#「英雄は白き桜の下で眠る。」
@itihara_kyabetsu
完全版
……最初に……
はじめまして、市原きゃべつです。はじめましてじゃない方は、久しぶりです。もしかしたら最近あった?!うん。はい。きゃべつです。ところでなんで僕のペンネームが市原きゃべつなんだって話する?それはね……
なんも「結構本気で考えて見た結果、ダサくなったんだよね」
……!お、お前は!!僕の友人作、なんも君!!どうしてここに
なんも「Fuck you!」
はい。ふざけましたね。どもこん、市原こゃべつです。ん?こゃ……?意地でも入力ミスは直しません。といったところで、こちらの物語は『遥か彼方、覚める事のない空の向こう側で。』で出てきた茜先生の物語になります。遥か彼方を知っている人は、合わせてこの僕の世界観を読み取ってくれると嬉しいです。遥か彼方で触れてない禁書についての設定もここで出しました。遥か彼方を読んでくれた前提でこちらの物語を書いたので、あっちの作品をもう一度軽く読んでからこっちを読んでくれると腑に落ちるシーンがいくつもある、気がする……(尚自信はない)。
そういえばさ、僕の執筆速度が早いって僕のお話を聞いた皆さんは言ってくれてたし、僕もそう紹介していたんですけど、最近になってようやく気付きました、執筆速度、クソです(爆発音)。周りにいるライターさんにきいてみて……そして、時間をかけて書いても面白くなかったら意味なiiii……(脱糞音)はい、ふざけすぎですね。日本海行ってきます(?)
毎度の事ながら、注意喚起等はありません。
配信内で使ってもいいし、アドリブを沢山入れても構いません。ただ、一緒に演じる方の迷惑にならないよう、例えば配信前に相談する等してみんなで決めて下さい。
「こういった風に解釈して欲しい」なども特にありません。無限の解釈があると思っているので、好きなように表現して、好きなように読んで見て下さい。物語が歩いていく上で、作者だろうが神様だろうがそれを咎める権利はないと僕は思います。
僕の物語の数少ない訪問者のあなたが、ごゆるりと過ごせるように祈っています。
……登場人物……
松田魁星 ♂
age 21。
適当を好む性格、言葉遣いや気遣いを最低限度は守るが殆どの場面でしない。過去に割り切れない程の大きなトラウマがある。忌み子を人間扱いしない世間が大嫌い。椎名茜の2番弟子、京華とは犬猿の仲
立花京華 ♂
age 23。
潔癖症。実は重度の機械オンチ。最近髭をのばしはじめたが、京華と律歌からはよく思われていない。普段は無口だが、魁星の雑さを放っておけない。体術で右に出るものはいない。椎名茜の1番弟子。
一ノ瀬律歌 ♀
age 20。
最近20歳になったダウナー系な元気いっぱいの女の子、茜のことが大好き。生粋の走り屋。大型バイクの免許を持っている(自分のは納車していない)椎名茜の3番妹弟子(にほんごがおかしい)
椎名茜 ♀
age 28。
男勝りでワイルドな性格、3人の師匠。忌み子を庇護する。忌み子を人間扱いし、いつか対等に暮らせるようになる社会を作ろうとしている。赤城とは同期。
十色雪 ♀
age 24。
別名”死神”。金さえ積めば誰でも殺す。が、本当の目的は強い奴と戦う事。戦闘狂。射線をよんで至近距離で銃を避けたりととにかくバケモン。
みい ♀
age 11。
”青い悪魔”と呼ばれていた忌み子。実は結構口が悪い。
赤城優一 ♂
age 28。
目的の為なら手段を選ばない陽季隊の隊長、よくヘラヘラしているが上層部に気に入られるために笑っていてそのスキルが癖になってしまった。父が警察庁長官。根はかなり真面目。茜と同期。
男 ♂
age 不問。
流転教の雇われ。巨漢。つぎはぎのお面を被っている。戦闘においては素人だがプライドが高い。市長と兼ね役
市長 ♂
age 51。
おっさん。
流転教のエージェント ♂
age 不問。
男と兼ね役
エージェント ♂
age 不問。
男と兼役
隼人 ♂
age 64。
男と兼役
一世 ♂(設定は男)
age 23。
みいと兼役。設定は男!?知るか!!作者は俺だ!女っぽく作るでも好きにしてぇ?(殴
……Prolog story……
こちらは本編の番外編です。合わせて読んでも読まなくてもどっちでも大丈夫です。
(都内某所にて)
(電話が来る)
茜「はい、椎名です。」
田村「ホープの相談窓口から、電話番号を紹介して貰ってお電話しました、田村です。実は……依頼がありまして。うちの市役所で拘束している、忌み子を引き取って頂けないかと。」
茜「……どちらへ?」
田村「出張して貰うので、申し訳ないんですが京都市になります。」
……本編……
茜『英雄は白き桜の下で眠る。』
(間)
(場面転換)
(よしのやにて)
(12月の上旬、渋谷駅にて)
魁星「ぶぁっくしゃい!!」
京華「おいクソ野郎。汚ぇぞ」
魁星「最近、冷えてきたよなぁ…来週にはもう、雪が降るっていうし。いやになるねぇ」
京華「あのな」
(走ってくる律歌)
律歌「きょーっか!!これと、これとこれも頼む!」
(沢山のブランド品が京華の足元に置かれる)
律歌「よし!あたしは次に行くぜ!ここで待ってろよ!荷物持ち!」
京華「おい…!」
魁星「諦めろ。聞いてねぇぞ」
(よしのやの牛丼を食いながら話す魁星)
(既に走り去る律歌)
京華「(ため息)どうしてこうなった」
魁星「お前がじゃんけんで負けたからだろ」
京華「っざけんな…!そういうことを聞いてるんじゃねぇ。というか食いながら喋るな!というかお前は…!」
魁星「あーうっせぇな。公共の場で声を張り上げるなよみっともねぇ」
京華「公共の場で牛丼を食うお前がいうか…」
魁星「あぁ?俺はいいんだよ。なぜなら、この世界は俺を中心に回ってるから。よって気を遣うべきは周囲にいる人間だ。はいQED。解散解散!」
京華「黙れデブ。警察の恥さらしが」
魁星「…………太ってねぇよ、殺すぞ」
京華「やってみろよ。っていってもここ最近の任務は軽いもんばっかだったし訛ってるんじゃないのか?いや、そうか。だから体型が変わって……」
(弁当を置く魁星)
魁星「表、出ろ。やっぱ殺す、お前は殺すしかねぇ」
京華「はっ。ボキャブラリーなさすぎだろおい、義務教育は受けるべきだったな」
魁星「ぶちぃっ!!…なぁ、最近思うんだけどさ、京華お前って、髭似合ってなさすぎじゃね。モテるとでも思ってんのかよ」
京華「あ"?」
魁星「お"?」
茜「やめろやめろお前ら。折角の京都旅行を、血なまぐさいものにするな馬鹿者」
魁星「先生…だって」
京華「こいつが」
魁星「こいつが」
(言うタイミングが被る)
京華「おい、真似すんなよ」
魁星「俺の方が早かっただろうがよ!圧倒的に!」
京華「味覚も腐ってりゃあ耳も腐ってるんだなお前」
魁星「あぁあぁあ??」
茜「もう少し仲良くできないのかよ!!まったく。お前らときたらぁ」
京華「って。先生あんた……」
茜「ん?」
京華「旅行じゃないですよ、これ」
(京都グッズを沢山抱えている茜)
茜「はっはっは。旅行だろ、何を言ってるんだ京華」
京華「…どいつもこいつも。」
魁星「その帽子似合うなぁ先生」
茜「そうか?」
律歌「きょーかぁ!次持ってきたぞー!あ、先生がいる!用事終わったのかぁ」
茜「たった今な。ほら、律歌にも買ってきてやったぞ」
(同じ帽子を被せる茜)
律歌「おぉー」
茜「似合ってるぞ?」
律歌「やったぁ!ありがとなぁ」
魁星「ガキっぽさが増したな」
律歌「死ねェ!」
魁星「ぐぅおっふ!みぞおち(腹を殴られる)」
京華「全員揃った事だし、移動しようぜ。ここだと目立ち過ぎる」
茜「あぁ、本来の目的も果たさなくてはな……だがその前に」
京華「は?」
茜「お土産を先に買う!荷物の番は頼んだぞ京華」
律歌「あー!ずっりぃぞ先生抜け駆けだぁ!」
京華「おい…!」
(走り出す2人)
魁星「俺も買い出し行こうかな。なぁ京華、なか卯あったよな。たしか地下の方に」
京華「……」
魁星「おい、聞いてんのかクソ野郎?」
京華「まじで、どいつもこいつも!頭沸いてんのか…!」
魁星「俺の!牛丼!は!」
(間)
(場面転換)
京華M:世界から魔法が消えて数世紀。
京華M:人類は進化し続ける科学と共に、平和な生活を取り戻した。
京華M:魔法ってのはなにかというと、火を吹いたり雷を意図的に降らしたり、そんな超次元的な事を可能にする異能の力を指す。
京華M:これもおかしな話なんだが、魔法は本当に存在していたらしく、なんでも魔法が原因で内乱や戦争が起こったんだとか。
茜M:今となっては、昔の話なんだがな。だが、厳密に言うと魔法は消えていない。公にはできないが……。人類は魔法を扱う術を失っただけで、魔法自体は存在している。なにを根拠に言っているのかとゆうと、”禁書”と呼ばれる力があるからだ。
茜M:48ページから構成されている魔術の原典であり、かつての魔法を完璧に再現できるというものだ。
茜M:我々が所属する特殊警察組織”ホープ”は、世界各地に存在する禁書を回収するべく…そして。
(間)
(場面転換)
(市役所にある会議室にて)
(牛丼弁当を食べている魁星)
茜「はっくしょん!……う"ー。」
律歌「大丈夫かよ先生、風邪か?」
茜「私は悪くないぞ、作者に言ってくれ…」
律歌「?」
茜「こほん。えー、じゃあ気を取り直して任務の話をするぞ。京都に来ているからといって、くれぐれも浮かれないように」
律歌「はーい!」
京華「さっき旅行って言ってたろあんた…」
茜「さてお前たち、陽炎という組織を知っているか?」
京華「…日本の軍隊をも動かす事もできるっていう、あの?」
茜「そうだ」
律歌「知ってるのか?京華」
