3.勇者説明する



 田中家・居間(聖域)


 丸いちゃぶ台テーブルを中央にして、左側に俺ら田中一家、右側に自称・勇者一行が対峙する形で座った。




「……この家はラストダンジョンです」


 白の長ランの男、リード・エアが神妙な顔つきで俺達を見回して言った。


「はあ、ラスト男女ですか……」


 そんなリードへ、粗茶を出す母親が言っている意味が理解出来ずにそう返した。


「ここは我々の世界を乗っ取ろうとする魔王の城なんです」

「おめえ、何言ってんだ。ここはオレの城だ」


 と、祖父。


「魔王はまだ封印が完全に解けていません。今なら、我々でも魔王を食い止める事ができますが、完全に復活した際には、我々の世界はもちろん、この城ごと吹っ飛ぶと思います」


「おめえ、何勝手にオレん家吹っ飛ばそうとしてんだ」


「おじいさん、ちょっと、黙っていてください」と父。

「ねーえ、美代子さん。この方達は害虫駆除の方? シロアリ駆除お願いしてくれない?」と祖母。


「業者さん達はマオウ以外にもシロアリ駆除もお願い出来ます?」

「ママ、この人達が害虫駆除業者な訳ないじゃん。お兄のおめでたい友達でしょ?」


 家族の視線が僕に降り注ぐ。

 俺は全力で首と手を横に振った。


「初対面! 初・対・面!!」


「あとね、このダンジョンに『聖剣せいけんマジヤバイヤー』がある筈なんだけど。君、知っている?」


 豊満な美女が俺に尋ねてきた。


「『聖剣せいけんマジヤバイヤー』?」

「ええ、勇者のみ引き抜く事の出来る聖剣せいけんよ。このダンジョンのどこかにある筈なんだけど」


成犬せいけんくれないしかいねぇぞ」


 また祖父が余計な一言を言う。


「おお、『聖剣せいけんクレナイ』!…………くれるの? くれないの??」

くれないに決まってんだろ!」


「ちょっと、じいちゃん! 話がこんがらがるから、お口チャック!」


 俺が口元をチャックするジェスチャーをすると、祖父は素直に従った。


「お前、名前は?」


 ハテンさんが、俺に名前を尋ねてきた。


「い、家信いえのぶですが」

「よし、イエノブ。その『聖剣せいけんクレナイ』の所へ連れて行ってくれ。もしかしたら『聖剣せいけんマジヤバイヤー』かもしれない!」




「……いえ、犬ですよ?」

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