第九話 "母と娘" / 中編

 ─────さて、来たるバイソン狩猟祭当日。

 宣言通り、サウリルはウルリサとサヤリを(かなり)無理やり天幕から連れ出して、遠くに見えるバイソンの群れを眺めている人混みの中へとやって来ていた。

 フィオラをはじめ、いつメンも既に合流済みである。


 ということで、早速狩猟祭に参加するためのプラトーンメンバー選定から。

 制限として、新規メンバーであるサヤリと、姉妹は強制出撃らしい。

 ……のだが。


ウルリサ:「…………」

フィオラ:「……なぁ、連れてきたのはいいけど……相変わらず無言だぞあいつ」

サウリル:「それを今日でどーにかするのよ。……うん、どうにかする」


 ウルリサはすべてのステータスが0、そして【キュア・ウーンズ】もしてくれないらしい。人の命を預かっている立場だという自覚を持ってくれ。

 また、当然ながらハリスは大聖堂に残っているため、今回は不在である。完全離脱という雰囲気でもないが、そのうち帰ってくるんだろうか。


 ひとまず、サヤリ一家三人をまとめて後衛に押し込み、前衛にはグリフォン・ヤザン・カデアのフォーメーションを組んでもらうことに。

 ただの野牛ということは、魔法も特殊な能力も無いはず。物理でゴリ押してなんとかするのが一番楽で早いだろう。


フィオラ:「っしゃ、行くか。……ところで、どうやって狩るんだ?正面衝突していく感じ?」

サウリル:「狩猟担当のカビ・ナッジシが、柵とか櫓とかを建ててる狩り場に誘導してくれるわ。あたしたちはそこで待ち構えれば大丈夫」

サヤリ:「ちなみに、報奨金……もとい、仕留めたぶんだけ賞金が出るのよ。だから毎年、腕自慢の人達は、バイソンの取り合いをしているわ」

フィオラ:「ほーん。……ならあたしも、挑んじゃいますか。限界って奴に」


 ということらしく、バイソンを倒せば倒すだけ、戦闘終了後の獲得ガメルが増加していくようだ。とはいえ、そこまで金に困っていないんだよな……

 ……あ、でも経験点は欲しいわ。すまんバイソン、ラクシアでも絶滅の危機に追いやられてくれ。


 改めて、戦闘ギミックの確認。毎ラウンド終了時に、敵軍後方エリアに〔オーレルムバイソン〕が一匹追加される。最初に出ているものと合わせて最大で十匹だ。

 そして、戦場は左側と右側のグリッドに分かれている……が、右側から左側への命中力に-2のペナルティが入る以外の点は、ソロプレイにおいてはあまり関係がない要素だし、それもフィオラには無関係な仕様なので、実質ノーギミック。

 ……つまり、ひたすら回避ピンゾロチェックゲーである。良くも悪くも、回避型やるとこうなりがちで困っちゃいますね。デモンズラインの時も終盤はこんな感じだった気がする。


 確認も済んだので、さっそく先制判定(コロコロ)(1,2)開幕から怖いことするのやめませんか。これでも先制取れるからいいけども。

 ひとまず、フィオラ・プラトーン隊共に敵軍後方エリアへと突撃。まずはフィオラの〈投げ〉から入って(コロコロ)9点、更に新技の《踏みつけ》によるコンボが決まって(コロコロ)一回転して24点。そこにプラトーンの通常攻撃で8点入って……あ、ぴったり倒れた。クリティカルが出たとはいえ、思ったよりも簡単に倒せるみたいだ。


フィオラ:「おいおい、この程度で倒れられちゃあやり甲斐がねえなぁ。それとも、数で圧倒するタイプだったか?」

サウリル:「油断しなさんなって。ほら、おかわり来てるよ」


 命中も回避も、練技無しでピンゾロチェックなので、MP切れによる形勢逆転も起こり得ない。これは十匹まで行っとくべきか。


 1ラウンド目の敵手番、は全滅しているのでカット。新たなバイソンが一匹追加されて、再びこちらの手番。先程と同じように攻撃して、今度は8点残った。バイソンの反撃で、プラトーンが5点食らってしまう。

