2.レッスン風景

 2週間くらいは恥ずかしがったり、照れ笑いが多かった。

 年頃の女の子には決め顔は恥ずかしいし、面白いらしい。


「プッ。アハハハ」

「笑うってそうじゃないから」

「微笑む感じ?」

「その調子よ」

「そして、大切なのが体重管理よ。成長期だからあまり厳しくはしません。

 けど5キロ太ったら腕立てとくびれを作ってくれるという噂の運動をさせるから。

 あまり太っちゃだめよ」

 2人は目配せをした。

((いやいやいや、めっちゃ口出ししてますよ。あまり太りすぎると地獄を見るということはわかりました))

 連帯責任で二人とも地獄を見かねないので、お互いに監視し合おうと、アイコンタクトを行った。

 SNSは毎日更新にしたい。


「2人組になったはいいけど、仮のユニット名、何にする?」

「事務所からも何も言われてないし、なつあゆでよくない?」

「あゆなつ」

 二人とも自分の名前が先に来ないと嫌みたいだ。


「こういうときはじゃんけんね」


「「じゃんけんポン」」


 勝敗はあゆみのパーで勝ち。

「『あゆなつ』でけってい~」


 中学校の夏休みも冬休みも課題を3日以内の終わらせて、

 ダンスと歌の練習を繰り返す。


 SNSは基本的に練習風景の様子だけ。

 自撮りは2人の集合写真のみだ。あとはたいていマスクをしている写真ばかりだ。


 課題曲も出るし、事務所の先輩からアドバイス貰うこともある。


「ありがとうございました」

「貴重なご意見ありがとうございます」

 聞く姿勢であったり、敬語であったりは在籍しているうちに身についていく。


 マネージャーに注意されることもあるし、先輩からそれはどうなのかと注意されることもあった。


 あゆなつにとって幸運だったのは同じ年の組がいなかった分たくさんの練習時間を割いてもらえたことといじわるをしてくる人がいなかったことだろう。

 

 まぁ、努力がないとすぐにマネージャーから次の契約更新の宣告が来る。

「このままだと契約を打ち切るほかない」と。


 2人の身分は実習生ということでの契約となっている。金銭は発生しないが態度が悪いと除籍になる人もいたようだ。

 2人は努力に努力を重ねているからその話になったことはない。

 いなくなった先輩もそれなりにいたらしいが。

「まだマスクありなんて不服だわ」


「仕方ないよ。高校生にもなってないから」

 この時、中学3年の夏。

 元気さを表現してほしいが、舌を出したり、指を立てたり、そのほかの妖艶ともとれるようなポーズはダメというわけだ。

 マネージャーは日程管理と体調管理も行うし、学校での素行、きちんと授業についていけているかも管理の対象としてみなしているようだ。


「2人とも学業のほうはどうなの?」

「今回は学年2位だったわ。期末テスト」


「私は30位くらいだったよ。数学は。国語は下から3番目……」

「ご家庭は困窮してらっしゃるの? ご両親はそう見えなかったわ」

「困窮してないよ」

「キャラ的には想像通りだし、抵抗感ある人はすくないかもしれないけど頭がいいに越したことはないわ」


「夏海は進学校に行くの?」

「そうなるかとは思います。親も進学校のほうがいろいろ学べるからって」

「そう。夏海はしっかりしているから心配してないわ。あゆみはどうするの?」


「行けるところに行くよ」

「底辺高校といわれる場所でなければいいわ」

 夜20時になるとどちらかの親が、車で迎えに来てくれる。親同士が仲良しになってくれているからお願いできることだ。


「うちの子ほんとかわいいわよね」

「うちの子だって負けてないわよ」

 顔を合わせると自分の子供の自慢ばかりするから似た者同士なんだろう。

 2人ともこれが当たり前だとは思っていない。


「お願いします」

「ありがとう」

「2人ともレッスンお疲れ様。さぁ帰るわよ」

「はい」

 送ってもらえる。これは本当に感謝したい。

「今日もかわいく撮れているわよ」


 そして必ず褒めてくれるのだ。優しいし、2人とも両親は大好きだ。家事を手伝えともいわないし、美容に時間をかけなさいといてくれる。


 

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