第444話 リメイクなんてどうでしょう?

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これ以上ボロが出ないよう、私は「一人で静かに見て回りたい」と理由をつけて、そそくさとその場を後にした。


いや本当に、なんでこう余計なことを言ってしまうのだろうか、私のバカ!と心の中で己を罵りながら、広い店内をプラプラする。いや本当、どれもこれも綺麗です。


……うん。綺麗だけど、腹の足しにはならんな……。


『お腹空いた……』


思えば朝も軽くビスケットと紅茶だけだったから……。

それに加えて焼き物通りを通ったからな。うん、あれが止めをさしたんだな。


私はともすれば鳴りそうなお腹を擦りつつ、溜息をついた。今の私の状態は、まさに豚に真珠である。いや、花より団子?とにかく何でもいいから海鮮食べたい!


「……ん?」


そんな中、ふと目に留まったのは、大きなアコヤ貝……を模したクリスタルガラスだった。


近寄ってみると、アコヤ貝の中には大小様々な形や色の海の白が沢山置かれていた。


「うわぁ……!凄い!これも売り物なのかなぁ?」


「いえ、お嬢様。こちらは売り物にならない規格外品で御座います」


独り言に返事を返され、思わず声を上げそうになったのをすんでで抑える。慌てて振り向くと、そこには支配人さんがにこやかな笑顔を浮かべながら立っていた。え?い、いつの間に!?


……って、あ!クライヴ兄様とウィルも、しっかり私の後方に控えてた。分かっています。お目付け役ですね、お世話おかけします。


「驚かせてしまいましたか?申し訳ありません」


「い、いえ。私の方こそ、惚けてしまっておりました。……あの、こちら規格外品と仰いましたが……」


「はい。売り物になりませんので、こうして場の雰囲気を飾る装飾として利用しております。それと、海の白をお買い求めいただいた方へ、無料で贈呈させて頂いたりもしておりますね」


「そうなんですか……」


成程。真珠が採れるアコヤ貝を模して作ったクリスタルガラスに、海の白を入れて飾るなんて、まさに最高のオブジェだよね。その発想、流石です。


私は感心しながら、目の前の規格外品に目をやった。


養殖物と違って、天然物できれいな丸のものは本当に僅かだ。ましてや王侯貴族が身に着ける装飾品として重用されている宝石なのだから、少しの歪みも許されない。結果、このように大量の廃棄品が出てしまう……という訳なのだろう。


『勿体ない。ちょっと形が歪でも、こんなに綺麗なのに……』


「あの、こちら触ってみてもよろしいですか?」


「はい、構いません。どうぞご存分に」


にこやかに微笑む支配人さんにお礼を言いつつ、規格外品の海の白を一つ手に取った。


それは形の一部が少しだけギザギザになっているタイプのものだった。……あれ?ちょっと何かを思い出す……。


『あっ!スズランだ!』


思わず、同じような形の海の白を探すと、割と似たようなのが何個も出てきた。


『ふむ……。これを花に見立てて、茎や葉っぱの部分を銀や金で作ったら、素敵なアクセサリーになるんじゃないかな?』


「シャノン!ちょっとこっち来て!」


思い立ったアイデアを共有したくて、私は美容班であるシャノンを呼ぶ。


「どうされました?お嬢様。あ、ひょっとして欲しいものが見つかりましたか?私もお嬢様にピッタリのブレスレットを見つけましてですね……」


開口一番、いそいそと自分推しの海の白を勧めてくるシャノンに、私はスズランの花の形をした海の白を見せる。


「あのね、シャノン!これ使ってスズランのアクセサリーとか作れないかな?」


今思いついたアイデアをシャノンに話して聞かせる。するとシャノンも食い気味に私のアイデアに興味を示した。


「それはまた斬新な……。そうですね。こちらの海の白は黄色がかっておりますから、加工するなら金がよろしゅう御座いましょう。逆に白味が強いものは、銀かプラチナを使うと良いかもしれませんね」


おおっ!流石は美に貪欲な第三勢力者。それ、凄くいいアイデアだと思う!