 ……が、サヤリのプラトーン効果により、毎ラウンド10点の自動回復が発生している。なるほど、【ヒールスプレー】すらも必要ない完璧な要塞が完成したな。


 結局、その後もほぼ1ラウンド1匹ペースで倒し続けることができたため、お互い無傷で十匹のバイソンを狩り切ることができた。

 やはりレベルを上げて物理で殴れば全てが解決する。ALvで敵の強さが変動しないことを悪用していると言えなくもないが、ソロプレイの攻略法のひとつ、ということでここはどうか。


サヤリ:「結局、来た分は全部倒してしまったわね……もしかして、結構強い?」

フィオラ:「へへ、これ一本で生きてきたんでな。……ところで、こんなお祭りするくらいってことは、こいつらの肉って美味いのか?」

サウリル:「へ?まぁ……そうね。この子達のお肉で宴をするところまでが狩猟祭、って感じかしら」


 実際、バイソンの剥ぎ取り品には〈猛牛の(霜降り)肉〉という文字列。食用に育てられた牛と比べれば若干劣るだろうが、キャラバンの人数を考えれば、全員で心ゆくまで食べられるだけの肉を得られる機会はそう多くないだろう。

 ……というのはさておき。無事に狩りが終わったのなら、あとはサウリルにお任せ、である。


フィオラ:「ほーん、宴……ってこたぁ、当然酒が出るな。あー、けど折角なら?酒の強い男連中と飲み比べでもしときてーなー、なんて?(チラ見、からのウインク)」

ヤザン:「む……そうだな。同行し始めてから、控えめにしていたが……折角のお祭りだ、少しだけ羽目を外させてもらおうかな?」

カデア:「お、いいねぇ。アルナブに至っちゃ、飲んでるとこを見たことすらないからな。たまには付き合えよ」

アルナブ:「え。い、いやー……僕はその……」

カデア:「(耳打ち)今日の本題、忘れたのか?ここらで俺達は外れて、家族水入らずにしてやろうぜって話だよ」

アルナブ:「あ、そういう……(棒読み演技で)しょ、しょうがないなー。お目付け役として、僕もついていこうかなー」

フィオラ:「おしきた。じゃ、あたしらは向こうで馬鹿騒ぎしてくるぜ」


 かくして、サヤリ一家を残してフェードアウトすることに。


サウリル:「まったく……みんな、演技が下手なんだから」

サヤリ:「そうねぇ。でも……ここはご厚意に預かって、三人で楽しみましょうか」

ウルリサ:「……いいの?私も一緒で」

サヤリ:「いいに決まってるじゃない。あなたは私の、自慢の娘よ」

ウルリサ:「……そう。……その……お母さん。こないだは───(腹の虫が鳴く)……え、えーと……」

サウリル:「ふ、ふふっ……まったく。ここ最近、まともにご飯食べてないのが祟ったねぇ」

サヤリ:「ふふ。そうね、今日は今までの……十年間の空白の分を、取り戻すくらいのつもりで、ね?」


 その後、無事に一家は絆を取り戻すことができたのだそうで。


 なお、書籍の記載とは若干描写を変えているが、いわゆる「君の目で確かめてくれ!」成分として受け取って頂きたい。

 好きな描写だからこそ、ちゃんと買って読んで欲しいんです。


◇ 残党を追って ◇


 狩猟祭から数日後、再びリーム大司祭から一行宛てに書簡が届いた。


フィオラ:「なんか言い忘れたことでもあったのか?……まいいや」


 読んでみると、闇カルテルの摘発を続けていくうちに、サンシャイン駅から遠く離れた場所にもアジトがあることが判明したそうだ。押収した資料の中に、その情報が載っていたらしい。


サウリル:「カルザーラ塩原の岬のクワヘリ……あぁ、丁度近くを通るわね」

ウルリサ:「それで、私達に調査を引き継いて欲しいという話、かな」

フィオラ:「ぽいな。国外に騎士団を派遣するのは、流石に国交上の問題がどうたらこうたら、だってよ」


 ちなみに、狩猟祭の翌日から、ウルリサはすっかり元通りとなっていた。むしろデータ的には、以前よりも成長している。

 具体的には、使う魔法が【キュア・ウーンズ】ではなく【キュア・ハート】相当に代わっている。サウリルも同じく成長していて、【リープ・スラッシュ】の威力が3点上がり、消費MPが7から6に低下している。MP軽減でも取ったんだろうか。

