第534話 抗争(?)と報告

お待たせしました!本日、『この世界の顔面偏差値が高すぎて目が痛い』の6巻についての情報が開示となっております。

今回の表紙は、例のアレらがおります。詳しくは近況ノートをご覧になって下さいねv



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フィン様とリアムとのやり取りで、これ以上余計な憶測や憐れみを受けない為にも、私は今着ている入浴着がジョナネェの作った試供品で、間違って持ってきたものである事をその場の皆に説明した。


でも何故か全員が、「そうか……」「そうなんだね……」と口にしながら、生暖かい眼差しを私に向けてくる。何故だ!?解せぬ!!


「エレノア。いいんだよ、己を偽らなくても。君はありのままが一番素敵なんだから……。ね?」


オリヴァー兄様、なにが「ね?」なんですか!!


違いますからね!?これ、私がジョナネェに依頼したものじゃないですから!!あっ!クライヴ兄様!!なに顔を背けて笑ってんですか!!


……まあともかく、いつまでも濡れた入浴着着たそのままでいるのもなんだし、目も痛いし。若干不満は残るものの、湯船に入る事となった。


そんな私達を『お嬢!あっしらにお任せくだせぇ!!』って感じに、ヤル気満々で待ち構える温泉魚達。


「それじゃあ湯船に入る前に……。クライヴ、そしてリアム殿下」


「おう、分かった!」


「了解だ!」


オリヴァー兄様に指名され、前に出たクライヴ兄様とリアムが、揃って湯船に手をかざす。すると湯舟が波打ち、温泉魚達が「あ~れ~!!」とでもいうように、波に乗って奥の方まで押し流されていってしまったのだった。


「さあ、エレノア。魚達邪魔者がいない今のうちに」


「は、はぁ……」


オリヴァー兄様に手を取られ、冷や汗を流しながら一緒に湯船に入っていく。


他の皆も次々と湯船に入り、阿吽の呼吸でガードするかのように、私の周囲をグルリと取り囲む。……うん、これって絶対温泉魚避けだろうね。

でも三百六十度、どこを見ても水も滴る美男美少年がいるこの状況って、私にとっては天国ではなく色地獄なんですけど!?


あ!波に流された温泉魚達が戻ってきた!


でも一メートル先でウロウロしている。……そういえば温泉魚達、オリヴァー兄様には釜茹で、クライヴ兄様には冷凍、セドリックには水中花とのオブジェにされかけていたっけ。成程、それで警戒しているんだね。


温泉魚達、「卑怯な野郎共だ!」「恥を知りやがれ!!」等と喚きながら、ピッチンピッチン飛び跳ねている。


「……おい、エレノア。あいつらなにを言ってんだ?」


「あ、僕も是非聞きたい!……まあ、どうせ碌でもない事言っているんだろうけどね」


あっ!二人とも目が据わってる!


「ク、クライヴ兄様にセドリック!何度も言うけど、私には動物の言葉なんて分かりませんよ!?ただ、『なんかそう言っている気がするなー』って思うだけで……」


「嘘つけ!」


「だっていつも自然に話してるじゃないか!」


「いやだから、本当にそんな気がするってだけなんですってば!!」


「それ、『気がする』んじゃなくて、実際言ってるんでしょ?いい加減素直になりなよ。で、なんて言ってるの?」


くっ!流石はフィン様。ズバッとモノ申してくださいますね!……で、でも、「禿げろ!禿げちまえ!!」「ハゲ散らしやがれ!悪魔どもめー!!」なんて言っているなんて、あの子達の命を脅かすような言葉、訳せませんよ!


「……へぇ……。『禿げろ!禿げちまえ!!』『ハゲ散らしやがれ!悪魔どもめー!!』……ねぇ……。え?『お嬢はうちの坊ちゃん達の嫁なんでぃ!!』だって?……ふぅん……」


ああっ!!フィン様!!私の頭の中を覗きましたね!?なんて事を!!って、わーっ!!皆の背後から、一気に暗黒オーラがー!!


「……さて、そろそろお湯の温度を上げようかな?皆様、熱めのお湯はお好きですか?」


「ああ、僕はどちらかと言えば熱め派だからね」


「おう!めっちゃ熱くしてくれや!なんなら俺も手伝おうか?」


わーっ!!みなさん!!青筋立てながらオリヴァー兄様に追従するのは止めてー!!温泉魚達も危険を察したのか、「お嬢!助けてー!!」とでも言うように、ピチピチ飛び跳ねている。


「オリヴァー兄様!落ち着いてください!!」


温泉魚達を救うべく、慌ててオリヴァー兄様の背中に抱き着くと、一瞬兄様の肩が大きく上下した。今にも火の魔法を出そうとしていた動きもピタリと止まる。


どうやら思いきり抱き着いたせいで、胸の感触がダイレクトに伝わったようだ。さすがジョナネェ渾身の偽乳、効果抜群!あっ!クライヴ兄様が「正気に戻れ!それは偽物だ!!」とか失礼極まる事を言っております!


