第15話 西暦2008年の予測
1996-1-1
世界中がカウントダウンで迎えた21世紀も、今年で既に8年目になる。
私事に亙るが、子年生まれの私にとって、いわゆる”還暦を迎えた”ということになる。
医学部を卒業した後も、20年間の大部分を大学病院に籍を置き、文部教官として生活してきた。
それは、研究・教育・診療と、チョー忙しくも張り合いのある人生ではあった。
45歳で第二の人生を目指し、国立病院にトラバーユした。どちらも国家公務員だから同じだろうと思っていたが、最初の数週間で、文部教官と厚生技官とでは、求められていることが大いに違うということに気づいた。
しかし、1年後には立派に順応し、院長印から始まるハンコの行列の末席に、自分のハンコを押す係りになっていた。
そして、厚生省や地方医務局から出される通達の中に、時々は興味をそそられるものを発見する楽しみも見つけた。
1995年10月25日から27日までの3日間、第1回管理者(医長)研修会が国立医療・病院管理研究所研修部で行われた。
参加するためには論文審査があり、そのテーマは「国立病院・療養所の果たす役割について」というものであった。
通達書類にハンコを押しながら、「国立医療機関の21世紀構想-Huge Medical Service GroupからNational Medical Service Networkを目指す-」というタイトルがひらめいた。
研修会の最終日には、パネルディスカッションが行われた。最初のパネリストとして、前述の21世紀構想を打ち上げ、そして次のようにしめくくった。
-21世紀構想のキーポイント-
”ナショナル・メディカル・サービス・ネットワークを実現し、これを成功させるためのキーポイントは、施設の単なる統合による再編成ではなく、新しく勤務する職員の徹底した意識改革です。
そのためには、ナショナル・メディカル・サービス・ネットワークの理念を理解し、それぞれの施設の果たす機能ならびに自分自身の役割が大きく変化することも納得したうえで、新しい職場へ再就職するという形を取ることが望まれます。
その際、医療スタッフ(特に医師)は、全国公募ないしは地方医務局ごとに公募することが必須であり、それぞれのネットワーク内で人事異動を行うとともに、その枠を超えた広い交流が重要です。
個人や個々の施設の持つエゴや既得権を放棄し、国立医療機関に勤務する5万人が揃って痛みを分け合うことにより、国民は初めて21世紀における国立医療機関の存在意義を認め、ナショナル・メディカル・サービス・ネットワークの新生を祝福してもくれるのです!”
割れんばかりの拍手は、起こらなかった。
西暦2008年の今日、各種ナショナルセンターのネットワーク病院が全国に設置され、それぞれが光ファイバーによる健康情報ハイウエイで結ばれた。
そして私はというと、成育医療センター弘前病院を皮切りに、数度の全国規模の人事異動を経て、国際医療センター沖縄病院に目出たく栄転となっていた。
還暦の今年は、3月を待って退職が決まっている。
第三の人生は、念願の文筆業で過ごす予定である。
既に、愛用のMacのモニターも、老眼をいたわって、17インチから34インチに買い換えた。
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