第32話

「私も忙しいから簡潔に。今から君たちは私の言う通りに行動するんだ。

「君たちに心月平理の捕縛を命令する。

「異能都市を治める者としてこれ以上彼の蛮行を見過ごすことはできない。近い将来、心月平理は我々原色、そして十本指を超える脅威になる。

「私の異能フリージアは、この世の全てを視ることができる。閉ざされた鉄の箱の中身も、遠く離れた国で起こる紛争も、過去この場所で何があったかも、そして私が二年後の十月十日に青の原色の手によって死を迎えることも。

「全てを視ることができる。全知の異能。それが紫の原色、エリルディーテ・フリージアの異能だ。

「そんな私が断言しよう。心月平理は君たちにしか倒せない。

「より正確に言えば、君たちと龍爪紅にしか倒せない。

「心月平理を倒す方法を伝えるのが、君たちをここに呼んだ理由だよ。

「守桜から話は聞いただろう? 現在心月平理は二つ異能を所持している。。

「色持ち相手にパワープレイを可能にする強力な彼岸花と、万能に近いゼフィランサス。二つの相性はまさしく極悪だ、手のつけようがない。

「しかし、同じ異能を持つ異能者がいれば話は別だ。

「本来絶対有り得ないことだけど、全く同じ異能を持つ人間同士が戦ったらどっちが勝つと思う?

「正解はその異能をより熟知している方だ。

「つまり、心月平理よりも彼岸花を熟知している存在、龍爪紅の復活が必須になるというわけだ。

「そもそも復活できるのかって? もちろんできるとも!

「純粋な戦闘力から見ても、紅ちゃんの力は頭一つ抜き出ている。

「そんな彼女が復活すれば心月に勝利する可能性は大幅にアップするのは間違いない。

「あ、その前に現くんは紅ちゃんのことを覚えていないんだったね。

「現くんのためにちょっとだけ説明してあげよう。龍爪紅、性別女性、身長一四七センチ体重四十二キロスリーサイズ……は内緒、趣味は生花と読書、丁寧な言葉使いと黒髪の長めのボブに刺した赤い彼岸花の髪飾りが特徴の、十本指に入る管理局員。

「亜楽恋思に襲われた君を助け、殻例夜戦ではバディを組み背中を預けた仲だ。殻例夜を仕留めたのも彼女だし、どの戦場においても彼女は君の命の恩人だった。それは心月戦でも同じで、彼女は君を庇って存在ごと消滅した。

「その龍爪紅こそが、彼岸花の本来の持ち主だ。まあ、現くんは覚えていないだろうけどね。

「さて、肝心の紅ちゃんを復活させる具体的な方法についてだけど…………

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彼岸花の散る頃に @sisiwotome

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