第409話 オリヴァー兄様の卒業式

バッシュ公爵家王都邸に戻ってからは、フィン様が度々ディーさんやリアムと共にバッシュ公爵邸に転移してきて、最終的に出禁になっちゃったりとか、全く手を付けていなかった、マロウ先生からの課題に必死に取り組んだりとか(結局半分も終わらなかった)色々と濃い日々を過ごしていました。


そうして遂に長期休暇期間が終わり、本日はオリヴァー兄様の卒業式です!


勿論、オリヴァー兄様は首席で卒業!妹としても、婚約者としても鼻が高いです!流石はオリヴァー兄様!!


卒業式では生徒会長として、卒業する生徒を代表してのご挨拶と、新生徒会長のカミール様への引継ぎのご挨拶をするのだそうだ。


前回のクライヴ兄様の卒業式は、私の顏バレを防ぐ為に身内として参加出来なかったから、今回は私、気合を入れます!


帝国の件があるから、あまりそういった場所に出て欲しくなさそうなオリヴァー兄様も、流石に卒業式に私が参加する事は止めなかった。


クライヴ兄様曰く、「上位十名として、愛する女にその雄姿を見せ付ける事こそ、アルバ男にとっての最高の誉れ」なんだそうです。


成程……。分かりました、オリヴァー兄様。私、頑張ります!最前席に陣取るおひねりマダム達には絶対に負けません!!


「……ところでだ、エレノア。お前が言うところの『おひねりまだむ』って何なんだ?」


しまった!どうやら、ついうっかり口に出してしまったらしい。


微妙にジト目のクライヴ兄様に、「いえ、たいしたものでは……」と誤魔化そうとしたんだけど、「何の話をしているの?」と、にこやかに参戦したオリヴァー兄様によって、結局全てを吐かされてしまいました。


その結果、「お前(君)の思考回路、どうなってるんだー!!?」と、久々に二人……いや、真っ赤な顔したセドリックも参戦し、三人がかりで説教され、真面目に足が死にました。


しかもタイミング悪く、出禁を言い渡されたにもかかわらず遊びにやって来た、ディーさん、フィン様、リアムにも、『おひねりマダム』の真実を知られ、大爆笑されるという黒歴史を刻んでしまいました。


うう……。か、悲しくなんてないもん!!





◇◇◇◇





「オリヴァー兄様……くっ!……物凄く素敵です!!」


「うん、有難うエレノア。……でも何で呻き声?それと出来たら、僕の目を見て今の言葉を言って欲しいんだけど?」


「そんなの無理です!」


「言い切った……」


だって、だって!クライヴ兄様の貴族の正装も、目が溶けるかと思わんばかりのカッコ良さだったんだけど、オリヴァー兄様の今の正装は、ハッキリ言って目潰しなんてレベルではないんですよ!!


艶やかな漆黒の瞳と髪の色に合わせ、黒を基調とした貴族の礼装をお召しのオリヴァー兄様。


銀や黒曜石をふんだんに装飾品として使用し、私の色である、鮮やかなインペリアルトパーズをマント止めとして身に付けているんだけど……。その装飾品に勝るとも劣らない宝石は、やっぱりオリヴァー兄様ご自身ですね!本当に、放つ輝きが半端ないです!


まさにアンデットすら、その輝きで浄化させてしまわんばかりの壮絶な美しさを放っている。間違って私も浄化され、共に天に召されてしまいそうだ。


「ふふ……まったく。エレノアは本当に、いつも通りだね」


そんな風に楽しそうに笑いながら、オリヴァー兄様は真っ赤になって顔を背ける私を優しく抱き締めると、躊躇する事無く口付けた。


その瞬間、パーン……と、頭のどこかがクラッカーのように弾けた。……そして久し振りに、私の鼻腔内毛細血管も一緒に弾けました。


「えっ!?うわっ!エレノア!?」


「お。お嬢様ー!!」


「エレノア!!しっかりしろ!!」


「オリヴァー兄上!!やり過ぎです!!」


「えっ!?僕の所為!?」


……なんて、久々に皆がパニック状態になってしまったが、私は寧ろ、オリヴァー兄様のお召し物が気になって仕方がありません!


「僕の衣装なら大丈夫だったから、安心してエレノア。それにたとえ被弾しても、そもそも黑だから目立たないし」


いや、そもそも晴れの門出なのに、妹の鼻血塗れって縁起が悪すぎでしょう!?


