第108話 異世界人の覚悟  

朝早くから、スミレとミドリが出かけていった。

今日は、冒険者ギルドの依頼を受けるそうだよ。

何を? 常設依頼の薬草採取だって・・・


まあ、何も心配することも無いのだけど、ちょっとだけ、マッピングで覗いている。ちゃんと「鑑定」を使って、薬草を分類・選別して、「収納」に回収している。OKだね。


まあ、何というか、昨日、「冒険者する!」って2人が言い出したので、この際にと、少し、事前に説明しておいたのだ。何といっても、僕達は、規格外?だからね。


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僕達は、普通の人間とは違って、レベルが高い。なので、まず、戦って負けることはないけど、他人とはできるだけ、争わない、関わらない、ことが重要。

ただし、敵意や殺意を向けられた場合は、隠れてやってしまっても構わない。

隠密、催眠、などを使って、仕置きする程度が良いだろう。

剣を抜かれて明らかに襲ってくるようなら、腕の一本くらいは良い、どうしようか?迷ったりしたら、直ぐに念話で僕に知らせること。

まあ、そういう状況になる前に、逃亡する。逃げるのが一番。

自分たちの常識、思い込みでやっていると、ギルドの中でも、目立って目をつけられるから、自重すべきことは、人前でスキルなどを使わない、収納の異空間収納は秘密なので、人前では使っているのを見せない。

もし、誰かに見られたら、指輪が収納の魔道具になっている、って言っておく。

その指輪はどうした?って聞かれたら、ヒカルにもらった、どこかのダンジョンで出たらしい、って。

普通の冒険者なら、オーク2体を狩るのがせいぜいで、僕達なら、10頭でも20頭でも、平気で狩れるけど、その遺体を収納して換金に出す場合に、「収納」から一気に出してはいけない、そういう場合は、僕に言うこと。あまりにも多くのオークを出せば、それだけで「不信」な目で見られる・・・

例えば、はぐれのワイバーンが現れたような場合、ギルドでは、チームを組んで討伐に向かうけど、もし、そういう場合は、一緒に行動しないほうが良い。

最初から参加しないか、単独行動をすること。

なぜなら、僕達なら、ワイバーンが何頭出ようが、瞬殺できるからね、そういうのを、他の人に、見せてはいけない、見られないほうが良い。

現場に既に他の冒険者がいる場合は、何もしないで、立ち去ろう。

もし、弱い冒険者を助けたいと思った場合は、隠密で、ならOK。

つまり、僕達は、この世界の普通の人たちとは違うので、本来は、いろいろ関わらないほうが良い、ということ。

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まあ、」どうしても、ギルドの依頼を受けたいのなら、誰も受けないような、どうしようもないもの、報酬が安くて誰も受けないもの、難易度が高すぎて誰も受けようとしないもの、などが良いかもしれない。

・・・なんてことを、一応説明していたんだけど、途中からはもう、欠伸もの?で、どうだろう、半分でも聞いてくれたのかな? 


あとは、異世界人、についても、話しておいた。


帝国や王国や教会などで、大規模な魔法陣を用いて、多くの犠牲のもとに勇者召喚の儀式が行われていて、この世界ではない全く別の世界から、見た目同じような人間がこの世界にやってきている。それは、主に勇者やその仲間というものが多いのだけど、そうではない者たちも、召喚されてしまって、この世界にいる場合がある。

僕もその一人で、勇者では無いし、その関連でもないけどね。

それで、問題なのは、そういう、異世界に転移して来た者たちは、普通には、あり得ないほどの能力やスキルを持って転移・転生してくること。

だから、もともとのこの世界の人たちとは、違う、ということ。


大昔の勇者達は、召喚時の呪いで、その帝国や国家に隷従を強いられてはいたけど、強大な力や膨大な魔力で、人々の驚異となる魔物を駆逐したり、帝国や国家により敵として位置づけられた魔王に対して、立ち向かっていった。

それで、概ね、彼らは歳も取らないし容姿も変わらない。そのままの姿で長い期間を生きることができる。次第に、呪いも解けて、逃げ出したり、追われて殺害されたり、ダンジョンに潜ったままになったり、いろいろな苦難を背負うことになるものがほとんどだった。

中には、現在のエンデ王国や、エルマー火山島のように、勇者が国家を作ったところもある。それでも、やはり、国家同士の交易や交流には、それなりの「心得」「わきまえ」「覚悟」が必要だ。


つまり、転生者なんて、その世界では、異質なものなんだから。



などと、昨日のことを思い出していたら、念話が来たよ、ミドリだね。

「パパ! 何か変なのがいるよ?でかいやつ、地面の下を動いているの、それで、他の魔物たちが、領に向かって走っている!」




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