第2話 冒険の始まりですっ!


みなさんこんにちは。 私は丘 優依です。

友人からは、"おかゆ"、”ゆいちゃん”って呼ばれてます。


さて、前回は記念すべき100回目の転生でしたね。

結果はキャベツでした。


この前世の記憶ですが、生命として生きているうちは全く思い出せないです。

天界に戻ったときにふわっと覚えてるくらいです。

(ほんっとややこしい・・・)


これからついに1001回目の魔女の子に転生できた時の話になります。

物心ついてからして覚えてませんが、そこからお話していきます。 では。





~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




「なんでばれたんだ!!」


「いたぞ! あそこだ。」

「魔女め・・・!!!! 逃がすな!!」


混乱とはこのことなんだろうと私は思った。

怒号・悲鳴が飛び交い、辺りは混沌としていた。


そこで、幼い私は手を引かれ、何度もこけそうになりながら走っていた。


「はあ、はあ、はぁ。 あなたは最後まで生きるのよ!! 愛してる・・・」

燃え盛る山の中、これがあの人の遺言だった。



~~~~~~~~~~  7年後  ~~~~~~~~~~~


暗くなり始めた夜の海岸、少し肌寒く感じる日。 目線の先で小さい船がゆらゆらと揺れている。


「それじゃあ先に行ってきます。」

私は最低限の荷物を抱え、おばさんに手を振った。


「約束してね。 その力は隠すことを。」

おばさんは不安げな表情を浮かべて私に忠告した。


「・・・ゆいさーーーん。」

海上に出ていた小船に乗りこもうとすると、名前を呼ばれた。


「寂しいです。ぼくもすぐに脱出します。」

この島に住む小人族の中で一番仲が良かった"グラム"が追いかけてきた。

うん。 とだけ答えると、俯いた顔を上げてにこっと笑った。


「巨人族の”トン”には僕から伝えておきます。 彼は寝てるし。」

「よろしく。 巨人族と仲良くね。 元気で。」


手を振って、船を出すと周りに亀や、魚の群れが周りを囲んだ。


「みんな! 行ってくるね! 元気でねーーー!!」


私は、少しの間育ったこの島に別れを告げた。





「おい、ねえちゃん。 この国には何しに?」


4日間の船旅を終えて、あたりも暗くなったころようやこたどり着いた港で守衛に声をかけられた。

(おなか減った・・・・死にそうだ)



「・・・観光です。 世界中旅してまわってるんです。」

そう言って、パーソナルカードを手渡すと、守衛さんは眼鏡をかけてじっとチェックした。



「OKだ。 ほら。」

守衛さんにパーソナルカードを返されたので、荷物を抱えて町に向かった。


(疲れた。 とりあえずごはん。ほんとに死んじゃう・・・)




人が少しだけ集まっている町に出ると、昔からありそうな飲食店のカウンターに座った。


「いらっしゃい。 ねえちゃん一人か? なんにする?」

おそらく店主であろうひげを蓄えた白髪の男性がニコニコと近づき聞いてきた。


「一番おいしいやつで。」

そう言うとおじさんは "おっけー" と答えて、作り始めた。


ここ数日まったく食わずに死んじゃうところだったから、

お腹はもう空腹だということをアピールしなくなっていた。

(もう、おなかも動かないよ・・・)


 「ほらよ。 水ラクダバーガーだ。」


ぼーっと宙を見ていると目の前に”どんっ”と大きめのハンバーガーが置かれた。



「おいしそー!!!! いただきまーーーす!」

空腹が最高の調味料とはよく言ったものだ。 最高においしい。


「ねえちゃん、うまそうに食うな。 食わせがいがあるよ。」

おじさんは手を洗いながらニコニコ笑った。


「もぐもぐ。。。 あの、この国って、あんまり町に人いないんけど

人口が少ないんですか??」

「ああ・・・ そうだな。 きっかけといえば、

 数年前に国王が変わったんだ。 そこから少しずつ変わっていったな。

 今はみんな毎日朝から晩まで働き詰めだ。」


「国王が変わっただけで??」


「前のアル国王の時は、決して豊かとかではなかったがみんな明るくやれてたんだ。

この砂漠だらけの土地でもみんなで協力し合って、上手くやってたんだ。


「あの、もう一個同じのください!!」

ハンバーガーを持ってない方の手を挙げておじさんに伝えたが、

空気を読み間違えたようだった。


「あっ、 ごめんなさい・・・ それで今の国王とは?」



「ああ、 中央から派遣されたこの国になんの関わりがない"ベルナール"

って名前のやつだよ。  やつは急に中央の役員を連れて現れたんだ。

数年前に流行った魔女狩りを背景に、この国の元国王に対して、

魔女を匿っているという理由で国王を罰した。 

証拠なんてでっち上げかもしれねえってえのに。」


「そうなんですか。。。 おじさんは魔女を信じてるんですか??」


おじさんは困ったような笑いながら二個目のバーガーを差し出した。


「どうだろうな。  仮にいたとしても、罰する権利なんて誰にもねえよ。

 国王の娘が魔女の血を引いてるって噂まで出てきて、みんな疑心暗鬼になっちまった。 娘さんがなにかしたわけでもない。国民は洗脳されてるとかわけわからんことを・・・」


「へえ、おじさん。 物知りですね。」

「これは全部人づての情報だ。って・・ ねえちゃん、この辺の人じゃないだろ、

 なんか魔女とか知ってんのか??」


「んっ!・・ごほっ!!」

思わずむせてしまった。 

「ほら、水のんで。 ゆっくり食いな。」

差し出された水を飲んで、のどのつっかえを取り除いた。


「けほっ。  ありがとうございます。

 いいや。 なんにも知らないですよ!!  あぐ、モグモグ。

 あー! 美味しかったーー! ごちそうさまでした!!」

(やっぱりパンって最高ですぁ。 うんうん。)


私はテーブルにお金を置こうとポケットを漁るが、財布の感触がない。

(あれ?まずい、どこ・・・)


「おい、ねえちゃん。どうした?」


「はい!  えt、ちょっと待っててねーーー、今お金を・・・」


私が焦ってる所に、一つ席を空いた隣りに座っていた50歳くらいの男の人が、

カウンターにお金を置いた。

帽子を深く被っており、顔は良く見えない。


「こいつの分も一緒だ。」

あっけに取られて座っていると、男の人は早歩きでスタスタと行ってしまった。


「ねえちゃん知り合い?」

「いえ・・・」


お礼を言い忘れたなとおもいながら、一旦町を出て、港へと戻ることにした。

(さてと、まずはその匿われた魔女を探してみよう。)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る