第72話 エドモント辺境伯のお嬢様 

さて、いろいろ調べたいし、買い物もあるし、エドモント領にでも行こう。


「転移」でエドモント別荘、住居に来たが、「結界」の効果で、住んでなくても、綺麗なものだな、すごいな異世界の魔法。家の様子も確認できたので、街へ出る。


僕のところは領の最南端で、静かなところだけど、北に広がった辺境伯領はすごい賑わいだそうだよ。商業ギルドのイナーバさんも言っていたし。

とりあえず、中央の市場や出店を回って、食い物を出している出店の調理をさらっと見させてもらう。なるほど、・・・素材の仕込みから、味付け、調理の仕方が全部わかるよ、同じ料理でも、人が違うと調理方法も少し違うところもあるんだ、それで、味も違ってくるんだな。そういうのが、解るようになったよ。

それに、彼ら調理人の持っている、食材や料理、調理の知識まで僕の記憶収納に整理されて入っていっている。まあ情報の多さでパンクすることは無いだろうけど、整理して取り出せるのかな?


それで、そんな知識や借り物の経験で知り得た、調味料を買いたいんだよ。

兎に角、高価な胡椒から、雑草のハーブ各種、ソースにトマトソース、醤油まであるよ。この世界でも、異世界組は食にこだわったのかな?その産物だね。

それらを入れる用に、ガラスや陶器の瓶や坪を少し購入して(あとで複製する)、一升瓶や空の酒樽も数個購入。あとは、道具、金物屋で、農作業や、台所で必要になりそうなものを、どんどん買って、「収納」してゆく。

ちょっと、買い物に夢中になり過ぎて、後ろから声をかけられているのに気が付かなかったよ・・・


「部長!」ってそんな呼び方するのは、一人しか居ないよな。

振り返れば、そう、サクラだよ。ああ、まだ護衛をやっているんだね、隣には、お嬢様がいて、後ろには、騎士さんが控えているよ。

急に、「気配察知」に寒気が走ったかな?


「だから・・・部長は無しだって!! 久しぶり、サクラさん」

「あの〜〜、サクラさんの先生ですよね? 私は、エミリアと申します」

「あ、はじめまして、ヒカルです。サクラは、単なる知り合いですよ」

ってお嬢様は、エミリアっていうのか、なかなかしっかりものの感じだね。

そういえば、サクラも良い服装だな?

面倒っぽいので、サクラに、じゃまた、元気でやれよ!ってその場を離れようとしたら、がっしりと腕を掴まれた。サクラを、そのために鍛えたんじゃないけどな〜


と、そのまま、エミリアお嬢様の指定の店に連れ込まれてしまった。

しまった!よ。

結構、よくしゃべるお嬢様で、一方的に、聞き手になってしまった。


サクラには最初護衛で、随分助けてもらえたこと、サクラを鍛えた人は、ヒカルっていう青年で、冒険者で商人だってこと。その人は、あちこち行っているので、なかなか会えないこと。それで、今、サクラが、護衛兼、エミリアの付き人として伯爵家に雇われていること、・・・などなどを一方的に、聞かされたよ。

全部、知っているけどね。

エミリアは、何? それを確認したかったの?


ヤミちゃんから「念話」が入って、「そこの娘、妖精感度が良いみたいね、妖精程度なら、光の粒くらい見えるかもね」・・・なんて、そう?なんだ。

失礼を承知で、エミリアの目をじっと見つめて、小声で、他人に聞かれないように、「お嬢様は、妖精さんたちを見ることが出来ますね?」って短刀直入に聞いてみたよ。

「はい」 って恥ずかしそうにしている。それで、僕のまわりに目が泳いでいる。

まあそうだろう? なんてたって、僕のまわりをたくさん飛び回っているからね。

こりゃあ、バレたね。

「このことは、是非、内緒で!」 「はい」

って二人だけの話が終わると、「何? ヒカルさんは?、お嬢様に手を出したら駄目ですよ」ってサクラさんは・・・まあ、そのおかげで、みんなで笑って済ますことが出来たけどね。


その後は、サクラが話を進めてくれているうちに、「並列思考」で、「錬金」で、指輪を作った。


*エミリアの指輪 (ヒカル作)

・不壊、絶対防御、サイズ自動調整

・使用者限定 エミリア 魔力自動回復

・魔法反射  状態異常無効 

・表面には、世界樹と蔓の彫刻、ピンク色ミスリル製


帰りがけに、お嬢様に、「これ、無骨なものですが、お守りです。良ければ付けていてください」ってピンクの指輪を渡した。俯いたままだったが、拒否反応は無かった?から、良いか・・・

サクラに、「念話」で。「あれ、絶対防御の指輪だから、」って伝えたら、フフフって笑っていたけどね。


僕の用事も終わったし、少し、北側も見ておこうかな、「隠密」して上昇する。

早いな、もう、魔物侵入避けの外壁は完成しているし、内部の整地も終わって、徐々に屋敷が建ち始めている。伯爵領から一早く引っ越してきた貴族たちだね。我先にと、早いもの勝ちで、良い場所でも狙ったのかな?

今は、冒険者たちも、魔物と戦闘しなくても稼げる時期なんだな、領内のいたるところで働いているよ。


さあ、帰って、料理とやらを作ってみよう。





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