第514話 もしかして貴方は……!
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「……成程。何故僕がここに呼ばれたのかは理解した。切羽詰まった状況だという事もね」
「流石はアシュル兄上!あんな簡単な説明だったのに!」
突然出没……いや、弟によってこの場に召喚させられてしまったアシュルは、リアムによる簡易的説明(「ここはヴァンドーム公爵家本邸。例のご令嬢の力で操られたマロウと交戦した結果半壊。現在、同じく操られた公爵夫人と一緒にエレノアと末っ子が海底神殿にいて安否不明」)を聞いた後、厳しい表情を浮かべながら頷く。
……だがその額にはクッキリと青筋が立っていたし、右手には自分を召喚させた
「いたたたたっ!痛いってば兄上!!」
「やかましいわ!この愚弟!!危機的状況だという事を考慮しても、僕を拉致る前にやるべき事があるだろうが!!今頃城は、僕が一瞬で消えた事により、阿鼻叫喚の嵐だ!!何故一言説明をしてから行動しない!?今更王家直系としての振る舞いや行動をお前に求めたりはせんが、いつも僕や母上が言っているように、「報告・連絡・相談」ぐらい徹底しろ!!馬鹿なのか!?それとも実は脳筋なのか!?」
「ちょっとアシュル兄上!ディラン兄上と一緒にしないでよね!!」
「憤るところはそこか!?そこなのか!?お前の言葉ではないが、いっぺん死んで人生やり直せー!!」
「あだだだだっ!!!」
更に青筋を増やしたアシュルによる容赦のない攻撃(?)に悲鳴を上げるフィンレー。
突然現れた王太子による、実の弟への制裁劇を見せられたヴァンドーム公爵家の面々が呆然としている中、その他の面々はと言うと、その見慣れた風景を半笑いを浮かべながら見つめていた。
「アシュル殿下!リアム殿下が説明した通り、今は危機的状況下にあるのです!愚物による暴挙に晒されたお気持ち、痛い程よく分かります。ですがどうかお怒りは一旦横に置き、その尊きお力を我々にお貸し下さいませ!!」
「ちょっと!オリヴァー・クロス!!危機的状況とか言って、なにその満面の笑顔と暴言!!真面目にムカつく……あだだだっ!!」
「……そうだな、オリヴァー。君の言う通り、この馬鹿を相手にしている場合ではないようだ」
そう言うと、アシュルは掴んでいたフィンレーをペッと放り投げると、アーウィンに支えられた状態のアルロの傍に近寄る。
「ヴァンドーム公爵、こうして直接会うのは久し振りだ」
「アシュル王太子殿下。三大公爵家を名乗る者が、かように見苦しい様をお見せするとは……。しかもこのような場に尊き御身を……。面目次第も御座いません」
アルロの言葉を受け、アーウィン以外の兄弟達や、ヴァンドーム公爵家の使用人達が慌ててその場に膝を突き、首を垂れようとするが、アシュルは手を翳してそれ以上の行動を制した。
「先程オリヴァーが口にしたように、今が緊急事態である事は理解している……」
そこで一旦言葉を切った後、アシュルは再び唇を開いた。
「この場にいる全ての者達に、王家直系として命ずる。王族への敬意は心の中だけに留めよ。現状を打破するまでの間、あらゆる不敬な言動も不問とする!」
「「「「「はっ!!」」」」」
先程のディラン同様、王族としての覇気と威厳を持ち、その場の全員に向け告げた後、アシュルは再びアルロへと向き直った。
「アルロ・ヴァンドーム!」
「はっ!」
「心して聞け!貴公には自身を含め、この場に居る者達全員に王家による『誓約』を受けてもらう!」
『誓約』という言葉を聞いたヴァンドーム公爵家側の者達の顔に緊張が走る。
「……アシュル殿下。その『誓約』の中身は……」
固い声と表情で問い掛けるアルロに答える事なく、アシュルはアルロの胸元に手を当てた。
直後、黄金色の眩い光がアシュルの手からアルロの全身を覆う。更にその光は、キラキラと輝きを放ちながら、まるでアルロの体内に浸透するように消えていった。
「……ッ……!こ……れは……!?」
「ち、父上!?」
「
自分の掌にある光の残滓を呆然と見つめながら、しっかりとした足取りでその場に立つアルロに対し、アシュルは微苦笑を浮かべた。
◇◇◇◇
「――!?……ぐっ……うう……!!」
「え?」
地上でアシュルがフィンレーに召喚されていた丁度その頃。海底神殿では、余裕の笑みを浮かべていたマルスが、突如頭を押さえ、苦しみ出した。
「く……そっ!!この……っ、死にぞこない……が!!」
『えっ!?い、いったい、どうしたっていうの……!?』
これも私達を嵌める為の演技……!?と思ったが、どうも様子がおかしい。演技にしてはあまりにも迫真に迫り過ぎている。
『ひょっとして……本当に苦しんでる……?』
そう思った次の瞬間、ベネディクト君がマルスに向けて攻撃を放った。……って、えっ!?ち、ちょっ!!あ、あれマルスだけど、ヘイスティングさんーーっ!!!
マルス(ヘイスティングさん)に攻撃が当たった……と同時に、奥方様がベネディクト君に向かって魔法攻撃を放つ。
「くっ!!」
奥方様の攻撃は、ベネディクト君が咄嗟に張った防御結界に阻まれ、霧散する。
そのまま迎撃態勢を取るベネディクト君だったが、何故か奥方様は、そのまま人形のように無表情のまま立ち尽くしている。
……どうやら奥方様、マルスの危機の時や指示を出された時以外は自主的に動けないらしい。多分だけど、キーラ様の生命力をもってしても、大精霊である奥方様を完璧に操る事は出来ないに違いない。
『――ッ!って、ヘイスティングさんは!?』
慌ててマルス(ヘイスティングさん)の方を振り向く。すると……。
「はっ!?」
なんとそこには、地面から生えた黄金の蔓に守られ、無傷で蹲っているマルス(ヘイスティングさん)の姿があったのだった。
『……え!?なんで!?さっきはあんなに祈ったにもかかわらず、一本も生えてこなかったのに!!』
と言うか拘束してる……というより守っているよね!?
プチパニック状態になった私の目の前で、マルス(ヘイスティングさん)がノロノロと身体を起こす。
咄嗟に身構えた私とベネディクト君だったが、どうも様子がおかしい。警戒しながら見つめていると、彼は自分の掌をジッと見つめた。
「『死にぞこない』……か。確かにその通りだけど、弱者にも足掻く権利はちゃんと存在するんだよ」
そう呟くと、
「皮肉だな。今までこの身体は、
胸に手を当て、そう言い放つと、『彼』はゆっくりと私達の方へと顔を向けた。
「御免ね、辛い思いをさせて。みんなみんな、僕の所為だ」
先程まで驕ったように嘲笑を浮かべていた顔は穏やかなものとなり、どす黒く濁ったようだった瞳は、澄んだ泉のように凪いでいて……。元は同じ顔なのに、受ける印象があまりにも違う。まるで別人のようだ。
「……ヘイスティング……さん……?」
私の問い掛けに、ヘイスティングさんは困ったような微笑を浮かべた。
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フィン様、身体強化をかけているものの、それを上回る圧をかけられいるもよう。
エレノアと違い、頭蓋骨が凹んでいたりするかもしれません。(;゜д゜)ゴクリ…
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