第161話 セドリックのお願いとお誕生日⑤

「あらっ!ここも凄く素敵じゃない!!クロス伯爵家の温泉を思い出すわねー!」


いきなり高いテンションで颯爽と浴場に入って来たのは、バスタオル一枚を身体に巻き付けたマリア母様だった。


突然の乱入に、思わず固まってしまった私や兄様方、そしてセドリックを目にした母様は、満足気に微笑んだ。


「うん、しっかり仲良くやっているようじゃない!心配だったから覗きに来ちゃったのよね。あ、大丈夫よ?ちょっと入ったらすぐ出るから!」


母様の言葉に、思わず真っ赤になってしまう。そ、そうだよね、この状況…。どう見たってお風呂で男女がイチャついているようにしか見えないよね。


…ってか!それを親に見られるって、どんな羞恥プレイ!?母様!心配を理由に出歯亀止めて下さい!

…ま、まあ…。ピンク色の空気、霧散して助かったけど…。


「マリア!!…ああ、御免ねみんな!ほらっ、迷惑だから上がろうよ!」


慌てて入って来たのは、アイザック父様だ。


アイザック父様は母様と同じく、バスタオルを腰に巻き付けている。…が、先程の兄様方やセドリックの様に、Vラインがチラ見出来る様な巻き方ではなく、普通の巻き方である。

流石は父様。なんかめっちゃホッとしてしまった。


「何よアイザック!母親として、娘がちゃんと婚約者と仲良く出来るか心配するのは当たり前でしょ!?もしまた不甲斐ない事していたら、ちゃんと正してあげなきゃいけないし!」


母様。不甲斐ないってどういう…?しかもどうやって正すと!?


「…母上。それは僕達がする事ですので、公爵様の仰る通り、もう出て行ってくれませんか?」


オリヴァー兄様が指で額を抑えながら、脱力気味に言い放つ。

先程までの、妖しいしっとりとした雰囲気が、母様の乱入によって見事に霧散してしまい、どうやら怒りを抑えているご様子。


私はというと、父様にまでこういう現場を見られてしまった事に気恥ずかしさを感じてしまい、クライヴ兄様の膝の上からススス…と離れた。


そこで、ちょっとバスタオルの結び目が緩んでいる事に気が付き、慌てて締め直す。ミアさんに手伝ってもらって、めっちゃキッチリ縛ったんだが…。やはりお湯の浮力は侮れないな。


…ん?何かクライヴ兄様が舌打ちしたような気が…?


「分かったわよ!じゃあ、少しだけお湯に入ったら出るから!」


そう言うと、何とマリア母様は自分のバスタオルを外すと、ボンキュッボンの素晴らしい裸体を惜しげもなく私達に晒した。


「うわっ!」


「きゃあ!」


「ちょっ!マリア!!」


セドリックと私が同時に悲鳴を上げ、オリヴァー兄様とクライヴ兄様が無言でビキビキと青筋を浮かべる。

そんな私達を気にするでもなく、母様は湯の中へと入ると、気持ち良さそうに溜息をついた。


「あ~!やっぱり温泉は良いわね♡まさかバッシュ公爵家うちにこんなの造っていたとは知らなかったわぁ!これからはまめにこっちに帰って来ようかしら?」


「だったら、他の夫君に温泉浴場をお強請り下さい!」


「今日お袋が連れて来たの、ボスワース辺境伯だろ?あの方なら、強請れば、温泉の一つや二つ、造ってくれんだろが!」


「え~?だってこれから社交シーズンじゃない!いくらブランシュでも、今からこっちの屋敷に造ってたんじゃ、シーズン終わっちゃうわ!」


…成程。さっきの美丈夫はボスワース様ってお名前なんですか。辺境伯って、相変わらず大物釣ってるなー母様。


…にしても母様、凄いナイスバディだった!胸は…多分だけど、Fぐらい…あるよね?ウエストもすっごくくびれていたし、とてもじゃないけど子沢山な既婚者とは思えない。見た目も若々しいし…。私も将来、ああいう身体になれるのだろうか…。特に胸とか…。


「エレノア、君は君だから。無理して母上を目指さなくてもいいんだからね?」


オリヴァー兄様…。なんという絶妙なタイミングでのお言葉。つまりは小さくても自分は気にしない…と仰りたいのでしょうか?その優しさ、胸に沁みますが、なんか地味にダメージきます。


「そういえばエレノア、あんたどれぐらい成長してんの?どれどれ」


「きゃあっ!!」


いきなり母様が近寄って来るなり、バスタオルをずり下げられ、悲鳴を上げる。

幸い縛り直していたお陰で、全部はずり下げられずに済んだが、いわゆる半チチ状態になってしまった。


「あら~、ヤダ、小さいわねー!私があんたぐらいの時には、もうちょっとあったわよ?やっぱり婚約者とのスキンシップが足りないのが原因かしらね?」


そのまま、さわさわにぎにぎされ、硬直してしまっている私を、オリヴァー兄様が慌てて抱き寄せた。


か…母様、なんって事するんですか!?しかも人のコンプレックス煽るなんて…!自分が爆乳だからって酷い!貧乳で悪かったな!


「母上!いくら母親とはいえ、戯言が過ぎますよ!!」


あっ、オリヴァー兄様がブチ切れる寸前だ!兄様有り難う!もっと言ってやって下さい!


「オリヴァー、真面目にあんた、積極的にエレノアとスキンシップしなきゃ駄目よ?このままじゃあこの子、幼児体形のまま大人になっちゃうわよ!?」


う~ん…。なんかこの台詞、どっかで聞いた事が…。あっ!デザイナーのオネェだ!あっちは「揉んでもらえ」だのなんだの、もっと過激で直球な言葉だったけどね。


「そうだ!私が今使っている、全身マッサージ用のクリームあげましょうか?うちのデザイナーからのお勧めだったんだけど、かなり良いわよアレ。驚く程なめらかで滑り良いし、ほんの少しだけ入っているびや…」


「言われずとも、ちゃんと考えていますから、ご心配なく!!それともう充分でしょう!?さっさと出て行って下さいっ!!」


オリヴァー兄様の突然の大声にビックリする。けど母様、言葉途中で切れちゃったけど、クリームに何が入っているのでしょうか?


「そうだよマリア、もう出よう!どう考えても、君はこれ以上ここにいてはいけない!」


父様、何気に言いますね。でも確かに、ここまでのやらかし考えると、このまま母様がここにいると、兄様方がブチ切れるか、私への何らかの被害が降り掛かって来そうで恐い。


兄様方が母様の事「嫌いじゃないけど苦手」って言っていたけど、その言葉がなんとなく理解出来ました。


「嫌よ!今出たら身体が冷えちゃうから、もうちょっと入ってるわ!」


「グラントに頼んで、君の部屋にある湯船にこっちのお湯張ってあげるから!」


「おーい、邪魔するぞ!」


兄様方とアイザック父様が母様と言い合いしていると、空いていたドアから今度はグラント父様とメル父様が入って来た。




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そして「これぞセクハラ!」とばかりに娘を弄りまくっております!

これって、息子達に対する挑戦なのでしょうか(笑)


次回、更なる嵐が炸裂…予定です!

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