第353話 そうだ!
あの後、殿下方や兄様達は、アリアさんに「あんたら、いい加減にしなさーい!!」と喝を入れられ、大人しくなりました。
ちなみに私はというと、「また争いになったら面倒だから!」との事で、アリアさんと仲良くソファーに座ってお茶しています。
ああ……落ち着く。まさに、岸に流れ着いた木っ端な気分。
う~ん。それにしても、婚約者達から向けられるジト目がチクチク刺さるな。オリヴァー兄様なんか、明らかに「こっちにおいで」って目で訴えている。
……でもごめん、兄様!私、今現在ライフがゼロなんです!引き潮に連れられて、再び荒波に飲まれたら、今度こそ海底に沈んで海の藻屑になりかねない。
と言う訳で、兄様の視線は綺麗さっぱり、スルーさせて頂きます!
「そういえばオリヴァー。僕達が来るまでの間、面白い事を相談していたようじゃないか?」
アシュル様のお言葉に、オリヴァー兄様が小さく舌打ちした。えっと……面白い事って……ひょっとして、デビュタントの事?
「しかも『かの国』の白は、『貴方の色に染まります』……って意味があるんだって?……いいよね。うん、実にいい!……」
そこで初めて、アシュル様のアクアマリンブルーの瞳にギラリとした何かが灯った。
「オリヴァー。僕達も君達と同等……とまでは望まないけど、エレノアの彩りに、もうちょっと多く参戦させてもらいたいんだけど?」
ア、アシュル様ー!貴方もですかっ!!
アシュル様の言葉に呼応するかのように、アリア様とミアさんを除いた全ての人達の雰囲気もガラリと変わった。
そして案の定というか、アシュル様のお言葉を受け、ピクリ……と、オリヴァー兄様の眉が吊り上がる。兄様、落ち着いて下さい!!
それにしても、ウィルや近衛騎士様方は、「男の夢!」とばかりな興奮顔なんだけど、兄様達や殿下方は……うん。ギラギラって感じで、正直ちょっと恐い。
……ん?ってか、ちょっと待って!何でここに到着したばかりのアシュル様が、それ知ってんですか!?あっ!ひ、ひょっとして王宮の『影』がチクったんですか!?そうなんですね!?なんて事を……!責任者出てこーい!!
って、あれ?ヒューさんが涼しい顔してディーさんの傍らに控えてるよ。え?貴方、いつの間にここに来たんですか!?
「……アシュル殿下。先程ディラン殿下方にも申し上げましたが、貴方がたはエレノアと相愛になったとはいえ、世間一般的には正式な婚約者ではありません。で・す・の・で!エレノア(のドレス)を、貴方がたの「色」で染めるのは、ご遠慮ください!」
おおう……。オリヴァー兄様。「てめーらの色に染めさせてたまるか!」って副音声が聞こえましたよ!?……って、ああっ!ピクリ……と、アシュル様の片眉が上がり、顔半分に影がかかったー!!
「君の方こそ、何を言っているのかな?いくら筆頭婚約者とはいえ、越権が過ぎるんじゃないのかなぁ?」
な、何故かアシュル様からも「ほぉ……?随分と舐めた口をきくじゃないか。〆んぞてめぇ!」って副音声が聞こえてくるんですが!?
「だが、俺達の色を入れるのを、エレノア自身が望んだとすれば可能だろう?」
二人が言い合っている間に割り入ったのは、疑問も含めたリアムの言葉だった。だけどその言葉に、セドリックが眉根を寄せる。
「ちょっと待ってよ。それって暗に、エレノアに自分達の色を入れる事を強要していない?」
セ、セドリック!いくら親友でも、貴方も割と不敬気味!
「失礼だな、セドリック!別に強制とかじゃないぞ!?ただ俺は、エレノアに俺の色も纏ってもらいたいだけだ!」
リ、リアム……。流石はアオハルな男の子!直球だよね。(ちょっと照れる)
「そうだぞ!俺だって、エルを俺達の色に染めたい!」
デ、ディーさん。貴方はそのものズバッと直球過ぎです!
「はぁ!?ふざけないで下さいよディラン殿下!あんた、オリヴァーの言葉を聞いてなかったのかよ!?それに、全然色を使わない訳じゃねぇんだから、今回はそれで我慢しろ!」
ク、クライヴ兄様ー!口調!めっちゃ砕けて管巻いてます!不敬すぎー!!
「そうですよ、ディラン殿下。それに貴方の色なら、可愛いキイチゴとか小さな薔薇の蕾とか、色々使い勝手はいいですしね。アシュル殿下の色だと、雄しべの花粉くらいしか使い様がありません」
「いい度胸だオリヴァー!今すぐ演習場まで付き合ってもらおうか!!」
アシュル様!地が出てます!!そしてオリヴァー兄様、雄しべの花粉って一体!?
