第九話 "母と娘" / 後編
九話クライマックス、追い詰めたアーティア(と取り巻きの男)との戦闘から。
敵は本書オリジナルの〔手練れの暗殺者〕という人族モブ……なのだが、いかんせん物理攻撃しか持っておらず、どうあがいてもグリフォンの《かばうⅠ》《ガーディアンⅠ》で完封されてしまう性能をしている。
……すごく今更にはなるが、今回からグリフォンを使用しない縛りを入れるとしよう。街中で堂々と騎獣出して歩いてるのも絵面的にアレだし丁度良くはある。
今回はもう編成してしまっているので、能力だけ使用禁止にするものとして……それでもちょっと物足りない雰囲気を感じているので、アーティアは魔物レベルを+1して、行為判定と防護点を+1、打撃点を+2。そして行為判定を固定値ではなくダイスを振って行なう。
さらにソロの場合は免除してもらえる〈剣のかけら〉7個による補強も適用。それなりに戦えるだろう。
あとはギミックの紹介。前線エリアに〔カーテン〕が2つ、どちらかを起動すると〔大鏡〕が適用されるようになる。
カーテンは、主動作で引っ張って落とすことで、前線エリアの全対象に2d+3の物理ダメージと転倒効果を与えるらしい。回避高めのフィオラにはたいした脅威ではないが、回避捨て気味の前衛だとまあまあ嫌なギミックか。
そして大鏡は、達成値に-2のペナルティ修正を受ける代わりに、《鷹の目》なしでも後方から後方への射撃や魔法行使が可能になるというもの。
どちらもシンプルな性能だし、普段のセッションでの戦闘に採用してもいいかもしれないですね。特に大鏡は、お互い利用できるものだし、アクセントとしてもなかなか良さげ。
改めて、戦闘開始。まずは目標14の先制判定から。今回の“剣の恩寵”はここで切る(コロコロ)出目3、ぴったり14でこちらの先行。
まずは練技……と思ったが、疲労度が半端に溜まっているせいで素のMPが2しかない。かと言って〈魔晶石〉を使うのはちょっと勿体ないな……
ひとまず、二体いるうちに〔輝く肉体〕を使っておいた方がお得か。これでデバフを入れてから、取り巻きの男を〈シンプレート〉で2回蹴る(コロコロ)どちらも当たって27点、残り15点。プラトーンはアーティアに攻撃して8ダメージと、毒によるデバフを追加しておく。
敵のラウンド、取り巻きは『相打ち狙い(という名の《捨て身攻撃》)』でフィオラに殴りかかるが、〈ブレードスカート〉による反撃が入って8ダメージ。
アーティアも同じくフィオラへ攻撃するが、同値で回避。まだ練技を切っていないとはいえ、なかなかやる。
2ラウンド目、プラトーンは取り巻きにとどめを刺し、フィオラはアーティアを投げる(コロコロ)が、避けられてしまった。これは流石に不味めか……と思ったが、無事回避成功。苦戦とまではいかないが、いい勝負ではある。
3ラウンド目、今度こそ〈投げ〉は命中するが、《踏みつけ》は避けられてしまった。こいつ、かなり気合入ってるな。
フィオラ:「へへ。手加減しろっつわれてるけど、そんな余裕はねえかもな」
ジェイク:「流石、俺の恩人だぜ。……けど、できれば大人しく投降してくれないもんかね、姐さん」
アーティア:「何を寝ぼけたことを。それとも、投降したら見逃してくれるの?」
フィオラ:「見逃しはしねぇけどよ。あたしとしても、あんたにゃ生きてて貰いたいんだわ。知り合いについて聞きたいことがあるんでな」
もっとも、アーティアとニオに接点があるのかは分からないが。少なくとも、何一つ情報を得られないということはないだろう、多分。
4ラウンド目、今度は〈投げ〉《踏みつけ》共に当たり、プラトーンの攻撃まで入れてトータル31点、残り25点。反撃は回避。
5ラウンド目、再び〈投げ〉を入れて、残り14点。そろそろ倒してしまうライン。
だが、この戦闘限定のギミックとして、手加減した攻撃を行なうことができるという仕様がある。与えるダメージを2点減らし、クリティカルが発生しなくなり、さらに気絶させた場合の生死判定に+4のボーナスを与えるというもの。
これがあれば、まあ殺してしまうことはないだろう。ということで《踏みつけ》をせずに終了し、プラトーンでの攻撃を加えて残り6点。次のラウンドで落とそう。
アーティアの反撃、〈ブレードスカート〉が発動してしまったが、さっそく上記の手加減攻撃を使用してダメージをセーブ、3点だけ与えるに留める。残りは……素手で殴れば丁度いいか?
