第410話 オリヴァー兄様の卒業式スタート!

「それにしても、凄ぇなアレ。ま、俺やアシュルの時も凄まじかったがな」


益々増えていく、おひねりマダム達やおひねり令嬢レディ達を見ながら、クライヴ兄様がドン引きした様子で呟いた。


「やっぱり、オリヴァー兄様有名人を一目でも見たい、熱狂的支持者ファンの方々はかなり多いんでしょうかね?」


「まあ、そうだな。『貴族の中の貴族』って謳われてんのは、伊達じゃねぇって事だ」


「尤も最近は『万年番狂い』の名前の方が有名だけどな」というクライヴ兄様の言葉を聞きながら、美形集団の中に在っても、他を圧倒する輝きを放つオリヴァー兄様を見つめる。


オリヴァー兄様は私の筆頭婚約者だから、たとえ秋波を送っても無駄だと思うんだけど……まあ、気持ちは分かるけどね。


あ、オリヴァー兄様がこちらに気が付いて、極上の笑顔を浮かべた。……くっ!こんなに距離があるっていうのに、殺傷能力が半端ない!


あっ、オリヴァー兄様の笑顔と言う名の破壊的攻撃を受け、あちこちから悲鳴と歓声があがった!……そしてその後はお約束のように、兄様の視線の先(つまり私)にギラリとした鋭い嫉妬の視線を向けてくる。うん、この様式美。全くもってブレませんね。


あ、でも私の横にいるセドリックとクライヴ兄様を見るや、鋭い視線がたちどころにトロンと甘ったるいものへと変わった。こちらもしっかり様式美。皆さん、なんて分かり易いんだ!


「クライヴ兄様もセドリックも、大人気だね!」


「ちっとも嬉しくねぇな」


「右に同じく」


二人とも、アルカイックスマイルを浮かべながらズバッと言い切った。流石です。こちらはこちらで、全くもってブレません!


ちなみにクライヴ兄様は、この日の為にと、私がベンさん達と一緒にせっせと育てた黒百合をベースにした大きな花束を持ってくれている。


ちなみにこの花束、オリヴァー兄様のリクエストで、クラスペディアとエキナセアが入っているのである。


オリヴァー兄様曰く、「エレノアのイメージの花だから」との事。……でもハッキリ言って、荘厳な黒百合とのミスマッチ感が半端ない。


ベンさんもやんわりと「オリヴァー様、これは少し……いや、かなり組み合わせ的にちょっと……」って、口を濁しながら意見したんだけど、オリヴァー兄様はアルカイックスマイルで、ベンさんの意見を一蹴した。


ならばと苦肉の策で、白ユリをクッション材代わりに入れた結果、なんとかまとまったんだけど、そこに至る迄の皆の並々ならぬ努力と苦労が光った作品となった。


クライヴ兄様は、「何で俺の色が……」と、露骨に顔を顰めていたんだけど、それは自分の色が使われるのが嫌だったとか、そういう訳ではなく、オリヴァー兄様にチクチク言われる事が嫌だったのだそうだ。

そう言えば、クライヴ兄様の卒業式にあげた花束は白百合オンリーで、黒百合は全然使われていなかったからなぁ。


にしても、クライヴ兄様と花束って、凄い絵面だよね。


なんてったって、執事服でビシッとキメたクライヴ兄様の、ストイックな美しさ+ゴージャスな花束ですよ!?

そんな凶悪な組み合わせを見れば、そりゃあ、ご婦人方やご令嬢方は見惚れちゃうよね。まあでも、二人とも私の大切な婚約者なので、皆さんには差し上げませんけどね!


そんなこんなしながら、私とセドリックは舞台(もう舞台でいいや)の最前列のど真ん中に陣取った。クライヴ兄様は従者として、列の端のところに立っている


ここは上位十名の家族が座る席。所謂VIP席である。

私とセドリックは、首席のオリヴァー兄様の家族という事で、この席な訳なんです。


……あれ?なんか舞台の上の人達の表情が、一斉に輝きを増した……?


「皆、エレノアが見ているから張り切ってるね」


――え?私ですか!?


「あれ?そういえばセドリックとリアム、次の生徒会の役員になる予定だったよね?」


だとしたら、なんで舞台に上がっていないのだろうか?


