第540話 チラリズムの美学
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「……エレノア。たった今、
「そうだよエレノア。今聞いたのはさざ波であって、
「こんの万年番狂い!!今日こそ不敬罪で斬首……って、いたたたたっ!!ちょっと、アシュル兄上!止めて!!痛いって!!」
フィン様を踏み付けにしつつ、青筋を立てながら極上の微笑を浮かべるオリヴァー兄様とアシュル様。
あわわ……!!オ、オリヴァー兄様!!王族に対してなんて事を!!アシュル様が参戦しているから近衛騎士様方が動きませんでしたが、もし単独でやっていたら切り捨て御免ですよ!?
「で、では……この世界の水遊び、裸族になるという事ではないのですね……?」
色々な意味でドキドキしながらの私の問い掛けに、兄様達が「「「「「「なんだ、その裸族って!?」」」」」」と息ピッタリにツッコミを入れ、アーウィン様方が「ブハッ!!」と噴き出した。あっ!騎士様方や船員さん達が口と腹を抱えて前かがみになっている!
……そして、全然違うところからも小さく「ブハッ!」って声が聞こえたんだけど……。ティル、貴方今回もどこかに潜んでいますね?
「エ、エレノア嬢。そもそも貴族女性は衆目の中、わざわざ湖や海に入ろうとしません。稀に素足で水の中に入る程度ですね」
「そ、そうなんですか!?」
目元を指で拭いながら、愉しそうにアーウィン様が教えてくれた。更には平民の女性も、暑くて汗をかいた時だけ、入浴着のような薄手のワンピースを着て川や湖に入るんだそうです。
だけど、それは『水遊び』というより『水浴び』という要素が強く、また貴重な女性(大切な婚約者、または妻)を守る為に、婚約者ないし夫達でがっちりガードをしている中でおこなわれるんだそうだ。
「それじゃあ、この世界では水遊びという文化はないのですか!?」
なんてこった!!それじゃあ海水浴なんて夢のまた夢!?そんな……!こんなに綺麗な海が広がっているっていうのに!!
「いや、無い……とは言えない……かな?実際母上なんかは、よくグラント様や父上と一緒に湖に遊びに行っていたし……」
オリヴァー兄様のお言葉に続くように、踏み潰しの刑に処せられていたフィン様が、復活がてら口を挟んでくる。
「うちの母上も、暑い時は父上や伯父上達と一緒に、王宮内にある湖にちょくちょく行っているよ。で、何年か前に父上に用があってそこ行ったら、全員はだ……いだだだだっ!!ちょっ!アシュル兄上っ!!やめっ!痛い痛い!!」
「フィン……。お前はもう、この会話に割り込むな!!」
青筋を立てたアシュル様が、わりと渾身の力を込めながらフィン様の頭を拳で挟んでグリグリして黙らせている。……フィン様が頭蓋骨陥没になりませんように。
でも、今の言葉で理解しました。つまりその時、アリアさんも国王陛下方も……その……全員マッパだった……って事ですね?だからフィン様、『水遊び=裸』って解釈しちゃったんですね?
あ、ディーさんとリアムがめっちゃバツが悪そうな顔しているし、他の人達は兄様達含め、もれなく顔を赤らめている。かくいう私も、ちょっと想像しちゃって顔が熱いです。
でも、この反応って仕方がないよね!?だって、この国で最も尊ばれる
騎士様方なんか、歯を食いしばってブツブツなにやら呟いているし。……ひょっとしてあれ、心頭滅却する為の呪文かなにかだろうか?
う~ん……。よくよく考えたら、確かに大切な女性のあられもない(?)姿を、この世界の男共が衆目に晒すわけなかったね。そりゃあ領地だけでって事になるわけですよ。
そもそも、この世界での男女間のアレコレは、レディース雑誌や青年誌並みにアダルティーであり、性に関して当たり前のように奔放な部分があるんだよね。
愛する男女が共に水浴びなんぞしたら、間違いなく服は邪魔となる。……で、最初は着ていても、必然的にマッパになる……と。
成程。そういう事情から、女性が「水遊びを貴方の領地でしたいわ♡」は、逆プロポーズ的な……というより、『お誘い』になると。
もぉぉぉっ!!こ、この国の男女の事情って、これだから!!