「エレノアだったら構わない」


オリヴァー兄様。曇りなきまなこで断言して下さって有難う御座います。でもそこは絶対に構いましょう!


ちなみにですが、私はしっかり被弾してしまい、制服を着替える羽目となってしまいました。


あ、卒業式に参加する在院生は、全員制服なんです。でも当然と言うか、学院に通っていない人達は私服なので、おひねりマダム……いや、招待される貴族の婦女子や、家族枠として参加するご令嬢方なんかは、物凄くドレスアップしてくる。なので、会場はとても華やからしい。


まあ、上位十名だけでなく、卒業する先輩方は、肉食女子ハンター達の恰好の獲物だろうから、気合入るよね。そりゃあお洒落武装もバッチリでしょう!


かくいう私もオリヴァー兄様の雄姿、しっかり目に焼き付けます!





◇◇◇◇





「うわぁ……。凄い熱気だねー!」


「うん。なんか皆、凄く気合入ってるっぽいよね」


「おい、エレノア!あんまりキョロキョロすんなよ?それと、絶対俺達から離れるんじゃねぇぞ!?」


「はーい!」


私は在院生や卒業生、そしてその家族や学院関係者達がゾロゾロと移動していく中に、セドリックとクライヴ兄様にガードされながら混ざりつつ、卒業式が行われる大聖堂へと足を踏み入れた。


するとそこには既に、卒業する先輩方や、招待された外部の方々や卒業生、在院生の家族達(なんで?)、そして私達在院生が沢山集まっていた。


想像通りというか、着飾った貴族のご婦人方や、それに連れられた令嬢方がごったがえしている。その気合の入りよう、めっちゃ半端ない。


……実はあのご令嬢方の中には、以前王立学院に通っていた女子生徒達も沢山いるのだそうだ。


彼女らが学院に通う最大の理由は男漁りハンティングな為、卒業するまで在学する女子生徒はいないんだって。まあ、卒業したら男漁りハンティングもへったくれもないしね。


「お前の言うところの、『おひねりマダム』予備軍ってやつだな」


……クライヴ兄様……。この間、あんだけ私を叱りまくったのに、何気にその名称、気に入ってませんか?


『う~ん……。にしても、皆あからさまだなぁ……』


見れば誰もが、女神様と聖女様をモチーフにした大ステンドグラスをバックに、美しくかつ荘厳に飾りつけられた舞台……いや壇上で色々と打ち合わせをしている、新旧生徒会役員達を、頬を染めつつ、熱い眼差しで見つめているのだ。


……ハッキリ言おう。


生徒会役員になる者達は、オリヴァー兄様も含め、ほぼ全てが上位十名に名を連ねている。つまりはDNAの頂点に限りなく近い、超エリート軍団なのだ。そりゃあ、彼女らハンター達にとって、彼等は間違いなく垂涎の的だろう。


けれど待って欲しい。


すでに舞台……じゃなくて壇上の周囲に鼻息荒く陣取っているご婦人方とご令嬢方。流石に視覚的にもヤバイです。


「まだ本番じゃないですよー?」って、誰か言ってあげた方がいいのではないでしょうかね?


「……お前に『おひねりマダム』のなんたるかを聞いた時は、お前の前世、真面目にヤバイと思ったもんだが、アレを見てると、こっちもさほど変わらねぇって思うよな……」


あっ!クライヴ兄様の目が、死んだ魚のようになってる!!


「と言うか、彼女らの配偶者や婚約者達も大概だけどね」


んん?彼女らの配偶者や婚約者達がなんですと?


セドリックに言われて、彼女らから少しだけ距離を置いて立っている男性陣達に視線を向けてみる。

すると何故か、バッチリと目が合ってしまった。


皆、慌てて視線を逸らす。けれども何故か、その誰もが顔を赤くしていた。……ひょっとして、配偶者や婚約者達の熱気に充てられたのだろうか?


「いや、充てられたのは、熱気とかじゃ……」


「言うな、セドリック。気が付かないならその方がいい」


「あ、そうでしたね」


え?何に気が付かない方がいいと?


けれどその後、どんなに尋ねても、二人はその事について絶対に教えてくれなかった。

う~ん……。気になるなぁ。



===================



遂に、『おひねりマダム』の真実が明らかに……!!Σ(゜Д゜)

気になるのは、ブーメランパンツのダンサーについて、エレノアがゲロったかどうかです(;゜д゜)ゴクリ…

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