第九話 "母と娘" / 前編

~ あらすじ ~


 サヤリ、そしてリーム司祭の救出のために、マーティアス大聖堂の地下へと潜入した一行。そこで待ち構えていたのは、魔神に意識を乗っ取られた大司祭、ヒアナ。

 魔神の正体を暴き、爆散させたことで、彼女は意識を取り戻した。サヤリとリーム司祭を捕らえていたのも魔神の影響であったため、二人も無事に釈放。

 しかし、此度の影響で大聖堂内に多くの邪教徒が入り込んでしまったことは間違いないため、ハリス、リーム司祭、ヒアナ大司祭の三人はその対応にあたることとなり、一行にサヤリを引き渡して別れを告げることになった。


 一方、ようやく"母"との再会が叶ったサウリルとウルリサは……流石に衰弱しきったところへ鞭打つような真似はできなかったようで、複雑な気持ちを抱きながらも、一度キャラバン本隊へと戻り、サヤリの施療に務めることを受け入れた。


 フィオラ的には〈時の卵〉に関する情報が気になるところだが、そんな話よりも家族会議の方が優先されるだろう。こちらもこちらで複雑な気持ちである。

 とても気まずい空気を解消するためにも、早いところサヤリさんには元気になっていただきたい。


~ あらすじおわり ~


 ◇ 導入 ◇


 サヤリを連れてキャラバンへと帰還すると、かろうじて息をしている、といった状態の彼女の姿を見たクセナウイは、自分たちのカビの移動を止めて、彼女の施療に専念することを決定した。

 キャラバン本隊からは離れてしまうが、流石にこの状態の者を、荷車の上で寝かせるのは忍びない、という判断だそうだ。


 それから数日間、施療師を中心に手当てが行われ続けたのだが……その間、ウルリサはまったく言葉を発さずに、サヤリが寝ている天幕の周りをうろうろとしていた。

 

フィオラ:「この間まで、絶対に許さねえ、会ったらその場でぶん殴ってやる、くらいの勢いだったのにな。流石に頭冷えたか」

カデア:「そりゃあなぁ。それにしても、えらい変わりようだ。完全に塞ぎ込んじまってるな、ありゃ」

ヤザン:「サウリルの方は、あんなに素直なのにな。サヤリさんが意識を取り戻して、言葉を交わすことができるようになれば、少しは変わるだろうか」


 一方、サウリルは天幕の中に入り、サヤリのそばに付き添っていた。どうやらこちらは、恨みつらみなどどうでもよくなるくらい、純粋に母の容態が心配なようだ。

 出会った時は随分なお転婆だなぁと思っていたが、ただただ正直な性格なだけだったか。


 そんな姉妹だったが、ある日、会話とも呼べないような、短いやり取りをした。


ウルリサ:「……姉さん。どうして、そんなことをするの?お父さんの仇なのに」


 怒りや訝しみによるものではなく、純粋にどうしてか分からないから、といった様子でそう訊ねる妹に、姉は。


サウリル:「それでも、わたしたちのお母さんよ」


 たった一言そう返すと、ウルリサは唇を固く結び、今にも涙が溢れ出しそうな瞳とともに、天幕を離れて行ってしまった。


 ◇ 真相 ◇


 数日後、ようやくサヤリが目を覚ますと、姉妹を天幕に呼び出した。


フィオラ:(……すっげー気まずい。これ、本当にあたしもいていいのか……?)


 ……何故かフィオラも呼ばれていた。

 おおかた施療師かサウリルが、あの人が頑張ってくれたお陰で助かったんですよ、なんて言ったりしたのだろう。

 それは有り難いが、一体この女にこの場で何をしろというんだ、と困惑していると、やがてサヤリがゆっくりと口を開いた。


サヤリ:「……十年前のことを、ちゃんと話そうと思って。その話の内容は、きっと、あなたが求めているものだと思うの」


 どうやら、〈時の卵〉や〈古びた手槌〉についての話も、既にサウリルがしておいてくれたようだ。それならお呼ばれされたのも納得である。

 とはいえ、空気が非常に重たいことに変わりはないんですが。本当に家族会議と同時でよかったんですかお母さん。


 さて、ここから父親殺しの真相についてが語られることになるのだが……相変わらず長いので、RP無しでお送りする。


 まず、一家の父親であったジューアはその昔、取り逃した蛮族からこう脅されたそうだ。『貴様は強いが、人間だ。必ず俺よりも先に老い衰える。俺はそれを待ち、貴様をいたぶり殺しに戻ってくる』と。

