第153話 お世話になりました
そうして波乱に満ち満ちた朝食を終えた後、私はドレスに着替え、お見送りの方達の前に立った。…というかこれ、王宮中の人達ほぼ全てがいるのではなかろうか…?
「国王陛下、聖女様。並びに王族の方々。この度はバッシュ公爵家の珠玉であり、私のかけがえのない婚約者であるエレノアの為に尽力して頂き、感謝の念に堪えません。当主に代わりまして、心からの感謝と永劫の忠誠を捧げさせて頂きます」
バッシュ公爵家を代表し、臣下の礼を取りながら、オリヴァー兄様が国王陛下方に感謝の言葉を述べる。
「あ…あのっ。国王陛下、聖女様、王弟殿下方、そして殿下方!私を気遣い、癒し支えて下さって有難う御座いました!そして今迄、大変お世話になりました!このご恩は生涯忘れません!」
オリヴァー兄様のお言葉の後、私も最大限の感謝を込め、深々とカーテシーを行った。
ちなみに私の本日のドレスだが、黒をベースにし、白いレースをふんだんにあしらった、ふんわり華やかなプリンセスラインである。
そして首にはいつものインペリアルトパーズが嵌め込まれたチョーカーが…。はい、兄様方とセドリックの色満載です。
この格好を見たアシュル殿下が「物凄く可愛いけど…複雑…」って、ボソリと呟いていたっけ。
顔を上げると、聖女様や国王陛下をはじめとしたロイヤルファミリーは皆、一斉に寂しそうな顔をしていた。なんとなく、いつものキラキラしさも、三割程落ちている気がする。
しかし…だ。
――…これって、王族やその関係者に淑女が言うような言葉であろうか…?
寧ろ、行き倒れていた旅の娘が、親切に手当てをしてくれた命の恩人に対して言うような台詞だよね。
実は皆さんへのご挨拶、オリヴァー兄様やクライヴ兄様に「もう君(お前)の中身はバレている。下手に取り繕うより、地でご挨拶した方が良い」と言われたので、そうする事にしました。
不敬だと咎められないのなら、人間正直に生きるのが一番である。
「あっ、あの…!近衛の方々や騎士様方、私を守って下さって、有難う御座います!文官様方や召使の方々も、優しくお声がけをして下さったり、お菓子を頂いたり、お世話をして頂いたりと、本当にお世話になりました!厨房の方々も、いつも美味しいお食事を有難う御座いました!皆様方のご厚意に、深く感謝いたします!」
そう言うと私は今一度、深々とロイヤルファミリーの後方に控えていた近衛さん、騎士さん、官僚の方々や召使さん達と…何故か端っこで、こっそりと控えている厨房の料理人さん達に向かって、深々とカーテシーを行った。
「くっ…!」
「うう…っ!」
その途端、彼らは一斉に言葉を詰まらせ、目を潤ませる。
中には口元を覆ったり、目頭を抑えたりする人達までいたりして、なんかもう、どうしたらいいのか…。めっちゃいたたまれない。(料理人さん達など、全員がエプロン(?)で顔を覆って泣いていた)
「エレノアちゃん、はい、これお土産!朝食の席でも言ったけど、また近いうちに遊びに来てね?勿論、セドリック君やお兄様方もご一緒で構わないから!」
そう言いながら、にこやかな笑顔でバスケットを手渡され、私も兄様方も、顔を引き攣らせながら頭を下げる他なかった。というか、それ以外何が出来よう。
実はあの朝食の席で私が転生者だと(確実に)身バレした後、特にその事について触れられぬまま、今現在迄来ているので、私も兄様達も戸惑っている…というのが本音だ。
しかも別に引きとめられたりもせず、当初の予定のまま、こうしてバッシュ公爵家に帰る事になってるし…。なんか逆に、何を考えているのか分からなくて怖い。
「ミアさんもね。バッシュ公爵家に行っても、エレノアちゃんと一緒にまたいつでも顔を出して?他の子達も、落ち着いたら交代でそちらにお仕事しに行くって言っていたしね」
「はい!聖女様!私、この命尽きるまで、エレノアお嬢様をお支えし、誠心誠意バッシュ公爵家の皆さまにお仕えしたいと思っております!」
私の後方に控えていたミアさんが、言葉通りのやる気に満ちた笑顔で、元気にケモミミをピコピコさせながら聖女様に深々と頭を下げた。
今回、ミアさんも含めた獣人の王女様方と同行して来たメイドさん達は、全員が王宮預かりとなり、取り敢えず聖女様にお仕えする形で、この国の文化やマナーを学ぶ事となったのである。
その上である程度慣れたら、他の貴族のお家に行儀見習いに行くも良し、今後移民としてやって来るであろう家族や恋人と共に生活するもよし。勿論このまま、王宮の侍女として残るもよし…という事になっているのだそうだ。
でもミアさんは
そして実は、他のメイドさん達もミアさん同様、バッシュ公爵家に行きたがったそうなのだが、聖女様が寂しがり、ひとまずはミアさんだけがうちに来る事になったのだった。
…っていうのは実は建前で、ぶっちゃけケモミミメイドさん達が全員うちに集中すると、他の貴族やら騎士やら近衛やら官僚やら…。まあ要するに、男性陣全員から大ブーイングが上がってしまうから…というのが真相らしい。
なんせ彼女ら全員容姿は勿論の事、性格も非常に大人しく愛らしいのだ。
そんな彼女らと一緒に働きたい、囲いたい、あわよくば恋人ないし妻にしたい。…なんて思ってしまうのは、男子として当然の欲求だろう。ましてやこのアルバ王国の男性達はみな、草食動物の皮を被った、紳士な獣である。
そんな彼らが、実際に草食動物な彼女らをロックオンしない筈が無い。あの手この手をフルに使い、篭絡する気満々な筈だ。
――…アルバの男達がロックオンして、何も知らぬ草食動物である彼女らが、果たして抗えるのだろうか…!?
そうは思ったが、例え上手く捕獲されても、アルバの男性だったら、彼女らの事をめっちゃくちゃ大切に…というか、デロデロに溺愛しそうだ。
なんとなく思ったんだけど、アルバの男性陣ってみんな、実はめちゃくちゃ独占欲が強くてヤンデレ入っている気がするんだよね。それを上手く隠して女性を持ち上げつつ、いつの間にか囲い込んじゃう…みたいな?
――…や、やっぱ大丈夫かな?束縛系嫌いな人、いるかもしれないし…。
う~ん…。まあ、何かあったら聖女様が助けてくれるだろうし、私も相談されたら頑張って何とかするからいい…かな?
それに何とかしようにも、私も今現在、いっぱいいっぱいだし…。
「それじゃあね、エレノア」
「エル、またすぐ来いよ!?」
「来なかったら色々考えるから」(ひぃっ!)
「エレノア、じゃあまた学院でな!」
そう言いながら、次々と私の手の甲に口付けて行く殿下方に、全身真っ赤になって脳内ショート寸前になった私は、「ほら、さっさと行くぞ!」と、クライヴ兄様に小脇に抱えられながら(普通は姫抱っこではないだろうか?)バッシュ公爵家の馬車の中へと乗り込んだのだった。
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ようやっと、バッシュ公爵家に帰ります!そしてミアさんも一緒です。
ケモミミメイドさん、しっかりアルバの男達の虎視眈々と狙われておりましたv
ベビーラッシュも近い…のかな?
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