ナハナルウァリの男巫
ナハナルウァリ族の素朴な暮らしぶりからして、祭りというのもどれほどのものかと思ってはいたのだが、実際それはなんというか、ローマ市民の感覚から言えば村祭りと言うにも及ぶかどうかという次元のものであった。
祭りと言っても娯楽は二つしかない。一つは賭博である。
もう一つの娯楽は、まあ言うなれば剣舞のようなものだ。男たちが自分の剣や、フラメアと呼ばれる槍を突き出す前に、裸になった若者たちが飛び込んで踊る。それなりに高度な技術のある見世物ではあるらしく、大きな拍手喝采が上がるが、しかしそれだけである。これがかれらの年に一度の祭りであるわけだが、これに比較すればローマ市の闘技場で行われている日常の見世物の方がよほど派手である。
とはいえ、まあそんなことはいい。どこからどうやって流通してきたものか、ガリア産ワインの
「ティー君がやたらこだわるからウチもちょっとだけ試そうかと思ってただけだったんだけど……いい酒だねぇ。なるほど、ローマ人は毎日これを飲んでるのかぁ」
おれはイタリア生まれのローマ人であるから水の代わりにワインを飲んだって平気なのであるが、ビールしか飲み慣れないウェレダはそうではない。部族長の屋敷の酒と料理までもが底を尽き、人々がまた別の場所に繰り出していく中、おれはウェレダを本人の家まで担いでいかなければならない事態となっていた。
「んー、むにゃー……ウチまだ飲む……ういっく」
しっかりしてください、と叱咤しつつ、どうにか寝台まで運び込む。すぅ、すぅと鼻にかかる呼吸を、ウェレダは繰り返している。上気した頬。心持ち上に持ち上げられた、桜色の唇。
おれのなかで恋の神が囁いた。
「ん……ティー君……」
目を閉じたままのウェレダの口から紡ぎ出される可憐な声がおれの名を呼んだ瞬間、頭の中で何かが切れたような気がした。
「ウェレダ……!」
俺はウェレダの上に覆い被さるようにして、彼女を抱きしめた。要するに襲った。理性? 法の神? そんなもの糞くらえだ。この女神のような少女を抱けるのなら、そのあと八つ裂きにされたって構うもんか。
と。
思って、ほぼ前後不覚の状態にある彼女の下穿きを脱がせたのだが。
「……あれ?」
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