 なんとも三下めいた発言だが、しかしジューアはそうなることを酷く恐れてしまったそうだ。ただの挑発ではあるが、確固たる事実でもある、真面目な神官戦士だからこそそうなってしまったと言えるか。


 そして、老衰を恐れたジューアは─────葛藤の果てに、不老不死の力、つまり吸血鬼となることを求めてしまった。その上、娘姉妹を儀式の生贄として捧げることを考えたそうだが、彼の豹変に気づいたサヤリが、やむを得ず命を奪ったそうだ。

 そういえば、邪神と儀式がどうこう、という話が出ていたような記憶がある。実際には、それを止めるために動いたのがサヤリの側だったということか。


 そうして夫殺しとなってしまったサヤリだが、ジューアが自分たちを生贄にしようとしていた、という事実を、姉妹や周囲の人間にどう伝えればよいものか考えた。

 結果、どうあってもいい方向には転がらないだろうと判断し、そのまま行方を眩ませることにしたようだ。確かに、いきなりそんな事を言われても、苦し紛れの言い訳にしか思えないか。

 その後、キャラバンを離れたサヤリは、オーレルム各地を放浪する旅の神官として生きることになった。そして八年前、旅の中で出会った黄金呪刻師の老爺を看取ることになり、術を引き継いで欲しいという願いを聞き入れた。

 呪刻師としての知識や技術はこの時に身に着けたそうだ。なるほど、それは姉妹やキャラバンの者が知らないのも納得である。


 それからまた旅を続けて、ネジュドナジュで疫病が蔓延しているという話を聞き、そこへ定住することになったのが三年前。

 そこで住民の治療を行ないながら、子供たちに学問を教えつつ、老爺の意志を継いで、見込みのある子供……つまりファディヤに呪刻師としての知識を授けながら生きていた、というのが、この十年の間の出来事とのことらしい。


サヤリ:「それで、〈時の卵〉についてだけれど……残念ながら、製法を詳細に教えてもらえた訳ではないの。唯一教えてもらえたのは、材料として〈紅金〉が、その加工には〈焔蠍の鍛槌〉が必要だということだけ」

フィオラ:「そんだけか……既に分かってた情報ではあったけど、これで確定したとも言えるか」


 ちなみに、そんな槌がゼルガフォートのいち商人の元へと流れ着いていた理由に関しては、クセナウイに後ほど確認してみたところ、


クセナウイ:『三十年前に、キャラバンの一部の馬鹿どもが、脱走ついでに商品や魔法の道具を盗み出していった事件があってね。その時に、その槌も盗られちまってたんじゃないか』


 とのこと。事件の詳細についてはまぁいいとしよう。


サヤリ:「あまり力になれなくて御免なさい。それから……貴女たちには、本当に辛い思いをさせてしまったわ。許されないのも当然なくらい」


 話を終えて、サヤリは弱々しく頭を下げる。言わずもがな、後半の言葉は姉妹宛てのものだ。

 さて、それを聞いた姉妹の反応はと言うと……


ウルリサ:「……でっち上げよ、そんなの。何も証拠がないじゃない」

サウリル:「あんたね……この期に及んで、まだそんな事言ってるの?」

ウルリサ:「えぇ。それとも姉さんは、一切疑わないっていうの?」

サウリル:「(観念したようにため息をつく)……実はさ。あたしは最初から、そんなに疑ってなかったんだよ。むしろ、様子が変なのはお父さんの方だったかもって、ずっと思ってた。お母さんを探してたのは、事実確認をしたくて、かな」


 どうやらサウリルは、今の今までずっと、ウルリサに対しては話を合わせていただけ……ということらしい。振り返ってみると、たしかに彼女の方は、あまり刺々しい態度は見せていなかった。

 ついに姉すらも味方してくれなくなったウルリサは、自棄になったのか、とんでもないことを言い出した。


ウルリサ:「っ……そうよ、シーン様に直接訊けばいいんだわ。貴女はまだ、この人をシーンの神官として認めていますか、って」

フィオラ:「お、おいおい、気持ちは分かるけどよ……」

サウリル:「訊くって……あぁ、【ディテクト・フェイス】で調べるつもり?これで拒否したり、邪神の恩寵を受けているのが判明したりしたら、今の話が真っ赤な嘘だろう、って」