「じゃあ、水着もないんだ……」
ボソリと呟いた私の言葉に、今度は全員がバッと私に一斉注目した。ヒェッ!な、なにごと!?
「エ、エレノア!?まさか水着って、例のあの布……いや、服!?」
「お前!まさかまだ諦めていなかったのか!?」
「エレノア……ひ、ひょっとして君、ここにソレを持ってきた……なんて言わないよね!?」
「え、えっと……」
オリヴァー兄様、クライヴ兄様、セドリックが鬼気迫る形相で私に詰め寄り、アシュル様方やアーウィン様方は「みずぎ?なんだそれ?」って感じで首を傾げている。
いやその……実は私、この世界の水遊び事情を知らなかったので、ジョナネェに頼んで色々な水着を作ってもらっていたんですよ。
いや、勿論ビキニじゃなくて、セパレートタイプのものですよ!?パンツもハイレグじゃなくて短パンタイプだし、パレオもバッチリ付けていましたよ!?
ジョナネェ、「あらあら!ウフフッ♡」って意味深に微笑みながら、ノリノリで作ってくれたんだけど……。つまり私、ジョナネェに「悩殺グッズを作ってください」って言っていたって事になるんですか!?ジョナネェ~!!あんた、止めなさいよね、もう!!
どうりで昔、試作品を兄様達にお披露目した時、「「「まだ早い!!」」」って言って、瞬時に燃やされた訳だよ。
うん、今から思うと皆、セ●シーランジェリーと誤解しちゃったんだな。それにあの時の水着、仕様がビキニタイプだったってのも不味かった。
で、今回。「もうじき十四歳だし、そろそろ良いかな?」って、改めてジョナネェに水着作成を(こっそり)お願いしたものを持ってきたんですが……。こ、この流れ的に、見せない方がいい……かな?
ちなみに作った水着ですが、上はフリルを沢山あしらったへそ出しキャミソールタイプで、パンツはジャージをアレンジした伸縮タイプの短パン。それに半透明のレースを使ったパレオが付いていて、ちょっぴり大人な仕様となっている。
ジョナネェに「おへそ出してもいいの?」と言ったら、「胸も尻も寂しいんだから、せめて他のところでアピールするのよ!!」と力説され、「なるほど!」って納得しちゃったんだけど……。今から考えたら、なにをアピールするんだって話だよね?私のバカ!
「も、勿論、水着なんて持ってきてませんよ!」
「……ほぉ……。んじゃあお前、なに着て海水浴とやらをするつもりだったんだ?」
内心、冷や汗ダラダラになりながら平静を装う私に対し、クライヴ兄様の胡乱な眼差しがブッ刺さる。
「……え?……そ、それは……。こ、このまま?」
「へぇ……。そのドレスのままで?随分と野趣あふれる水遊びだね?」
オ、オリヴァー兄様!?その眼差し、全然信じていませんね!?……って、あっ!顔を隠していなかったから、いつもみたいに心の声を……え?そもそも態度がバレバレ?なんてこった!!
「シャノン、ウィル。君達、エレノアの入浴着なり着替えなり持ってきた?」
ああっ!セドリック!!それ聞いちゃダメー!!ほらー!ウィルの態度が挙動不審に!!
スッ……。と、オリヴァー兄様が「寄越せ!」とばかりにウィルに向かって無言で手を差し出す。ウィル、涙目でプルプル首を横に振っているけど、クライヴ兄様とセドリックも参戦した!!
三人の威圧を思い切り受けて、ウィルが脂汗を流しながらガックリと膝を突いてる!も、もう止めてあげてー!!
