第七話 "密猟者たちの狂想曲" / 前編

~ あらすじ ~


 サンシャイン駅にて、奴隷取引が行なわれるという情報を手にした一行。それがおそらく、ネジュドナジュの街でサヤリと子供たちを攫っていった連中によるものだろうと予測し、早速向かってみることに。

 そこで現地の者たちに詳細な情報を求めてみると、なんとその取引にはティダン神殿の者が関与しているという事実を知る。背信者に裁きを与えるためにと、司教のリーム、神殿騎士のハリスと協力し、取引現場の廃坑道奥地へ赴いてこれを阻止。しかし囚えられた者たちの中に、サヤリの姿はなかった。

 神殿騎士団長が背信者たちの顔役であったという嘆かわしい事実も判明したりなどしたが、リーム司教の正しき信仰のもと、神殿が立て直されることを祈って、一行は一旦街を後にする。


 果たしてサヤリは何処へいってしまったのか。そして、何故このような拉致事件が起こったのか。そもそもネジュドナジュを襲ったのは、一体誰だったのか。

 次なる手掛かりを求めて、第七話、始まり……


 ……の前に、忘れていたガオン無双獣投術への入門と、《撃爆投獣》の会得をしておきます。これで〈投げ〉による範囲攻撃が可能になり、転倒も二体まで狙えるように。ようやく喧嘩屋らしくなってきたな。


~ あらすじおわり ~


 ◇ 導入 ◇


 キャラバンへと戻った翌日、ハリスがファディヤを伴って、一行の元を訪ねてきた。昨日の事件についての報告をしにきたようだ。


ハリス:「捕らえた者たちに"話を伺った"ところ、みなヤミアデミアの手下どもであることが確認できました。それから、誰が背信者であるのかの情報も。おかげで無事、いくつかのアジトを摘発し、そこに捕らえられていた方々も救出できました」

フィオラ:「おー、そりゃよかった。……ちなみに、どうやって"話を伺った"かってのは……」

ハリス:(無言の笑顔)

フィオラ:「……ティダン神殿の最重要機密事項ってことにしとくか」


 信仰、そして神の名を汚すような行ないには、相応の罰が待っているのである。


ヤザン:「ま、当然の報いだな。それで……サヤリさんに関する手掛かりは?」

ファディヤ:「サヤリ先生は、マーティアスの方に連れて行かれた……のかな?あの人たちが、そんな話をしているのを聞いたわ」

ハリス:「そのようです。連中の幹部が、黄金呪刻師を必要としていたとかで。マーティアスのどこに送られたのか、までは知らないそうですが」

カデア:「少なくとも、身柄の無事は保証されてるって訳か─────」

ウルリサ:(ファディヤに対し露骨に訝しむような顔を向けている)

サウリル:(ヤザンに続けてファディヤまで揃ってしまったのでとても居心地が悪い)

シヴァニカ:「……最後まで無事かどうかは、この子たちの機嫌次第、ね」

ファディヤ:「?」

フィオラ:「なんでもねぇ。気にすんな」


 さておき、サヤリは無事なようだ。……今のところは。

〈時の卵〉に関する情報のために、どの道マーティアスへ向かうつもりではあったので、一石二鳥と言えるだろう。次の目的地はそちらで決まりだ。


ハリス:「それから……ひとつ、気になる話が出まして。連中の組織に、少年の姿をした吸血鬼が協力していたと」

フィオラ:「─────へぇ。あの野郎、やっぱ一枚噛んでやがったか」


 加えて、ニオを思わしき人物の存在を仄めかされる。

 ネジュドナジュを襲撃していたのが、ただのアンデッドではなかった時点で感づいてはいたが、やはりか。


ヤザン:「なんだ、知ってる奴なのか?」

フィオラ:「ま、個人的な付き合いがちょっとな。素敵なプレゼントを貰ったっきり会えてないんで、是非ともお返しをしてやりてえのさ」

カデア:「はぁ……何があったのかは聞かないでおくけど。無茶はするなよ」

ハリス:「えぇ。それにその吸血鬼は、赤い粉……おそらく〈アビススナッフ〉と呼ばれている麻薬を、血に混ぜて飲んでいたとか」

ウルリサ:「〈アビススナッフ〉?聞いたことがないわね……〈アビスシャード〉と関係がありそうな名前だけど」

ハリス:「なんでも、粉末状にした〈アビスシャード〉に、いくつかの興奮剤を混ぜ合わせたものなのだとか。捕らえた連中は中毒者ではなかったようで、実物は持ち合わせていませんでしたが」

