第531話 一緒にお風呂再び!
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「……さて、エレノア。僕達の言いたい事は分かっているね?」
「…………ハイ」
「君の婚約者は、僕らでもう打ち止めだよね?」
「……ハイ」
「絶対に、これ以上は要りません!という、強い気持ちと覚悟を持たないといけないよ?そうしないと……。僕らもどこまで暴走してしまうか、正直分からない」
ひぇぇぇぇーーっ!!はいっ!覚悟持ちます!欲しがりません!というか、最初から欲しがってません!!
ヴァンドーム公爵家主催の昼食会の後、自室に戻った私は、オリヴァー兄様、クライヴ兄様、セドリック、リアム、ディーさん、フィン様、そしてアシュル様がゆったりとソファーで寛いでいる前にて、正座をさせられ、今後についての自覚と覚悟を促されていた。
あ、ちなみに私は床に直で正座しているわけではなく、ふっかりとしたラグの上で正座しています。そこら辺は流石のジェントルです。
――というかアシュル様!なんで貴方がここにいらっしゃるんですか!?確か王太子ゆえに王宮に帰らなくてはいけないからと、寝ている私に黙って、濃厚なご挨拶をしていった筈ですよね!?あれはフェィクだったんですか!?
「いや。今回の件に関して、国王陛下の代理として戻ってきたんだよ。……それに……ね。いくら挑戦権だけで済んだとはいえ、僕達の最愛の婚約者に虫が付きそうだと聞けば、アルバの男である以上、駆け付けないわけにはいかないだろう?」
くっ!そうですね。愛に生きるアルバ男ならそうしますよね!
ってか、オリヴァー兄様並みに笑顔の中の黒い圧が半端ない!そして何故かこの場のほぼ全員が、オリヴァー兄様のスキル『心読』(勝手にそう命名している)をマスターしているのは何故だ!?え?私の表情筋が雄弁なだけ?くそぅ!分かっていますよ、そんな事!
「……皆、ごめんなさい。あの時すぐに私がお断りしていれば……」
そう言いながら、ションボリしてしまった途端、重苦しかった筈の空気が瞬時に緩んだ。
オ:「いや、別に君に怒っているわけではないからね!?」
ク:「そうだぞエレノア!そもそもお前にそんな期待は欠片程しかしていなかったしな!!」
セ:「だいたい、そのアルバ女性らしからぬ、天然うっかりなところが、エレノアの良さなんだから!!たまたまそれが裏目に出ちゃっただけだよ!」
ア:「そうだね。これがもし、三大公爵家直系の婚約者という立場に色気を感じた結果だとしたら、口に出せないお仕置きをしているところだけど、エレノアだしね……うん、分かっているよ」
ディ:「そうだぞ!そもそも、俺が奴らにいらん情報与えちまったから、先手必勝とばかりに強気に出られちまったんだ!エルが悪いわけじゃねぇ!それに、そういう抜けてるところがエルの最大の魅力だしな!!」
フィ:「うん。本当にエレノアって、最高にボケてて可愛いからねぇ……。でも、ディラン兄上のボケは万死に値するよね。って事で兄上さぁ、婚約者辞めたら?大丈夫、僕が記憶改ざんして、エレノアの事を綺麗さっぱり忘れさせてあげるから」
ディ:「どこが大丈夫なんだよ、この外道!!ってか、死んでも婚約者辞めるか!!」
リ:「大丈夫だぞエレノア!俺達がムカついているのは、ヴァンドームの連中であって、お前じゃない!むしろあの時ズバッと断っていたら、頭の病気を疑っていたところだ!!」
……うん。私が心から落ち込んだ途端、皆のこの態度。流石は国是がレディーファーストの国の男子達、切り替えが早い!
そして私の最大の魅力って、とにかくボケて抜けているところなんですね。……フッ……。ちょっと泣いていいですか?
「いいや、エレノア。それは君の語り尽くす事が出来ない魅力の一端に過ぎない。君は僕達の百花であり、この世界のなによりも尊い至宝だよ」
「オ、オリヴァー兄様……」
少し涙目になっていた私の身体をフワリと抱き上げ、安定の美辞麗句でユデダコにした兄様が、私の唇に深く口付ける。
「ん……。ふっ、ッ……」
な、長い!そして濃厚!!
「オリヴァー!てめぇ、いい加減にしろ!!」
あまりの長さにキレたクライヴ兄様が、息も絶え絶えになっている私をオリヴァー兄様からひったくる。た、助かった……!
「んっ!」
――と、思う間もなく、クライヴ兄様に口付けられました。後はもうなし崩し的にセドリックやらアシュル様やら、奪い合う勢いでキスと抱擁の嵐です。しかも、ヴァンドーム公爵家直系の公開プロポーズの鬱憤を晴らすように、誰もが長く濃厚!!
結果、皆様が一応満足した後には、スライムのようにぐんにゃりとなった私がいました。……まさに大海の荒波に揉まれ、海の藻屑になった木っ端状態。皆さん、私をなんだと思っているんですか!?
