第4話 病院におけるCS
1999-2-27
私たち産科医の間では、CSと言えばCesarean Sectionの略語で帝王切開を意味するが、今回はcustomer satisfactionを取り上げたい。
お客様の株は急上昇で、帝王ならぬ神様にまで祭り上げられている時代である。
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企業で展開されている「顧客満足経営戦略」とは、これまでの高度成長時代における企業側の論理を捨て、顧客の視点に立って満足度を高めようというものである。
作れば何でも売れた時代から、良い物を安くと求められた時代を経て、物余りの昨今では付加価値を高めることへ力点が移ってきた。
この経営戦略はサービス業で重視されたことに加えて、世の中の産業構造の変遷も相まって、今やCSは御託宣として社会全体へ広まっている。
もちろん医療界にも導入されつつあるが、CSのもつ本来の意味を取り違えているような場面に出会すことも多い。
御意見箱をぶら下げたり、アンケート調査をすることは、CSを高めるための情報収集手段であっても決して目的ではないのである。
「接遇」であると誤解された結果、その手の講習会が病院でも大流行し、サービス業界から招かれた講師が「患者様、患者様」と熱弁を振るうことになる。
もちろん、医療機関にとっても接遇は重要であるが、本来の医療サービスの向上が先決問題であろう。
このような誤解が生まれた根本には、「病院における顧客とは、最終消費者つまり患者さんのことである」という認識がある。
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マーケティングにおいてはCSが中心概念であり、顧客に満足を提供しながら企業も利益を得る交換関係を形成していく。
元々これは機械が主役の製造業の世界での関係であり、従業員の満足はあまり問題にならなかったのである。
ところが、サービス業が増えてきた段階で、従業員の満足がなければ良いサービスは提供できないという視点から、インターナル・マーケティングが提唱された。
外部の顧客へ商品を売り込む前に、内部の顧客に職務を売り込もうという人事管理のような考え方である。
これをサービス業である医療機関に当てはめると、外部顧客は患者さんで内部顧客は職員ということになる。
つまり、これらの外部顧客と内部顧客、そして企業としての病院の三者が満足できるような交換関係を形成することが、取りも直さず医療機関におけるCSである。
流通業界では顧客のなかに中間顧客を想定して、メーカーに対する小売業者あるいはディーラの存在を重視している。
これを病院に置き換えて考えれば、患者さんを紹介してくださる掛かり付けの医師や医療機関が中間顧客に相当する。
紹介医にとっての満足は多様であるが、患者情報の速やかなフィードバックは最低限の要求であろう。
また、紹介元へ患者を返送したり逆紹介できるような関係ができれば、お互いが顧客として満足できるばかりでなく、そこには理想的な病診連携のネットワークが生まれるのである。
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地域医療の核としての役割を担うため、インターネットを利用した医師会情報システムの構築が進められている。
それに対応すべく、国立弘前病院では病院情報システム部を開設しており、西暦2000年にはオンラインでの稼働が予定されている。
それまでは、私の携帯電話が中間顧客からのホットラインである。
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