第408話 王都に帰ってきました!
バッシュ公爵領から王都まで帰って来て……いや、帰る前からいつも通り、色々とありました。
まずは皆で王宮に移動……する前に、イーサンがまたまた滂沱の涙を流し、私との別れを惜しんで一緒に王都迄ついて来ようとしたのを、アイザック父様と共に、ご存じ『金色夜叉』の貫一とお宮のようなやり取りをギャンギャンしていました。
……まあ、
んで最後には全員揃って「いー加減にしろ!!」とブチ切れ、フィン様がイーサンを振り切る形で私達を転移させてくれました。ごめんねイーサン、絶対にまた来るからね!
ここまででおよそ、一時間のロス。
お陰様で王宮に到着した時は、お出迎えと称して待ち構えていたディーさん、リアム、マテオ、そしてアリアさんや国王陛下、王弟方に「何があった!?」「心配したぞ!!」「エレノアちゃん、またトラブル!?」「よく帰って来た、娘よ!」……等言われながら、わっちゃわっちゃと揉みくちゃにされてしまいました。(何気に「まだ、あんたらの娘じゃないから!」って怒鳴り声が聞こえていたような……?)
その後は、「心身を癒す為にも、何日か滞在していけ」と勧める国王陛下方からの労わりのお言葉を、不敬にサクッとスルーしたオリヴァー兄様とクライヴ兄様に抱えられ、速やかに離宮のマリア母様とパト姉様にご挨拶しに行きました。
「エレノア―!!全くもう!何であんたはこう、毎度毎度親に心配かけるのよ!!」
そう言って、私をギュウギュウ抱き締めてくれた母様のお腹、少しだけふっくらしていて、私の妹か弟が順調に成長しているんだなって、凄く嬉しくなった。
そこで、何故か母様付きの侍女となっていたリス獣人のノラさんと再会し、なんと、まさかの妊娠報告を受けました!
お相手は、グラント父様の部下の騎士さん二人のどっちか(確か、ジルさんとグレイさん……だったか?)
二人ともノラさんの妊娠を知るや、狂喜乱舞していたそうな。で、「夫はもう要らないよね?」って事で、子供が出てきたら正式に結婚して、親子四人で暮らすんだって。う~ん、囲い込み完了ってヤツですね。
で、出産時期が母様と被るらしくて、「丁度良いから、私の子の乳母になってちょうだい!」と、母様がノラさんをスカウトしたんだそうだ。
あ、ちなみに獣人あるあるで、草食獣人は人族よりも妊娠期間が短いんだそうで、ノラさんの妊娠期間も、だいたい六~七か月なんだそうです。
「私は生まれて来る子の母にはなれても、流石に母乳は出せないからね。どうしようかなって思っていたから、本当に良かったよ」
……とは、パト姉様のお言葉です。
というか姉様!母乳出せたら一大事ですよ!?
う~ん……。それにしても、ミアさんが「全くあの子は……」って言っていたのって、この事だったんだ。
でもね、ミアさん。ノラさんは全然悪くないよ。悪いのはアルバ男の方です!
なんてったって、彼らは紳士な仮面をかぶった肉食獣。そんな彼らに、か弱い草食獣であるノラさんが、抗う事など出来ようはずがない!
ミアさんだって、
でもまあ、なにはともかくめでたい!!
ノラさん、元気なチビケモっ子を産んでね!そして絶対に抱かせてね!約束だよ!?
そして母様達に挨拶が終わった後は、兄様方とセドリックと一緒に、バッシュ公爵家王都邸にGO!
到着した途端、待ち構えていたジョゼフと、何故かベンさんにぎゅむぎゅむと抱き締められ、使用人一同からは大号泣され、私の涙腺も見事に崩壊。
改めて、無事に王都邸に帰って来られたんだなぁ……と、凄くホッとしたし、とても幸せな気分になった。
「ところでエレノアお嬢様!あの馬鹿甥に、何かされませんでしたか!?」
ひとしきり、皆と感動の再会を果たした後、物凄い鬼気迫る表情でジョゼフに告げられた言葉がこれです。
「大丈夫だよジョゼフ!イーサン、凄く優しかったよ?」
「お嬢様……なんとお優しいお言葉を!……ですが、私に遠慮は不要です。あやつの事です。きっと何かしら暴走した筈!!さあ、何をされたのか、私に打ち明けて下さい!内容次第では、今すぐあやつの息の根を止めに行く所存!!」
「やめてー!!本当にイーサン、何もしてないから!!」
その後、必死にイーサンがいかに私に良くしてくれたのかを切々と語ったんだけど、ジョゼフ……微妙に信用していなかった。
イーサン、実の伯父にこんだけ信用されていないって、一体過去に何をやらかしちゃったの!?
