第十一話 "古よりきたれり" / 前編
~ あらすじ ~
ついに金色のグリフォン達の長、ブワナ・ペサと面会することができたフィオラ。
彼によると、まず〈紅金〉は、黄金竜ゼンドリファーエンが隠し持っているかもしれない、とのこと。そして〈時の卵〉の製法は、魔法の道具の中に厳重に封じているらしい。その情報、もとい記憶を手に入れること自体は今すぐにでも可能だが、器となる者の記憶や精神に異常をきたし、廃人と化してしまう危険性があるそうだ。
それを防ぐためには、記憶を流し込まれても問題がないだけの知識が備わってないといけないらしい。そのために、一行の中で黄金呪刻師としての才があるサヤリとファディヤが、その役に立候補。地方東部を流れるゴード大河の下流にあるトリファの街にて、優れた黄金呪刻師の元での修行をすることに決まった。
……が、そこへ向かう前に、ヤミアデミアがキャラバンを襲撃。これ自体は無事に撃破できたものの、その隙を突かれ、サヤリが攫われてしまった─────忌まわしのキザ男、ニオの手によって、だ。
奴は去り際に、『
奴から再びサヤリを救い出すため。黄金竜の元へと向かうため。無貌の神の神殿を見つけ出すため。一行はまずは、トリファの街を目指すのだった。
~ あらすじおわり ~
◇ 大河に浮かぶ街 ◇
時は前回から一ヶ月が過ぎた頃。一行は無事にトリファの街へと到着し、無貌の神とやらについてを調べているところだった。
ファディヤは既に黄金呪刻師・ノルハンに師事しており、キャラバンからは一旦離脱しているそうだ。
そんな訳で、いきなり情報収集という名のチャレンジから始まる。……全体的に報酬も判定の内容も渋いな。
フィオラは〔探索判定:目標値14〕と〔命中力判定:目標値14〕、プラトーンは〔精神抵抗力判定:目標値15〕に挑戦、探索判定はピンゾロしたが他は成功。
ボーナスチャレンジで〔聞き込み判定:目標値15〕には失敗、〔生命抵抗力判定:目標値16〕には成功。フィオラが9点疲労(ハーブとタブレットで6点解消)しつつ、経験点240と1800Gを獲得した。
前回のヤミアデミア戦、やたらとこちらの出目が良かったからな……揺り戻しが来ているのかもしれない。
フィオラ:「おいっす。調子どうよ、シヴァニカ」
シヴァニカ:「どうもこうも、いつも通りだわ。それより、件の神殿について、酒場のご老人から面白い話を聞けたわよ」
さて、情報収集の結果として、神殿の手がかりを得ることができたそうだ。
ちなみに、ファディヤもサヤリも離脱してしまった関係で、プラトーンの後衛の枠に入る人がいなくなってしまったため、今回からシヴァニカを再登板させている。
……ステータス的にも能力的にも、正直他メンバーに遅れを取っていると言わざるを得ないのだが。彼女にも強化イベントが来ないものだろうか。
フィオラ:「いいじゃん。早速聞かせれくれ、ついでに久々に一杯行っとこうぜ」
シヴァニカ:「頂戴するわ。……で、神殿があると言われている場所なんだけど。ゴード大河の中洲にある、大灯台の地下遺跡の中がそうだと言われているの」
フィオラ:「大河の中洲か。……船出てんのか?そんな何もないとこに」
シヴァニカ:「普段は全く。でも今なら、ナザレアがそこに停泊しているから、いくらか船が出ているみたいよ」
フィオラ:「ナザレア……あー、聞いたことあるな。川の中に浮かぶ街だっけか」
ゴード大河には、無数の木造船を繋ぎ合わせて作られた、なんとも不思議な水上都市が存在している。それが"流水の都"ナザレアだ。
そんなかの街、もとい船は、雨風の影響によって河の上り下りが困難なこの時期になると、先述した中洲に停泊するらしい。
シヴァニカ:「そう。だから今なら、行けなくはない……けど、出ている船も、結構限られるみたいね」
フィオラ:「まぁ、だろうな。こんな時期だし、客船なんか動かす奴はいないわな」
シヴァニカ:「えぇ。大体は、荷物を運搬するための輸送船。だから、それに乗りたければ、どうにか交渉するしかないわね」
フィオラ:「なるほどな……乗組員として雇ってもらえばワンチャンあるか?……うん、それで行こう。他の奴らにも声掛けてくるぜ」
かくして、ナザレアの街へと向かうことに。