流石の不敬発言の数々に、近衛騎士様達が殺気立っている……って、あれ?なんか彼らの視線、兄様達だけじゃなくてアシュル様達にも向けられているような気が……?
そんな中、フィン様だけが何も言わずに、涼しい顔して皆の言い合いを見学していた。
何でかな?って思って聞いてみたら、「ちょっと不本意だけど、僕のカラーって、あの万年番狂いの色と同じだから」……だそうです。成程?
あ、オリヴァー兄様が「一緒にするな!!そもそも貴方の色は緑でしょうが!!」ってブチ切れてる。あ、ヒューさんまでもが「そういえば、私も同じ色でしたね」って挑発してるよ!何で!?あああっ!オリヴァー兄様の目の色が真っ赤ー!!
「……皆様」
そんなカオスな状況の中。
地を這うような冷え冷えとしたオーラを纏ったイーサンが、こめかみにビキビキと青筋を立て、眼鏡のフレームを指クイしながら歩み出た。
「この度のお披露目は、エレノアお嬢様の『デビュタント』で御座います。……決して、貴方がたとの結婚式では御座いません!……黒でも青でも赤でも茶色でも構いませんが、何度でも申し上げます。主役はエレノアお嬢様で御座いますので、そこの所、お忘れなきよう!!」
「この色ボケたクソガキ共!少し落ち着けや!」……という副音声を、執事言葉でオブラートに包んだイーサンの言葉に、兄様方やセドリック、そして殿下方は一斉に「あ……」と我に返ったようにスンとしてしまった。イ、イーサン。強いな!
「有難う、イーサン。私が怒鳴らずに済んで助かったわ!」
「いえ。家令の嗜みに御座います」
アリアさんが頭痛いって感じに額に手を当てながら、イーサンにお礼を言うと、イーサンが再び眼鏡のフレームを指クイした。しかもちょっとドヤ顔だ!
――閑話休題。
「御免ね、エレノア。君の言ったあの言葉の威力が凄まじくて、つい理性が……」
「僕達とした事が……。うっかり我を忘れて醜態を晒してしまったね。恥ずかしい限りだよ」
「は……はは……」
あの後、我に返った兄様達と殿下達は、「取り敢えずお茶飲んで落ち着こうか」となり、急遽ブレイクタイムに突入。
その後、皆を代表して、オリヴァー兄様とアシュル様が恥ずかしそうに反省の弁を述べております。
「だけど、まさかアシュル殿下があそこまで熱くなるとは思わなかったよ」
「言ってやるなオリヴァー。あいつにとっては、遅くにやって来た初恋だからな。そりゃー拗らせもするだろ」
オリヴァー兄様!クライヴ兄様!ヒソヒソ話の声が大きい!ほらー!アシュル様が笑顔で青筋たててる!お願いだから声潜めて!!
……でもまあ、皆ばかりを責められないよね。
不用意な発言で、アルバ男の地雷を踏み抜いたのって私だからなぁ……。
あっ!アリアさんも、なんとも言えない眼差しを私に向けている。はい、済みません。反省しております!
そう言う訳で、私の迂闊発言で脱線してしまっていたドレスの話に再び戻り、話し合いがスタート。
ちなみにドレスの色は、私も皆も「白」一択で意見が一致した。
これについては、私は純粋に「デビュタント=白」のイメージだったからだけど、兄様達や殿下方は、やはり例の「白=貴方の色に染まります」が尾を引いているもよう。
で、ドレスに宝石を使って、彩を付ける事となりました。
勿論、兄様方やセドリックの色がメイン。殿下方の色も、控えめに入れるって事で、互いに納得してくれました。
「う~ん、でもねぇ……。確かに私としては、息子達の色も入れたいんだけど、オリヴァー君の言う通り憶測を招くかもだし……。それにやっぱり、あんまりカラフル過ぎなのもねぇ……」
そう悩まし気に口にするアリアさん。というよりアリアさん、カラフル過ぎるって所に力が入っていますね。やはりこれは、『ウェディングドレスおかわり×4』がトラウマなのだろうか?
確かに。髪飾やアクセサリーを花の意匠にすれば、色々な色を使えるけど、メイデン母様達がばらまいている『噂』で、余計な憶測を招いてしまうかもだし……。
だからといって、兄様方やセドリックの色だけを強調しちゃうと、殿下方が悲しむ……どうしたらいいかなぁ?
皆の色を使って、なおかつ憶測を招かない意匠……。
「ん?」
そこで私はふと閃いた。そうだよ!あるじゃないか!全てを解決出来る方法が!!
「あのっ!済みません。私の意見を言っても宜しいでしょうか?」
その場の全員の視線が、私へと集中した。
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カオスな現場からこんにちは!……という感じでしたね(^O^)
さてさて。最後、エレノアが考えたものとは?
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