第459話 カオスと驚愕
皆様、お待たせいたしました!更新再開です!!
暫くは様子見しながら、ゆっくりさせて頂きますが、またこれからも宜しくお願い致します!
そして、本日『この世界の顔面偏差値が高すぎて目が痛い』の4巻の情報&予約解禁です!
そして、コミックス1巻も同時発売が決定しました!
コミックスの事や4巻についての詳しい情報は、近況ノートに記載させて頂いておりますので、興味のある方は、そちらの方をご覧になって下さいませ!
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リアムとマテオと共に船に近付いていく……が、見渡す限りどこにもクラーケンのクの字もなかった。そう、それこそ欠片も浮いていない。
そこにはただただ、エメラルドグリーンの海と、輝く太陽。そして突き抜けるような青い空が広がっていて、その中で、白い帆をなびかせた大きな船が穏やかな波に揺られている。
まるで先程までの荒れ狂う魔獣の奇襲など嘘のような光景に、思わず「平和……」と呟いてしまう。
「いや本当、ああしてみると平和そのものだよなー!ってもさっきまで、雨あられとばかりに雷が落ちるわ渦潮が幾つも荒れ狂うわと凄かったんだぜ?オリヴァー・クロスもクライヴ・オルセンもセドリックも護衛騎士達も、うっぷん晴らしとばかりに、残ったクラーケンに魔力ぶつけまくってるしさぁ。……あの船、マジで魔王何人いるんだよって思ったよ」
「そ、そうなんだ……」
私の言葉に反応し、相槌を打ちつつも、どこか遠い目をしながら話すリアム。そんな彼を見ながら、私は引き攣り笑いを浮かべるしかなかった。
つまり、ティルの稲妻が炸裂→兄様達の魔力が炸裂→スプラッタ仕様のクラーケンが、ダイ●ンよろしく、ウィン船長の作った渦潮に吸い込まれる→跡形もなく海の藻屑となって海底に沈んだ……と。
控えめに言っても凄すぎる!皆、どれだけブチ切れてるんだ!?
『うう……。も、戻ったら、てるノアの件も含めてどんだけ叱られるんだろう……。いや、オリヴァー兄様やセドリックはともかく、クライヴ兄様がね。ああっ!身体強化なしで頭部鷲掴みの刑に処せられるかもしれない……!!わ、私の頭部の丸みも今日限りか!?』
頭がひょうたん型になる恐怖に打ち震えていた私は、ふとある事に気が付いた。
「ね、ねえリアム。オリヴァー兄様が防御結界を張る前に、結構な数のクラーケンが船に襲い掛かっていたよね?でもあの船、帆も船も目立って破損した箇所が無い……気がするんだけど?」
「ああ!言われて見れば確かにそうだな?あれだけの数のクラーケンに襲われたんだから、普通はもっとボロボロになってもおかしくないのに……」
「……『ヴァンドームの船は海で沈まない』」
不思議そうに首を傾げていた私とリアムの横を飛んでいたマテオが、ポツリと呟いた。
「マテオ?」
「国内外問わず、船乗り達の共通認識です。それゆえに、ヴァンドーム公爵家は『海の守護神』と言われ、海洋地域で絶対の信頼を持たれております。……いつかの祖父の言葉ですが、『あの領は、精霊の加護に護られているのだよ』……と」
「精霊の……加護……」
つまりは、その加護を受けているからこそ、あそこまで綺麗な状態で済んでいたのか。
ヴァンドーム公爵領……というより、ヴァンドーム公爵家が精霊の加護を受けているとしたら、やっぱりそれが『あの時』のベネディクト君の姿と関係があるのかもしれない。
「尤もそれは、あくまで『噂』です。海洋事故に遭う確率が限りなく低いというだけで、船が破損したり沈没したりする事もたまにあるそうですしね。オリヴァー・クロスが防御結界をかけなければ、いくらヴァンドーム公爵家の船だとて、半壊ぐらいはしていた筈です」
「だよな。それに本当に加護を受けていたら、あんな数のクラーケンに襲撃されていないだろ」
一瞬、頭の中でベネディクト君が呟いた言葉が蘇った。
あの私を抱き上げ、守ろうとしてくれていたあの時……彼はこう呟いたのだ。
『有り得ない!なんでこの海域で魔物が我々を襲う!?』
それは、自分達に『精霊の加護』があると分かっていたうえでの言葉だったのではないだろうか?そして、ベネディクト君自身が、その『加護』を使ってサメから私を守ってくれた……?
『全部……憶測でしかないんだけどね。ヴァンドーム公爵家に行ったら、何か分かるのかなぁ?』
「さて、じゃあ降りるぞ?」
リアムの言葉通り、ゆっくりと身体が下に落ちていく感覚が私を襲った。
『ひぇぇーっ!!こ、この感覚……久々にキター!!』
ジェットコースターで急降下する時のような、お腹がフワッとしてくすぐったくなるような、あのムズムズ感が襲い掛かってくる!!
「――ッ!!」
ううう……つ、辛い!!