京華「都市伝説みたいなもんだがな。皇室にいる人間とか政治家とか、上級国民しかいないらしいぞ。」
律歌「天竜人みたいな感じか!」
茜「その認識で構わない。」
京華「で、陽炎と今回の任務。なんの関係があるんですか?」
茜「今回の任務はな、いつも通り忌み子を保護する任務”じゃない”んだ。」
京華「は?」
魁星「……んご?」
茜「まぁ聞け。先日、対陽炎…テロ組織だな。その幹部、卜部(うらべ)が秘密裏に保管していた禁書の在り処を吐かせた訳だが、京都にいる他のエージェントに向かわせた所、回収に失敗した…というより、”既になかった”らしくてな。そこで雅楽代家は、卜部が所属していたテロ組織の壊滅を図り禁書を回収するため、陽季隊を動かした。っていうのが筋書きだ。」
律歌「すげぇ、陽季隊も動かせるのか…」
茜「ここからは私の憶測になるが、恐らく卜部は子供に禁書を取り込ませて隠したんだろう」
魁星「ガキに…?」
京華「根拠はあるんですか…」
茜「憶測だと言っただろう。だが、”禁書を取り込ませたから、体の中にある魔氣が狂った”どうだ。ありえない話じゃない。」
京華「…たしかに。」
律歌「じゃあ、今回依頼された子って……!」
茜「そう、禁書持ちの可能性が高い。向こうがその事に気付けば確実に奪いに来るだろう。つまり、禁書を狙う組織は大きく分けて2つになる。……岸田圭を信仰し崇拝する最悪の宗教団体”流転教”!目的を達成する為ならば一般市民の虐殺をも厭わない”陽季隊”!奴らより早く、忌み子を保護するのが今回の任務だ!さぁお前たち、心してかかれ!」
(間)
(場面転換)
(自販機の前にいる魁星と律歌)
律歌「つってもよー京華」
京華「ん?」
律歌「先生は”憶測”だつってたけど、そもさんどこで情報を手に入れたんだろうな。ほら、禁書の事といえば公にされてないはずだろ?」
京華「さぁな…。先生の考えてる事はシンプルのようで読めん」
律歌「あたしもだ。呪怪を治療するなんてさ、普通は考え付かねぇことやってるからなぁ。ま、好きで付き合ってんだけど 」
京華「あぁ」
律歌「そういやお前はさ、なんで先生の下にいるんだ?いかにもお堅い性格って面してんのに」
京華「顔は関係ねぇだろ!いや…やめとく。いいたくない」
律歌「なんだよぉ、”おにーちゃん♡”ってお願いしたら教えてくれるか?」
京華「気持ち悪くて吐くな。」
律歌「はは。相も変わらず毒舌だなぁ」
京華「とっとと行くぞ。急ぎの任務だろ」
律歌「へいへい」
(間)
(都内某所、カミヤマ亭にて)
(カウンター席でカレーを食べている雪)
赤城「あ。やっぱりここにいた。大将!おねーさんと同じものを1つ。」
雪「……」
赤城「カレー好きですよねぇ十色さんって。僕も小さい頃はお袋によく作って貰ってたなぁ」
雪「おいガキ。死にたいか」
(スプーンを刃物のように首に向ける雪)
赤城「スプーンで殺されちゃいます?俺」
雪「用件は。」
赤城「ある子供の抹殺を」
雪「…なに?」
赤城「言っておくけど大マジですよ。先週うちに潜り込んでいたネズミを処分していたんですけど、どうやら禁書を隠し持っているみたいでしてねぇ。面倒な事に、中々吐かないもので…ようやっと吐いたと思えばそこには”なにもなかった”」
雪「ほう」
赤城「今は手当り次第捜索中って感じです。十色さんには、手がかりの1つを潰して欲しい。」
雪「報酬は」
赤城「3000万。どうです?ガキ1人殺すだけで、、こんなに美味しい話もないですよ」
雪「なにか裏がありそうだな。ただのガキじゃないだろ」
赤城「あぁ、はは。調べによると陽季隊とは別に厄介な連中も動いてるみたいでしてねぇ」
雪「ふん。私を利用しようってのか。いいだろう」
赤城「受けてくださるんですか?」
雪「5000万だ。それで乗ってやる。大将、会計」
赤城「えぇ…………まぁ、いいや。上が出すだろうし、たぶん。それにしても…寒いくなってきたねぇ。」
(窓の外を見る赤城)
(間)
(場面転換)
(市役所、駐車場にて)
魁星「先生、さみぃ。車入んね?」
茜「私より若い癖に、甘えたことをいうんじゃない。そろそろ、来る頃だと思うんだがな……」
魁星「う"ー…こんなことなら、あいつと陸回り(りくまわり)変わりゃあよかった。」
茜「はは、まぁいいじゃないか。その分私と一緒にいれるぞ」
魁星「(煙草に火を付ける)…ったく。なにがいいんだか」
市長「こんにちは、椎名さんであってますか?」
茜「はい、どうもこんにちは。椎名です。」
市長「遠路遥々京都まで起こし頂いてありがとうございます。電話で依頼した田村です」
(間)
(場面転換)
(京華のスープラで周辺をパトロールしている)
律歌「きょーか!曲リクエストしていいか」
京華「ドライブじゃねぇんだぞ、馬鹿」
律歌「気分が乗らないんだよ」
京華「知るか。」
律歌「だって怪しい車どころか、パトカー1台も見てねぇぞ。平和で仕方ねぇよ」
京華「……」
律歌「……なぁ、京華」
京華「なんだ」
律歌「歌って」
京華「断る」
(間)
(場面転換)
(市役所内、地下を歩く3人)
市長「ご休憩でもなさいますか?疲れたでしょう、つまらぬものしかありませんがお茶菓子は出しますよ」
茜「あぁいえ、お構いなく。弟子にどやされそうなので」
市長「そ、そうですか」
魁星「あ、じゃあ牛丼って…あだっ!なにすんだよ」
茜「黙って歩け」
魁星「へいへい」
市長「さて、着きました。どうぞ。この下の階に、先日お話した”忌み子”を拘束しています」
魁星「……」
茜「……はい、伺います」
(エレベーター内にて)
市長「それで、その…件(くだん)の忌み子は、引き取り…ということでいいんですよね」
茜「その認識で間違いありません。ですが先に…事の経緯を、改めて教えて頂けないでしょうか」
市長「丁度、一週間前の事です。」
(下の階に着く)
(そこは物置になっている)
(3人歩き出す)
市長「西のとある地域から通報がありまして。青い悪魔が、人を殺して回っていると。」
茜「悪魔…か」
市長「私は忌み子が現れた事を悟りすぐに警察に通報し、現場に向かわせました。ですが警察が現着したときそこには……暴れ回る忌み子の姿はなく、小さな少女が1人、その場で寝ていたのです。血の池と化した町で。」
魁星「……」
市長「あの少女は、必然的に忌み子です。あれから呪怪の症状を出した事はありませんが、まだ安心できません。一応できる限りの”教育”はしましたが」
(檻の前に到着する)
(そこには、虫の息となったみいが横たわっていた)
(幾つもの傷を負っている、殴られたような跡が)
茜「……!」
魁星「こいつは…!」
みい「……すぅ、すぅ。」
市長「気を付けて下さいよ?忌み子には、特殊な器官があると聞きます。この町でまた死傷者なんか出たりしたら」
魁星「…っ!!」
(魁星、壁に叩き付ける)
市長「うっ!!」
魁星「てめぇ、まさかとは思ったが!この少女になにをした!!」
市長「その子は、”忌み子”で…!10人以上人を殺しているんですよ?あなたこそ、なにを……!」
魁星「そうじゃねぇだろ!だとして、こんな報復みたいなことが許されると思ってんのか!」
茜「魁星、よせ。」
魁星「先生…!だってこいつは!」
茜「いい、離してやれ。仕方ないんだ…仕方ない」
魁星「(舌打ち)」
市長「(咳き込む)」
茜「田村さん、すいません。大丈夫ですか?」
市長「え、ええ」
茜「すぐ引き取りの作業にかかります。鍵を」
市長「はい」
茜「それと、できればこの場から立ち去って貰えると嬉しいです。見られるとまずいものがありますので、あぁ。安心して貰って大丈夫です。汚す事はしません」
市長「承知しました。私は、これで。」
(市長、立ち去る)
魁星「先生、どうしてあんなやつを。」
茜「魁星、お前の言っている事は正しい。だが、彼にも彼なりの”正義”がある事を理解しろ。本当にこの子の事を想うなら頭を使え。ただ争うだけじゃなんの解決もしない。」
魁星「…そうだけどよ」
茜「君、大丈夫か?」
(鍵を開ける茜)
魁星「……」
みい「だれ、おねぇさんたち。…またわたしを殴りに来たの」
茜「安心しろ。そんな事はしない。…私は、対忌み子特殊警察組織”ホープ”の保安官にして、忌み子の味方…椎名茜だ!」
(笑いかける茜)
(メールを京華達に向けて打つ魁星)
(間)
(場面転換)
(野球場にて)
赤城「や。十色さん」
雪「(舌打ち)……つけてたのか」
赤城「いえ、たまたまです」
雪「今度は何の用だい」
赤城「ちょっとした動きがあったので報告に。どうやら、例の子供がホープのエージェントの手に渡ったそうで。」
雪「知ってる。ホテルに連れ帰ったそうだな」
赤城「情報が早い…!ってことは、もうすぐ十色さんも動く感じですか?」
雪「ああ。流転教の事を調べた感じ、思ったより展開が早そうだ。で、あんたらの権限でそのエージェントをしょっぴく事はできないのかい。忌み子を保護するのは条例違反じゃなかったか?」
赤城「そうですねぇ、いやでも。そこは”死神様”の力をお借りしたいですね、僕としては。」
雪「なるほど、ハナから私を利用するつもりだったのね」
赤城「利用だなんて、いや心苦しい。こちらも色々な手配に追われていまして。それに…連中の中で厄介な相手もいるんですよねぇ」
雪「厄介な相手だと?」
赤城「ええ。それはもう面倒な。忌み子の英雄です」
雪「はっ。英雄は利用されるために存在してんのさ。そういう脳天気な奴ほど”摘み”やすい」
赤城「はは、まちがいないです。」
(間)
(場面転換)
(時刻は18時頃)
(名寄市、某ホテルにて)
みい「な、なに…」
茜「おい魁星、事件だぞこれは…!」
魁星「……」
茜「かっっっっわいい!!な、なんだこの子は…!可愛すぎる!風呂に入れただけだぞ…!
