第135話 王宮での日々とお見舞い②

さてさて、同級生&ロイヤル&『影』の総帥…という異色なメンバーでのお見舞いですが、ディーさ…ディラン殿下とヒューさ…ヒューバードさんは、出逢った時から一緒に行動していたからいいとして、問題はマテオですよ。


どう考えても接点無さそうなこの面子の中に、何で彼がいるのだろうか?


「全くお前は!!女の癖に、あのような無茶して…!どれ程心配したと思っているんだ!!」


…なんて思っていたら、マテオには開口一番、怒られてしまった。


でもマテオ、いくら怒っているって言っても、目を合わせた瞬間、真っ赤になって怒鳴る事ないと思うんだけどな。

いや、そりゃあ心配かけた私が悪いって分かっているんだけどさ。


「う、うん…。御免ねマテオ、心配かけちゃって」


「――ッ!わ、私がお前の心配なんてする筈ないだろう!?リ、リアム殿下にご心配おかけするなど、言語道断だと言いたかったんだ!そ、そこの所、誤解するなよ?!」


…うん。つまり、本当に物凄く心配だったんだね。


真っ赤な顔して、あたふた言い訳してても、ツンデレがデレてる風にしか見えないよ…マテオ。


「マテオ。お前も折角お見舞いの許可を頂いたのに、可愛げのない事ばかり言うな。ほら、お前が宰相様に山のように強請ったエレノア嬢へのお見舞い、ちゃんと渡せよ」


「に、兄様ッ!べっ、別にこれは私が使いたいからお願いしただけで…!おっ、思ったよりも沢山きて…だから余り物を恵んでやろうと…!」


…えっと、その余りものって、この物凄く綺麗な包装紙やリボンで彩られた、大量の箱の事でしょうか?

しかもどの箱にも、さり気なく可愛いブーケがアクセントで付いているんですけど…。


「うん、マテオがくれるものって、どれも素敵だから嬉しいよ。有難う!」


そう言ってニッコリ笑うと、マテオの顔が更に真っ赤に染まった。


しかも目線を合わせようとしないで、何だかモジモジしている。…な、なんかマテオが可愛い…。


ガチの第三勢力同性愛好家だって分かっていても、そもそもマテオ、かなりな美少年だし、なんかこっちまで照れてしまうじゃないか!まったくもう。本当にアルバの男ってやつは!


「…マテオ。素直じゃないお前には、ピッタリのお友達だな」


「に、兄様!煩いですよ!!そ、それに…別に友達という訳では…」


「ああ、そうそう。『親友』だったっけな?」


「…兄様、何か私に含む所がありませんか?」


涼しい顔で、マテオを揶揄うヒューさ…いや、ヒューバードさん。

さっき初めて聞いたんだけど、実はヒューバードさんとマテオって、父親違いの兄弟なんだって。


それ聞かされた時はビックリしたなぁ…。あんまりにもタイプが違い過ぎて。

まあ、男性は男親に容姿が似るのは、ほぼお約束なので今更なんだけど。


それにしても、久々に見たヒューさ…ヒューバードさん、相変わらず無表情なクールビューティーでした。

初めて会った時は『暗殺者アサシンみたい!』って思ったけど、まさか『影』の総帥だったとは…。第一印象って、あながち馬鹿にできないな。


「ディーさ…いえ、ディラン殿下。そしてヒューさ…いえ、ヒューバード様。あのダンジョンでお会いした時、助けて下さって、本当に有難う御座いました!」


私は改めて(ベッドに寝ながらだけど)深々とお辞儀をしながら、ずっと言いたかったお礼を言った。


あ、なんか二人の口端がピクピクしているよ。…済みません。記憶の中のお二人の事、常に『ディーさん』『ヒューさん』呼びしていたから、うっかりすると口に出てしまうんです。


