私たち、カッコ可愛いアイドルユニット 完

朝香るか

1.ユニット結成

 幼稚園のころからアイドルに憧れていた。


 「あゆはアイドルになるの!絶対よ!!」

 「私だってアイドルになってかっこいい曲歌うんだもん」

 「ほらケンカしないの」

 大人しく面接の順番を待っている。


 日頃からこんなにアイドルになると連呼しているあゆみをみて、

 親がアイドル事務所に応募したのだ。


 この時、あゆみは中学1年生の春。

 隣には同じように面接を受けに来た子がいた。


 その時横にいたのが、夏海ナツミなつ。

 面接では歌とダンスで才能があるかどうか決める。


 歌ではあゆみのほうが評価は高い。

 しかしダンスでは2番目。


「どちらも一番になれるかと思っていたのに」

「ルックスならうちの子が1番かわいいわ。大丈夫」


 母の慰めを聞きながら、合否の結果を待った。


 合格通知とともに集合場所もかかれていた。

「やっぱり彼の子ね。才能があるに決まっているわ」

 なぜか母も大いに喜んでくれていた。


「その場所まで送るわ」

 母の提案はありがたい。なにせ路線がたくさんありすぎて、時間内にたどり着けるのか自信はなかった。


 集合場所に無事つくと、隣にいたすらっとした子がいた。

 これが相方になるなつだ。

「これからよろしく」

「よろしくね」

 時間になったらマネージャーにあわされて、

 契約書とその他の注意事項を叩き込まれる。


「SNSを使用するときはマネージャーの私に内容を見せてから投稿すること、レッスン風景と歌唱レッスン風景は投稿可能。ただし自撮りするときにはマスク着用」


「アイドルなのにマスクするんですか?」

「一応よ。不審者だって多い時代だし、女の子だから進路を妨げないためよ」


「はぁい」

「はい」

「了承できたら、さっそく、ダンスと歌のレッスンをしなさい」

「はい」

 

 連れてこられたのはダンススタジオ。

 鏡合わせのダンススタジオでレッスン中。

 床はフローリング風の柔らかい素材。

 体の柔らかさを確認してレッツダンス。

 1、2、3、4

「またずれたよ。

 しっかり拍とって」

「「はい」」

「あと30分後、歌のレッスンよ」

「「はい」」


 この世界は歌えて踊れて、トークできて当たり前。

 声に関するものは何でもする。


 特に重視しているのは歌のうまさだったりする。


 アイドルは口パクが当たり前になりつつあるから、

 いつでも歌声を出せるようになれば売れるとの戦略だ。


 マイクチェックの時間分が浮く。

 いかに自分を魅力的に見せられるか、

 メイクの研究も、そうだし何より笑顔の研究だ。


 ダンストレーナーは何度も声を大にしていう。

「いい? 1日5回は鏡の前に立ちなさい。

 笑顔の練習といかに自分の決め顔を作れるか研究なさい」


 トレーナーの言うことにも理があるが、さすがに恥ずかしかったりもする。


「恥ずかしがってたらファンの人も恥ずかしくなっちゃうよ」

「はい! またやり直し」


 何度目のやり直しか。日が暮れるまで、何度も何度もやり直す。


「はじめは2人でダメ出しをしながら鏡で練習」


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