第52話 冒険者ギルド 中級講習会 

『ノスエラ王国と、イーステア王国は、共に、オリバー帝国の東に位置する王国で、領地の有様もよく似ている、共に王道が入出国の衛兵門を挟んで通っていて、2国間での交易も盛んだ、そして何よりも、ギルド間の連携はよく出来ていて、冒険者たちは、それそれの国にある3箇所ずつのダンジョンをよく利用している。また、山岳沿いにダンジョンが並んでいるが、それぞれ、中の様相はかなり異なっているので飽きさせないということだ。そして、両国共に、山岳地帯に鉱山があり、それぞれ、かなりの数の鉱山労働者を働かせている。もちろん、犯罪罰としての鉱山労働者が半数以上を占める。』


・・・という隣国情報を、久々に寄った冒険者ギルドのガントさんから聞いたのだ。

隣国に遊びにいこうかな?なんて相談したのがきっかけだった。それぞれには、鉱物、鉱石、宝石に特化したダンジョンも一箇所ずつあって、その素材を加工する鍛冶や錬金も盛んらしい。

ほとんどのダンジョンが山岳側にあるのに、ただ一箇所、ノスエラ第三ダンジョンだけは、西側にあって、難易度も低いため、よく、こちら、エドモント領冒険者ギルドも初心者講習などにも利用しているのだと。

それで、今度、そのノスエラ第三ダンジョンを利用した中級講習会があるっていうので、参加させてもらうことにした。他国だしね、それに、そんな普通のダンジョンって、経験無いからさ〜。


出発は、2日後の朝、徒歩で行くそうだよ。各自、いろいろ用意してギルドに集合ってことだ。ギルドカードを絶対に忘れるなよ!って言われた、了解です。

さて、困ったぞ、誰かと一緒なんて、やったこと無いし、みんなのレベルも分からないし、やりすぎって駄目だよね、面倒だけど、そういう状況を楽しもうかな? 武器はどうする? Dランクが聖剣や魔剣を持ってるわけないし、ローブを着込んで、魔法使いで行こうか? ミスリルのナイフくらいなら良いかな? あ、そうだ、魔弓があったよ、あれも持って行こう。他は、要らないな、どっちみち、何でも、収納に入っているんだけどね。

よし決定、魔弓使いの魔法使い。 初心に戻れ!だよ。


他の人間と一緒だし、面白くないかもよ〜って言ったら、ウインディとライムはどこかへ飛んで行ってしまったが、ヤミちゃんだけは、付いて行く〜って、でも指輪に収まっただけだけどね。

ギルドに集まっていたのは、男2人に、女3人で、僕を入れて、6人に、何とギルド長ガントさんだ。

男子は、盾役に剣士、女子は剣士、魔法使い、シーフで、僕は弓と魔法、という編成だ。

ガントさんの説明では、ここのダンジョンの、10階層から15階層までをやる予定と。他のみんなは既に10階層まで達しているから、みなさんでこのまま転移するようだ。エッ、僕は?って言ったら、ガントさん曰く、「下で待っている」ってさ。なんとかして来いということですね。


じゃ、みなさんが転移して行ったら、僕は、僕で10階層まで転移していきますか・・・まさか?1階層から順に攻めて来いなんて言わないよな?

ということで、10階層の転移部屋の前で、みんなを待っていましたよ。

みんな驚いていたけど、「前に、来たことあるから・・・」って答えておいた。

配列は、シーフ先頭、2列目に、盾男、剣男、3列目に、剣女、魔法女、4列目に、僕とガントさん、ってことになり、ガントさんは、基本、何もしないそうだ。

まあ、僕達だけで、進めってことだよ。


さて、進み始めて、早速、ゴブリンが5体、後ろに5体控えているな、更に奥に一体でかいのもいる、ゴブリン・リーダーか?

