第539話 この世界の水遊び事情
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その日の夕食会は、兄様達やロイヤルズたっての希望で離宮のサロンでとなりました。
ちなみに参加者の中にヘイスティングさんもしっかりいて、超絶美形軍団(プラス国家最高権力者達)に囲まれながらの食事に冷や汗をタラタラ流しながら「なんで??」と呟いていました。
多分……いや間違いなく、兄様達が「彼もエレノアも、同郷者が一緒だと嬉しいだろう」と気を使った結果だと思われます。本当に申し訳ない。
でも王宮で保護されたとしたら、こんな状況は日常茶飯事になるので、是非ともここで胆力を養っていってほしい。……え?ケモミミに癒されたいので、昼間見た獣人さんどこですかって?いや、知りませんがな。
そういえばキーラ様の乳母になった牛獣人さん(名前はミルさんと言うそうです)。ちょうど国王陛下方が「キーラ嬢の乳母どうしようか?」と話し合っていたところに、たまたま
で、「ナイスタイミング!」とばかりに、あれよという間にヘッドハンティングされ、こちらにやって来たのだそうです。ミルさん、「人生、なにが起こるかわかりませんねぇ~」って、のほほんと笑っていたっけ。
そもそも牛獣人さんって授乳期は愛情対象が子供に全振りするから、この国の顔面偏差値にも動じないんだとか。ううむ……。真面目に乳母になる為に生まれ落ちた種族かもしれない。
余談ですが、乳母(嫁)予定を横から掻っ攫われた高官さん、血の涙を流しながら「恨みます……」と呪詛のように呟いていたとかなんとか。……えっと、早く次の乳母さんをゲット出来ますようにと祈っております。
そしてですが私、夜に一人で温泉入ったんだけど、温泉魚達がしっかり戻ってきていました。……そういえば、豪華客船ツアーに浮かれてベネディクト君に忠告するの忘れていたわ。しまったなぁ。
『お嬢!あっしらは負けやせん!!』って言いながらピチピチしている彼らが佃煮にならないよう、他の人達が入ってきた時は水中花に擬態しろって言っておいたんだけど……多分守らないだろうな。
◇◇◇◇
翌朝。突き抜けるような眩しい青空と穏やかな波の中、私達は純白の大型帆船に乗って精霊島を出発しました。
まるで海上を滑るように進む船の上で、キラキラと波打つ透明度の高い海を飽きる事無く眺める。あっ!魚群発見!そしてイルカの群れもいる!これはきっと、狩りですね!?
「エレノア、楽しんでいるみたいだね?」
「あ、はいっ!!凄く楽しいです!!」
そんな私を見ながら、オリヴァー兄様が嬉しそうな微笑を浮かべる。……くっ!いついかなる場所でも、どんな格好をしていても、兄様がいるとそこだけ一つの絵画のようになるな!スマホがあったら激写するのに!無念だ。
ちなみにだけど兄様を含めた婚約者様方全員、「港町に行くのに、貴族服を着ていくのもあれだからね」と言って、とってもカジュアルな服装を身に着けております。
あ、カジュアルと言っても、兄様方とセドリックは上級冒険者風の服。ディーさんはそもそも普段着が冒険者風の服なのでいつも通り(若干明るい色に変っていたけど)。
アシュル様とフィン様、そしてリアムは、そもそも冒険者服が似合わないという事で、シルクのシャツとベスト、トラウザーといったシンプルな服を自分なりにアレンジして着ています。
……普段カッチリした服を着ているオリヴァー兄様やセドリック。そして豪華な王族服やローブに身を包んでいるアシュル様、フィン様、そしてリアムの姿が目に眩しい……!特に南国という事で白をベースにしているからなおのこと眩しい!
あ、クライヴ兄様とディーさんが「なんか複雑……」と言いたげな顔をしていますね。いやいや、二人とも凄く恰好いいです!!でもね、ギャップがね、その……。
「ギャップ萌え……か。分かるよ、エレノア嬢」
真っ白いシャツと濃紺のズボンを身に着けたヘイスティングさんが、うんうんと頷いてくれる。流石は同志!分かってくれますか!?
ちなみにアーウィン様方ヴァンドーム五兄弟はというと、アーウィン様を筆頭に、シャツとトラウザーのみというシンプルな出で立ちをしていた。
……でもなんか、それが物凄く『海の男』って感じで格好いい。クリフォード様も
こ、こちらもギャップ萌えな予感が……。って、あっ!兄様達がさり気なく視界を塞いだ!