ウルリサ:「そうよ。もちろん、拒否しないよね?お母さん」

サヤリ:「……えぇ。そこまでされても、文句は言えないわ」


 詰め寄るウルリサに対して、サヤリは静かに首肯する。

 なるほど、【ディテクト・フェイス】ってそういう使い方も出来るんだな……というメタな部分での感心をしつつ、その結果が出るのを待つ。


 ……しかし、しばらくしても、ウルリサは結果を口にすることはなかった、が。


ウルリサ:「……っ……なんで、なんでよぉ……!」


 そう言いながら泣き崩れる姿は、結果が自身の望んだものではなかった─────つまり、サヤリがまだ、シーンの寵愛の下にあるのだと察するには十分だった。


 ◇ 最後の手がかり ◇


フィオラ:「─────ってな感じで。ウルリサのことは、正直あたしじゃどうにもできん。サウリルかあんたに任せるぜ」

クセナウイ:「あぁ。あたしも、あの子らのもう一人の母親……なんて自称するには、ちょいと歳を食いすぎたかね。ま、面倒は見ておいてやるよ」


 いよいよ居場所のなくなった天幕を逃げ出すように後にして、クセナウイの元へ。

 話した内容を共有と、今後についての相談をするためである。


フィオラ:「よろしく。……で。改めて、この槌と、〈時の卵〉の製法についてなんだけどよ」

クセナウイ:「そうさねぇ……とは言え、その槌についてすら、ごく一部の奴しか知らなかったんだ。ましてその使い道となると……いや、いるか。まだあんたが話してなくて、なにか知っていそうな存在が」

フィオラ:「マジ?どいつだ、キャラバンの奴とは全員話したと思ってたけど」


 難航続きであった情報収集に、いよいよ進展の時か。しかし、一体誰だろう。

 おそらく、六話とか七話の時点で、キャラバンの隅から隅まで聞き込みを行なっているものだと思うのだが。


クセナウイ:「名前だけなら、もう耳にしたことがあるはずさ。─────グリフォン達の長、ブワナ・ペサだよ」


 あぁ、なるほど。そりゃあまだ会ってないわ。

 というか、てっきりキャラバンと常に行動を共にしているものかと思っていたのだが。長に関してはそうでもないのか。


フィオラ:「グリフォン達の……ってーことは、実質、お前らの中で一番偉い奴ってことか。そう言えば見たことねーな」

クセナウイ:「ついこの間まで、産卵の時期だったからね。余程の理由がない限り、あたしらメゼー以外は、面会すら許されないくらい立て込んでたのさ」

フィオラ:「あぁ、そういやそうだった……じゃあ、今なら会えるのか?」

クセナウイ:「まだもう少し先になるかね。無事に産卵が終わって、今は子育ての時期。雛達を守りながら、ゆっくりと移動してるんだけど……この時期がまた、一段と気が立っていてね。下手なことをすると、あたしらでも食われかねない」

フィオラ:「おぉ、そりゃおっかねぇ。んじゃ、それが落ち着いてからか」

クセナウイ:「そうさね。おそらく一ヶ月は先になる。話だけは伝えておいてやるから、それまではあたしらも、可愛い子供・・・・・の面倒でも見て用じゃないか」

フィオラ:「はは。……あー……そういうのマジで苦手なんだけど、全部丸投げしていいか?」


 こうして、一ヶ月ほどの待機期間が生まれることに。

 しかし、パーティメンバーの一人が絶賛ご乱心中だからな……むしろ、この一ヶ月で彼女を本調子に戻すことができるのかどうか、逆に心配である。


 ◇ サウリルの思い ◇


カデア:「お、いたいた。フィオラ、俺ら宛てに手紙が来てるぜ」

フィオラ:「あたしら宛て?……おぉ、リームからじゃん。あっちの騒ぎもようやく一段落したんかね」

アルナブ:「読んでみようか。ヤミアデミアについての情報も、調べてくれてるかもしれないし」

フィオラ:「だな。えーと、拝啓うんたらかんたら……」


 家族会議から半月後。大聖堂のリーム司祭から手紙、もとい報告書が届いていた。


 あの後、大聖堂では、ヒアナ大司祭は魔神の策によって逝去した扱いとされ、その後任にリームが就任した、という形になったらしい。

 まさか、大司祭に魔神が取り憑いていて、教団を内部から崩壊させようとしていた……なんて馬鹿正直に公言しては、権威もなにもあったものではなくなるだろう、という判断による結果だそうだ。それはそう案件すぎる。