シーフが後ろに下がって、男子2人で前の5体はやれそうだな、面倒だからやっちゃおうか。僕は横にずれて射線を外してから、後ろの5体を対象にして、一気に魔弓で頭を射ぬいた。女子2人が気後れして下がってきたので、さらに瞬歩で横から回り込んで、ゴブリンリーダーの首をミスリルナイフではねた。しばらくして、男子たちも5体をやったようで、終わりだ。

ガントさんに、お前、やりすぎって言われたが、まあ・・・グズグズやっていると疲れるしね〜〜。


僕は、リーダーの魔石だけ、ミスリル・ナイフで取り出すフリをして収納した。あとは、みんなが魔石を取り出したり、素材の剥ぎ取りなどをしているのを眺めている。

だって、「手伝おうか?」って言ったら、「イエ、これは、僕達が・・」っていうから。

反省会は特に無し、なので、先へ進む。

シーフの子が2箇所ばかり罠をはずしたころ、前方に、オークの群れだが現れた。5体、それに1体身体の大きいのがいる。

幸い、2体ずつ別れて迫ってきたので、男子2、女子3に別れてそれぞれ2体との戦闘だ。

男子はなんとかなりそうだけど、女子は、力負けしてるし、魔法攻撃も弱いみたいだね。なので、女子たちに「いくよ〜」って声かけてから、魔弓でオーク達の両足を射抜いて動きを止めた。その隙に女子達がオーク2体を仕留めた。男子はあと少しかかりそうだが、後ろのリーダーっぽいのが動き出してきたので、魔弓で眉間を狙って、瞬殺しておいたよ。


女子たちは、「凄い」って声にならない声を出しながらも、自分たちが狩ったオークから魔石を取り出し、必要な部位を切り取っている。マジックバック収納は荷物持ちのガントさんの役目だからね。

男子たちも戦い終わって、素材と格闘している。


「この辺で少し休んだほうが良いんじゃないか?」ってガントさんを見れば、頷くので、僕が、女子達に、「少し休憩しよう」って言ったら、シーフの子が罠のなさそうな場所に案内してくれたよ。まだ、ここ10階層だぞ、大丈夫なのか?


ガントさんに小声で、「これ、平気なのか?」って言ったら、少し複雑な顔をして、「以前とは違って魔物のレベルが遥かに高くなっている」っていうので、じゃあ、そのことをみんなに説明して、予定変更で、ここ10階層だけ制覇して帰るということになった。出口まではもう少しだ、気配察知では、あと一箇所、通らなければいけない場所がある。こんなところに魔狼の群れが40匹? 確かに、何か?オカシイだろ?


とりあえず、魔狼40匹は、僕が魔弓で全滅させた。みんなは、魔石と素材の回収だけして、出口のところの魔法陣から帰還したよ。


外に出てから、ガントさんがみんなに「すまん!予定が狂った」って頭を下げているけど、「それは、なんというか、冒険者だから、そういう危険も想定外もあるから」って言ってあげて、みんなで帰り道を急いだよ。


前のほうから、小声で「あの人、何者? 助かった、あの人いなかったら・・・」なんていうのが聞こえてくるけど、それに対してガントさんが、「ま〜 俺が一番信頼できるDランクだよ」って言っているよ。

何をアホなこと言ってんの??? そんなDランクって、それこそ何者なんだよ???

ギルドへ戻って解散になった。僕も頑張ったよね、他人と一緒に活動できたんだぜ〜。

みんなが、集めた魔石を等分して僕に渡してくれようとするので、なんというか、勝手なことをしたお詫びに、僕は不要ですから、みんなで分けて下さいって、辞退しておいた。それにそれって・・・みんなが協力して取り出したものだし。みんなは、「ありがとう」ってうれしそうだったから、あれで、良かったんだよな。

ガントさんも頷いているので、これが正解な対応だったんだな。


今日は、思ってもいない早い時間に帰ってこれたが、成果はあった。

隣国への入り方が分かった、ダンジョンへの入り方、転送陣の使い方がわかった。

今頃、何言ってる?って感じだけど、こういうちゃんとした普通のやり方も知っておかないとね。


PS. 近況ノート 巻き込まれて異世界 105 イーステア王都 地図です。

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