第418話 アルロ・ヴァンドーム公爵の過去
なんか予想外の事が色々起こったけれど、入学式自体は何とか厳かな雰囲気でスタートした。
ところで、今回のアルバ女子にとっての目玉商品ならぬ、極上の
だがしかし、彼は既にキーラ・ウェリントン侯爵令嬢の筆頭婚約者であるという事で、前年よりも御令嬢方の数は多くないらしい。
……皆、なんでそんなに素早く婚活情報を入手出来るんだろう……?
そんな事を思っていると、セドリックが種明かしをしてくれました。
なんでも婚約が本決まりしている令息や令嬢の情報は、余計な釣書避け&無駄骨防止の為に、暗黙の了解でわざと流すんだそうだ。
「まあ尤もここ数年が異常だっただけで、いつもはだいたいこんなもんらしいぞ?」
とは、なぜかちゃっかりリアムの隣の席を陣取っているマテオからの情報です。
ちなみに私は、セドリックとリアムに挟まれて座っています。
なんでも、異常なぐらい学院に通うご令嬢方が増えたのは、アシュル様が入学してからだそうだ。
そういえばアシュル様が入学された翌年には、オリヴァー兄様とクライヴ兄様が入学&編入したし、昨年はリアムが入学したもんね。
うん、そりゃあそんだけ極上の獲物がいれば、
さて。入学式も無事に終わり、新入生達は先生方から自分達が向かうクラスについて伝えられている。
そして例年よりも女子生徒が少ないからか、小さいレディーファスター達は、周囲の女生徒達に対し、まるで王女様に仕える臣下のごとく、丁寧かつ紳士的に接している。
『将来の選ばれしDNA達よ!頑張れ!!』
私は心の中でエールを送りながら、微笑ましい気持ちのまま、彼等を見つめた。……が、彼等は私の視線に気が付き、目を合わせるや慌てて顔を背けてしまう。
中には決死の表情で数秒視線を合わせる子達もいるんだけど、その殆どが泣きそうな表情になって顔を背けてしまう。
……あれれ?さっきのキーラ様達とのやり取り見ていたから、皆引いちゃってるのかな?
可愛い新入生達に距離置かれてしまうのは淋しいけど、入学早々トラブルには巻き込まれたくないよね。うん、仕方がない。
そんな中。
新入生女子達の中で、やはり群を抜いて人気なのがキーラ様である。
彼女は自分に話かける男子生徒を、例の小首コテンのあざとい笑顔で悩殺している。もう傍目でも分かるぐらい、キーラ様の周囲はハートとお花が飛び散っている。
……ううむ。あの年で、
ちなみにだけど、ヴァンドーム公爵令息はと言えば、キーラ様が男子生徒に取り囲まれ、チヤホヤされている姿を、例の無表情で見つめている。……そう、あくまで見つめているだけである。
「エレノア、どうした?」
「あ、クライヴ兄様。……いやその……。ヴァンドーム公爵令息って、本当にウェリントン侯爵令嬢の筆頭婚約者なのかなぁ?って思って」
「……確かにな。あれがオリヴァーだったら、あの群がっている連中、今頃髪が毛根ごと死滅させられてるぞ」
「毛根ごと!?さ、流石に毛根は残すと思うのですが……」
未来ある青少年が若ハゲなんて、哀れ過ぎる!
「本当に、そう思うか?あのオリヴァーだぞ?」
「……私が間違っていました」
うん。寧ろ灰にしないだけ、理性が働いていると言えるだろう。
『う~ん……。それにしてもあのキーラ様はともかく。ベティ君……いや、ヴァンドーム公爵令息の方は、以前オリヴァー兄様に聞いた事のある、筆頭婚約者についてのアレコレと全く当てはまらないんだよな……』
「ひょっとして、キーラ様とヴァンドーム公爵令息って、異父兄妹……だったりして」
そんな私の呟きを、リアムがすかさず拾った。
「いや、それはない。そもそもウェリントン侯爵令嬢だが、今の今まで社交界には一度も出てきていなかったから、あんな娘がいたのかって、正直ビックリしたしな」
「え?そうなの!?」
「ああ。まあ、貴族が娘を掌中の珠として、秘密に囲い込むのは珍しい事じゃないがな」
珍しくないんだ……。流石は愛が深く重いアルバ王国だ……。
「エレノア。何他人ごとみたいな顔してんだよ?お前も似たようなもんだろうが」
「え?……あっ!」
た、確かにそうでした。あ、クライヴ兄様が「その掌中の珠は、どっかの誰かさんが引きずり出しやがりましたがね……」って言いながらジト目になってる。リアムもすかさず目を逸らした!