思わずギュッと目を閉じ、リアムの首にしがみ付くと、私を抱くリアムの腕の力が強くなった気がした。
「おい、エレノア!何をどさくさ紛れにリアム殿下にベタベタとしがみ付いているんだ!!痴女か貴様!!」
いつも通りの容赦ないマテオ節に、条件反射とばかりに反応する。
「誰が痴女だー!!だいたい、私とリアムはこんや……ブッ!!」
うっかり『婚約』と言おうとした唇を、マテオの手がバシッと塞いだ。……痛い。
いや、分かっていますよ!?私が悪いって分かってる!でもっ、もうちょっとこう、優しさというものを持とうよ!!
「マテオのバカ―!!意地悪ー!!」
「やかましい!!このボケた白人形が!!」
「も、もう、あの布脱いだから、てるノアじゃないもん!!」
「は!?なんだそのアホふざけた名前は!!」
「て……てるのあ?」
一瞬後、呆然とした感じで呟いたリアムが盛大に噴き出し、大爆笑しだした。それと同時に、ゆっくりだった降下が途端、乱れまくる。
「ひぇぇ~!!リ、リ、リアッ!や、やめて~!!ゆれっ、ゆれるっ!!」
「お前がアホな事言うからだろうが!!殿下は笑い上戸なんだぞ!!」
「し、知ってるっ!!あああ~!!」
ふ、普通のジェットコースタがキリモミ状態に~!!
そうしてぎゃあぎゃあと喚き合いながら、私達は無事(?)ヴァンドーム公爵家の帆船に帰還したのだった。
◇◇◇◇
「ピィィー!!」
「わっ!ぴぃちゃん!?」
リアム、マテオと共に船に降り立ち、最初に私に駆け寄った(?)のはオレンジ色の弾丸こと、マテオの連絡鳥であるぴぃちゃんだった。というかぴぃちゃん、ちゃんとマテオに付いてきていたんだね。
「ピィ!ピィピィ!……ピィー!?」
私の頬に高速でスリスリしていたぴぃちゃんだったが、誰かの手にガッシリと掴まれ、ポーンと遠くに放られた。そして……。
「エレノア!!」
「ふぐっ!!」
物凄い力でガッシリとサバ折りよろしく抱き締められる。こ……この声は……!
「オ、オリヴァーにいさま……」
「ああっ!愛しい僕のエレノア!!無事で良かった!!君がクラーケンに投げられた時は、心臓が止まるかと……!!」
に、にいさま……!私も今まさに、息が止まりそうになっております!!
すると、やや乱暴に私の身体がオリヴァー兄様から引き剥がされる。
誰だか分からないけど有難う御座います!と思いながら酸素を取り込もうとした瞬間、私は再びサバ折りを食らう羽目となった。
「うぐっ!!」
「エレノア!!このバカ野郎!!お前は……お前は本当に、どうしてこう危なっかしいんだよ!?」
「ク、クライヴ……にいさ……」
ちょっと怒ったような震える声で、更にギュムギュムと抱き締め続けるクライヴ兄様。そしてギュムッと抱き締められるたび、肺から空気が抜けていく私……。あ、なんかうすぼんやりとお花畑が……。
「ク、クライヴ兄上!落ち着いて下さい!!このままではエレノアの命が!!」
「クライヴ様!そこでどうか!……ってオリヴァー様も!クライヴ様からお嬢様を奪い返そうとなさらないで!!落ち着いて下さいませ!!」
私を救出しようと、セドリックやウィル達が必死になってクライヴ兄様に取り縋っているんだろう声が聞こえる。でもクライヴ兄様の抵抗に加え、私を取り戻そうとしているオリヴァー兄様が救出の邪魔をしているっぽい。
……ああ。またしてもカオス……。
と、何故か頭上から大量の海水……ではなく真水が、私達目掛けてザバーッと降り注いだ。
ビックリして腕の力を緩めたクライヴ兄様の腕から、すかさず救出される私。……ス―ハ―ス―ハ―……ああっ、空気が美味い!!
というか、海の中に落ちても濡れなかったのに、何故に船の上でずぶ濡れに!?兄様方やセドリック達も呆然としているよ。というか勿論私もだけど。
「失礼。あのままでは収拾がつかないと思ったものでして。少しは頭が冷えましたかな?」
そう言って近づいてきたのは……。
「ふぐっ!?」
ゆったりとした足取りでこちらへとやって来るのは、艶やかな濃紺の長い前髪を後方に流した青年だった。しかも、恐ろしい程に整った顔面の持ち主で、思わずご令嬢らしからぬ奇声を発してしまう。
「ふぐ……?」
ああっ!美青年が私の奇声に反応して小首を傾げている!!やだ、止めて!!精悍な顔立ちでその仕草はアウト!!お、思わず一瞬息が止まっちゃったじゃないですか!!
「エレノア・バッシュ公爵令嬢」
真っ赤になり、ずぶ濡れ状態のまま硬直してしまっている私の前に立った美青年は、微笑を浮かべながら、優雅な所作で貴族の礼を取った。
「改めてご挨拶申し上げる。船長のウィン改め、アルロ・ヴァンドームが長子、アーウィンと申します。以後お見知りおきを」
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一部の方々にはバレておりましたが、ウィン船長、長男のアーウィンさんでしたw
お陰様で、両目とも順調に回復しております!
ご心配のお言葉や激励のお言葉の数々、本当に有難う御座いました<(_ _)>
これからも頑張りますねv
4巻のカバーイラストは待望の姫騎士バージョンとなっております(*´艸`)
今までとはまた違った魅力を、存分に堪能していただければと思っておりますvv
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