なお、どの船も人手は足りており、最終的にノルハン氏の紹介によってなんとか雇い入れてもらった、という形になったらしい。ファディヤのことだけでなく、こういうところでも助けて貰えるとは。
◇ 大灯台地下遺跡 ◇
ナザレアに着いたら、早速チャレンジの時間である。判定の前後にガメルを消費することで達成値に補正が掛かる、というおなじみの仕様付きだ。
フィオラは〔聞き込み判定:目標値16〕と4点疲労、プラトーン(アルナブ)には〔文献判定:目標値16〕をやらせる。お互い300ガメルずつ握りしめて(コロコロ)成功、経験点1080を獲得。
グラップラーを8にできるだけの経験点が手に入ったが、さて……《マルチアクション》を取るのは今からでは間に合わないし、そもそもソレイユではまともに魔法を扱えないしで、あまり悩む余地も無いか?その他技能も必要としていないし。
成長の話はさておき、情報収集の成果。まず、神殿の場所について。
これは事前に得られていた情報と一致する内容で、大灯台の地下にある、ということで間違いないらしい。曰く、そこは魔法文明時代の遺跡が、魔法によって保護されており、極めて高い強度を誇っていたため、それを土台として灯台の建設がされたのだとか。
調査、もとい漁りもされつくされた後で、目ぼしいものは殆どないそうだ。強いて言うのであれば、転移の魔法陣に乗った先に続いている深部であれば、まだなにか発見できるかもしれない、といった具合だ。
フィオラ:「深部か……ところでお前ら、遺跡の内部の話、魔法陣以外になんか聞けた?あたしは全然」
カデア:「こっちも同じく……というか、『何もない』という情報を得られたというか。魔物はもちろん、罠もないみたいだな」
ヤザン:「だが、『遺跡内部にいた間の記憶が曖昧』だという話もあった。記憶に影響を与える罠や魔物が、自分たちの情報を外部に漏らさないようにしている可能性はあるぞ」
アルナブ:「僕が調べてみた文献も、そんな感じ。もっと言うと、そういう魔物や罠に備えて、魔法の武器と、毒の対策があった方が良いだろう、ってさ」
フィオラ:「魔法の武器……は、問題ないな。毒の対策はあれだ、ずっと前に買ったポーションがありゃいいだろ」
キャラシの持ち物リストを漁ってみたら、〈バリアティブポーション〉がふたつ残っていた。こんなもんいつ買ったんだっけとログを遡ってみると、二話の時点での話らしい。あやうく最後まで忘れたままキャンペーンが終わるところだった。
ウルリサ:「私が神殿で聞いたのは、無貌の神についてね。遺跡の最深部にその神殿があって、そこを訪れ、特定の条件を満たした者の願いを叶えてくれる……っていう噂話があるみたい。誰が言い出したのかも分からないようなものだけどね」
サウリル:「願いを叶えてくれる……って、それならあの吸血鬼、自分でそうしてるんじゃないの?わざわざフィオラにもそれを教えてあげた理由ってなに?」
フィオラ:「さあな……その噂が嘘なのか、それとも他にもなにか隠されてんのか。どっちにしろ、行ってみないことには分からなさそうだな、これ以上は」
一通りの情報を得た後、宿で一泊。翌朝、現地へと向かってみることに。
遺跡内部は一切の光源が無く、暗闇に包まれていた。幸いにして、罠や魔物に出くわすことはなく、膝くらいの高さまで溜まった水の中を、たいまつ片手にひたすら進むだけで済んだらしい。
フィオラ:「あれ、行き止まりか。どうする、引き返すか?」
アルナブ:「いや……待って。そこの床、魔法陣が隠されてるみたいだ」
カデア:「これか?……分かりにくいけど、確かにあるな。これが件の、転移の魔法陣とやらか」
ぱっと見ただけでは詳細は分からなかった(見識判定に失敗した)が、今更この程度で怖気づいてもいられない。
目配せして意思確認を取り、一人ずつ魔法陣へと乗り込んでいく。
フィオラ:「……おー、すげえ。本当に全然別の場所に移動しちまった」
シヴァニカ:「別の場所と言うか……遺跡の外ね。追い出されたのかしら」
視界が暗転し、それが戻ると……一行は、荒野のど真ん中に立っていた。オーレルムのどこか、なのだろうか。
空には星が暗く輝いている。正面には蠍座、右手には鳥座、左手には熊座、振り返れば蟹座。
……鳥座と熊座ってなんだよ、という気持ちになったので、以降は鷲座と大熊座で表記する。どうせオリジナルの星座にするならもっといい名前付けとけばよくなかったですかSNEさん。
