第3話もうすぐ

僕のおばあちゃんは90歳になる。


最近はずっと寝たきり。


お父さんとお母さんはもう長くはないんじゃないかって言ってる。


そんなおばあちゃんの口ぐせは、もうすぐ。


「もうすぐなんだよ。」


おばあちゃんは怒ったような、悲しいような表情でそう言う。


たぶん自分の死を予感してるのかな。


「もうすぐ。あ、もうきた。」


その日、おじいちゃんが死んだ。


おばあちゃんと同じくらいの歳だったんだけど、まだ元気だったから突然の死にビックリした。


だって昨日まで元気だったんだよ?


おじいちゃんは廊下で泡を吹いて死んでいたんだ。


目を見開き、苦しそうに死んでいた。


おじいちゃんのお葬式の間もおばあちゃんは呟いてた。


「もうすぐ。もうすぐ。」


おじいちゃんのお葬式が終わってからかな。


おばあちゃんが狂ったように叫び出したんだ。


「あーあ!!来たぞ!もうすぐだ!!。」


ついにおばあちゃんも、おかしくなったんだと思った。


おばあちゃんが叫んだ次の日、お母さんが死んだ。


階段で足を踏み外し、そのままゴロゴロ転げ落ちたんだ。


頭がパックリ割れて死んじゃった。


もう悲しいのかも分からない。


だって立て続けに、大切な人が二人も死んだんだ。


このとき僕は気づいてしまった。


おばあちゃんが「もうすぐ」って言ってるとき、微笑んでるんだ。


悲しい顔なんかじゃない、あれは笑ってるんだって。


おばあちゃんが言う「もうすぐ」。


それは僕たちに向けた呪いじゃないのかって。






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