ということで、アルナブから【ファナティシズム】を貰ったうえで、素手での手加減攻撃。(コロコロ)命中し、HPが-2に。
アーティア:「あ、がっ……くそ、ここまで、か……」
フィオラ:「大袈裟だっての、セリフが。急所は外してんだ、せいぜいしばらく動けない程度で済んでるぜ」
生死判定は……出目8で無事に成功。人間でないので[剣の加護/運命変転]もないのだ、ピンゾロが出なくて良かった。
ジェイク:「そうか。……ありがとよ、こんな奴の頼みを聞いてくれて」
フィオラ:「自覚あんなら、もーちょっと反省しとけ。お前も」
ジェイク:「あぁ……あぁ、そうだな。あんたらみたいなのにしょっぴかれるのも嫌だし、慎ましく生きていくことにするぜ、今後は」
かくして、戦闘は無事終了。その後、アジトの中を詳しく調べてみると、ここで作ったのであろうアビススナッフや、その材料である興奮剤や〈アビスシャード〉が大量に発見された。
カデア:「すごい量だな……これが一気に押収されるとなると、ヤミアデミアにとっては大きな損失になるんじゃないか?」
ヤザン:「既に流通してしまっている分は、どうにもできんだろうが。新しく入荷されることは少なくなりそうだな」
ウルリサ:「これにて一件落着、ね。……あの人をなんらかの罪に問えないのは、すごく悔しいけど」
アルナブ:「右に同じく。……けど、実際のとこ、犯罪はしてないからね。悔い改めるとも言ってるし、ここは許してあげるのが優しさだね」
記述によると、アーティアはマーティアスへ移送されるか、クワヘリでの塩の採掘に従事させられるか、らしい。いずれにせよ、しばらくは囚人の身だろう。
ジェイクは、『そんな彼女を支えていくつもりだ』と言っているので、我々の旅には着いてこないだろう。再びの別れの時だ。
フィオラ:「そんじゃ、こいつらを警備隊にでも突き出しに行きますか。……ところで、娘の活躍ぶりを見て、なにか感想は?親御さんよ」
サヤリ:「えぇ。立派に育ってくれて、嬉しい限りだわ。クセナウイをはじめ、キャラバンの皆には、改めて感謝しないとね」
ウルリサ:「う……ど、どうも。……やり辛いなぁ、お母さんが一緒なの」
実際、自分だけ親同伴で旅をするというのは、常に授業参観中のような気分を味わうことになりそうだ。
けど済まんな、パッシブがあまりにも優秀過ぎるから、今後も君らはスタメンとして頑張ってもらうぞ。なんならグリフォンをクビにする関係で、サウリルも一緒になるかもしれない。
◇ リザルト ◇
剥ぎ取りの成果は、合計で1500G。やや物足りないが、人族のモブ、特に賊連中はいつもこんなもんか。成長は敏捷が伸びた。
それから、リーム大司祭が事前に送ってくれていた報酬金として、冒険者ギルドから9000ガメルを頂いた。名誉点は19点だった。
……19点だった。7d6したはずでは??まぁ、どうせ名誉点の使い道はあんまりないんだけども。
経験点は合計で2280、保有しているのが3350点。グラップラーを上げるにはやや足りていないので、大人しくスカウトを5に上げておくことに。これで《トレジャーハント》を習得したので、剥ぎ取りの補正が+2になる。
さらにアルケミストを2に上げて、【ヴォーパルウェポン】を取っておく。ようやくお金に余裕が出てきたので、クライマックスであれば、Sカードを投げても問題はないかな、といったところ。道中はAで充分だろう。ということで、赤のAを3枚、Sを1枚買っておく。
あとは、敏捷が22になったので、腕輪を買ってB4に……したいが、着ける部位がないな。〈ディスプレイサー・ガジェット〉はあまり買いたくはないし……
