6.家信レイディングから作品を守る


「あっちの世界でも、ああやって色んな女と関係をもってトラブルだらけだったんだぜ」

「か、関係って……乃愛のあは?!」

「まあ、お父さんがいるから、大丈夫っしょ」


 なんて、悠長な事を言っている彼ら。


「でもあいつが行く先々の女に手を出すから、トラブル続きでなかなかタナカ家にたどり着けなくて、大変だった」


「なによ、リードだけじゃないでしょ? ハテン、あんただってたどり着いた町の家に不法侵入して壺を割ったり、タンスを荒らして、泥棒扱いされて大変だったんだから」


「それを言うなら、リアだって路銀を稼ぐために村長狩りを繰り返して、大体の町が出禁なんだそ!」


 ギャイギャイと喧嘩を始める二人。


 ……泥棒と詐欺師と村長狩り……。


 ゲームの勇者って、悪を倒すから正義な訳で。一歩間違えると犯罪者に限りなく近い存在だよな……。



 ――そんな時、台所に居た母親が「ぎゃああ!」と叫び声を挙げた。

 咄嗟に反応して台所へと向かうハテンとリア。


 俺も遅れて現場へたどり着けば――、


 さっき倒したはずのミスター・エックスが居たのだ!

 また体を乗っ取られたのか、くれないよ。


 ミスター・エックスは『クックック……』と代わり映えのしない悪役笑いをし、


『我は魔王様を倒さない限り、何度でも蘇るなり。さっきは魔法を使うのを忘れた。今度は魔法を使うぞ!』


 と、手足を交差させて魔法を使う宣言をするミスター・エックス。

 すると、リアがずずいッと前へ出て、


「へえ、この大魔法使いリア様に魔法で勝とうなんて、百年早いわ!!」


 ミスター・エックスとリアから謎の気迫がブワリと溢れた。



 二人は構え、魔法合戦が始まった!



「ファイアーボール!」

炎玉エンダマ!』


 リアとミスター・エックスの炎の玉が、お互いにぶつかり合う。

 ギリギリと湾曲して競り合い続け、やがて相殺された。


 ――傍観者の俺は、呪文名を聞いて嫌な予感がした。



『やるな!』

「そっちこそ!」



「アイスボール!」

氷玉ヒョウダマ!』



 今度は氷の玉のぶつかり合い。

 さきほどと同じ様に、相殺される。



 ――やっぱりだ。胸騒ぎがする。

 きっと、次は――、



「ライトボール!」

キン…「それレイディング的にダメなヤツ!!」!』


 俺の機敏で的確な対処のおかげで、平和的に金色の光の玉はぶつかり合い、相殺される。

 やれやれだぜ。



『……はぁはぁ、中々やるな! だが次で最後だ! 詠唱付きの凄いヤツで止めを刺してやる!』


 と、ミスター・エックスは手を交差させた。


「こっちだって、最長詠唱の禁忌魔法を喰らわせてやるわ!」


「ハテン、詠唱が長いと威力も比例するの?」

「知らね」



 二人の間に、緊迫した雰囲気が流れる。



 そして次の瞬間、二人は詠唱を始めた。



 ――なんと、同じ魔法? だった。


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