 しかしリーム司祭……もとい新大司祭は、『教団の改革のために、口止め料ということで、これを受け取っておくことに致しました。ですが、教団の改革を進め、いつか必ず、今回の事件の真相を、私の口から述べるつもりです』とのこと。本当に、どこまでも聖人かつ聖職者の鑑である。


 また、ヒアナの証言を元に、いくつかの闇カルテルの摘発をしたものの、ヤミアデミア本人を捕らえることはできなかったとのことだ。マーティアスどころか、オーレルムを後にしている可能性すら考えられるが、お互い今後も、奴への警戒は怠らないようにしなければならないだろう。


 なお、ヒアナは話すべきことを話した後に、教団からの追放処分を受けたらしい。表向きは死んだことにされてしまった以上、万が一にも姿を目撃されてしまっては困るので、仕方のないことか。

 現在は、在りし日のサヤリのように、各地を放浪する旅の神官として、オーレルムを巡っているそうだ。もしかしたら、どこかで再会するだろうか。


フィオラ:「ま、無事に一件落着、ってとこか。頼りになるやつらだったし、なんかあったらまた助けに行ってやるか」

カデア:「だな。……っと、連絡はこれだけじゃないんだった。クセナウイが呼んでるぜ、帰ってきて早々悪いけど、仕事は無限にあるんだ、ってよ」

ヤザン:「ま、しばらくは特にやることも無いんだろう?なら、キャラバンを離れてていた分、しっかり働いておこうじゃないか」

フィオラ:「今回に限らず、あたしら頻繁にどっか行ってっからなぁ……あれ。そう言えばヤザン、お前とファディヤは今後どうすんだ?サヤリは見つかった訳だけど」

ヤザン:「しばらくは共にさせてもらうつもりさ。町、そして子供達を助けてもらった礼もあるし、せめてもの恩返しとして、な」


 文面上では特に言及が無いので、おそらく二人とも最後まで着いてきてくれるのだろう。まぁ、サヤリが無事だったのではいさようなら、というのもアレか。

 仮にネジュドナジュへ帰るにしても、サヤリを連れて行くかどうか、という問題もあるだろうし。


 そんな訳で、久方ぶりにキャラバンでの仕事、という名のチャレンジ。

 今回はプラトーン達は参加しないらしい。各々の仕事があるとか、約二名仕事なんかしてる場合じゃないからとか、色々事情があってのことだろう。

 用意されている項目は……狩りだの採取だの、やたらとレンジャー技能を推してきている。通常セッションでの自PCはレンジャー伸ばしがちだが、ゲームブックソロプレイでは1振り以外あんまりしないというかできないというか。


 さておき、裁縫(スカウト+器用B/目標値14)と狩り(命中力判定/目標値13)ならできそうなので、これを選択。(コロコロ)どちらも無事成功して、経験点を600獲得。

 千や二千稼いだ程度では手が届かない高額品にしか欲しいものがもう無いので、今後は遠慮なく経験点全振りで行く所存です。強いて言えば〈信念のリング(5000G)〉と〈セービングマント(8000G)〉が比較的お求めやすい価格だろうか。


 そうして仕事をこなしながら、グリフォンとの面会、もとい謁見の日を待っていると、やがて本格的に夏が訪れた。荒野の大地が本領を発揮し、日中は茹だるような暑さを、夜間は凍てつくような寒さをもたらしてくれる。