え?愛する婚約者?こ、婚約者だったら、もっと労わりと優しさを!!……え?「こんなに優しくしているのに、まだ不満なのか?」ですと!?異議あり!異議ありですよ!!欲望と優しさを履き違えてはいけません!!
「とにかく、ヴァンドーム公爵家は強敵です。王家に連なる血を持つと同時に、大精霊の血族でもある。エレノアの婚約者として不足無しとなれば、彼らが婚約者になる事を、アイザック様は拒否なさらないでしょう。なによりエレノア自身も、腹筋と海鮮でアッサリ釣られる可能性がある」
――釣られませんってば!!ってか、海鮮はともかく腹筋ってなんなんですか!?
「ゆえに、これからは婚約者達の結束をより強化しましょう。僕も……まあ、出来るだけ狭量を押さえるつもりです」
あっ!オリヴァー兄様以外の全員が「いやそれ、絶対無理だろ」って言いたげな半目状態になってる。ちょっ、兄様!青筋立てるのは止めましょう。今迄が今迄だったのですから、信用がないのは当たり前ですし、「出来るだけ」って言っている時点でアウトです。
「……そうですね。では、リアム殿下が済んだ事ですし、他の殿下方もエレノアと入浴されるというのはどうでしょうか?」
「ふぁっ!!?」
途端、アシュル様、ディーさん、フィン様の目がクワッと大きく見開かれた。
「エ、エレノアと入浴!?」
「マジか!?」
「ってか、リアム、僕等よりも先にエレノアと入浴しているなんて!抜け駆け!!」
「オオオオオ、オリヴァー兄様ー!!?」
い、いきなりなに言っちゃってるんですかー!!?しかもアシュル様方、「入浴着は僕達の分をお貸しします」って言われてガッカリしないでください!!
ああっ!でも、私のポカミスでアーウィン様方に『挑戦権』を与えてしまったから、反対し辛い!!
「オリヴァー、君……さっきの言葉は本気だったんだね……。うん、なんか今やっと、君達と同じ立ち位置に立てた気がする。感無量だよ」
あ、気を取り直したアシュル様、めっちゃ感慨深げだ。そして口元が緩んでる。嬉しさを隠し切れていない。ディーさんもニッコニコだし、フィン様も頬を染めてウットリしている。
……くっ!こ、ここで混浴を嫌がったりしたら、私は鬼か悪魔だな。……うん、これって逃げられないパターンだ。ううう!オリヴァー兄様の鬼畜ー!!
「あ、万が一の暴走を止める為に、僕も一緒に入浴しますので、宜しくお願い致します」
途端、三人にジト目を向けられるオリヴァー兄様。あ、アシュル様が「感動して損した」って呟いている。私は逆に、「いつものオリヴァー兄様だ!」って、ホッとしました。御免なさい。
で、結局なんだかんだで婚約者全員、私と仲良く一緒にお風呂に入る事となりました。「リアムは一人で入ったのに、僕達は全員でなんて不平等でしょ!?」「差別だ!」って、フィン様とディーさんが仲良く喚いておられましたが、どっちにしろ私の命と鼻腔内毛細血管の最大の危機である事に変わりはない。
フッ……。ヘイスティングさん。やっと転生者仲間である貴方と出逢えたというのに、今日は私の命日になりそうですよ。
そうそう!ヘイスティングさんといえば、昼食会の途中で、フィン様の転移門から出てきた、キラッキラの『ザ☆王子様』なアシュル様や、月の精霊のごとく麗しいフィン様を見て、案の定あんぐりしていました。
でも、その後出てきた赤ちゃんのキーラ様を抱っこしたボンキュッボンな牛獣人の女性の姿を見るなり、目を皿のようにして固まった後、「ええええぇー!!じ、獣人!?ケモミミ!?うそっ!やだ真面目に!?うわぁぁぁ!!異世界転生キター!!」と、真っ赤になりながら叫んでいた。
牛獣人さんのナイスなバディではなく、ケモミミに反応したヘイスティングさんに対し、兄様達が「そっちかよ!?」とツッコんでいたが、どうやらヘイスティングさん、私と同じケモナーだったようだ。そして私が『ケモミミ同好会』の会長をしていると知るや、即入会してくれた。会員ゲットだ!わーい♡
しかもそれだけではなく、うちの領地に草食系獣人が沢山移住している事を聞き、「どうか、バッシュ公爵領に移住させて下さい!!」と、その場でスライディング土下座を披露した。私が言うのもなんだけど、どんだけ好きなんだ!?その情熱、まさに
……待てよ?アリアさんといい、ヘイスティングさんといい、ひょっとしてだけど転移者や転生者になる条件に、『オタク』があったりするのかな?……いや、まさか……ね?
ええ、ええ!当然ウェルカムですとも!帝国の脅威が去って落ち着いたら、どうぞいらっしゃってください!って言ったら、うれし泣きしてました。
うん、ヘイスティングさんの気質的に、バッシュ公爵領は合っていると思います。存分にオタクライフを充実させてほしいものである。
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オリヴァー兄様達にとって、エレノアが婚約者として釣られる餌が、「腹筋>海鮮」と思っている件について。
エレノア:「名誉棄損です!」
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