おめめくりっくり!おはだぷりっぷり!!1000年に一度の美少女とは、この子の事を云うんじゃないのか?」
みい「え。えと…」
魁星「落ち着け先生。怖がってるぞ」
茜「まじか、すまん!貢ぐので許してくれ!この通りだ!」
魁星「いや意味分かんねぇよ。」
茜「君、そういえば名前を聞いてなかった。教えてくれないか?」
みい「…みい。苗字は分からない。」
茜「みいちゃんか!いい名前だ。」
みい「ねぇ、なぐりにきたんじゃないの?…助けにちゃだめだよ。わたしは、いみごだよ」
茜「うーん…そういわれると、たしかになぁ」
みい「……」
茜「この可愛さは、人間の域を超えている!!なぁそう思わんか魁星!」
魁星「あー。このアホの言うことは放っておいてくれ。嬢ちゃんはれっきとした人間だ、いらん心配するな」
みい「え?」
魁星「嬢ちゃんは、ビョーキにかかっちまったのさ。ただそれだけで。その、だから……町の人間は、そのビョーキが許せなくて酷いことを言ったんだよ」
みい「でも、わたしが生きていたせいで、何人も死んだ。わたしの、せいで」
魁星「……」
茜「……」
みい「えらいおじさんがいってた。いみごは、みんな死ねって。おまえは小さいけどいみごだって、たくさんたくさんなぐられた」
魁星「…さっきのクソジジイか。」
茜「馬鹿…死んでいい人間なんていないんだぞ」
みい「わたしは…人間じゃ、ない」
(茜、みいを抱きしめる)
茜「言ったろ。助けに来たって。私は、君たち”忌み子”の味方だ。」
みい「……でも」
茜「ん?」
みい「わたしは、いみご、だって……!」
(みいの目から涙が)
茜「だーから。ビョーキだってば。インフルエンザみたいなものだ。人の子は、人だろ。」
みい「うそ、そうだよ。、なんにんもころしたよ、、まだおぼえてる。わたしがわたしじゃなくなって、気がついたらみんな倒れてるの。お父さんとお母さんも…目を閉じたまんま」
茜「真面目な子だなぁ…君は」
みい「人をころしたわたしは、死ぬべきなんだよ…!!」
茜「いけないことをしたなら、償えばいい。」
みい「え?」
茜「いつか許して貰える日が来る、絶対に。…君が人を殺したのは、君の意志と関係のないものだ。許してくれるに決まってる。」
みい「……!」
茜「だから、”死ぬべき”なんていうな。君は生きてていいんだ」
みい「…ほんとうに?」
茜「ああ、私の知り合いが校長をやっているんだが…実は忌み子だけの学校があるんだ。君も来い。同じ境遇や悩みを抱えてる子たちだっていっぱいいるぞ?」
みい「……う"。、ううぅうぁあぁ。」
茜「はは。泣け泣け、もっと泣け。その方が子供らしい」
みい「ぐすっ。…わたしも、その学校、いく。」
茜「…そうしろ」
(部屋の外にて)
(昔の自分と重ねて思い出している魁星)
魁星「……ふ。やっぱ流石だなあの人は。」
京華「よう、盗み聞きか?気色悪い趣味があったもんだな」
魁星「京華…(舌打ち)。ちげぇよ、あの場にいずらかっただけだ」
京華「お前馬鹿なのにたまに変な気使うよな」
魁星「うっせぇな!で?陸周りはどうしたんだよ。もしかしてサボってんのか?」
京華「車は一ノ瀬に任せてきた。俺はホテルの警備に付く。お前は立体駐車場に行け」
魁星「あいつ免許持ってたっけ?」
京華「とってからまだ3ヶ月くらいのペーパードライバーだけどな。」
魁星「は。お前のスープラ廃車になんじゃねぇか」
京華「その時は殺す。問題ない」
魁星「ぶっそうな奴だな…。」
京華「それより、ガキは、」
魁星「(煙を吐く)……”クロ”だ。首元に術印式があった。」
京華「…そうか。任務を続けるぞ。あのガキを安元さんの所に送り届ける。幸い、流転教も陽季隊もまだ動いてねぇ」
魁星「りょーかい」
(間)
(場面転換)
(ホテル前にて)
律歌「あ"ー。ひまだ。車見飽きたぞ…。ったくあの野郎!面倒な仕事押し付けやがって……!この任務終わったら絶対回らない寿司奢らせてやるからな…って、待て。なんだあいつ」
(そこには白スーツ、つぎはぎのマスクを被った巨漢が)
律歌「どう見ても怪しいよな。」
(メールを打つ律歌)
(間)
男「(大きな欠伸)よく寝たなァ。……気がついたら、もう着いてたぞ。」
流転教のエージェント「おいノロマ。標的の顔は頭に入ってるんだろうな」
男「おぉ、大丈夫だ。写真を持ってる。10さいくらいのガキだろう。」
流転教のエージェント「そうか、後は頼んだぞ。」
(車で去っていく)
男「よぉし、寝起きのストレッチと、行くぞぉ。……”我ここに命ず。禁書に宿りし暗黒よ。今ここに解き放て”」
律歌「おい、おいおいおい…!!よりにもよって、禁書持ちかよぉ…!」
男「”自閉暗門”(じへいあんもん) 」
(ホテル上空に黒い円盤が生成されてく)
男「いっぱい殺そう。おれが満たされるまで」
(間)
(場面転換)
(周辺の電気機器が全て消える)
律歌「こんなにはやく気付くもんかね…!」
少女「停電……?」
魁星「はぁ……!?」
茜「ついに…」
京華「始まったか…!」
(間)
(場面転換)
(京都某所、タワーにて)
(煙草を吸う雪)
雪「今夜は、降るな……。」
(間)
(場面転換)
京華「先生!」
茜「ああ…!スマホが死んだな。クソ、無線機でも持ってくればよかったか。」
京華「とりあえず地下に向いましょう。魁星もいる、動かないのは危険だ。」
茜「律歌も向かってればいいな…」
みい「どうしたの?」
茜「あー…急用でな、安全な所に避難しないといけない」
みい「急用って、なに?」
茜「君を狙っている悪い大人たちがいるんだ…だから。」
みい「分かった。いく……!」
茜「いい子だ、みいちゃん。走れるか?」
みい「う、うん……!」
京華「こっちだ!」
(場面転換)
(ホテルの廊下を走る3人)
(ホテルの中は騒々としている)
みい「はぁ、はぁ、はぁ。」
京華「…どうやら、俺たちの部屋だけじゃない。ここ周辺の機械類は全て駄目みたいですね…!」
茜「あぁ、さっき窓の外から謎の”蓋”を見た。あれが原因だろうな。十中八九禁書だろう」
京華「でしょうね…。電波に干渉する能力か……」
茜「それだけだったらいいがな。こっちがオマケの可能性もある」
京華「ですね」
みい「はぁ、はぁ……!」
茜「大丈夫か、みいちゃん。」
みい「ちょっと、休憩…わわっ!」
(茜にお姫様抱っこされる)
みい「だ、大丈夫……?」
茜「ははは、光栄だぞお姫様」
京華「安心していい。この人は、1回尽くしたら100回は尽くす人だ。」
茜「おい、人を害虫みたいにいうな!」
京華「…地下へ急ぎますよ。」
茜「ああ!」
赤城「いやぁ困りますよ椎名さん。英雄気取りは、いい加減にして貰わないと」
茜「…!お前は。」
(後ろを振り返ると赤城が立っている)
京華「先生?知り合いですか、」
茜「……知ってるもなにも、こいつが陽季隊の隊長だぞ」
京華「は?」
赤城「どうもこんにちはぁ。”久しぶり”だねぇ…京華くん」
京華「会ったことねぇよ。殺すぞ」
赤城「おぉ、怖い怖い。君は初めましてだね…小鳥遊みいちゃん、会いたかったよぉ」
みい「なに、この人……なんか気持ち悪い。」
赤城「結構傷付くなそれ!」
茜「はは。同感だ。昔からこいつは不気味なんだよ」
赤城「…さて、冗談はおいといて。本題に入ろう。あぁ急いでるんだろ?でも大丈夫。すぐ済ますからさ」
京華「……」
赤城「今その子をこちらに引き渡せば、見逃してあげるよ」
茜「はっ。お前やっぱり引くほど馬鹿だな、もっと食物繊維とった方がいいんじゃないか?」
赤城「頭に花咲いてるあんたには言われたくないけどなぁ。」
茜「…あの”蓋”を出したのはお前の部下か」
赤城「答える義理あるか?……まぁ、分かってたけどな。あんたが引かないことくらい」
みい「……」
(歩いていく赤城)
京華「逃げるのか?」
茜「京華、やめろ。今は急ぐぞ」
京華「…了解です。」