「……まあ、エレノアが可愛がっている魚だし。仕方が……ないね」


「兄様!有難う御座います!!」


耳が真っ赤になってしまっているオリヴァー兄様に感謝の気持ちを込め、更にギュムギュムと抱き着く。

普通の入浴着では流石にここまで大胆な事は出来ないんだけど、幸い実胸ではないので、さほど羞恥心なく大判振る舞いが出来ます。ジョナネェ、有難う!


すると更に、首まで赤くなって震え始めた。兄様、私からの攻撃(?)には割と純情ピュアですよね?


「オリヴァー・クロス!君には矜持ってもんがないのか!?このヘタレ!!」


あっ!オリヴァー兄様の標的がフィン様に移った!!暗黒オーラvs闇の触手で睨み合ってる!!


「あれっ!?」


その隙を狙ったように、温泉魚達がいつのまにやら私に群がってる!?


温泉魚達は前日みたいに私にピッタリ張り付きながら、『もう離れやせんぜ!』『お嬢とあっしらは一蓮托生でさぁ!』なんて口をパクパクしている。って、一蓮托生!?なに言ってんだ君達は!?私も滅ぶ中に入っているわけ!?


「ほら見ろ!お前達がくだらない言い争いしていたから、エレノアに虫がたかったじゃないか!!」


「も、申し訳ありません!」


「ごめん、兄上」


アシュル様、虫ではなく魚です。というか言い方!自分が腐り物のような気になるので止めてください!


「……まあ、これから色々『報告』をしなきゃだしね。その間はソレ引っ付けたままでもいいか」


アシュル様の言葉に、皆の表情が一変した。つられ、私も表情を引き締める。


そうだった。私の婚約申し込みの事もあるけど、アシュル様は国王陛下の代理としてここに戻って来られたんだった。きっとヴァンドーム公爵様が報告された今迄の事に対し、なんらかの沙汰が下されたに違いない。


「まずヘイスティング殿だが、彼は希少な『転生者』であると同時に、直接帝国の王族と接触していた身だ。ゆえに、帝国と決着がつくまでの間は王宮で保護する事となった」


確かに。マルスはヘイスティングさんを使い捨てるつもりでいたから、色々な情報を彼に与えてしまっている。王家が直接保護するという事は、きっと帝国による暗殺を警戒しているのだろう。


「次にウェリントン侯爵令嬢だが……。聖女である母曰く、彼女のあの姿は、過剰な『力』を使った事による代償だそうで、元の姿に戻るのは事実上不可能との事だ。また、フィンに彼女の精神を読み取ってもらった結果、精神も赤子に逆行しているらしい」


「アシュル殿下、それはともかく、何故彼女をこちらに戻されたのですか?」


「……彼女の父親を含め、裏切り者達の断罪があるからね。彼女は被害者であると同時に、帝国に与してアルバ王国を害そうとした事への、これ以上はない程の生き証人だ。ゆえに急遽乳母を付け、こちらに戻る事となった」


「まあ、可哀想だが、やっちまった事がアレだからな……。こう言っちゃなんだが寧ろこうなった方が、あの子にとっては幸せかもしれねぇな」


ディーさんの言葉に、私を含むこの場の全員が、憤るような……そして、やるせないような表情を浮かべる。


確かに騙され、利用されたとはいえ、キーラ様のした事は許されざる事だ。それこそ大切な『女性』であるという免罪符があっても、極刑にされるぐらいに、彼女の罪は重い。


それでも、彼女は『キーラ・ウェリントン』として生きてきた人生の殆どを失ってしまったのだ。どうしても可哀想だという気持ちが湧き上がってしまう。

尤も、もし彼女の自我が残っていたとしたら、大嫌いな私に同情されるなんて屈辱以外のなにものでもないだろうけれどもね。


彼女は父親の断罪が終わった後に名を変え、王家の監視の元で里子に出されるそうだ。


『せめて……』


彼女がこれから歩む新たな人生は、穏やかで優しいものであって欲しい……。そう、切に願ってしまう。



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6巻の情報開示です!

そして発売日が10月10日という。非常に覚えやすいですね(*´艸`)


一応、牙城突破出来たテヤンデェ隊です。

そしてしっかりエレノアを盾にしているあたり、ちゃっかりしていたりしますw

そして、エレノアのジョナネェへの掌返しが激しい件についてw

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