……あ、そう言えば武器の専用化してなかったわ。〈イージーグリップ〉〈シンプレート〉共に専用化し、〈スマルティエの宗匠の腕輪〉から〈スマルティエの疾風の腕輪〉に変更。これで命中力を維持したまま回避力をアップだ。
リザルト処理は以上。それでは次回、『嵐とともに』へ……
……尺が尺なので、冒頭だけ今回済ませておこう。ということで、続きどうぞ。
◇ 罪の告白 ◇
アジトへの突入捜査の後、一行は冒険者ギルドでアーティアとその仲間を引き渡し、ついでにリーム大司祭からの報酬金も受け取った。
ほどなくして、警備隊の者がギルドへやってくる。アジトの調査を終えて、押収や資料の確認も済ませたので、その報告に来たらしい。
警備隊員:「どうも。貴方達のおかげで、この街に潜んでいた闇カルテルの者は、ほとんど捕らえることができたよ。勘のいい数人の奴は、既にここを去っていたようだが、大打撃を与えられたことには違いない」
フィオラ:「そいつぁ良かった。……ところで、アーティアはこの後どうなるんだ?ちょいとあいつと話をしてーんだけど」
警備隊員:「あのレプラカーンか?そうだな……違法薬物の製造と販売、蛮族が取り仕切る組織への所属と……書類の偽造もあったか。まぁ、罪はかなり重い。ひとまずはマーティアスに連行して、そこで処罰を決めることになるな」
フィオラ:「そか、連れてかれちまうのか……面会ってできないのか?」
警備隊員:「構わないが……君はたしか、"草原の火"のメンバーでもないだろう。彼女となにか接点が?」
フィオラ:「あーいや、すっげー個人的な話をしたいだけ。闇カルテルがどうとか、薬がどうとか、その辺は一切関係ねえんだ」
サヤリ:「"草原の火"……そう言えば、そのパーティの仲間たちは?彼らは、事件とは無関係そうだったけれど」
警備隊員:「あぁ。アジトで発見された名簿などにも、彼らの名前は全く見当たらなかった。アーティアが隠れ蓑として利用していただけなんだろう。メンバーに加わったのも、つい二年前のことらしい」
カデア:「肩書を使って、荷物の代理受け取りとかしてたのを考えると、ハナからまともに冒険者としてやってくつもりは無かったんだろうな……メンバーからしたらいい迷惑だぜ」
とりあえず、面会自体はできるということなので、拘置所で目を覚ましたアーティアと、牢の鉄柵越しにお喋りをしにいくことに。
フィオラ:「よ。ちゃんと意識が戻ったみたいでなによりだ。これで目ぇ覚まさなかったら、ジェイクの奴に恨まれそうだからな」
アーティア:「あんた、さっきの……なに、尋問しに来たの?」
フィオラ:「尋問っつーか、なんつーか……まぁ、大体当たってるか」
話を聞いてみると、彼女がヤミアデミアの組織に所属したのは五年前のことらしい。行く宛もなく、荒野で行き倒れそうになっていたところを、幸か不幸か、ヤミアデミアに拾われてしまったらしい。
……が、どうして行き倒れそうになっていたのか、という部分で、思わぬ単語が出てきた。
アーティア:「元々、黄金のキャラバンの一員だったのよ、あたし。けど、三十年前に、十人くらいの仲間と一緒に離反を起こした。キャラバンの積み荷とか、宝物とかを奪ったうえでね」
サヤリ:「あ、なんだかメゼー達から、聞いたことあるような……私がまだ、物心もついてない頃の話ね」
アーティア:「そ。役割に縛られてばっかりの生活にうんざりしててね。そんな時に、旅の途中で出会ったライフォスの神官から外の世界の話を聞いて、もっと自由に生きたいと思ったのよ。そのための活動資金とするために、金になりそうなものを持てるだけ持っていったって訳」
