第79話 転生者 オスカ伯爵 

妖精たちは一旦引き揚げてきて、今、ウインディがお菓子の分配をしてくれている。もう、なんやかんや大騒ぎだよ。賑やかしい。急いで食べておかわりしている子もいれば、自分の分をもらって、いそいそと消えて帰って行く子もいる。まあ、妖精それぞれだね。


二人が逃げ込もうとしていた、オスカ伯爵領か・・・どんなところなんだろう。


とりあえず、ここサザン別荘から遠隔で「空間察知」している。

領内はまあ普通、大きな港を持っている。ここも沖には2つ島が並んでいる、双子島だね。名前は無い。

中央市場の声を拾うけど、感度が悪いので、「隠密」で上空まで「転移」して浮遊しながら、噂話を拾う。


『『なあ、この前、王都から犯罪をおかした男爵が、ここへ逃げ込もうとしてたらしいぞ、伯爵様もグルなのか? イヤ、伯爵様は違うと思うぞ。もともと、そんな男爵の話は生まれてから聞いたことも無い。

どうだ?最近の漁は? 良い感じだ、大きいのも釣れるしな。

聞いたか、今年の税金、少し戻りがあるそうだぞ。ああ、聞いた、去年の収穫が多くてな、そういうのを「還元」って言うらしい。へえ~「還元」ねぇ、少しでも嬉しいよな〜・・・』』


うん?「還元」だって? まさか?


南西の端、小高い場所に建つお城の上空で、「鑑定」。


▶オスカ伯爵 500歳 

・レベル250 

・転生者(元)勇者一行 魔道士 賢者 

・鑑定、収納、錬金、転移、


*賢者の杖(ワンド)

*指輪収納 容量無限 時間停止


先の二人とは違って、悪意、敵意、殺意は無い。

まあ何だろう? 同じ勇者一行ということで、王都よりは、と、ここへ逃げ込もうとしていたのか? 迷惑な話だよな。

今、伯爵は食事中なので、執務室を覗く。

書類を見るに、確かに、税還元の書類一式と、国税納付台帳。

しっかりやっているようだし、隠し金庫などの気配もない、まあ、本人が「収納」持ちだからな、必要無いか。


ここの収入源は、農業、漁業、魔物。

魔物素材の輸出では、海竜、が年に数頭ほど狩られているけど、これ、伯爵だろうな。

あと、魔マグロなども多い。

それで、輸入は、小麦、大豆など。主にウエステン王国が相手だ。

と、書類の中に、オリバー帝国、マリン公爵関連の書類がある、なるほど、「転移」を使って交易しているのかな?

少なくとも、ここの転生者は、普通に暮らしているようだ。名前くらいは覚えておこう、転生賢者オスカ伯爵。


名前が似てて、気になる隣のイスカ公爵。

特に、悪意も無さそうだし、とりあえず放置。


それよりも気になるのは、オスカ伯爵と交易しているオリバー帝国のマリン公爵だよ。

マリン公爵邸の上空で、「気配察知」すれば、オスカ伯爵の魔力残滓がある。

他にも少し大きな魔力気配が有る。これは、マリン公爵では無いな。同じ執務室にいるけど、転生者だ。使用人をしている?

マーテン大公のところの2人は、特別警備隊?みたいなものだったな。

こちらは、使用人か。

これ、マリン公爵も、転生者って知っていて使用人としてそばに置いているっぽい?

「鑑定」。


▶アヤカ 転生者 500歳 

・レベル250(元)聖女 使用人

・収納、鑑定、転移、聖魔法、治癒魔法、回復魔法、支援魔法


なるほど、この異世界、転生者が結構な数、生き残っている。


オスカ伯爵も、このアヤカさんも、共に、「転移」「収納」「鑑定」持ちなら、島も大陸も、行き来も物資の移動も、制限なく出来るだろう・・・

マーテン大公も、マリン公爵も、太っ腹だよ。

なのに、なぜ、帝都の皇帝は・・・そうか、おかしな教団があったな。もう今は無いけど、どこかでくすぶっているんだろう、まあ、出て来ればまた対応するけどね。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る