カデア:「魔女様がヤバい薬を扱ってるって噂も本当だったか。よりによって〈アビスシャード〉が原材料だなんて、何考えてやがるんだ……?」


 この辺の話も、『BIG』作中にてちょろっと触れられていたり。

 こうして見ると、同じ地域の話というだけあって、関わってくる要素が多いですね。描写やりやすくなるのでできれば全地域でこれやって欲しい(無茶振り)。


ハリス:「今のところ、報告できる内容はこれくらいですね。拉致された方々を元の場所へと送り届けたり、あるいは神殿で受け入れたりという話も進めないといけませんので、サヤリさんについての詳細な調査には、もうしばらくお時間が掛かります」

ウルリサ:「それは仕方がないわ。そちらを優先してください」

カデア:(本当はたまらない癖に、よく言うぜ……)

ハリス:「畏まりました。それでは、私は一旦これで。メゼーの皆さんとも、この件について話をして参ります」


 話が終わり、一瞬の静寂が訪れる。……が、それは一瞬にして破られることに。


ヤザン:「それじゃ、ファディヤ。俺はサヤリさんを助けるために、もうしばらくこの人達と一緒にいることになるから、お前は先に街へ─────」

ファディヤ:「嫌よ!私も、サヤリ先生の無事を確かめるまでは、絶対に帰らない」

ウルリサ:「……あなたは、あの女に騙されているのよ。それに、これは遊びじゃないの。子供が付いてきていい仕事じゃないわ」

サウリル:「そーよ。大人しく帰って、黄金呪刻術とやらのお勉強でもしてなさい」

フィオラ:「あーあー、また始まった……収拾つかねーぞこのままだと」

シヴァニカ:「女三人寄れば、と言うけど。この喧しさは、耐え難いわね」


 加速するパーティのギスギス度合いがとどまるところを知らない。

 果たして我々は、全員無事のままで旅を終えられるのだろうか。


 ◇ それはそれとして ◇


フィオラ:「─────ってなことがあってな」

クセナウイ:「まったく、お前らは……少し頭冷やしてきな。キャラバンとしての仕事の時までサヤリ、サヤリ、じゃこっちも困る」

ウルリサ:「……済みません」


 ハリスとの話を終えたクセナウイが、次の仕事に関する説明をするためにこちらへやって来た。ところへ先程の話を伝えたらこの反応である。

 姉妹がこの場を離れると、「……物分かりが良すぎるのも、かえって気掛かりではあるんだけどね」と零して、長煙管をふかす。


クセナウイ:「さて、改めて仕事の話だ。神殿の方で調べがつくまでの間、ゴールデングリフォンの営巣地の巡回の手伝いをしてもらいたくてね」

フィオラ:「巡回?天敵でも来るのか?」

クセナウイ:「天敵と言えば天敵かね。雛や卵を狙って、密猟者が忍び込んでくることがあるのさ」

カデア:「あぁ、売り捌くつもりでいるのか……嫌な話ばかり出てくるな」

クセナウイ:「ま、そういうのもあるけど。今年は特に、ヤミアデミアの奴が何か仕掛けてくるかもしれない。現に一度、グリフォンの子供が攫われてるしね」

フィオラ:「そういえばそんな事もあったんだった。つまり、蛮族だなんだが攻め込んでくるかもしんない訳か」


 そうしてやってきた賊どもを締め上げれば、それはそれで情報が手に入るかもしれない。実質情報収集である。

 断る理由も無いので、これを承諾することに。


クセナウイ:「あぁ。だから、少しでも人手は多い方がいい。あたしを始めとしたメゼーの何人かも向かう予定だ」

フィオラ:「ま、ただ待ってるだけなのも暇だしな。あたしはいいぜ。お前らは……どうする。ぶっちゃけ、秘宝ともサヤリとも関係ねーけど」

カデア:「俺とシヴァニカは、あんたに付いていくのが旅の目的だからな。行くぜ」

ヤザン:「俺もキャラバンの一員となった以上は、義務を果たそう。……ファディヤ。お前はしばらく、キャラバンの人達と待っていてくれ」

ファディヤ:「うん。私はあくまで、サヤリ先生に会いたいだけだもの」

ヤザン:「それでいい。いい子にしてるんだぞ」

カデア:「苦労するんだな、兄ってのは……」


 ちなみにヤザンが四十三、ファディヤが十四だ。その差、実に二十九。

 エルフなので、年齢差の感覚が我々人間とは全く異なるというのは分かるんだけど……じゃあこの差って、人間で言うとどのくらいの差なんだろう。

 そんなことを思うなどしました。


 依頼を受けたので、出発前にプラトーンの編成を行なう。グリフォンの子供は相変わらずで、ハリスも今回は編成不可らしい。

 ……タンク不在じゃねえか!!急に紙装甲PCを殺しに来るんじゃない!!

