第147話 夜会の時の真相
月夜の下での告白も吹き飛ぶ、王宮不法侵入事件がバレたショックでパニック状態になっている間に、私はオリヴァー兄様にお姫様抱っこされた状態で、離宮に用意された私室に戻る羽目となった。
「それにしても、アシュル殿下があの獣人達との戦い以前に、君の本当の姿を知っているって言っていたけど…。まさかフィンレー殿下とも逢っていたなんてね…。…まさかと思うけど、他の殿下方とも…?」
「あっ…あのっ…!そ、それは…」
「エレノア?正直に言おうか…?」
兄様…。その優しい口調、寧ろめっちゃくちゃ恐いです!
「ああ、ディラン兄上とリアムとも会ってるよ」
――フィンレー殿下ー!!あなた、お願いだから要らん事言わないでー!!
「…へぇ…。ああ、丁度君の部屋に着いた。続きは落ち着いてからにしようか」
そして私の部屋へと入ると、そこにはオリヴァー兄様のお言葉通り、アシュル殿下、ディーさん、リアムの他にも、クライヴ兄様とセドリックがお茶を飲みながら私達を待っていたのだった。
「さて、それじゃあエレノア。ちゃんと詳しく、順を追って説明してくれるかな?」
オリヴァー兄様によって、クッションを沢山敷き詰めたソファーに座らされ、そう告げられる。
兄様方や殿下方の視線に晒されながら、私は覚悟を決め、あの時の事を説明し始めた。
折角ドレスアップしたのに、夜会に行けない事に腐っていたら、中々自分を呼ばないと拗ねたダンジョン妖精が部屋を訪ねて来た事。
ドレスアップしていた理由を説明し、ちょっと愚痴ったところ、問答無用で幽体離脱させられ、うっかり出来心で王宮に遊びに行く事になってしまった事。
誘った張本人であるダンジョン妖精とはぐれ、人目を避けながら右往左往していたら、次々と殿下方と遭遇してしまった事。
最後に捕まったフィンレー殿下から逃れた直後、本体に強制的に戻ったら、殿下方と遭遇した時のショックから本体が鼻血を出していて、それによる大量出血でぶっ倒れていた事…等々。
「…という訳でして…。あの…本当に済みませんでした!!」
あらかた話し終わった後、兄様方やセドリック、そして殿下方に向かって、深々と頭を下げる。
そうして恐る恐る顔を上げた私の目に映ったのは、椅子に凭れて脱力しているオリヴァー兄様とクライヴ兄様、そしてセドリックの姿。そして、何とも複雑そうな顔をした殿下方の顔だった。
「…エレノア…。全く…君って子は…」
「あまりにも斜め上過ぎて…。もう、何言って良いのか分からん…。取り敢えず、そのダンジョン妖精は抹殺決定な!ダンジョンの時といい、今回といい…!八つ裂きにしても飽き足らねぇ!!」
「クライヴ兄上。僕も是非お手伝いさせて下さい!というか、いくらエレノアが食いしん坊でも、あの果物完食出来る訳無いって、普通だったら気が付く筈なのに…。ああ…あの時の自分、馬鹿すぎる!」
おい、セドリック!君、自己嫌悪しつつも何気に私をディスってますよね!?
ふんだ!どーせ私はいやしんぼですよ!
「…まさか、あの時のエレノア嬢の鼻…いや、体調不良が我々の所為だったとは…」
アシュル殿下、素直に「鼻血」って言っても良いんですよ?
「俺もエレノアを殺し掛けた加害者だったんだな…。御免、エレノア」
あっ!リアムがしょんぼりしてしまった!ち、違うよリアム!貴方とバッタリ遭遇しちゃったのは偶然だし、単純に私の鼻腔内毛細血管が弱過ぎただけだから!
「あの時のダンジョン妖精が関わっていたのか…。あいつ、本気でロクな事しねぇな!…まあ、この件に関しちゃ「よくやった!」って褒め称えてやりてぇが」
「ええ、その通りですね。後で果物でもお供えしておきましょうか」
ディーさん、何ですかそれは?!ってかヒューさん、貴方居たんですか!?