「じゃあやっぱり、異父兄妹の可能性があるんじゃないのかな?」
「いや、絶対にない。そもそも現当主のアルロ・ヴァンドームは、超が付く程の愛妻家で、夫人以外の女には目もくれない事で有名だ」
おおっ!そうなんだ。ヴァンドーム公爵様、実は一途な男だったんだね。
「しかもその公爵夫人だが、貴族じゃなくて平民だ」
「え!?平民の人なの!?」
「ああ。父親に定められた婚約者を頑なに拒絶して愛を貫き、現公爵夫人を娶ったんだ。由緒正しき四大公爵家……今は三大公爵家だが、その一柱が……って、その当時は物凄く大騒ぎになったらしい。当然、父親の前ヴァンドーム公爵も反対したそうだしな。だが王家は、現ヴァンドーム公爵であるアルロ・ヴァンドームの想いを支持したんだ」
おおっ!公爵様、本当に一途な人だったんだね!見た感じ享楽主義者かと思っていたけど。人は見た目じゃ分からないな。
「まあ何だかんだ言って、女性はこの国の宝だ。身分云々は確かに障害ではあるが、当事者同士が愛し合っているんだから、いくら周囲が煩くても最終的には認めざるを得ない。前ヴァンドーム公爵も最初は渋っていたけど、孫を次々と五人も産んでくれたうえに、どうも夫人自身、とても可愛らしい方だったみたいでな。今では実の娘みたいに溺愛しているって話だ」
「へぇ~!」
成程。そんな大切な奥さんとの間に出来た子供を、理不尽な婚約破棄したんだから、例の海の白
「にしても、そんな大切な息子達の婚約者なんだから、もうちょっとまともなの選べよって言ってやりたいとこだな!特にあの五男の婚約者とか!」
あ、リアムの怒りが再燃した。
にしてもヴァンドーム公爵様。親や周囲に反対されても、相手が貴族ではなく平民であっても、己の愛を貫き認めさせ、ついでに誰の目にも触れないように大事に囲って守って愛して……って、まさにアルバ男の真骨頂とも言えるお人だ。
そして王家が支持したのって、間違いなくアリアさんの存在があったからだろうな。
……というか、なんかオリヴァー兄様を彷彿とさせるというか……。
違うのは、愛する女性に自分以外の男性を寄せ付けなかったって事かな?まあ、お相手の女性が平民なうえ、ご自身が三大公爵家の嫡男で、絶対的な権力があったから……ってのもあるんだろうけど。
「……なんかリアムの話を聞いていると、ヴァンドーム公爵様ってオリヴァー兄上と似ているよね。一途に一人の女性を猛愛するところとか、周囲に男を寄せ付けなかったところとか」
あっ!セドリックが私の考えてた事をズバッと口にした!そしてクライヴ兄様やリアム、更にはマテオもうんうん頷いている。
「多分だが、もしあいつとエレノアとの立場が逆だったら、エレノアもヴァンドーム公爵夫人と同じ末路を辿っていたかもしれねぇな……」
「ええ、危なかったですよね」
「ああ。絶対に、エレノアの存在自体を囲っていたよな。真面目に女神様に感謝だな」
……皆、オリヴァー兄様を欠片も信用してない。
でも実はちょっと、私もそう思ってしまいました。
オリヴァー兄様、ごめんね!
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