 冒険者レベル+9点、現在だと16点の魔法ダメージを与えてくれる訳だが……どうだろう、通常攻撃でも8点出せる今の編成だと、これでも今ひとつか。


カデア:「クワヘリの街のアジトは〈アビススナッフ〉の製造工場でもあり、サンシャイン駅から材料が運ばれているらしい……か。結構デカいとこみたいだな」

ヤザン:「工場へ直接送るのではなく、街の交易所を経由しているようだな。まずはそこを当たってみることになるか」

フィオラ:「だな。よし、そんじゃ早速クセナウイに相談……あー、その前に……サヤリ、お前はどうする?」

サヤリ:「そうね……娘達の成長した姿を、この目で確かめたいところだけれど」


 出発前に、再びプラトーンの編成タイミングが入る。

 サウリルには悪いが、正直バックラインにウルリサ・サヤリ・アルナブと並んでもらうのが一番嬉しいんだよな……そういう訳で交代してもらうことに。

 前衛は変わらず、グリフォン・カデア・ヤザンの二人+一匹だ。ヤザンは攻撃力と防護点が高いので、別に前衛に置いても勿体なさを感じないのがいい。


 それから、プラトーン装備の更新。ウルリサとサヤリに〈神徒の法衣〉を装備させて、防護点+2、MP+12という大幅な強化。

 アルナブには〈術徒の帽子〉を持たせて、一応セージ知識判定を行なえるように。基準値6とやや心もとないが、0のフィオラよりは遥かにマシだろう。

 グリフォンは鎖帷子から甲冑に買い替えて、防護点が更に+1、HP+10。プラトーン全体のHPが82、MPが42、防護点が14。生命・精神抵抗に至っては基準値14という規格外の数値である。極振り成長でもレベル7時点で生命と精神がB7にはなるまい、本当にとんでもない要塞が出来上がってしまった。


 これでも13000Gほど余っていたので、〈セービングマント〉を買っておくことに。魔法は庇ってもらえないので、そこはこちらできちんと対策しておこう。

 あとは……本当の本当にヤバそうな時のために、〈アンチマジックポーション〉を一本買っておくか。〈消魔の守護石〉を買いまくるよりもコスパは良い。

 〈ポイントガード〉に魔法ダメージ軽減のアビス強化を入れることも考えたが、致命的なカースが着いてしまった場合、ガメルとシャードを無駄にすることになると思うと、もう少し余裕が欲しいところ。


 準備を終えて、クワヘリへと出立する。乾ききった荒野を三日ほと歩くと、一面の真っ白い大地が続いているのが視界に入ってきた。

 未だ溶け切っていない雪……なんてことはなく、これこそがカルザーラ塩原である。その岬にあるクワヘリは、ここから塩を採掘するために作られたのだとか。

 立地を考えると、あまり人口は多くないだろう。交易も、この街の方から、マーティアスかヒューマへと出向く形で行なうのが主になっていそうだ。


フィオラ:「で、えーと……まずは交易所か」

アルナブ:「かな。宛先自体は、ダワーっていう薬師にされてるみたいだけど」

カデア:「冒険者ギルドとも取引してるくらい、信用のある人らしいが……そんな薬師が、闇カルテルと提携なんてするかねぇ」

ウルリサ:「気になるなら、本人にも直接訊きに行きましょうか。どの道、事実確認はしないといけないんだし」

フィオラ:「それもそーだな。じゃ、お邪魔しまーすっと」


 早速交易所で聞き込みをしてみると、係員から、確かに定期的に、ダワー氏宛てに大量の荷物が届いているという話を聞けた。

 しかし、どうも妙な点がある。


係員:「ダワーさん、かなり出不精なんですよねぇ。なのでその荷物も、アーティアさんというレプラカーンの冒険者の方が、代理で受け取りに来るんです」

カデア:「冒険者が?……わざわざ冒険者に頼むようなことでも無いと思うんだが」

係員:「そこまでの事情は分かりかねますが。少なくとも、委任状を持っている以上、こちらとしては受け渡しを拒否できませんのでね」

サヤリ:「うーん……?じゃあ、そのアーティアという冒険者にも、話を訊いた方がいいのかしら」

フィオラ:「かもな。けど、信用度を考えると、先に薬師の方に行っとくべきか」

ウルリサ:「あら、珍しく真面目にあれこれ考えてる……どうしたの?」

フィオラ:「え……だって、ちゃんと証拠掴んどかないと、合法的に殴れないじゃんか、闇カルテルの連中」

ウルリサ:「……つまり、結局平常運転ってことね」


 ということで、不審に感じた一行は薬師・ダワーの工房へ。


ヤザン:「─────という訳なんだが。何かご存知かな」

ダワー:「アーティア?……って誰だい?委任状も書いたことは無いけど」

アルナブ:「てことは……勝手にダワーさんの名義を使った上で、書類を偽造して受け取ってるのかな」

ダワー:「そもそも、そんな大量の材料、頼んだ憶えもないよ。じゃ、僕は調合で忙しいから、これで」(ドアを閉める)