赤城「忠告はしたよ。じゃあな、椎名。どーせすぐ会えるだろうが」
茜「ごめん蒙りたいね。」
(3人、急いでいく)
(間)
赤城「殺せ」
赤城「ふ。はは、どう逃げるか見物だな。」
(後ろには3人の部下が)
(間)
(場面転換)
(電話をかけ続ける魁星)
魁星「出ねぇーし。クソ。電波妨害(チャフ)か……?ここらの機械類は全て使えなくなったとみた。”天恵”にしては広範囲すぎるよな……だとしたら可能性は1つ…”禁書”か。面倒だな……」
エージェント「……!」
魁星「っと。(ため息)……ガキの存在に気付くのはやすぎやしねぇか。まぁ、どの道バレてたんだろうけど」
(背後から近づいてきたエージェントを瞬間的に投げる魁星)
魁星「で。お前は…流転教か、陽季隊か。」
(拳銃の引き金を引く魁星)
男「おい。お前。そいつは俺の仲間なんだが」
(気が付くと背後にいる男)
魁星「は。…どおあっ!!」
(蹴り飛ばされる魁星)
魁星「こいつ、どこからっ!」
男「陽季隊の奴か。邪魔だな、よし殺そう。」
魁星「血の気の多い奴だな。返り討ちにしてやんよ」
(獅子王の鞘を抜く魁星)
男「日本刀使いか。ふ。ふふ。いっちょ前に」
魁星「ほう。なら試してみろよ。マウンテンゴリラみてぇな図体しやがって」
男「殺す」
律歌「魁星〜っ!!」
(律歌、走ってくる)
男「……!?」
魁星「律歌!おまっ、バカ正直に……!」
律歌「おらよっ!お土産だデカブツ!」
(回し蹴りをする)
男「五月蝿いのが増えた。」
律歌「壁かよ……!!」
(後ろに飛び跳ねる律歌)
律歌「無事でよかったぜ。電話通じねぇからよ」
魁星「やっぱか。やっぱ禁書の力か?」
律歌「あぁ、ホテルの前で見た。ここの上空に黒い円盤みたいなのが浮いてる、そのせいだろうな」
男「何をごちゃごちゃ喋ってるんだ…よっ!!」
(突如男が2人の前から姿を消す)
(魁星、銃を打つ)
魁星「んなっ!!消えっ」
律歌「……っ!」
(殴り飛ばされる律歌)
魁星「律歌ぁ!!……恐ろしく早い、わけじゃねぇ。なんだこの”違和感”は」
律歌「ってぇなぁ……!大砲みてぇなパンチしやがって。」
男「……死ね。」
(サブマシンガンを出して乱射する男)
魁星「次来るぞ、避けろっ!!」
律歌「うおおお!チャカ持ってんのかよ!」
魁星「……」
(二手に分かれて車を盾にして逃げる)
男「ちょこまかと…!」
(応戦して銃を使う魁星)
(だが中々狙いが定まらない)
(銃声が鳴り止む)
魁星「あぁ、めんどくせぇ…!律歌、合わせろよ!」
律歌「おっけー!」
男「ふん。”黒入道”」
(またも姿を消す男)
魁星「まただ…!消えた。」
律歌「透明化かぁ……?」
魁星「多分な!!律歌、動くな。耳ぃ澄ませとけ!」
律歌「……!」
(間)
魁星「どこにいる。へへ。こうなったら足音でバレんぞ。抜き足だろうが関係ねぇ」
男「馬鹿が。死ね……!」
(至近距離で銃を打つ男)
(身を捻るが左腕に何発か被弾する)
律歌「魁星!!」
魁星「はぁ!?くそ、なんなんだ……こいつの能力。歩法に秘密が、あるのか……」
男「はっはっは。弱っちいなぁ、お前ら。おれのかちだ。」
魁星「く……!あいつなら。」
男「(銃弾が切れる)む。弾切れか。やっぱりおれ、銃は嫌いだ。小さいし扱いずらい。大きい銃は、邪魔だし。…これにしよう。うん、これが一番しっくりくる」
(ナタを取り出す)
魁星「てめぇが死ねよ!!」
男「……」
(3連続連射するが、当たったそぶりはない)
魁星「は。この距離で……外すか?」
律歌「どけろおお、クソノッポ!!」
男「お前から死ぬか、チビ」
魁星「やめろ、律歌……!」
京華「芯」
男「あ。?」
(突然現れた京華に蹴り飛ばされる男)
(壁に衝突する)
男「どおおおあああ!!…俺が、蹴り飛ばされた!?」
京華「力に自信があるみたいだがな。てめぇはただデケェだけだド素人。」
律歌「お前……!京華!無事だったか」
魁星「届いたみたいだなぁ、俺の”メッセージ”」
京華「(舌打ち)クソみてぇな信号使いやがって。」
魁星「へへ」
茜「はぁ。はぁ。途端に早いんだよ、京華お前……!って、なんだあの巨漢は」
みい「くさそう」
茜「…案外容赦ないのな」
律歌「先生ー!」
茜「おう。朝ぶりだな律歌」
男「いてて。くそ、仲間を呼びやがって……。ってまさか。その女は依頼の。」
みい「……!」
男「ラッキーだなぁ!ここでぶっ殺す!」
京華「させるかよ。先生、ガキを俺の車へ」
茜「運転は」
律歌「私が行く!!…魁星、さっきのかっこよかったぜぇ」
(銃を打つポーズをする)
魁星「は?なにいってんだおま…!あぁ、そーゆう事ね。」
(魁星、何かに気付く)
男「お前らが何かしようがおれには関係ない!”黒入道”」
(男、姿を消す)
律歌「またアレか……!」
みい「消えた……?」
魁星「ああ。”奴は気配を完全に消す。足音すらな”禁書の力だろうが……」
京華「ふん」
男「死ね!!」
(みいの傍に現れる)
(ナタを振り下ろす男)
みい「きゃっ!!」
男「なに!?俺の能力を破ったのか?」
京華「知らん。どうせこうすると思っただけだ!…どおらっ!」
(数発アバラにパンチを入れる)
男「ぐおお!」
京華「寝とけ…!デカブツ。」
(再び蹴り飛ばされる男)
京華「今だ。行け、律歌」
律歌「おっけーっ!!行くか!」
みい「お姉さん!おじさん!ありがとう!」
茜「無事になぁ」
(茜、投げキッスをする)
京華「誰がおじさんだ。あのガキ」
魁星「はは、やっぱ髭それよお前」
男「ぐぬぬ……!許さん、次は殺す。」
(律歌、みいを乗せて車を発進させる)
男「くそおおおおお!!!」
(間)
(場面転換)
(赤城、ホテルの中にて)
(車を発見したのを見る赤城)
(電話する赤城)
赤城「今ホテルから出た。行け、追いかけろ。支部からも応援を出せ。なんとしても殺せ。民間人に被害が出ても構わん。」
(間)
(場面転換)
(車内にて)
律歌「はははっ!!めっちゃ追って来てる……!乗ってきたぜぇ!あたしの車さばきにかなうと思うなよぉおお!!」
みい「目が怖い……」
律歌「……よし、そろそろだな。」
(窓を空ける)
みい「え!?」
律歌「おらっ」
(銃を3発、追ってに向けて撃つ)
(間)
(場面転換)
(魁星、腕の止血を済ませている)
(京都、某所にて)
魁星「来たか。……”流順天(ごおりじゅんてん)”」
(みいが魁星の上に降ってくる)
みい「わっ!!!」
魁星「っと。あ"いででで。……よし、成功だ。」
みい「え?えっ?え?どうなってるの?私今車の中に……」
魁星「あー。混乱してるだろうが、大丈夫だ。夢じゃねぇぞ」
みい「……?」
魁星「後で説明する。今はここから離れなきゃだ」
(間)
(場面転換)
(離れた所に移動)
魁星「うー。寒ぃな。防寒具かなんか持ってくりゃよかった。ガキンチョ、お前は平気か」
みい「ねぇ、おじさん。そろそろ教えてくれない?さっきの、なに」
魁星「……」
みい「おじさん?」
魁星「……いや、なんでもねぇ。さっきのは”天恵”って言ってな。魔法だよ魔法。ちょっとしたな」
みい「魔法…?世界から、消えたんじゃないの。」
魁星「ところがそいつは違う。確かに、”世間から見て”魔法は消えた。だが本当は消えてなんかない。魔法としてあるべき形が変わっただけだよ」
みい「……?」
魁星「人間の体の中には魔氣ってぇのが循環してる。誰にもあるぜ?プラスの感情や不満や怒り…マイナスの感情なんかからも魔氣は生まれる。遥か昔はな、魔氣ってぇのを使って魔法を生み出していたんだ。だが、なんらかの原因により魔法は全く使えなくなっちまった。俺もなんでかは知らん。……だが、”禁書”っていう聖遺物?があってな。こいつはかつて存在した魔法を再現にできるっつー代物なんだが」
みい「?……?」