「それにしても……。その服、本当にエレノアに似合っている。素敵だよ僕らのお姫様」
「うんうん、だよなー!あのジョナサンって野郎、触り魔だけどやる時はやるよな!」
「…………」
アシュル様とディーさんが頬を染め、絶賛している私の装いですが、南国らしく、純白のシルクをベースにしたカジュアル風ドレスです。
そして髪はというと、サイドをキッチリ編み込んだ後、可憐な花を飾りにした、日傘代わりのつばの広いまっ白い帽子を被っています。
しかもこの帽子、しっかり紫外線を弾く術式が付与されているのだそうだ。うん、まさに南の島仕様。
……実は今回、私は婚約者様方の強い要望で、男装をする予定だったのである。
その理由は、「帝国の残党に気が付かれない為」。でもこれ建前で、本音は「ヴァンドームの連中に、エレノアの愛らしい姿を見せてなるものか!」……である。
まあ、私も動き易いから男装は大歓迎だったんだよね(心置きなく買い食いが出来るだろうし)。でもそれに対し、待ったをかけたのは美容班のシャノンである。
私を思い切り美しく着飾らせる事を己が使命としている彼は、「若様方!殿下方!どうかこちらをご覧ください!!」と、やはり私を着飾らせる事に命をかけているジョナネェに託された
「――ッ!!こ……これは……っ!!」
まず袖部分と本体が分かれ、ショルダー部分がくりぬかれたカットアウト仕様。そして、膝からフワリと半透明になっているスカートのチラリズムに、ディーさんとクライヴ兄様がやられた。
更には、ドレスに誂えた装飾品や刺繍、そしてレースやフリルといった飾りに至るまで、婚約者全員の『色』を入れてある点に、アシュル様、フィン様、セドリック、リアムが陥落。
オリヴァー兄様に至っては、「南国に相応しくない色」と却下された自分の色がしっかり入っており、しかもそれが一番目立つ首から胸元にかけてのレース部分だった……という点であえなく落ちた。
「……まあ、婚約者の色を纏ってるし……」「凄く可愛いし……」という事で、私の男装はお蔵入りとなってしまったのである。残念!
「それにしても……。ヴァンドーム公爵令息達のエレノアを見つめる視線や表情が煩わしいな」
「ええ。大変に業腹ですが、可憐な花に害虫が群がるのは世の常。致し方ありません」
「?」
ん?アシュル様とオリヴァー兄様がなんか話しているけど、よく聞き取れないな。
しかし……。このバラエティー溢れる色彩を喧嘩させずに融和させ、なおかつ爽やかな南国風ドレスに仕立て上げるって、流石はジョナネェ。デキるオネェはやはり違う。
――ところでだ。
皆に囲まれていた私は、アーウィン様方が蕩けるような表情を浮かべながら熱い眼差しを私に向けていた事も、護衛騎士様方や船員の皆さんが「眼福……!!」「い、生きてて良かった……!!」等と呟きながら、膝を突いて祈っていたり感涙していたって事に気が付かずにいた(後に、ドヤ顔のシャノンから聞きました)。
「そういえばクライヴ兄様、立ち寄る島の中に無人島とかないんですかね?」
「ああ?んー……。多分あるんじゃねぇか?でもなんで無人島?」
「だって、折角だから海水浴とかしたいじゃないですか!私、万が一の為に着替え一式用意してきたんですよ!」
ふふふ……。しかもこっそり、ジョナネェにお願いして作ってもらった水着も忍ばせてきましたよ。ええ、準備万端です!
……ん?あれ?クライヴ兄様が固まっている?
「……エ、エレノア……。お前、正気か!?」
クライヴ兄様!?え?なんで海水浴って言っただけで正気を疑われるの!?あれっ?何故か全員、こっちを凝視しているんですが?
すると、ディーさんとリアムが血相を変え、物凄い形相で私に詰め寄った。
「エル!?こ、こんな所で……!!まさかヴァンドームの奴らを婚約者にするつもりか!?」
「エレノア!?お前って奴は!俺達というものがありながら!!」
「デ、ディーさん!?リアムも!ど、どうしちゃったの!?」
アワアワしていると、目の端にアーウィン様方が物凄く目をキラキラさせているのが見えた。え?ほ、本当になんなの!?
「クライヴ、ディラン、リアム、落ち着け!!」
「エレノア……。貴族女性の水遊びは、普通自分の領地か婚約者の領地でしかしないんだよ」
アシュル様がいきり立つ三人を諫めた後、オリヴァー兄様が「頭痛い」とばかりに眉間を指で揉み解しながら、溜息交じりに衝撃的事実を口にする。
「え!?そ、そうだったんですか!?」
「あ、やっぱりエレノア知らなかったんだね。エレノアの事だからひょっとして……って思ったんだ」
セドリックが困ったような、それでいてホッとしたような表情を浮かべる。って、私の事だからってなんなんですかそれ!?
「で、でもなんで貴族女性って、自分の領地か婚約者の領地でしか水遊びしないの?」
「うん?そりゃあ、男も女も服着ないからじゃない?」
「…………はい……?」
フィン様のズバッと発言に目がまん丸になる。……え?裸族?この世界の水遊びって、イコール裸族なんですか!?
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ジョナネェの掌で踊る婚約者様方です。
そして、いきなりアダルティーなアルバ王国の水遊び事情、きましたね!(;゜д゜)
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