ウルリサ:「あ、道標があるわよ。……なんて書いてあるのか、さっぱりだけど」
サウリル:「えーと……魔法文明語ね、これ。蠍座の方面には宮殿と集落、鷲座の方面には墓地があるみたい」
フィオラ:「集落ってことは、人が住んでる……のか?行ってみるか」
ひとまず人と出会うために、蠍座の方面に。
少し進んでみると、分岐点に差し掛かった。ぼろぼろの槍を手にした、身体が半透明の男がそこに立っていて、こちらに話しかけてくる。……魔法文明語で。
フィオラ:「……なんて?ていうかこいつ、生きてんのか?」
ウルリサ:「アンデッド……ではないみたい。幻影とかかしら……?」
サウリル:「───、─────。……大熊座の方にある集落には行かないほうがいい、ってさ。疫病に罹った人たちを隔離する場所になってるみたい」
カデア:「となると、そっちで情報収集は無理そうだな……他にはなんて?」
サウリル:「─────?……宮殿が残っていれば、そこに保管されていた薬で、疫病を治すことができたのに……って、ちょっと。この人消え始めたんだけど?」
話すだけ話すと、男はまるで、最初からそこにいなかったかのように、その姿を消し去ってしまった。役目は果たした、ということだろうか。
アルナブ:「幻影というか……遺跡の仕掛けの一部?なのかな」
シヴァニカ:「なんでもいいけど。どうするの、集落は危険で、宮殿もなくなってしまっているみたいよ、あの男の言う通りなら」
フィオラ:「うーん……集落が危ねえってんなら、一旦宮殿でも見に行くか」
とりあえず見るだけ見てみよう、ということで、そのまま宮殿へと。
進んだ先、小高い丘の上には、赤茶けた土の上に、大きな建物……の、瓦礫が散乱していた。それらが黒く焦げていることから、ここで火災があったことが窺える。
ヤザン:「……ネジュドナジュを思い出してしまうな。あれよりも、酷い火災だったのだと思われるが」
アルナブ:「あれ……建物はこんな状態なのに、扉だけは無事だね。だからなんだ、って感じだけど」
フィオラ:「確かに、扉だけあってもな……ご丁寧に鍵まで掛かってっけど、意味あるのか?これ」
何故か無傷な青銅製の大扉だけは、堂々と瓦礫の山の中に仁王立ちしているが……当然ながら、建物が瓦解した今、何の意味もない存在にしか思えない。
……が、〈宮殿の鍵〉とやらがあればこの扉を開けることができる、という文章が書いてあるので、ちゃんと意味があるんだろう。ほな鍵探しに行くか。
とりあえず近場から調べてみよう、と考えて、まずは集落の方へと。疫病がどうこう、という話だったので、〈バリアティブポーション〉を服用してから向かう。
フィオラ:「まっっっず……麦酒から苦味だけを取り出したらこうなりました、みたいな味がする……」
サウリル:「そりゃあ、薬は普通美味しくないわよ……それよりほら、見えてきたわよ。家とか小屋とか、あと……」
ウルリサ:「……苦しそうな人々も、ね」
小さく、粗末な小屋が数軒並んだだけの、とても小さな集落の中。
その中心にある広場では、先程出会った半透明の兵士とは真逆に、ただれ腐った肌と実体を持った人々が、苦悶の声を上げながら、地面に横たわっていた。
どうやら疫病の蔓延は、だいぶ深刻なレベルまで進行しているらしい。
フィオラ:「……助けられそうか?これ」
ウルリサ:「……少なくとも、普通の薬や魔法では、もう。この病を治すために作られた特効薬が─────」
話していると、一行の来訪に気づいたのか、人々が地面を這いつくばりながらこちらへ近づき……手を伸ばしてきた。
力ない瞳が、訴えかけてくる。助けてくれ、と。
フィオラ:「……遺跡が見せてる幻覚なのか、本当にここで暮らしてる連中なのかは知らねーけどよ。ちょっと待っとけな」
感染のリスクがある以上、その手をとることまではしなかったが。そう声をかけて、集落を少し見て回る。
……が、ここには特に何もないらしい。薬を手に入れてから戻ってこい、という一文が添えられていたため、他の場所へと向かうことに。
しばらく道を戻り、最初の分岐点を超えて、墓地へとやって来た。
いくつもの小さな棺の傍らで、半透明の身体をした墓守の老人が、墓穴を掘り続けている。兵士と同じく、アンデッドではないようだ。