「いやそこ、制裁一択でしょう!?」
「何がお供え!?舐めてんですか、あんたら!?」
あっ、オリヴァー兄様とクライヴ兄様がブチ切れた。う、うん。確かに、兄様方にとっては災難以外のなにものでもないよね。
…ってか、私も段々あの時の怒りが蘇って来たよ。
あの時被った直接的被害(鼻血)と、『果物やけ食いして鼻血出した女』っていう不名誉極まる汚名を被る羽目になったのって、間違いなくあのミノムシワーズの所為だよね!?
あの時一発入れられなかった恨みを晴らす為にも、抹殺迄はいかなくとも、当初の予定通り、激辛スープに沈めるぐらいは許されるのではないだろうか。
「…ってか、君達さぁ…。大切な婚約者を着飾らせるだけ着飾らせておきながら、置いてきぼりするって酷くない?どんだけ鬼畜なの?」
フィンレー殿下の鋭いツッコミに途端、兄様方とセドリックが言葉を詰まらせた。
フィンレー殿下…!ツッコむべきとこ、そこですか!?貴方もやっぱり、レディーファースターなアルバの男ってやつなんですね!?
というか相変わらず、キレっキレの容赦の無さですね!だけど私が鼻血を噴いた原因の8割方、貴方の所為なんですが!?
――じゃなくて!!
それについて、兄様方はあの
「…そうだよねぇ…。僕達にエレノア嬢の事知られたくなかったから、夜会に連れて来なかった…って所は理解出来るけど、連れて行かないのにわざわざ着飾らせるって…。悪いけど、そこはちょっと理解出来ないな…」
「――ッ…!」
「ダンジョン妖精に
「くっ…!」
「確かに、あんな姿のエレノア見たら、間違いなく求婚していたけど…。いやでもだからって、それは良くない事だと思うぞ!?」
「ううっ…!」
「まさに、男の独占欲が暴走した結果の不幸な出来事でしたね。…最も、不幸だったのはバッシュ公爵家の皆様だけで、こちらとしては大変有難いやらかしでしたが…。こういうのを、因果応報とでも言うのでしょうか?」
「「「………」」」
ああああっ!で、殿下方、リアム、止めてー!!兄様方やセドリックのライフゲージが駄々下がっているのが目に見えて分かる!し、しかもヒューさんまでなに参戦しているんですか!?しかも何気に、一番容赦ないし!!
「あっ、あのっ!私はあの時の事については、もう全然、これっぽっちも思う所ないんです!そ、それに、その…みんなの独占欲が、ちょっと嬉しかった…っていうのもあったし…」
あ、あれ?何か殿下方の顔がスン…ってなっちゃってるんですけど?それに対して兄様方やセドリックが、物凄く嬉しそうなんですが?
「そ、それに、そもそも私が王宮に不法侵入しちゃった事が問題…なんですよね?」
私の言葉に、兄様方の纏う雰囲気がピンと張り詰めた。表情も一気に険しいものへと変わる。
そう、いくらワーズに唆されたとは言っても、私は霊体となって王城に忍び込んでしまった、いわば不法侵入を犯した犯罪者だ。
色々あって、今迄お目こぼしされていただけの事で、普通だったらその事実が露見した段階で、捕縛されてもおかしくはない。
だけど私はあの戦いの余波でボロボロ状態だったから、こうして復活する迄待ってくれていたに過ぎないのだ。
そう…。こうしてアシュル殿下自ら、私が王城に忍び込んだ事実を持ち出されたという事は、なんらかの罰を申し渡されるのに違いない。
う~ん…。王宮への不法侵入って、一体どんな罰を受けるのだろうか。投獄かなぁ?ムチ打ち100回…は嫌だなぁ…。せめて10回にならないだろうか。
でも実はぶっちゃけ一番怖いのは、兄様達からのお仕置きだったりするんだけど…。
私は深呼吸をし、覚悟を決めるとアシュル殿下と真っすぐに目を合わせたのだった。
=================
暴露大会突入で御座います。
でも何気に、ダメージとお仕置き喰らっているのが兄様方とセドリックという…。
エレノアへと、ついでにワーズのお仕置き(これは決定的?)はどうなるのかは、次回以降ですね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます