第354話 【閑話】エレノアお嬢様を作ろう!
【ライト家SIDE】
「父さん」
「なんだ、愚息よ」
「俺、考えたんだけど……。この集積市場をリニューアルするんだったら、そのアイデアを我々にお与え下さったエレノアお嬢様を称える何かを作るべきだと思うんだよ!」
「ほぅ……。で?何を作ろうというのだ?」
「そりゃー勿論!巨大な銅像!しかも姫騎士バージョンで!!」
「……許可出来んな」
「なんで!?」
「王都に姫騎士仕様のお嬢様の銅像が建つのは良い。だが、集積市場と姫騎士はミスマッチだ……。愚息よ。物事にはテーマ。……すなわち、『物語』が重要なのだ。……分かるか?」
「――ハッ……!た、確かに……。姫騎士は野菜や果物を作らないし売らない……!!」
「理解したようだな。ゆえに、銅像を建てるのならば、この集積市場に相応しいエレノアお嬢様を表現しなくてはならないのだ!それこそ、王都の銅像なんぞに負けない、ここだけでしか見られないお嬢様をだ!!」
「こ、ここでしか見られない……お嬢様……!?(ゴクリ)そ、それって……最高じゃん!!」
「ふっ……。そうと決まったら、幹部会招集だ!!テーマは『豊穣の女神』でいくぞ!!」
「と、父さん……天才か!?」
――この後、イケオジ軍団+愚息君とで、白熱した議論が夜を徹して繰り広げられた。
その数ヵ月後。集積市場の入り口には、超ビックで黄金で、あらゆる食材の詰まった籠を両手に抱えた、女神仕様のエレノア像が建設され、集積市場のシンボル兼、観光の目玉となったそうな。
【オーブリーちゃんの村SIDE】
「父さん、聞いた!?集積市場では新たなシンボルとして、エレノアお嬢様の銅像を作るつもりなんだそうよ!」
「何だって!?それは本当か、オーブリー!?」
「うん、間違いないわ!今日、ジャンさんと一緒に市場に行った時、取引先から聞いたもん!」
「なんと……。そんな計画が……」
「ねえ、父さん。私達もバッシュ公爵家の領民として、エレノアお嬢様への敬愛の気持ちを形にするべきだと思うのよ!」
「確かにそうだな。エレノアお嬢様はこの村の為にと、あのような素晴らしい技法を授けて下さったのだ。我々がいかにエレノアお嬢様に感謝申し上げているのかを、具体的に示す為にも、農村地帯ならではのエレノアお嬢様の銅像を作るべきかもしれん」
「そうよ!エレノアお嬢様もきっと、私達の感謝を込めたそれを見て、喜ばれると思うわ!エレノアお嬢様の像だから……『恵みと癒しの女神』仕様なんてどうかしら!?」
「す、素晴らしい!エレノアお嬢様を表現するに相応しいテーマだ!流石は私の娘!!よし、そうと決まれば、近隣の村々にも声をかけ、有志を募らなくては!!」
「ええ!最高のエレノアお嬢様をお作りしましょう!!」
――後に、エプロン姿でチビケモっ子達と戯れている、白亜のエレノア像が各村々に建設される事となるのだった。
【牧場SIDE】
「牧場主さーん!」
「なんです?どうかしましたか?獣人の皆さん」
「小耳に挟んだのですが、どうやら集積市場と、野菜&果物農家の村々で、エレノアお嬢様の銅像を作る計画があるみたいなんです!」
「な、何ですって!?……それは……聞き捨てなりませんね!」
「「「「「牧場主さん!」」」」」
「ええ!バッシュ公爵家直轄牧場を預かる我々が遅れを取る訳にはまいりません!何より精霊を呼び出され、我らを魔獣からお救い下さったお嬢様は、我がバッシュ公爵領の女神であらせられます!……皆さん、やりますよ!我々の手で、最高のエレノアお嬢様をお作りするのです!!」
「わかりました!」
「私達も、全力でお手伝い致します!!」
「どこよりも愛らしいエレノアお嬢様を!!」
「勝利を我々の手に!!」
「「「「「おおーっ!!」」」」
「……ところで牧場主さん、銅像のエレノアお嬢様のお召し物はどうしましょう?」
「ふっ……。それはもう、考えてあります」
「おおっ!」
「この僅かな時間で!」
「それで、どのようなお召し物に!?」
「それは勿論、こちらでエレノアお嬢様がお召しになった『あれ』しかありません!」
「あ、『あれ』……ですか!?」
「そうです!あのお召し物は多分、この牧場でしか身に着けておられない筈!いわば、レアケースのここだけバージョン!そしてコンセプトはズバリ!『牧場の女神』です!」
「「「「「おおおおー!!」」」」」
――……後日、牧場の入り口に、つなぎを着たエレノアと、エレノアと戯れる、羊と山羊と馬と牛のでっかい木彫りが鎮座する事となったという事である。
「……あれ?な、なんか悪寒が……?」
「エレノア!?」
「エレノアお嬢様!お風邪ですか!?」
「デビュタントまで日にちがねぇんだから、今日は一日寝てろ!」
「はーい」
イーサンの元に、各地域から『エレノアお嬢様の銅像設立に関する計画書』が届くまで、あともう少し。
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当然、笑顔で了解のサインを入れるイーサンでした。
ええ、ノリです(^^)
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