アルナブ:「───?─────……神々が戦いさえしなければ、こんなことにはならなかったのに、だって。相当昔の世界みたいだね、この空間は」
ヤザン:「魔法文明語が標準語であることも踏まえると、神話の時代なのかもしれないな。幻とはいえ、実際に目の当たりにすることになるとは」
フィオラ:「まだ神様連中が地上にいて、殴り合いしてた頃の話か。そりゃ、巻き込まれる一般人からしたら、たまったもんじゃねーよな」
世界全土に渡って繰り広げられたかつてのラグナロクは、当然ながら激しい戦いであったため、戦う力を持たない一般人───もっとも、神と渡り合えるだけの力を持った者など、それこそ小神や大神に引き上げられたのだろうが───はこうして、いわゆるコラテラルダメージを被り続けていた訳だ。
そんな世界を嘆いたカルディアが、自ら砕け散るという選択をしたのもさもありなん、といったところか。
という、ラクシア神話学は一旦置いておくとして。
サウリル:「───。この子供たちを哀れと思うなら、葬儀を手伝ってはくれまいか、って。他に行く宛もないし、いいんじゃない?」
ウルリサ:「そうね。それくらいのことは、していってあげたいわ」
カデア:「聖職者だねぇ。ま、俺もいいけどな。穴を掘るのは、遺跡漁りの得意分野だぜ」
フィオラ:「あたしも、手伝うとしたらその変になっかな……祈りがどうとか、そういうのはウルリサとアルナブに任せた」
葬儀の手伝い、と称してチャレンジを行なうことに。残念ながらどの項目もフィオラではまともにこなせそうになかったため、穴掘り(腕力判定:目標値14)と埋葬(4点疲労)を選択。プラトーンもあまり成功を期待できないので、埋葬を選択。経験点を960点頂いた。
手伝いを終えると、老人が感謝を示しながら、黄金の鍵を差し出す。
フィオラ:「おぉ、鍵。爺さんはなんて?」
サウリル:「えーと……これは、むかし神々が住んでいた宮殿のものだ、って。多分、さっきの廃墟のことじゃないかな」
アルナブ:「あの宮殿も、神々の戦いの被害に巻き込まれて壊れちゃったみたい。派手にやったんだね、昔の神様たちは」
フィオラ:「どんだけ強くなりゃ、その神様との殴り合いが成立するようになんだかな……まいいや。爺さんも元気でな─────って。また消えちまった」
そして鍵を受け取ると、やはりその姿を消してしまった。どうやらあの老人に、これ以上の役目は存在しないようだ。
フィオラ:「まったく、よく分からん空間だな……とりあえず、宮殿に戻るか。あの扉にも、なんか仕掛けがあるのかもしれないしな」
鍵も手に入れたことなので、再び宮殿へと。不自然に無傷な扉は、相変わらず瓦礫の中に健在している。
その扉へ、先程受け取った黄金の鍵を差し込んでみると……なんと扉の向こうには、瓦礫の海ではなく、豪奢に彩られた、煌びやかな室内が広がっていた。
ただし、装飾と共に、業火に包まれてもいるが。
サウリル:「すっご……こんなに派手なとこ、オーレルム中探しても見つかんない気がするわね」
カデア:「この部屋の装飾を、ほんのちょっと拝借するだけで、とんでもない儲けになりそうだな……持ち出せれば、の話だけど」
アルナブ:「とてもそんなことしてられる空間じゃないし、所詮幻だしねぇ。元の世界に戻ったら、何もなくなってるか、がらくたにすり替えられてるか、じゃない?」
フィオラ:「世知辛えなぁ……さて、この中のどこかに、薬があるはずって話だったけど───うおっ」
さっそく家宅捜索開始、と意気込んだところへ。突然、炎の中から灰が飛びかかってきた。
アルナブ:「〔ワーリングアッシュ〕……こんな空間でも、怨霊は現れるんだね」
フィオラ:「とんだとばっちりだな、おい!こいつらが死んだのは神様連中のせいだろうによ」
ヤザン:「言っていても始まらん。ここを調べるのなら、どの道放ってはおけまい」
こうして、炎の海の中に浮かぶ、灰と火の粉が舞い踊るホールにて、ミドルの戦闘が幕を開けることに。
……なったので、次回へ続きます。投げも打撃もあんまり通じない相手、フィオラにとってあまりにも戦いたくなさすぎる。
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