「……ジョゼフ。これは?」
「バッシュ公爵家と懇意にしている貴族家や、王宮関係者やお嬢様のご学友の方々からのお見舞いの品々で御座います」
サロンに移動すると、そこには様々な品々が所狭しと積み上げられていました。
そして一緒に送られてきた手紙には、私が帝国の襲撃によって、デビュタントを台無しにされた事に対する遺憾の意と激励、そしてデビュタントを台無しにされたにもかかわらず、我が身を挺して聖女様を守り、戦った事に対する称賛が綴られているのだという。
ちなみにジョゼフは当主権限により、内容を検める事を許可されているんだって。う~ん、流石だ!
……ん?あれ?いやいや、ちょっと待って!!
我が身を挺して戦ってくれたのは、私以外の人達なんですけど!?何でいつの間に、私が先陣切って戦った事になってるんですか!!誰だ!?そんなデマ流したのは!!
「多分、王家だろうね」
サラッと告げられた犯人の正体に、ガックリと脱力する。
オリヴァー兄様達曰く、今回の事で、私を『聖女』にして殿下方と婚約させる……という計画が大幅に狂ったうえに、私と殿下方の婚約を良く思わない貴族達が、今回の一件をバッシュ公爵家の落ち度として突いてくるだろうとの事。
「ならばと、エレノアの『姫騎士』としてのイメージを爆上げさせようとしたんだろうね」……だそうです。
「ちなみにジョゼフ。
「はい。全てより分け、オリヴァー様の執務机の上に置いて御座います」
「ご苦労だった。早速僕から丁寧に返信するとしようか」
――え?燃やしたくなる手紙?
「兄様……それって、ひょっとして……今回の件に対しての、抗議文なんでしょうか?」
多分内容は間違いなく、聖女様をバッシュ公爵家の騎士が襲撃してしまった事への非難と抗議に違いない。
いくら『魔眼』に操られていたとしても、アルバ王国の国母であり、唯一無二の『聖女』を襲撃するなど、たとえ
――だが。
「う~ん……。まあ、似て非なるものというか……。確かにそれに関連付いた内容ではあるんだけどね。……まあ、あまりにもくだらなさ過ぎるから、エレノアは全くもって気にしなくてもいい。言うなれば、愚者の戯言だから」
「は、はあ……?」
首を傾げる私に対し、クライヴ兄様がこっそりと「後で教えてやるから」と耳打ちしてくれる。
「まあ、侯爵家が多数いるようだから、なるべく穏便に返事を書かなきゃだけど……全く。今年は卒業だってのに、こんなのの相手をしている暇は無いんだけどなぁ」
憂鬱そうに、そうぼやくオリヴァー兄様のお言葉に、私はハッとした。
そうだった……。オリヴァー兄様は学院を卒業しちゃうんだ……。
「なんか、寂しいです……」
思わずポツリと呟いた瞬間、私の身体はオリヴァー兄様に抱き締められていた。ってか兄様、なんて物凄い早業!
「エレノア、僕も君を残して卒業するのが心残りで仕方がないよ!!クライヴやセドリックがいるし、リアム殿下もいるとはいえ……。いっそ卒業するのをやめて、留年しちゃおうかな?」
「もう!オリヴァー兄様ったら、冗談ばっかり……」
――……いや、冗談じゃない。この顔はマジだ!
「オ、オリヴァー兄様の晴れの日を、婚約者としてお祝い出来なくなるのは……嫌です」
「そう?じゃあ卒業するよ」
あっさり即答するオリヴァー兄様の、曇りなき眼に笑顔が引き攣る。
ついでに、クライヴ兄様とセドリックだけでなく、ジョゼフ達までもが笑顔を引き攣らせていた。
と、とにかくだ!オリヴァー兄様が道を踏み外す事は阻止出来たぞ!……良かった……本当に良かった……!!
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イーサンの過去のやらかしの一端が、ジョゼフを通じて少しだけ見えてきたエレノアでした(´艸`*)
そしてアルバ男の最終形態と称されている兄様は、やはりブレませんでしたw
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