クセナウイの口からは、特にこの件に関する情報を聞いた覚えはないが。忘れていた、ということもあるまい。
まぁ、帰ったら改めて話を聞いてみるか。
カデア:「恩知らずにも程があるな。取り返しのつかないことを、よくもまぁ堂々とやってのけたもんだ」
アーティア:「ほんとにね。まぁ、キャラバンを抜けてすぐに、みんなで後悔したんだけど。というのも、持ち出した物の査定額が、思ってた数倍の数字でさ。もしかしてとんでもないことをしたんじゃないか、二度と戻れないどころか、命でも狙われるんじゃないかって、怯えながら生きる羽目になった。その結果、まともな仕事になんて就けなくて……犯罪者集団の出来上がりよ」
ヤザン:「この地方では名の知られた存在だからな、黄金のキャラバンは。どこかの街で暮らしていれば、必ず鉢合わせることにはなる。それは避けたかったと」
アーティア:「えぇ。挙げ句、拾ってくれたヤミアデミアに媚を売るために、情報提供なんかしちゃってさ。ヌイ・アッシャールの遺産なら、黄金のキャラバンが持ってましたよー、なんて」
ウルリサ:「あなたが犯人だったのね……おかげで散々な目に遭ったわよ、私達は」
アーティア:「だろうね。ヤミアデミアがキャラバンを襲ってるって話、地方のどこでも耳に入ってきたし。……でも、キャラバンじゃなくて、街の警備隊に捕まったのは不幸中の幸いかな。父さんはじめ、メゼー連中に会わなくて済みそうだし」
フィオラ:「なんだ、お前の父ちゃんもキャラバンの奴なのか?」
アーティア:「そーよ。カビ・ルドラのメゼー。あんたたちも、仕事を手伝わされたことあるんじゃない?万年人手不足のとこだったから」
フィオラ:「手伝っては……ないな。サウリルに行かせたんだっけ、遺跡調査は」
ウルリサ:「そうね。そこでカデアと出会ったんだったかしら」
カデア:「もう半年も前のことだな……っと、俺らの思い出話はいいか」
この出来事、第四話の話である。そんなことを言っている場合ではないのだが、懐かしさを感じてしまう。
アーティア:「ま、あたしのしょーもない半生記はそんなとこ……あぁいや、いっこ大事なことがあったわ。父さんはじめ、当時の出来事を知るキャラバンのみんなに伝えておいて欲しいこと」
フィオラ:「伝言か?そんなことしなくても、今からでも警備隊に、キャラバンに連れてってから行ってもらうように───」
アーティア:「しなくていいわ。ていうか、今更どの面下げてみんなの前に出ろってのよ?……だから、アーティアとその仲間たちはもう死んだ、ってことにしておいて。お願い」
サヤリ:「それは……いえ。貴女がそう望むのであれば、そうしましょうか」
長引かせるようなシーンでも無いのでばっさり切ってしまうが、サヤリ一家がこの場にいるなら、だいぶ話が長くなりそうなところである。
RP時間無制限で遊ぶ場合、GMの方は頑張ってください。私もソロじゃなかったら、多分一時間くらいこのシーンやってるんじゃないかと思う。
さておき、アーティアとの面会はこれで切り上げとなった。クワヘリで他にやることもなくなった一行は、報告のためにも、キャラバン本隊へと帰還することに。
といったところで、今度こそ今回はここまで。
次回、『嵐とともに』に続きます。リアルタイムで更新追ってくれている皆さんは良いお年を。1月中には中編ないし後編が上がると思います。
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