フィオラ:「ほーん。罪に罪が重なってんなぁおい。ワクワクしてきたぜ」

サヤリ:「た……楽しそうね?なんだか」

ウルリサ:「あー……うん。この人、仕事中はいつもこんな感じなの」

カデア:「まったく……とりあえず、冒険者ギルドで身元確認するか。こうなると、アーティアとかいう奴が、本当に冒険者かどうかも怪しいからな」


 そのまま続けて、今度は冒険者ギルドへと。


職員:「アーティアさんでしたら、普段は向かいの宿屋にいらっしゃいますよ。"草原の火"というパーティに所属していて、きちんと活動もしていますね」

ヤザン:「ふむ。ちなみに、ダワーさんは普段、どのような仕事を?」

職員:「ダワーさんですか?えぇ、とても腕のいい薬師で、うちにも定期的に、ポーションを卸してくれています。安価なのに高品質ですから、冒険者の皆さんからも好評ですね。そのポーションの材料集めも、依頼という形でうちに出してくれるので、大助かりですよ」

ウルリサ:「うーん……やっぱり、ダワーさんを疑う必要は無さそうね」

カデア:「だな。追うならアーティアの方だ」


 続いて"草原の火"が定宿している宿屋に。


メンバーA:「ダワーさんとの繋がり?あぁ、あの人の依頼は優先して受けるようにしているよ。薬は冒険者にとっても、町の人にとっても必要なものだから、多少面倒でも、誰かが引き受けないとな」

サヤリ:「あら、殊勝な心がけね。感心してしまうわ」

ウルリサ:「簡単に信じちゃダメでしょ……本当にちゃんと、依頼として受けているの?そのダワーさんから、荷物の受け取りの代理なんて頼んだ憶えはない、って聞いたんだけれど」

メンバーB:「受け取り?……そもそもそんな依頼、出てたことあったっけ」

メンバーA:「いや、俺も記憶にないな……」

アーティア:「あー、ごめん。依頼としてじゃなくて、個人的に手伝ってるんだよね、それ。だからあんたらは知らない話かも」


 どうやら、アーティア本人しか関わっていない案件のようだ。……となると、ここで全員しばき倒して尋問するのは問題がある。

 やるならアーティアだけにしたいが、表向きは真面目に冒険者をやっているのだ、パーティメンバーや冒険者ギルドが黙っていないだろう。まずは決定的証拠を手に入れなくてはならない。