魁星「ま、歴史の授業なんかしたって分かる訳ねぇよなぁ。兎に角、魔法は消えてなんかない。俺も魔氣さっきのをやったんだ」
みい「禁、書じゃなく?」
魁星「”天恵”つったろ。魔術の全盛にあった大層なもんはできねぇけど……それでも、魔氣を上手いこと使えば1部だけは再現できる。稀だけどな…大体の人は”天恵”を発動できない。そうだな、500人に1人くらい。そんだけだ」
みい「ふーん。私も使えるかな」
魁星「忌み子なのに自意識がはっきりしてるしな、才能はあるんじゃねぇの」
みい「そうなんだ」
(歩道橋の正面に誰かが歩いてくる)
雪「(煙草を2本吸いしてる)あんたか、例の忌み子ってのは」
みい「あ?」
魁星「……は?なんだよあんた、急に。俺の妹になんか用か?」
雪「下手な芝居はやめろ。その背中の、刀だろ。」
魁星「……」
雪「こういう仕事やってる奴にはバレバレだぞ」
魁星「(舌打ち)(銃を向ける)どうしてここが分かった。」
雪「万一、陽季隊と流転教の目をくぐったとして逃走ルートに使うならここだと思った。」
魁星「保険ってわけね……」
雪「あとの半分は直感だ。なんとなくってやつ。案外馬鹿にできないぞ?運命的な出会いをすることだってある。」
魁星「……そーかよ!」
(銃を撃つ)
(当たり前のように避ける雪)
魁星「はぁ!?な、よけ」
(あとの7発も撃つが全て避けられる)
雪「邪魔だな。お前から消すか……」
魁星「ちぃっ!!」
(回し蹴りを食らう魁星)
(歩道橋から落とされる)
魁星「どおあっ!!…く。そが」
雪「ガキ。お前はあとだ。ゆっくりなぶり殺してやる」
みい「……!」
(剣先を向けられるみい)
雪「先に名を聞こう。」
魁星「松田魁星だ…!墓場まで持ってけクソ女!あと、そこのガキに手ぇ出したら殺すから。」
雪「魁星か。ふ、いい名前だな。私は十色雪だ。断言しておくが魁星。お前が今まで戦ってきた相手より100倍強いぞ、私は。」
魁星「……自信満々にいうじゃねぇの。」
雪「死ぬ気で来い、小僧。」
(間)
(場面転換)
(戦闘を続ける3人)
(茜と京華が押している)
男「はぁ、はぁ、はぁ。なんで、俺の攻撃が当たらねぇ……!」
京華「お前の能力、分かってきたぞ。”五感の鈍化”だろ。あのバカも言っていたが、デケェ図体の癖に足音すらも感じさせない気配の消し方…あいつはああ見えても耳がよくてな。見逃すとは思えん。」
男「くそ!!”黒入道”」
(姿を消す男)
京華「てめぇの方程式(ロジック)を暴けば、あとは簡単でな。……っ!」
(ナタを蹴り飛ばす)
京華「今まで禁書に頼って戦闘していたんだろうが、体術はまるで雑魚。話にならねぇよ」
男「舐めやがって……!」
茜「京華。油断するなよ…まだ奥の手があるかもしれん。」
京華「分かってますよ。それより先生」
茜「ああ、ここは任せたぞ。なんだか嫌な予感がするんだ」
京華「……」
男「おいおい、おれが逃がすと思ってんのか!!」
京華「てめぇじゃあの人は身に余るよ。ほら、さっさと来いよ。サンドバッグには丁度いいんだよなぁ、お前。」
男「…人をイラつかせる天才かよ!!骨すら残さねぇぞ!!!クソ野郎があああっ!!」
京華「ふん。プライドの高い…」
(間)
(場面転換)
(斬り合いをする魁星と雪)
(一方的に攻めるが全ていなされる)
魁星「おおぉおおぉ!!!」
雪「……」
魁星「……っ!」
(もう片方の手で発砲する)
雪「弱いな。」
魁星「だっ。!?ぐふっ!!」
(鞘でみぞおちをつかれる)
雪「なにを見て育った。期待外れもいい所だぞ魁星」
魁星「くそおおおお…!」
みい「おじさん……!!」
(ハイキックを受ける魁星)
(川に吹き飛ばされる)
魁星「冷てえじゃねかよコラ!」
雪「…丈夫なだけだな。」
魁星「この女……」
魁星M:ただもんじゃねぇのは分かってはいたが……!
魁星M:”100倍強い”ってぇのは、はったりじゃねぇ!!強すぎる…!なんだこのバケモンは!
魁星M:こんな奴、今まで……。
魁星「……は。はは。煙草までびっしょりだ。どうしてくれるんだよ」
雪「ほう。笑うか。」
魁星「笑わなきゃやってられねぇよ。なぁ、そうだろ?こんな腐っちまった世界でよ」
雪「……」
魁星M:ここで負けんのは別にいい。
魁星M:あのガキが逃げるまで時間を稼げりゃあいいんだ。
(魁星、頭を振り逃げろと合図を出す)
みい「でも……!」
雪「ふん。時間を稼ごうと魂胆が見え見えだ。大根役者だなお前」
魁星「だったら手本でも見せてくれよ」
雪「それが師の教えか、魁星」
魁星「あ?」
雪「あのガキのために死ぬつもりか。笑えるほどくだらない信念だ。」
魁星「うっせぇよ、てめぇよりマシだ。……その服、陽季隊でも流転教のでもねぇ。雇われってところだろ。金の為ならなんでもするのか?」
雪「私は強い奴と交えたいだけさ。金はそのついでだ」
魁星「そーかよ」
雪「人生は1度きりなんだ。楽しまなきゃ損だろ」
(雪、思わず笑みがこぼれる)
魁星「……」
雪「どうだ魁星。まだお前は弱いが、センスはある。私なら鍛え直せるぞ。その眼は、修羅。私と同類だ……」
魁星「一緒にすんなよなぁ…!そんな生き方はごめんだよ、クソ戦闘狂め。それに師匠は間に合ってんだ。」
(しけたダバコに火をつける)
雪「ふ。はははは!!…面白い、気に入った。来い!!魁星!!」
魁星「おおらっ!!」
(魁星、勢いよく刀を薙ぎ払う)
(刃がせりあう)
(間)
(場面転換)
(ホテルにて)
赤城「何やってんだよ。まだ追いつけない…?あっそ。どうせすぐ燃料切れになるか…長距離だと思えばいい。焦るな。(ため息)十色雪もどっか行きやがったし。てゆーかあの人、本当に仕事やるきあんのかなぁ。まぁ、あの人の事だ。考えがあるんだろうけ……ど。待てよ。”考えがある?”…………流転教の男と、銃声。逃げるスープラ。そんな事は奴らも分かっていたはず」
赤城「モールス信号か……!」
(赤城、スマホを握り潰す)
(※スペアはある)
(間)
(場面転換)
(都内某所にて)
(都内の外れにある屋敷”影楼邸”にて)
隼人「おおよそ800年前、禁書は全て陽炎の支配下にあった。だが、あろう事か陽炎内の内乱によって、武器として導入された。内乱が終結したあと、我々が有していたのは1番と2番…飛んで8〜13番の7ページだけ。………どういう事か、分かるな。」
一世「ええ。我々”陽季隊”は、忌み子を掃討し、禁書を全て回収する為に結成された組織。在るべき形へと、この身を神に捧げた兵達(もののふたち)の組織。禁書は、他の誰にも渡すつもりはありません。例え相手が富も才もない一般市民だとしても。”執行”の対象です。」
隼人「そうだ。お前とはいえ失敗は許さん」
一世「はい、心得ております。必ずや貴方様の元へ禁書の力を引き渡す事を約束しましょう。……例の件も、おそらく大丈夫かと。」
隼人「何故そう言い切れる」
一世「”死神”…十色雪が対処しています。彼女に勝てる生物は、日本…いや世界中を探してもいないでしょう。」
隼人「……そうか、奴を。」
一世「はい」
隼人「今はその時じゃないにしろ。いずれ牙を向くかもしれん。気を付けなければな」
一世「はい」
隼人「(ため息)本当に不気味な奴だよ。……あれも伊佐美(いさみ)の血筋なんだろうが。」
(間)
(場面転換)
(魁星、うずくまっている)
(いくつもの傷を負っている)
雪「おい、聞こてるか。」
魁星「……ぁ''う"う"」
雪「勝てないのはどっちみち分かっていただろうに。(ため息)……最期になにか、言い残した事はあるか?」
魁星「げふっ、がは。ねぇな……!地獄に落ちろ!」
雪「ふん。死ね」
魁星M:わりぃ…先生。俺はここまでみてぇだ
みい「待って!!!」
雪「……」
魁星「何やってんだ、クソガキ。」
みい「これ以上、私のせいで誰かが傷つくのは、みたく、ない!おじさんも、あのおねぇさんも全部私のためなんでしょう?!私のために、戦ってくれてる……!」