「それとね、これを細い銀糸の先に付けてピアスにしたら、動くたびに揺れて可愛いと思うの!それとこういう楕円のものも、たとえば『月の雫』って名前つけて、ピアスとネックレスのセットにしても素敵だよね!」


「お嬢様……!私、初めてお嬢様の名付けに感銘を受けました!それ、ジョナサンに言ったら食いつきますよきっと!ああ……それにしてもお嬢様ってば、やればできる子だったんですね!!」


あれ?なんかサラッとディスられたような?……まぁいっか!


「本当!?あ、それじゃあこの凄く小粒なものも、カスミソウに見立ててアクセサリーに出来そうだよね!」


そうだ!だったらこの海の白達を格安で譲ってもらって、手作りのアクセサリーを作ってみるのはどうだろうか?

海の白って、元々が物凄い高価な宝石だし、上手に加工すれば、アリアさんやクラスメイトのシャーロット様達や、オネェ様方にいいお土産が出来るんじゃないかな。


実は当初。皆へのお土産は、焼き物通りで見つけた魚や貝の干物にしようと思っていたんだよね。


でもアリアさんや父様方はともかく、ご令嬢方は干物を喜ばないかもしれないし、オネェ様方も酒のつまみになるから喜ぶかもだけど、乙女なんだし、こういったファンシーなものの方が喜ぶに違いない。


そんな事を思いながら、キャッキャとシャノンと一緒に盛り上がっていた私に、支配人さんが声をかけてきた。


「成る程……。それではお嬢様はこれらを使い、今仰ったものをお作りになられ、販売されようと……?」


「え!?いえいえ、販売なんてしませんよ!」


ん?支配人さん。なんで手に紙とペンを持っているんですか?


「私はこれを使って、お友達やお世話になった方々のお土産を作ろうかと思って……。でも例えばちゃんと作ったものを、平民の方でも手が届く値段で売ったら、凄く喜ばれるかもしれませんね」


私の言葉を聞いた支配人さんの目が、大きく見開かれる。と同時に、出来れば聞きたくない可愛くも厭味ったらしい声が聞こえて来た。


「あらぁ?こんなみすぼらしいクズ石をお土産にしようだなんて、バッシュ公爵家って実は困窮されているのねぇ。可哀そう~!」


――でたな!陰険小姑令嬢!!


キーラ様、どうやら戦利品を選び終わったのか、さっきまで付けていなかった淡い桜色をした海の白のネックレスを身に着けている。


見下し笑いをしている彼女の後方には、取り巻き達が追従するように忍び笑いをしている。キーラ様の取り巻きだけあって、なんともムカつく人達だ。


「キーラ様、ご心配には及びませんわ。我が家は婚約者に宝飾品を強請らなくても済む程度には、ちゃんと潤っておりますから」


私の割と直球な嫌味に、キーラ様の余裕の笑みが少しだけ歪んだ。


「それに、これらはクズ石なんかじゃありませんよ?形が多少歪なだけで、れっきとした海の白です。それに加工次第では、素晴らしい装飾品に生まれ変われる筈ですから!」


そう、今私とシャノンとで話し合っていたような装飾品を、たとえばちゃんとした職人さんが作ったとすれば、普通に展示してある海の白と同じ……とまではいかないまでも、ちゃんと売り物になる筈だ。


それに、庶民にとっては高嶺の花である海の白が、一生懸命頑張れば手が届く値段で売られていれば、それこそ下級貴族や裕福な商人達だけでなく、一般庶民であってもきっと欲しがる人達は沢山いる。

そうすれば、クズ石扱いされているこの海の白達もきちんと評価され、一級品と同様に輝く事が出来るに違いない。


「――ッ!お嬢様!!今のお話、わたくし大変に感銘を受けました!!」


突然、支配人さんがキーラ様を押し退けるように私の前へと立つと、物凄くキラキラしい眼差しで私を見つめる。

キーラ様が「ちょっと!何をしているのよ!どきなさい!」と喚いても華麗にスルー……というより、耳に入っていない様子だ。


「お嬢様、よろしければこちらの海の白、全てお持ちになって下さい!勿論、お代などは一切不要です。もし足りなければ、いくらでもご用意させて頂きます!」


「え?で、でも私……」


確かこれ、お買い上げの際に渡すオマケ品ですよね?私、何も買っていないんですが?


