第8話 トレインジャック発生⚠ 作戦は待機
「おべんと♪おべんと♪」
私は駅で買ったお弁当をもって、席に着いた。
「電車乗るのなんか久しぶりー。テンション上がるね! それにもうお外真っ暗!」
「遊びに行くわけじゃないのよ。最終の臨時列車にぎりぎり乗れてよかったわ。」
相変わらず彼女はクールにつぶやいた。
「そうだけどさー。今から気合入れても疲れちゃうよ。
今日は移動だけで終わりだし。 えへへ。両方おいしそうだなあ♪」
タイプの違う2個のお弁当を買ったので、どっちから食べようか迷ってしまう。
「こっちにしよー♪ スペシャルサンドイッチ弁当!!
いただきます☆。 あれ? アオイちゃん食べないの?」
「私はまだいいわ。 まだおなか減ってないもの。」
「そう? 一緒に食べるともっとおいしいのに・・・」
私が1つ目のお弁当を食べている最中、アオイちゃんは窓の方をずっと見ていた。
こんなに人が目の前でご飯食べているのに、よく我慢できるなと思ってしまう。
「ねえ、あなたの固有魔術って何なの?」
「え? もぐもぐ。 急にどうしたの?」
窓枠に肘をおき、頬杖をついて彼女は聞いてきた。
「これから同じ任務にあたるのよ。 知っておくべきでしょ。」
「もぐもぐ。 うん、でも私のはなんだろう・・・むずかしいな。」
”なによ” もったいぶるなという声も聞こえてきそうな目線だった。
「私のは・・。 その・・つまり、うーーん。 完全に戦闘特化と言えばそれで・・・」
私は説明するのが恥ずかしくて、ちょっと口ごもってしまう。
「そんなにもったいぶることなの? そんな・・・!!!!」
彼女が話すのをやめたのに気づいて顔を見ると、険しい表情に変わっていた。
「どうしたの?」
私の問いに対して黙ってと言うように、彼女は口元に人差し指を当てた。
彼女が見つめている視線の先を見ると、狐のお面を被った男?の人がマシンガンを担ぐように持って立っていた。
(なんだろ? あれは・・・!)
『ザザ・・えー、よく聞いてくれ。 この列車はこの時点をもってジャックした。
ただな、お前たちに要求することは一つだけだ。じっとしていろ。
そうすれば命を奪うことは真似はしない。
ただ、 この列車の乗務員が抵抗すれば俺たちはお前たちを容赦なく殺す。』
車内放送で加工された音声が流れた。狐のお面男は変わらず車両間のドアに立っている。
「むむむ。 ねぇ、どうしよう。 じっとすべきかな?」
「・・・この人たちの目的がわからない以上判断できないわ。 私たちは命さえ無事でよければいいわけだから、そうしましょうか。
ここで厄介ごとに巻き込まれて目立つのは勘弁よ。」
「うん、わかった。」
(じゃあ残りちょっとだけだし、食べよ。)
「・・・おいっ!!! そこ喋んじゃねえ!!」
こそこそとしゃべっていると、仮面の男低い声が車内に響いた。
どうやら車両内には私たちと数人ぽっちしかいないので、
私たちの声が目立ってしまったようだ。
「・・・へへへ。 怒られちゃった。 ・・・!!!」
頭を屈めてお弁当を食べようとした瞬間、狐の面の男が隣に来て、
私が手に持っていたお弁当箱をポイっと通路に放り投げた。
「じっとしてろって言っただろ。 ガキが!」
「・・・・・・・・・ふんっ!!」
ドカッッッッッ!!!! カランカラン。。。
「・・・・・・!!!! あああ!! やっちゃった!!!」
完全に無意識だった。 気づくと男の人が鼻血を出し横であおむけで倒れていた。
(今私何やった!? 無言で立ち上がっていきなり
右ストレートをぶちかますなんてことしてないよね!?)
「どうしよう!! アオイちゃん! つい・・・!」
「なにやってるのよ・・・」
彼女はおでこに手を当てて、困り果てている。
「もう。。。 このままだと気づかれるのは時間の問題よ。
このままじっとして騒ぎになるか、こっちから仕掛けてもっと騒ぎを起こすか
どっちかしかないわ。」
頭を抱えて迷っていると、進行方向側の車両間のドアが開いた。
開いたドアから倒れた男と同じ狐のお面を被ったやせ型の男が入ってくると、
すぐに通路に転がっている男性に気づいた。
「 まずいわね・・・!」
ーーーー ドン ーーーー
銃声のような音が鳴ると同時に、入ってきた男が入り口で眠るように倒れた。
「アオイちゃん・・!!」
「殺してないわ。 術で眠らせただけ。」
(あ、銃口がないんだ。 もしかして、アオイちゃんの術かな・・・)
「さて、もうこっちから仕掛けるしかないわよ。」
「・・・うん、そうだね。 ごめん、私が。。。」
そのあと、私はこの車両に乗っている人たちに必死に謝り倒し、身を隠すように指示した。
「私は運転手さんの方へ向かって行くわ。 おそらく、首謀者もそこにいるはず。
当然、あなたに後方車両を任せるわ。」
「え? 大丈夫!? 任せちゃっていいのかな・・危ないよ。。。」
結局、彼女に押し切られる形で8両編成の車両の後ろ5両を私が、前方残り2両をアオイちゃんに対応してもらうことにした。
「アオイちゃん! ごめんね・・・」
前方に向かって歩く彼女に向かって再度謝ると、こっちを見ずに手を振るのが見えた。
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