カデア:「へぇ。個人的に、頼まれてもいない受け取りの代理を、か?」

アーティア:「それはほら。ダワーさんが忘れてるだけじゃない?あの人、薬の調合にしか興味がないから。人の顔と名前も、あんまり憶えてないのよねぇ」

メンバーB:「それはまぁ……そうね。それに、ダワーさんの依頼を優先的に受けようって言い出したの、あんただもんね」

メンバーA:「おいおい、それは言わないでくれよ。折角格好つけて言ったのに」

ヤザン:「はは、仲がいいね君たち。(耳打ち)……どうだ、二人とも。このまま追う価値はあると思うか?」


 ここで異常感知判定。(コロコロ)フィオラは失敗したが、カデアが自動成功してくれた。やはり我らのメインスカウトは格が違う。


フィオラ:「うーん……くっそ怪しいとは思うけど、怪しいだけだな……」

カデア:「いや、俺は追うべきだと思うぜ。アーティアの表情、あれは必死に平静を装ってる奴のそれだ。やましい事情があるんだろ」

アルナブ:「なるほどねぇ。……それじゃ、僕たちはこれで。お邪魔しました」

アーティア:「えぇ。……っと、あたしも用事あるんだった。準備しなきゃ」


 なにやら怪しげな様子のアーティアを置いて、一行は宿の外へ。

 ……もちろん、そのまま黙って帰る訳もなく。


カデア:「さて。尾行といくか」

フィオラ:「おしきた。大人数でどかどかと追っかけるのもなんだ、あたしかお前だけで行こうぜ」

カデア:「あぁ。それじゃあ……俺があんたを追って、皆を誘導する形にするか」

フィオラ:「おっけ。もしも向こうから突っかかってきたら、駆け込みよろしく」


 かくして、宿からのこのこと出てきたアーティアを追いかけることに。

 尾行判定という、シティアドベンチャーでないと振る機会の無い判定を振る(コロコロ)成功。そのまま、彼女が下町の路地裏へと入っていくところまでばっちり目撃。


フィオラ:「いかにも、って感じだな……一旦待機して、合流するか」

???:「おや、こんなところで再会できるなんて。すごい偶然もあったもんだ」


 メンバーを集めて、路地へと踏み入─────ろうとしたところで、横から割り込んできた人影が一つ。


フィオラ:「あん、お前は……。……わりぃ、誰だっけ」

ジェイク:「憶えてねえのかよ!ジェイクだよ、ルードゥークの街で会った!」

フィオラ:「あー、お前か。……え、どの面下げて戻ってきたのお前……?ウルリサとアルナブに至っちゃ、お前を見た瞬間にグーで殴ってくると思うけど……?」

ジェイク:「ははは。……あー……それは本当に仰る通りです、はい」


 姉妹やアルナブが同行している場合についての記述は存在していないため、ゲーム的には影響はないみたいだが……普通に考えたら、グー一発で済めば良い方じゃないだろうか。

 ……まぁ、本リプレイでは大目に見ておいてやることに。人によっては、ボコボコにしたり吊し上げたりする分岐が発生するところですね。


ウルリサ:「……で。この路地とアジトの案内をしてあげるから、この間のことは水に流して欲しい、と」

アルナブ:「もはや、怒る気も湧かなくなってたからいいんだけど……ちなみに、なんで詳しいの?ここも既に慣れ親しんだ土地ってこと?」

ジェイク:「その……あんたらが今追ってる奴ぁ、実は俺の命の恩人でな。向こうが憶えてるかどうかは分からないけど」

カデア:「へぇ。で、礼を言うために近づこうと思ったけど……ってとこか」

ジェイク:「あぁ。まさか、ヤミアデミアの傘下組織の一員になってたなんてな……で、あんたらはまた、摘発の手伝いか何かで来たんだろ?」

フィオラ:「おう。サンシャインの神殿とコネがあってな、そこの司祭に頼まれてよ。だから悪いけど、見逃してくれってのは無理だぜ」

ジェイク:「そこまでは言わないさ。ただ……命だけは、助けてくれないか。今がどうあれ、恩人であることに変わりはないからさ」

フィオラ:「まぁ……それくらいなら。なんだ、お前ほんとは恩義に報いたりするタイプだったのかよ。あたしらの時もそうあって欲しかったんだけど」

ジェイク:「へへ。そりゃあ言わない約束だぜ」


 ともあれ、再びジェイクを仲間として迎え入れて、一行は入り組んだ狭い路地の奥へ奥へと進んでいく。

 ある程度進んだところで、ジェイクにアジトの裏口を案内される。正面には常に見張りがいるから、とのことだ。


ジェイク:「警報用のトラップが……あぁあった。これを外してと……どうぞ。足音立てないようにな」

ヤザン:「どうも。……さて、命だけは、ということだ。殺してしまわないように気をつけないとな」

フィオラ:「その辺は任せとけ。武器使ってるお前らより、素手で殴ってるあたしの方が調整が効くからな」

ジェイク:「頼むぜ。……声でバレるかもしれないし、ここからは目線とジェスチャーだけでよろしく」


 その後、アジト内の一室の前にて、アーティアの声が聞こえてきた。

 ここに違いないだろう、とジェイクと目配せをし、スリーカウントで部屋のドアを蹴破って突入することに。


フィオラ:「お喋り中んとこ申し訳ねえな、邪魔するぜ!」

アーティア:「げっ、あんたらさっきの……つけてやがったか!」


 数は三人、アーティアまで含めて手練揃いの雰囲気。が、魔法使いの類はいなさそうだ、ならば問題ない。

 いざ、9話クライマックスの戦闘へ─────向かうところで、一旦区切る。


 ……敵との能力差があるので、アーティアを少し強めにしようかなぁ、などと考えつつ。

 脳筋対決だと、ほぼ能力値が高い方の勝ちになってしまうのが、このシステムのちょっとダメなところですね。いやまぁ、脳筋作ったこっちに責任があるんだけども。

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