「あー、そうなんだけどね。……ほら、今は色々と複雑だし、クライヴ兄上は婚約者でも専従執事だからさ。こういう場所では傍にいられないだろう?リアムも王族としてやる事があるし。だから、生徒会に入るのは保留にさせて頂いているんだよ」


ああ、成程。要するに、学院にいる間、私と常に一緒にいられるのがセドリックしかいないから、生徒会入りは免除されているのか。


「こういう時こそ、あのミノムシがエレノアといてくれると良いんだけど……」


セドリックのぼやきに、私も頷きを返す。


「うん。ワーズ、流石にダンジョンこれ以上留守に出来ないって、帰っちゃったもんね」


そう。実は領地で帝国のゴタゴタが終わる迄の間、ワーズはイーサンの鳥籠に隔離されたまんまだったのだ。


帝国の『魔眼』がどう作用するか分からなかったのが、隔離していた要因だったんだけど、その後は隔離されていた鬱憤を晴らすかの如く、私の肩に乗って視察に付いて回っていた。


しかもそればかりか、視察先に行く度、そこの農作物(主に果物)を食い荒しまくり、結果、なんと新種の害虫指定をされてしまったのだ。


で、青筋立てたオリヴァー兄様に駆除されそうになって、『いと高き、至高の存在である私になんたる無礼をー!!』って喚いた後、上記の台詞を吐き捨て、ダンジョンへと逃亡してしまったのである。


それにしてもワーズ、果物食いまくって一回り以上でかくなっていたから、ダンジョンに帰ったらダイエットした方がいいような気がする。というか、どんだけ食いまくったんですか!全くもう!


「まあ、でも元々、オリヴァー兄上は『なんかの役には立つかな?』程度の軽い気持ちで連れて来たんであって、戦闘要員として期待していた訳じゃなかったらしいんだけどね。それでも牧場では、十分役に立ってくれたし」


聞けば、実はダンジョン妖精って、制限はちゃんとあるけど、ダンジョンの力をそのまま使える凄い存在なんだそうだ。……私にしてみれば、果物大好きなただの食いしん坊なんだけどね。


「エレノア、そろそろ始まりそうだよ」


言われて見てみれば、舞台が整えられ、オリヴァー兄様を含めた今年の上位十名が、舞台に設置された椅子に腰かけている。


おおぅ!!オリヴァー兄様を筆頭に、なんという眩し過ぎる軍団なんだ!?全くもってけしからん!真面目にサングラスが欲しいところです。


そして、学院長様や、王族を含めた来賓の方々が、上位十名者の対面に設置された椅子に次々と着席する。

互いにパイプ椅子じゃなく、革張りの椅子ってところが貴族学院ならではだよね。


今回、王家からやって来たのは……あっ!デーヴィス王弟殿下!ひょっとしなくても、いざという時の戦闘要員としていらっしゃいましたね!?


うひゃっ!目が合うなり、ウィンクぶちかますの止めて下さい!心臓に悪いです!!ついでに周囲の押さえてもいない黄色い悲鳴が耳に痛いです!!


「ご来賓の皆様方。本日はこのアルバ王国の未来を担う若者達の晴れの門出に起こし下さり、学院を代表しまして、心より感謝申し上げます」


老年になっても、その荘厳さと美しさは衰える事がない、超絶ダンディーな学院長様が、来賓の方々に向けてご挨拶する。


それに対し、ご来賓の方々が、椅子に着席している状態ながら、深々と挨拶を返した。


実は何を隠そう、学院長様って、国王陛下や王弟殿下方の叔父様にあたる方なんだよね。


昔から教育熱心な方で、王弟であった時から一教員として学院で教鞭をとっていたという変わり者だったそうで、王族の中で唯一、ご結婚されていらしゃらないんだそうだ。


「学院長様、ひょっとして第三勢力ですか!?」と、アシュル様に聞いてみたところ、「いや。単純に学問以外に興味が無かっただけだよ」と返事を返されました。あ、そうなんですか。

後で「お前はー!全てのものを腐った色眼鏡で見るな!!」って、クライヴ兄様に頭を鷲掴みされてしまいました。……痛かった。


「それでは、本日この学院を旅立つ皆様に向け、祝辞を述べさせて頂きます」


その瞬間、大聖堂の中は水を打ったような静寂に包まれた。


さあ、いよいよ卒業式が始まる。



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クラスペディアとエキナセアは、見た目の愛らしさもさることながら、花言葉もとても素敵ですv

オリヴァー兄様も、花言葉がとても気に入っての暴挙であると推測します(^O^)

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