第538話 日帰り豪華客船ツアーへの誘い
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※リュエンヌ様の断罪の数日前に戻ります。
温泉魚達との抗争(?)の後ですが、温泉の温度はオリヴァー兄様がしっかり適温に戻してくれました。ああ……温かい!
――ところでですが。
あわよくば温泉の中、私と素肌に近い状態で甘々な時間を過ごそうと思っていた兄様達とロイヤルズの思惑は、温泉魚達との戦いにより精神的に疲弊した結果、脆くも崩れたらしい(「あの小魚ども……」と、誰かが忌々し気に呟いていた)。
まあ、温泉が熱湯になったり氷水になったり大騒ぎしたりで、甘い雰囲気欠片も残っていないから仕方がありませんよね。
私もよそ様のお風呂を血の池地獄にしなくて済んでホッとしました。有難う、温泉魚達!君達の奮闘は忘れません!
という訳で、氷水で芯から冷えた身体を温めた私達ですが、「もう、さっさと離宮にあるサロンでまったりしよう」という事で一致した。
う~ん。こうなると温泉魚達、海へと流刑に処せられてしまったけれども、私と婚約者達とのイチャラブを阻止するという使命は果たした……って事になるから、結果的に勝ったのはあっちの方って事になるのかな?
あ!セドリックが「あの小魚ども……。今度見かけたら、エレノアが以前言っていた『佃煮』って料理にしてやる……」なんて不穏な事を呟いてる!
あの子達……多分だけど、明日あたりシレッとこの中に泳いでいそうだから、ベティく……いや、ベネディクト君に、私達が帰る迄の間は温泉に魚達を戻さないように言っておくとしよう。
◇◇◇◇
そうして私を含めた全員が、ラフな服に身を包み(私も黒ずくめ脱ぎました)海の見えるテラス式のサロンに移動した。
そして私はトロピカルフルーツを使ったジュースを。皆はトロピカルフルーツを使ったカクテル(みたいなもの?)を飲んでまったりする。
途中、思い立ったセドリックが厨房に行き、チャチャッと作ってくれたフルーツたっぷりの即席パフェをうまうま食べながら、更にまったりしていたところに、アーウィン様方ヴァンドーム五兄弟がやって来ました。
「殿下方、ご歓談中のところ失礼致します」
そう言って、まずはアシュル様方に臣下の礼を執った後、非常に様になるウィンクを、私に向けてぶちかますアーウィン様。条件反射で顔が赤くなる私。笑顔でビキリと青筋を立てる婚約者様方。ひぇぇっ!!
「アーウィン・ヴァンドーム……。目でも痛いのかな?早々に
「有難う御座いますアシュル殿下。少々条件反射が……いや、お恥ずかしい(訳:「いえいえ、これは美しいご令嬢に対する男の悲しき性に御座います」)」
互いに笑顔の貴族言葉の応酬を繰り広げているアーウィン様とアシュル様の間に、バチバチッと火花が散る。
その隙にとばかりに、クリフォード様、シーヴァー様、ディルク様、ベネディクト君が私に向かい、極上の笑顔を浮かべながら手を振ったり、意味深な笑顔で当てた指で唇を撫でたり、アーウィン様ばりの見事なウィンクをぶちかましたり、ニッコリ笑顔でペコリとお辞儀したりしてくる。
それに対し、引き攣り笑顔でペコリとご挨拶を返せば、当然とばかりに他の婚約者達の背後から暗黒オーラが噴き上がった。
「エレノア、見てはいけない!あれらは歩く強制猥褻とその予備軍だ!……いや、既に同じ二つ名を継承している者もいるけど」
オ、オリヴァー兄様!またその二つ名を……って、ああっ!ヴァンドーム兄弟の兄様を見る目が恐い!!そして継承者は多分というか絶対、シーヴァー様ですよね!?
「……で?ここに来た本題は?」
アシュル様の言葉に、アーウィン様方が真顔になる。それを見て、アシュル様方や兄様達も表情を引き締める。……いつもながら、この切り替えの素晴らしさ。「流石はアルバ男!見事なり!」としか言いようがない。
「先程、ヴァンドーム公爵家の『影』達より、ウェリントンとその一派の捕縛が完了したと報告が入りました」
「そうか。抵抗や取り逃しは無かったのか?」
「御座いません。奴らは第二皇子の勝利を疑っておらず、自分達が誰に囚われたのかも理解しておりません。つきましては、今現在行っている領内の『掃除』の目途が付いたと同時に、アシュル殿下立ち合いの元、我が母による断罪を執り行ないたく……」
「承知した。父上にもそのように報告しておこう」
「……」
えっと、ひょっとして『掃除』って、この領内に潜んでいた不穏分子の一掃って事……だよね?