そんな私を、ディー…ディラン殿下は「気にすんな!」って、目元を和らげ、物凄く嬉しそうな笑顔で言ってくれた。


…くっ!今日はディラン殿下一人だけだからマシだけど、顔面破壊力が絶好調に目にブッ刺さってくる。…眩しい…。


ヒューさ…ヒューバードさんは…ええい、もうヒューさんでいいや!相変わらずの無表情で「お気遣いなく。女性を守るのは当然の事です」と言ってくれたが、目元がうっすら赤くなっていたから、照れているのかもしれない。


「ディラン殿下、ヒューバード総帥。俺からも改めてお礼を言います。貴方がたのお陰でエレノアだけではなく、我々一同、今こうして命があります。本当に有難う御座いました」


そう言って、ウィルと共に深々とお辞儀をするクライヴ兄様に、ディラン殿下はと言うと、困ったように眉を下げる。


「あー、本当、お前ら兄妹って律儀過ぎ!そんなん、当たり前の事しただけなんだから、気にすんなって!」


そう言ってヒラヒラ手を振るディラン殿下。

ディラン殿下…。王族だって分かっても、あの時出逢った『ディーさん』のままだ。


いい意味でも悪い意味でも王族らしくなくて、顔面破壊力はともかく、「気の良いお兄さん」そのものって感じ。クライヴ兄様同様、一緒にいてなんか凄くホッとする。


「…まあ、んじゃコレでお礼のかわり!って事でプラマイゼロな!」


そう言うと、「え?」と言う間も無く、ディラン殿下の精悍な美貌が近付いたかと思うと、頬に柔らかい感触が…。


――キスされた…。と頭が理解した瞬間、私の鼻腔内毛細血管は、超久々に決壊した。


「うぉっ!!エ、エルッ!?」


「お、お嬢様ーーッ!!」


「うわぁ!エレノア!!」


「ディラン殿下!あんた何やってんだー!!」


「…ディラン殿下…。貴方、真面目に死にますか…?!」


…で、一通り大パニックになった挙句、怒髪天突いたクライヴ兄様と(何故か)ヒューさんがタッグ組んで、ディラン殿下に猛抗議(と言う名の制裁攻撃)と相成ったのである。


そして、三人が部屋の隅でバトルっている間、ウィルとマテオとぴぃちゃんとが、鼻血を出してのびてしまった私の介抱を必死に行うという騒動になったんだよね。


もっともぴぃちゃんは、私の頬にスリスリしたり、頭の上でポンポンと跳ねていただけだから、最終的にはマテオに「お前、邪魔!」って放られていたけど。


ちなみにその後、クライヴ兄様はしっかりその事をアシュル殿下にチクったみたいで、ディラン殿下は「抜け駆けすんな!」って、ご兄弟全員と、ついでに聖女様に「あんたって子は!!」と、散々叱られたらしい。


ちなみに介抱してくれたマテオには、私が美形に弱くて、こういうスキンシップで容易くああなる…って正直に説明したら、なんか物凄く憐れみのこもった眼差を向けられてしまった。


その流れで、兄様方やセドリックともキス以上していないってバレた時は、なんかディーさんもヒューさんもマテオも、めっちゃ嬉しそうだった。


ディーさんの反応は分かる…んだけど、何でヒューさんとマテオが嬉しそうだったんだろうか?


あまりにも私がお子ちゃま過ぎて、失笑していたとか…?マテオは「こいつが相手なら、リアム殿下の春はまだまだ遠そうだな!」って喜んでいたのかも。うーん、有り得る!


それにしても…不意打ちは本当、止めて欲しいよね!


こんなん続いたら、私の鼻腔内毛細血管、容易く決壊しまくって、聖女様におんぶに抱っこで、ずっとここで静養する羽目になっちゃうから。


というか、また王族の前で鼻血噴いちゃったよ。

折角あんだけ頑張って修行したってのに。私の鼻腔内毛細血管…まだまだだなぁ…。はぁ…。



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中途半端に長くなりそうだったので二分割し、連日更新と相成りました(^^)

何気にマテオが…って感じになっております。が、やはりなディラン殿下が、空気読まない爆弾投下です(笑)

副官になったら、クライヴ兄様、真面目に苦労しそうですねv

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