた。
「アッ、私は月島瑠那です。こちらこそよろしく。」
男子高校生なんてエルフの私からしたらガキだと思っていたけど、翔とはなんだか気が合いそうだ。
そんな事があってからなんだか翔の事が気になり始めた。
ある時お昼に売店で私が取ろうとしていた最後のカレーパンを翔がパッと横からさらっていった。
「私が買おうとしていたのに横から持って行くなんて最低! 」
「何だよ? さっさと取らないからだろ? 」
そう言いながらもそのパンを翔は私に譲ってくれた。
私は翔が少し可哀相に感じた。
「しょうがないな、後で半分あげるよ。」
なんだか恥ずかしかったけど、お昼は翔と一緒に食べる事になって少しだけ嬉しかった。
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