雪「震えてるぞ。ガキ」
魁星「馬鹿野郎……死にてぇのか」
みい「生きたいよ!!!いっぱい生きたい!!おばあちゃんになるまで、私は生きたい!!でもそれは1人でじゃない!!誰かと、一緒に生きたい!!」
魁星「……」
みい「ね。私ね……さっき、生きてていいんだって言われて、本当に、嬉しかったんだよ。だから私は…まだ、諦めないよ。!貴女に勝つ!勝って、おじさんと逃げる!」
魁星「はは……なんじゃそりゃ」
雪「ふん。どいつもこいつもくだらないな。馬鹿みたいだよ、お前ら……!」
魁星「ガキっ!!!」
みい「……!」
茜「よく言ったぞ、みい」
雪「あ?」
(みい、覚悟する)
(雪、刀を振り下ろすが誰かに薙刀で止められる)
茜「ふ。ははは。将来が楽しみだ。生きて魅せろ。道は私が作る」
みい「お姉さん!!」
魁星「茜先生……。おい!おっせぇんだよ!!」
茜「すまない、待たせたな。魁星…お前も、よく耐えた。」
雪「あんたが、赤城の言っていたやつかい」
茜「さぁ、そんな奴は知らないな。」
雪「…あんたもいい目をしている」
茜「…魁星、私こいつとキャラ被りしてないか?」
魁星「今はいいだろ!アホ!」
雪「(急に斬り掛かる)そこの弟子じゃまだ腹いっぱいにならなくてさぁ。あんたなら満たしてくれそうだ」
茜「はっはっは。どうかな……魁星、あとは私に任せろ。」
魁星「は?」
茜「みいを連れて逃げろ……っ!!私はこいつに手がかかりそうだ」
魁星「ああ、分かった。先生…こいつ強いぞ。多分あんたより」
茜「はは!上等だよ!」
魁星「律歌にガキを送り届けたら、すぐ戻る。それまで生きて伸びててくれよ……!」
茜「気長に待ってるさ!」
みい「頑張って!!!」
魁星「死んだら殺すから!」
(2人、離れていく)
茜「はは。いい子だちだ。人に恵まれてるな私は」
雪「理解できないね……あんたも他人の為に死のうとする口かい。」
茜「当たり前だろ。それより、標的を逃がしていいのか?」
雪「獲物は1匹に絞らないとルール違反だろ」
茜「はは、まるで獣だ…なっ!!」
(刃がせりあう)
雪「そのくだらない信念は、私が否定してやる」
茜「自分らしく生きるのがいけないのか?」
雪「は?」
茜「…人生は1度きりなんだ。楽しく自由に行こう。でないと、女が廃る」
(ワンピースだったらドン‼️みたいなカットであって欲しi…ごめんなさい、集中して書きます。)
(間)
(場面転換)
(走る2人)
魁星「…いてて。」
みい「大丈夫?おじさん」
魁星「ああ?こんなん屁でもねぇよ。それよりクソガキ」
みい「なに?」
魁星「なんで俺と京華がおじさんで、先生がお姉さんなんだ。あの人は歳上だぞ」
みい「……お姉さん、大丈夫かな」
魁星「おいコラ無視すんな。トドメさしてやろうか」
みい「心配……」
魁星「お前が心配しなくても、勝手にくたばるような人じゃねぇよ。ふふ。ゴキブリみてぇにさ、頭だけでも生きていけそうだ」
みい「おじさんもさっき諦めようとしてたのに…」
魁星「うっせ。」
(間)
(場面転換)
(正確な薙刀捌きで圧倒する茜)
茜「おおぉおおおおお!!!」
雪「はははは!!いいぞぉお前…!強いな!名を、聞こうか……!私は十色雪だ!!」
(間)
(場面転換)
(ホテル、外にて)
(男との戦闘を終えた京華)
京華「はぁ、はぁ、はぁ。……これは」
(間)
(場面転換)
律歌「まいたか?いや、まいたっつーよりは、諦めたか??……うえー。疲れた。2回くらい車ぶつけちゃったな。あとで、京華に謝らなきゃ……おお!?雪だ…!はは。すげぇ綺麗。あいつらは無事に見れてっかな」
(間)
(場面転換)
(律歌に電話をかけ続ける)
魁星「ってぇ出ねぇしクソが!!早く気づけよなぁ、あのバカ!」
みい「はぁ、はぁ。おじさん、あれ……!」
魁星「あぁ!?なんだよ……って、。(白い息を吐き出す)」
みい「ゆき……!」
魁星「あぁ、そうだな。急ぐぞ。あとで好きなだけ見せてやる。…ようやく繋がった、律歌!」
律歌「魁星、無事だったか。こっはかたずいたぜぇ!てかなぁ外!」
魁星「それどころじゃねぇ!!椎名、今すぐ落ち合うぞ。」
律歌「はぁ?お、おう?」
魁星「先生が危ねぇ!」
(部下の車で移動中の赤城)
赤城「早くだ、早く捜索しろ……!忌み子は別ルートをとっている!京都中を!!一刻も早く!!
……ったく。あいつら、面倒な事を!!椎名の奴め……!」
(7年前)
(季節は春)
赤城M:僕は、椎名茜が嫌いだ。昔からそうだった。
赤城M:7年前。僕らはホープが運営する警察学校にいた。憎たらしい事なんだが、こいつは何をやっても完璧にこなし、超人みたいなやつだったのを忘れるわけもなく、覚えている。
(訓練中にて)
赤城「ってぇ……!」
茜「ははは。踏み込みが甘いぞ、赤城。」
赤城「逆に恐怖を感じないのかお前は」
茜「感じないな!!私は、1秒たりとも無駄にしないように生きている」
赤城「意味分かんねぇ……」
茜「”明日ありと、思う心の仇桜”という言葉を知っているか?」
赤城「知るか」
茜「特別に教えてやろう。あの美しく咲き誇る桜はな、次の日も咲いているとは限らないんだ。急な突風が来るかもしれないし、雨だって降るかもしれない。それでも無駄にしないために精一杯咲くんだよ。」
赤城「お前は桜のように生きてるってか」
茜「ああ、そうだ。」
赤城「益々意味が分からん」
茜「いずれ分かる日が来るさ。お前にもな」
赤城「……そーかよ」
赤城M:けれど、不思議な奴だった。すました顔も、バカでかい声量も。男の俺より力が強いことも、なにもかもムカつくけど。
赤城M:誰よりも自由に、生きていた。
(訓練所の外にて)
赤城「は?保安官になるのか?首席のくせに」
茜「ああ。やりたい事があってな」
赤城「保安官でやりたい事?なんだよそれ」
茜「まだ秘密だ。ふふ。お前にはどうせ理解して貰えないからな」
赤城「なんだよそれ……教えろよ。」
茜「断る。お前も保安官に来るなら教えてやる」
赤城「僕は、この組織の上に立てるような男になる。父上との約束なんだ」
茜「真面目な奴め。お前ならできるんだろうがな」
赤城「…お互い5年後には、叶えられてるといいな」
茜「そうだなぁ」
赤城「そうしたらさ、椎名。」
茜「なんだ?」
赤城「約束をしないか。」
(間)
(場面転換)
(京都某所にて)
(電話がかかってくる赤城)
赤城「ああ、うん。そうか。…………了解だ。……構わない。椎名茜を、殺せ」
赤城「皮肉なもんだな、椎名。こんな形で相対するなんて。僕も、覚悟を決めなきゃな。」
(部下に指示を出す赤城)
(間)
(場面転換)
(勝負は互角)
茜「はぁ、はぁ。はぁ。」
雪「く。ふふふ……!いつ以来だ。この高揚感……死を、感じるぞ。」
茜「私もだ……だが、私は生憎と死ぬわけにはいかなくてな。かわいい弟子たちと約束したんだ。」
雪「そーかい。じゃあ、次がファイナルラウンドってことで……!」
茜「ああ!行くぞ!!十色!」
(互いに構える)
(緊張した間)
雪「……っ!!おい、茜!」
茜「は」
エージェント「死ね……!」
(エージェント、マシンガンを茜に向けて発射する)
(身を切るが数弾被弾してしまう)
茜「なっ!?……く。う"ぁ"っ!!」
雪「赤城か……!あのクソ野郎っ!」
エージェント「……っ!(銃ごと斬られる)」
茜「く、そ……!油断した」
雪「……やってくれたなぁ…おい!」
赤城「(拍手)いやぁ、お見事な闘いでした。ですが、ここで幕引きにしましょう。時間がかかりすぎだ」
茜「お前は……赤城、」
雪「小僧。何勝手に私の獲物に手ぇだしてんだ。殺すぞ」
赤城「十色さん、あなたにはがっかりしましたよ。死神と恐れられたあなたが、まさか子供1人殺すだけの任務を失敗するなんて」
雪「まだ終わってねぇよ、あとで殺す。」