「宜しいのですよ。今回、私も良い勉強をさせて頂きました。まさかこんな、誰からも顧みられない規格外品の為にそこまでお考えになられるなんて……!!先程の知識といい、お嬢様の海の白に対する並々ならぬ情熱と愛情に、私、心の底から感服致しました!」


え?あ、愛情?


「そして己の不甲斐なさに恥じ入るばかりです。本当に、支配人としても一職人としても、なんたる未熟者か……!!」


「え、えっと……」


済みません、そこまでの愛はないというか……。むしろ海鮮焼きの方がいいなーとか思っていました。というか支配人さんって、職人さんでもあったんだね。


「お嬢様!もしよろしければ、これらを使ってお嬢様が作り上げられた宝飾品、是非とも私共にお見せ頂けたらと……!!」


「えっ!?わっ、私の作った物をって……いやいや、職人の方にそんな拙いもの……」


「そう仰らず!!是非、お願い致します!!」


若干、目を血走らせながらズズイと迫られ、思わず腰が引けてしまう。クライヴ兄様とウィルも、何気にドン引いていますよ。

あ、シャノンだけはまだ海の白吟味しながらブツブツ言っている。どうやら創作意欲に火が付いてしまったようだ。


「え、えっと、その……。こ、こんなに沢山海の白頂きましたし、それぐらいなら……」


押し問答の末、遂に根負けしてデザイン画を送る事になってしまいました。


支配人さんからは、物凄く感謝されてしまったんだけど、デザイン画を見てガッカリされないか、今から凄く心配だ。


途中から無視される形となってしまったキーラ様からは、「嫌だわぁ~!本当に貰うなんて、公爵令嬢のくせに物乞いみたい!」と嫌味を言われたので、思わず「自己紹介ですか?」と、直球で返したら、物凄い顔で睨まれてしまった。あれ?私結構ちゃんと言い返せる?


すると私の心を読んだクライヴ兄様が、「いや、お前は咄嗟に貴族言葉で言い返せないだけだ」と、苦笑交じりに教えてくれました。あれ?いつの間にかこっち見ていたオリヴァー兄様達が、うんうんと頷いている。ってかマテオ、呆れた顔でサムズアップしないでくれるかな?


それにしても、そうだったんだ!私、淑女として言い返そうと思っていたから後れをとっていたんだね!よーし!そうと分かれば、これからは私なりの言葉で戦っていきます!


「……人と場所を選べよ?それと、淑女としての努力を怠るな!」


あ、またクライヴ兄様ってば、私の心の中を読んで!!……はい。済みません、色々頑張ります!





「……えっと……。御免ね、エレノア」


「ううう……。く、串焼き……!」


今現在、私はオリヴァー兄様の膝に突っ伏し、シクシク泣いております。


何故かというと、見学を終えて港に戻る際、元来た道を戻るんだと思っていたら、馬車に乗って別の道から港に戻る事になってしまったからです。


理由はというと、「あんな臭くてうるさい通りをもう一回歩くなんて嫌!」と、キーラ様が盛大にごねたからだそうです。……くっ!


「……本当は、帰りに買ってやろうかと思っていたんだ。すまん」


「ごめん。本当にごめんね、エレノア」


「うううう~!!」


無念だ……!

いつか……いつか絶対、あの通りでブラブラと食い倒れ……したいなぁ……。



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真珠の魅力は、他の貴金属すべてと融合可能なところかと!そして支配人……違う意味で落ちましたねw

そしてエレノアは、直感直球で攻めた方が良い事が判明!串焼きはもうちょっとお預けとなりました。負けるなエレノア!

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