「いや、それなら最初からあいつに持たせておくなよ」
「えっ!?マ、マテオ!?貴方いつの間にここに!?」
「最初から気配を消して一緒に乗り込んでいた」
「さ、流石は王宮の『影』だね!」
というか、マテオまでもが私の心の声を!?くっ……!も、もういっそのこと、てるノア仕様に……って、あれ顔だけ出ているから意味ない!
「お前……。心の声もなにも、しっかり声に出していたぞ?」
あああっ!またやっちゃったー!!
「……アーウィン殿。それじゃあ検証の為に、船室をお借りします」
「いやいや、別にここの場で検証して頂いても構いませんよ?」
「貴方がたが構わなくても、こちらは物凄く構うんです!!」
そう言い放つと、オリヴァー兄様はウィルから強奪した私の水着(の入った袋)を手に持ち、私を小脇に抱えたクライヴ兄様、セドリック、そしてロイヤルズの面々と共にゾロゾロと船室に移動した。というかクライヴ兄様!なにげに私を物扱いしていませんか!?
◇◇◇◇
「――ッ!!こ、これは……っ!!」
「な、なんて大胆な……!!」
「エレノアや母上の前世では、これを着て水浴びを!?……くっ……!なんて危険なんだ……!!」
「ス、スゲェな!これは……クルぜ!!」
「というか、これをここでご披露しようとしただなんて……。エレノア、後でお仕置き決定だね」
「そうだぞエレノア!!こ、これは絶対、俺達の前以外で着るのはダメだ!!」
「…………」
水着をテーブルの上に広げた時の皆の反応ですが、上記の台詞を言いながら真っ赤になっていました。
というか、風呂でも水場でも平気でマッパの裸族になっちゃう人達が、ハイレグビキニでもあるまいに、こんな露出の少ない水着で狼狽えるってなんなんだ!?
「エレノア嬢。多分だけど、もろ出しよりもチラリズムに萌えるってアレじゃないかな?」
「あー……確かに」
私はヘイスティングさんの言葉に、思い切り納得した。そういえばボンテージファッション、裸族よりもエロく見えるしね。
というかヘイスティングさん。何故か当たり前のようにここにいますよね。転生者仲間云々差し引いても、完全な安パイって思われているんだろうなぁ……。
「と、とにかく!!これは永久封印……いや、僕達の領地でしか使わせないからね!?」
「ええー……!」
オリヴァー兄様の決定に口を尖らせた私に、ディーさんがすかさず挙手する。
「おーい!だったらヴァンドーム公爵領にある、王家の保養地で使うってのはどうだ!?」
「えっ!?」
「くっ!ほ、保養地……。で、ですが流石に、ここでは……!」
「だ、だが確かに……これを封印するのは……惜しい……な」
「あ、兄上方!!……で、でも確かに……」
ディーさんのナイスな提案に、オリヴァー兄様もクライヴ兄様も……なんならセドリックまで心が揺れ動いているもよう。
「うん、エレノアが着たら物凄く似合いそうだし、水に濡れた時、透けて張り付いた姿を想像するだけで滾るね!」
「ち、ちょっ!!フィン様!?」
「っおっ!!フ、フィン!それは……っ!!」
「フィン兄上!!それ以上言ったら犯罪者!!」
「フィン様っ!!水着は透けない素材で出来ていますからっ!!」
そう、楽しく妄想中に申し訳ありませんが、水着は透けないのであしからず!……って、なんで全員ガッカリしたような顔しているの!?
「ああ……。なるほど。皆さん、フィンレー殿下と同じ妄想を抱いておられたんですね。男ですもんねぇ……。分かります!」
うんうん、と頷いているヘイスティングさんの言葉に、ボンッと全身真っ赤になる。
つ、つまり皆、透けたチラリズムに萌えたって事!?ちょっと待って!!そんなもん、私が着たがるわけないでしょうがー!!まったくもう!!
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どうやら、局地的に裸族が発生するようです(*ノωノ)
今回、読者様からまたプリザーブドフラワー頂きました!
実物の写真、Xで投稿しておりますv本当に有難う御座いました!!
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