赤城「だぁから!時間がかかりすぎなんですって。こんなアバズレ女はいいから、とっとと向かってくれませんか?」
雪「……(舌打ち)(刀をしまう)」
赤城「それでいいです。また、会いましょう」
雪「あまり調子に乗るなよ。獲物を奪われたなら、手は出さない主義なんだ。その代わり……ガキを殺したら、次の標的はお前だ」
赤城「おぉ怖い怖い。それまでに高飛びでもしようかなぁ」
(雪、立ち去る)
(間)
赤城「さぁて、椎名。どうだ…?今の気分は」
茜「あ、ぁ"ぁ……最悪、だ」
赤城「よかった。苦労したかいがあったよ。ホテルであの女が撃った銃声……ツートントン。モールス信号でいう”通信技術”の信号だろ。松田魁星に向けた合図だったって訳だ」
茜「よく、気付いたな。はは。かしこい、やつだ」
(右手で頬を掴んで顔を持ち上げる赤城)
赤城「最期にチャンスをやるよ、椎名。僕のものになれ。僕のものになったら、助けてやる」
茜「…馬鹿。なるわけないだろ」
赤城「…そーか。なら死ね」
(傷を抉られる茜)
茜「あ"ぁぁぁあぁぁぁぁぁぁあ……!!」
赤城「なぁ、椎名。知っているよな。陽季隊”は、僕が作った、目的の為ならなんでもやる組織だ。法律なんて関係ないのさ。……そう例えば、上層部のおっさん共にウケがいいんだよお前。顔と身体だけはいいからなぁ……まわさせて、服従を強制させてさぁ、そりゃ愉しいだろうなぁ、はは、はははは!」
茜「…………!」
(思い切り振りかぶって殴る赤城)
(馬乗りになってそのまま殴り続ける)
赤城「僕には、お前の周りの人間をなぶって、いたぶって殺すことだってできる。勿論合法的に。いいか……!お前には、夢も!希望も!なにもかも無駄に終わるんだよ!!!ははは!お前にはおあつらえ向きの人生だったなぁ!!」
茜「……」
赤城「はぁ、はぁ。はぁ。……だから、生きたいっていえ。僕がお前を、自由にしてやるよ。椎名。なぁ、あの日だって…約束、したじゃないか」
茜「……あか、ぎ」
(間)
(場面転換)
(7年前)
茜「約束だと?」
赤城「ああ。お前のやりたい事は、その時に教えろ。お前の事だ。きっとそれは馬鹿みたいな事をやっているんだろうが」
茜「はは。信用されているな」
赤城「……僕も、夢を叶えるさ。ホープを引っ張って、時代を作れるような組織に変えて見える。そして、2人で飲みに行こう。だからさ椎名」
赤城「諦めてくれるなよ」
(間)
(場面転換)
赤城「なぁ、飲みに行こうって。約束したよな?……これがお前の”やりたい事”だったのか?椎名。僕は、悲しいよ。いや、どうせこうなるのは……僕も、分かってたかもしれない。椎名!!僕は、ずっとずっとお前が嫌いだった!なんでもできるお前が、自由に生きていたお前が!!!でも、お前は今!!生きずらいだろう!?どう考えても、不自由じゃないか……!僕とくれば、時代を変えれる。お前は、僕の隣で笑っていろよ!」
茜「……(息を大きく吸う)赤城。」
(思い切り頭突きする茜)
赤城「椎名ぁ……!!お前なんで立って。」
茜「お前じゃあ、時代は作れないさ。”目的の為になんでもやる組織”だと、ふざけるな」
赤城「改革に犠牲はつきものだ!!多少は目をつぶれ!!いいか、僕はホープを」
茜「どんな理由があろうとも、人を殺していい理由があってたまるか!!忌み子もそうだ、私たちと同じ人間なんだぞ…!」
赤城「……どうして、分かってくれないんだよ。」
茜「ふ。分かる日など来ないさ。優等生のお前になんかな。……時代は、私たちが作る。忌み子が平等に。人間らしく暮らせる世界にする。もうお前には、誰も殺させない!!」
赤城「馬鹿が……!!その傷で、僕に勝てるつもりか。死ぬぞ」
茜「はは。死ぬまで咲いてみせるさ…!私らしくなぁ!」
赤城「……!!」
(茜、ボロボロの体で赤城に向かっていく)
(間)
(場面転換)
(待ち合わせ場所にて)
律歌「魁星!…って、おまっ、すっげぇつらしてんぞ。大丈夫か!?」
魁星「ガキを頼む!!俺は行く!」
律歌「どこにだよ!!教えてくれ、私もあとで……!」
魁星「時間が、ねぇ。先生が……!なんでか、胸騒ぎが止まなくてよ、俺。」
律歌「…分かった。先生は頼んだぞ、魁星!!行ってこい!」
みい「ありがとう、おじさん!お姉さんを、絶対に助けてあげて!!」
魁星「ああ!!任せろっ!!」
(場面転換)
魁星「はぁ、はぁ、はぁ。」
魁星M:頭がクラクラする。肺が張り裂けそうだ。クソ……貧血か。あぁ、最悪の、日だ。なんでこんな……!あの人なら、多分大丈夫なはず。
魁星M:あんたは、神様に愛されてんだよ。
魁星M:ハッピーエンドなんか用意しなくて、いいから。頼むから無事でいろよ。あんたが生きてりゃあそれでいいんだよ、俺は。
(間)
(場面転換)
(2年前)
(よしのやにて)
魁星「(欠伸)」
京華「よし一ノ瀬、死なない程度に殺すぞ」
律歌「あたぼうよ!とっ捕まえて車に乗せてやる!」
京華「…魁星」
魁星「ん。ああ?どうしてお前らがここに……」
(京華に顔をどんぶりの中に入れられる)
京華「任務だ馬鹿。忘れてんじゃねぇ。散々電話してやっただろうが」
律歌「京華…おっ、おまっ!えげつないことするなぁ〜」
京華「知るか。おい、伸びてんじゃねぇぞ。とっとと準備しろ。先に乗ってるからな」
魁星「てめぇ…………京華ぁあ〜?」
律歌「車行ったぞ…あいつ」
(京華、既に店内にいない)
魁星「はぁ!?あいつ〜!!今日という今日は許さねぇ!食べ物を粗末にしやがってぇ!!ぶっ殺してやる!」
律歌「いやそこかよ!!」
魁星「あぁ!?なんか言ったか!」
律歌「もうなんでもいいよ…」
魁星「待ちやがれこらぁあああ!」
(間)
(場面転換)
(作戦会議にて)
(叱られている3人)
茜「店の中で騒ぎを起こすなぁ!何回言ったら分かるんだお前たち!!仮にも警察が!」
京華「仮にもってなんですか」
茜「黙れヒヨっ子!」
律歌「先生ぇ!あたし悪くない〜!なにもしてないってばぁ!暴れたのはこいつら2人だけで!」
茜「お前が止めればよかっただろう?」
律歌「そんなぁ…」
茜「…たく。お前ら2人は、喧嘩するほど仲がいいというが。やりすぎなんだよ、少しは自重しろ」
京華「……はい」
魁星「……はい」
茜「ったく。……ふふ。」
魁星「…なんで、笑ってるんだよ」
茜「いいや、なんでもないさ。ははは!」
魁星「なんかあるんだろ!教えろよ!」
京華「ガキかお前は」
魁星「あぁ!?」
茜「あはははは!!」
(間)
(場面転換)
魁星「先生……!!」
(場面転換)
赤城「”我、ここに命ず。禁書に宿りし雷神よ。祝祭を挙げ裁きを下せ”」
茜「っ!禁書の力……!!」
赤城「雷弁天(らいべんてん)!!」
(青と黄色い雷が赤城の体を纏う)
(茜の薙刀と衝突する)
茜「おおぉおおぉおお!!」
赤城「椎名ぁあぁあぁ!!」
茜「弾かれる…っ!!」
(後ずさりする茜)
赤城「……」
茜「厄介な能力を手に入れたなぁ、赤城!」
赤城「お前は、せめて僕の手で殺してやる!!」
魁星「先生ぇえぇ!!!」
赤城「……!!」
茜「…魁星か!」
魁星「なんだ、あいつ。あの女じゃ、ない?」
赤城「……椎名、見とけ。無駄なんだよお前がやってきたこと全て」
茜「まさか、お前……!魁星!!逃げろっ!!」
魁星「は?」
赤城「鳴神(なるかみ)!!」
(二色の雷が魁星の方へ飛んでいく)
(茜、瞬時に魁星を庇う)
茜「……っ!!!」
魁星「お、おい……!何やってんだよ。先生えぇえええぇ!!」
赤城「はぁ、はぁ、はぁ。……ふはは。どうだ、やって、やったぞ。」
茜「世話の、やける弟子だ……」
魁星「先生、先生。……お、俺。」
茜「馬鹿。気にするな。かすり傷だこんなの…唾つけとけば勝手に治る」
魁星「なにいって!!」
赤城「さっさと僕に下らないからこうなるんだぞ。」
魁星「てめぇ……!!!!」