そうか、
よしんば感づいた者がいたとしても、足並みは確実に乱れている。何より、帝国が動き出す前に、トカゲの本体ならぬ、
「ふむ……。そうすると、裏切り者達から情報を得るのは、断罪の時だから、それまでは時間があるな」
「はい。ですので折角のこの機会。我がヴァンドーム公爵家の誇る最新鋭の船で、『掃除』が既に終わった港町に皆様をご案内したいのですが、いかがでしょうか?」
「えっ!?」
ふ、船で港町を巡る!?そ、それって豪華客船ツアーですよね!?おおぉっ!南国バカンスキターッ!!
そうですよ!折角こんなに素敵な南国リゾート地(違う!)に来たんだから、出来れば海で遊んだりしたい!そして、地元の食材を食べ歩きとかしてみたい!!特にあの食いそびれた串焼き食べたい!!
「いえ、これから大事が控えておられるのです。お気遣いは大変有難いですが、我々の所為でお手を煩わせる訳にはまいりません。なのでこれ以上邪魔にならぬよう、我々は一旦王都に戻ろうかと思います」
「えぇっ!?」
オリヴァー兄様!なんですと!?
「思いがけぬ事態に遭遇してしまいましたが、そもそも我々がヴァンドーム公爵領にやって来た目的は、共同事業である海の白の養殖についての打ち合わせだった筈。……ああ、バッシュ公爵家の
す、凄い……オリヴァー兄様!息継ぎもせずスラスラと。これぞまさに立て板に水!!
「……そうきたか。この万年番狂いめが……!」
「オリヴァー……。手段の為なら、婚約者仲間をも切り捨てるか……。本っ当に、君って奴は……!!」
「ねえ、アシュル兄上。もういっその事、こいつも一緒に断罪してもいいんじゃない?」
うわぁ……。アーウィン様とアシュル様がオリヴァー兄様に向ける視線が物凄く冷たい。そしてフィン様!どさくさに紛れてオリヴァー兄様を断罪しようとしないでください!
クライヴ兄様とセドリックは、オリヴァー兄様に苦笑交じりの呆れ顔を向けているし、ディーさんとリアムも同じように呆れ顔になっている。でも皆、自分達はとばっちりを食わないからか、オリヴァー兄様の提案に対し、異議申し立てはしていない。
そんな思惑を読み取ったアシュル様は、こめかみにビキリと青筋を立てた後、ニッコリと極上の笑顔を浮かべた。
「そうかい。じゃあオリヴァー。バッシュ公爵とワイアットに伝えておくから、王都に戻ったら速攻、奉仕活動をする為に登城したまえ。両名とも、情報の精査を行うのに猫の手も借りたいだろうから、きっと諸手を挙げて君を歓迎してくれるだろうね」
「えっ!?」
「ディランとリアムもそうだよ。フィンに情報を吸い出させたら、その情報を元に一斉に裏切り者達の捕縛を行うんだから、帰ったら即、デーヴィス叔父上の元で待機するように」
「はあっ!?」
「兄上!俺もですか!?」
「クライヴ。君もディランの副官見習いなんだから、ディランと共に叔父上の傘下に入るように。そしてセドリック。優しい君の事だから、親友のリアムと大切な兄上達の手伝いをしてあげるんだろう?是非とも頑張ってくれたまえ!」
「なっ!?ちょっ、アシュル!?」
「ええ……」
「いやぁ……本当に、エレノアとの楽しい思いで作りを袖にしてまで、アルバ王国の為に忠義を尽くすなんて、流石は僕の自慢の婚約者仲間達だね。誇らしい気持ちで一杯だよ!」
「「「「「…………」」」」」
――結果、この後皆で日帰り豪華客船ツアーをする……事になりかけたのだが、もう既に午後になっているという事で、明日改めてツアーに行く事が決定した。
「アシュル殿下を捨て駒にしようとしたのが失敗だったか……」って、オリヴァー兄様が悔しそうにつぶやいておりましたが、普通、ロイヤルズの頂点を捨て駒にって考える!?本当に兄様って、真面目に恐れ知らずですよね!?
ちなみに。アシュル様に教えてもらったんだけどオリヴァー兄様、色々やらかした罰として、アイザック父様から一定期間王宮での奉仕活動を命じられたんだそうな。しかもその間、私との接触を一切禁じられたそうです。ああ……。それじゃあアシュル様の脅しに屈する筈だわ。
……でも兄様。さっきの捨て駒発言で、更なるお仕置きが加算されそうな予感がします。ほら、アシュル様の青筋増えてますよー?
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あの断罪の前に、こういった事が起こっていたという……ww
ヴァンドーム兄弟、思いがけずの援護射撃にニコニコです。
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