 雪解けと共に顔を覗かせた緑がすっかり消え失せたのは、気候の影響だけでなく、地方西部に広がるカルザーラ塩源に近づいてきたから、というのもあるだろうか。


フィオラ:「夏本番、って感じだな。そして夏ってことは、太陽の季節ってことでもある。日光万歳!」

アルナブ:「さすがソレイユ、堪えるどころか春頃より元気だなぁ。……ところで、サウリルが君に話があるって、あっちの天幕で呼んでたよ」


 日光浴を満喫していると、ある日呼び出しを受けた。

 あの姉妹はだいたい一緒に行動しているので、片方だけから呼ばれる、というのは初めてな気がする。


フィオラ:「ん、サウリルだけか?ウルリサからは何も聞いてねえの?」

アルナブ:「聞いてないっていうか、サヤリさんが目を覚ましてから、全く誰とも話してないっていうか……呼ばれてるのも、多分その件についてじゃないかな」

フィオラ:「おー……思ったより深刻そうだな。あたしに相談相手が務まるかわかんねえけど、とりあえず行くか」


 かくして、サウリルの待つ天幕へと向かう。彼女は天幕の外で、思い詰めたような顔をして待っていた。

 こちらがやって来たことに気がつくと、表情を普段通り……にはやや足りないくらいのものに戻して、少し離れたところに連れて行かれる。


サウリル:「悪いわね。ちょっと、ウルリサのことで相談したくって」

フィオラ:「アルナブからそれとなくは聞いたぜ。あの日から、一切口を開かなくなっちまったって」

サウリル:「そ。お母さんとあたしだけならまだしも、キャラバンの誰ともね。日中の移動中以外はずーっと天幕の中に籠もりっきりだし……メゼーも、どうしたもんかって頭抱えちゃって」


 ちなみに、サヤリが目を覚ましてから向こう、彼女にべったりしているファディヤさん曰く、『サヤリさんに濡れ衣を着せて殺そうとしていたんだから、少しくらいへこんでいた方がいいんです!』とのことである。

 確かに、ファディヤにとってサヤリは恩師であり、尊敬する存在なはずなので、そんな人を悪く言われていたのは、あまり良い気はしなかったんだろう。

 いやぁ……この子をスタメンに入れなくてよかったな。入ってたらとんでもないギスギスワールドが繰り広げられるところだった。


サウリル:「でまぁ、色々考えたんだけど……結局思いついたのは、どうにか外に連れ出して、みんながいる場所で、改めて話ができたらなぁ、ってぐらいで」

フィオラ:「みんなと?話し合いするだけなら、極論、あいつとサヤリの二人だけでいいんじゃないのか?立ち会うにしても、お前とあたしだけいりゃあ……」

サウリル:「……あたしら三人だけだとさ。気が詰まるっていうか、もう既にそんな感じなんだ」


 と思ったが、既にだいぶギスっているようだ。まぁ無理もないか……


フィオラ:「あー……そか。分かった、他の奴らにはあたしから頼んどく。ちなみに、どうやって連れ出すかっつープランは?」


 苦笑しながら肩を竦める姿を見せられれば、断る選択肢は無くなるというもの。

 協力することに決めて、サウリルにそう返してみる。


サウリル:「そろそろ、バイソンの群れの移動に遭遇するはずなの。で、それをキャラバンのみんなでとっ捕まえる、狩猟祭っていうのをやるのが、この時期の慣わしになってるのよ」


 大柄な野牛の狩猟祭。なかなか派手な催しである。

 ちなみにGoogle先生によると、バイソン(特にアメリカバイソン)は十八~十九世紀頃に大量に狩猟されたことが原因で、絶滅の危機にまで瀕していたらしい。それを知ってしまうとなんかやり辛いな、調べなきゃ良かったかもしれん。


フィオラ:「へー、バイソンか。そりゃまた投げ飛ばしがいのありそうな」

サウリル:「そりゃあもう。あんたより一回り大きいようなのが、数え切れないほどいるわ。……で、その狩猟祭に、お母さんとウルリサも引っ張ってこようかなって」

フィオラ:「いいじゃん。気晴らしにもなりそうだし。なにより、あいつがいないと安心して暴れられねえんだよなぁ、もう」

サウリル:「はは。あの子にも、当日直接言ってやって頂戴。ちょっとは変わるかもしれないからさ」

フィオラ:「おっけー、任された。んじゃ、こっちでいつメンに声掛けておくぜ」

サウリル:「ん。よろしく、色々と」


 そんなPLの気持ちはどこ吹く風で、話はトントン拍子に進んでいくのだった。



 さて。進んだシーン数は多くないが、いかんせん情報量がとても多かったもので、既に字数が結構な量になっている。

 このまま狩猟祭、つまり戦闘に入ると長くなりすぎるので、一旦ここで切らせていただく。今話、もしかすると中・後編に分けての三部構成になるかも。

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