赤城「猿が。次はお前が受けるか?」
魁星「ぶっ殺す!!!」
茜「よせ、魁星。大丈夫だ。私に任せろ」
魁星「あんたは黙ってろ!!待っとけ、こいつをぶっ殺したあと直ぐにあんたを……!!」
茜「任せてくれないか?」
魁星「先生……?」
茜「赤城。無駄な事なんて、1つもない。全てに……意味がある」
赤城「あ?」
茜「”我、ここに命ず。」
赤城「……っ!!椎名!?」
茜「禁書に宿りし英雄よ!空を駆け白楼の元に集え…大筒神”!!(おおつつがみ)」
(その瞬間、白い刃が地面から生えてくる)
(あっとゆう間にその場を埋め尽くす)
(魁星と茜が赤城の前から姿を消す)
赤城「……これは!!まさか!」
(間)
(音が落ち着く)
赤城「禁書の原典…”不完全の能力”、か……。椎名。(ため息)…最期にやってくれたな」
(空を見上げる)
(そこには、降り続ける)
(間)
(場面転換)
(魁星、茜をおぶって進む)
茜「いいよ、魁星。自分で歩ける」
魁星「その傷で、歩けるわけねぇだろ。」
茜「お前だって…酷い怪我じゃないか」
魁星「あんたよりはマシだ。おぶられてろ」
茜「…よくできた弟子だな」
魁星「けっ。さっきと手のひら返しがすげぇな。てゆーか、先生。あんな禁書(もん)どこから拾ってきたんだよ。俺たちにはなにもかも……」
茜「はは……内緒、だ」
魁星「ふん。謎の多い人だ。」
茜「ミステリアスな美人っていいだろう。」
魁星「自分でいうな。……なんで逃げなかった」
茜「私が、そう決めたから。かな。私があそこで引いたら、みいが殺されていただろ。1度決めた事は…曲げない主義だ」
魁星「…そーかよ」
茜「ああ。はは…、頑張ったぞ。弟子のお前らに負けないくらいにな」
魁星「ただの負けず嫌いじゃねぇか」
茜「なんとでもいえ。……なぁ、魁星。」
魁星「なんだ」
茜「あいつらに、伝えて欲しいことがある」
魁星「は?なぁに馬鹿言ってんだよ。自分で伝えろ。もう少し待ってろ、あと少しで…また会える」
茜「律歌は、、まっすぐな子でさぁ。はは、5年後には私みたいになってそうだな。注意しとけよ。たまに、危ないことをする。……京華は、正直最初に会った時。こいつとは仲良くなれなさそうだと思った。けど、黙ってついて来るんだよなぁ、はは。頭がいい癖に不器用なんだあいつは。」
魁星「先生、もういいよ」
茜「魁星、お前もあいつに劣らないくらい不器用だ。口下手だ。そのくせ……口が悪い。もう少し気持ちを伝える努力をしたらどうだ……?」
魁星「だー!分かってんだよ!そんな事!!黙ってろってば!!なぁ先生!!」
茜「テキトー好きの、大馬鹿者め。はは、最高だよ、お前たち。……みんな、私の宝物だ。」
魁星「子供扱いしてんじゃねぇよ…!俺ァもう21だ!!京華は23!律歌も、立派な20歳になった。もう……いいから、喋るな」
茜「ふふ。私からしたら、かわいくてかわいくてたまらないんだよ…お前たちがさ。」
魁星「……」
茜「魁星?泣いてるのか?」
魁星「泣いてねぇよ!!ぶっ殺すぞ!!」
茜「は。物騒なやつめ」
魁星「育ちが悪かったせいだよクソが。あんたには、言われたくない……!先生、絶対ぇ死なせねぇからよ!!!俺はまだ、あんたに教えて貰いたいことが山ほどあんだよ!!今更…俺を捨てるのな!!」
茜「……私も、そうしたかったがな。もうじき死ぬ。解るんだ」
魁星「先生ぇ……!!」
茜「大丈夫だよ、魁星。この長い冬には、いつか明ける。そして緑が芽吹き、暖かな春が……やって来る。私も…叶う事なら。もう1度だけ、桜が綺麗な……陽だまりの下で。お前たちと歩きたかったなぁ」
魁星「馬鹿野郎ぉ!!桜なんて、毎年見れる!!諦めた気になってんじゃねぇよ!、!ふざけんなぁ!先、生……!先生?おい、返事しろ」
茜「……」
(魁星、先生を降ろす)
(息が荒くなる)
魁星「先生!おい先生ってば!!おぉい!!……く、そ。死んでんじゃねええぇえぇええぇえぇ!!なんで、なんでこんなところで!!」
茜「……」
魁星「生きてて貰わなくちゃあ、俺が困るんだよ!!俺は、俺はァ……これからどう生きれば!」
茜「ばか。……それくらい、自分で決めろ」
(茜、銀色のライターを魁星に押し付ける)
茜「……私からいえるのは、ここ、までだ。」
魁星「先、生……」
(京華と律歌が来る)
律歌「あ、いた……!魁星!!茜先生!」
京華「……!先生」
魁星「お前らっ……」
律歌「……っ!!(律歌、魁星の胸ぐらを掴む)なにやってんだよ!魁星!!さっき言ったよな、先生を頼むって!!お前は任せろって。答えたよなぁ!!おい!なんとか言えよ!!」
魁星「……」
京華「一ノ瀬!やめろ!」
律歌「京華……!でも」
京華「先生を病院に運ぶぞ。まだ助かるかもしれねぇ」
律歌「あ、ああ!!先生、車に乗せるからなぁ!頼むから無事でいろよ!!」
(間)
(場面転換)
魁星M:いつから、どうして。こうなってしまったんだろう。
魁星M:いいや、いつからなんて。きっとなくて
魁星M:最初からこうなる運命だったのだろう。
魁星M:なぁだったらさ、テキトーにしか生きれない俺は、どう生きるのが正解だったんだ?
魁星M:俺がどう生きれば、あんたは死ななかったんだ。
魁星M:全部、運命だったのかよ。
魁星M:教えてくれよ、茜先生。
おわり。
……epilogue story……
こちらは本編の番外編です。合わせて読んでも読まなくてもどっちでも大丈夫です。
(6年後)
(季節は春)
(ラミエルサール教会前、墓場にて)
(椎名茜の墓場前にて)
(風の音)
みい「……今年も、春が来たよ。見て、すっごい綺麗な、桜。ふふふ。……あれから、もう6年も経つんだね」
律歌「みいー!早くしろ!新学期早々遅刻する気かー?」
(クラクションの音)
みい「うん!!今行く!!……じゃあね、茜さん」
(桜のブーケが添えられている)
(間)
(場面転換)
(喫茶”双葉”にて)
(ローマ字で”椎名茜”と刻まれたライターを、虚ろな目で見つめる魁星)
(そのライターで火を付ける)
魁星「(ゆっくり煙を吐き出す)……春、か。(舌打ち)……枯葉剤作ろうかな」
……あとがき……
ご覧いただきありがとうございましたー!
どうでしたでしょうか、椎名茜の生き樣。って、やめてやめて!そんな目で僕を見ないで!毎作品でキャラクターを殺さないと気が済まないクソ作家だと思わないで!!僕の物語面白くなくてごめんね!土下座!んもう土下座!靴舐めていい?舐めさttttt(爆発音)はぁい、最初にを含めてふざけすぎですねぇ……不快に思われていた方がいたら大変申し訳ありません。息抜きでちょっとふざけたつもりがやりすぎました。僕を止めて下さい。
個人的には、アニメ展開のようなシーンを幾つも入れてみたり遥か彼方とは大分作風の変わった作品になったんじゃないかと思います。ちゃんとしたプロットを書いていたわけではなくて、書いている途中に自然にこういう作風にしようと思いついてこっちのベクトルで考えてみたんですが、ウケが悪かったですか、ね。はい。毎作品で変えていく可能性があります。それはすまん。茜先生は死んでしまいましたが、触れていない設定等もこの後のシリーズシナリオ「rage/影なき世界」で全て明らかになりますので、気になった方は僕に連絡してくださいね。5秒で仕上げるから。だから無理だって。
本作『英雄は白き桜の下で眠る。』は『遥か彼方、覚める事のない空の向こう側に。』の前の時系列にあったお話になります。しつこいようですが、遥か彼方も読んで頂けると納得できるシーンがあるはずです。是非お願いします。って事で、数少ないそこの読者のあなた。また会おうz。
市原きゃべつ
#「英雄は白き桜の下で眠る。」 @itihara_kyabetsu
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