 ……失礼。取り乱しました。新技で二匹同時に転倒を狙っていけるので、これでどうにかする感じになりそうかな……

 なお、ファディヤもただの賑やかしではなく、正式にプラトーンメンバーとして加入しているのだが、多分ヤザンくんが許可を出してくれないと思うのでこのリプレイにおいてはいないものとして扱います。

 戦闘能力のない未成年の妹を戦場に連れて行きたがる奴おらんて。


 で、そうなると……また一枠余るのか。でも汎用メンバーを今更雇う気にもならないので、枠を空けたまま行くとしよう。

 陣形は、前衛にシヴァニカ、ウルリサ、カデア。残り二人が後衛。

 ……ステータス、だいぶ寂しいことになってるな。やはりタンクの二人、もとい一人と一匹は基礎ステお化けだったんだな、と改めて感じる。

 ヤザンを前に、シヴァニカを後ろにすれば多少見栄えはよくなるんだけども、《かばうⅠ》も《挑発攻撃Ⅰ》も無い今のプラトーンの防護点を伸ばしたところで、あまり意味も無いだろう。


フィオラ:「んじゃ、行ってくるぜ。……あー……営巣地、どっちっつったっけ」

クセナウイ:「北東だよ、あの丘陵地帯。近くまで行けば、巣に佇んでるグリフォン達の姿が見えるはずさ。それを目印にしな」

サウリル:「ま、そもそもあたしとウルリサがいるから。迷わせはしないけどね」

ウルリサ:「そうね。……しかし、今年ももうこの仕事の季節か。また一年経ったんだな、と感じてしまうわね」

フィオラ:「一年……か」


 季節は春の終わり頃。マカブを出てからそろそろ半年だ。

 〈時の卵〉の手掛かりは着実に集まっているが、果たしてもう半年で実物まで辿り着けるのだろうか。


フィオラ:「……ま、なるようにしかなんねーな」


 ◇ 賊とハサミは使いよう ◇


 営巣地に向かえば、密猟者共を捕らえるためのチャレンジ表が待ち構えていた。情緒も何もねぇな。

 進行がサクサクであることはとても有り難いんだけども。


 内容は……う~~~ん、すごく微妙なものが多い……絶対に成功する項目も〔20点の物理ダメージを受ける〕とか書いてあって、〈救難草〉を使用を余儀なくされるダメージを負うことになる。

 ……まぁ、言うても一本100Gか。とりあえずフィオラとプラトーンの両方でこれをやっておく。

 そしてフィオラのもう一つは、〔危険感知判定/目標値14〕に決定。最近先制判定に余裕があるので、“剣の恩寵”はここで使ってしまおう(コロコロ)無事成功。

 更にボーナスチャレンジがありましてと……300Gと5点疲労でいいや。こっちはやけに優しいな。

 合計で、経験点1200を獲得。いきなりすごい量を貰えた。種族特徴の強化も入るし、今回でグラップラーを6に上げるつもりでいくか。


フィオラ:「いきなりだなぁ、おい。あたしとしちゃ、嬉しい限りなんだけどよ」

ウルリサ:「こっちは気が気がじゃないわよ……一人でも見逃したら、メゼーとグリフォンから何を言われるか分かったものではないから」

サウリル:「それはそう。でも、信用してもらう機会でもあるからね」

フィオラ:「お前らにとっちゃそういうもんか。……おし、一段落したことだし手当てするぜ」


 大量に買い込んだ〈救難草〉を一本ずつ使い、負った傷は全快。さすが威力50だ、固定値がカス(4)でもなんとかしてくれる。


カデア:「さて……(縛った賊の前で腕組仁王立ち)おい。あんた」

シヴァニカ:(男のこめかみにそっと〈ロングバレル〉の銃口を添える)

男:「ひっ……な、なんでしょう」

カデア:「遠路はるばるここまで来たんだろ?なら、土産話でも聞かせてくれよ。どこから来たのか、どういう目的で来たのか、とか」

ヤザン:「……サマになってるな。あれもまた斥候の仕事、か」

フィオラ:「そう……だな。あたしも昔は、酒場で似たようなことよくやってたわ」

サウリル:「それ、もしかしなくても尋問じゃなくてただの喝上げじゃ……?」


 捕まえた賊に、早速インタビューの時間だ。

 どんな生き物も、大抵は自分の命が惜しいに決っている、ならばそれと情報を天秤にかけさせれば良い。実に簡単な話である。


ジェイク:「は、話す!話すから!……俺はジェイク、ルードゥークから来た。狙いはグリフォンの雛だの卵だのを、手に入れること……だった。へへ、失敗したけどな」

ヤザン:「ほう、ヤミアデミアよりも……つまり、奴もこの営巣地を狙っているということで合っているか?」

ジェイク:「あぁ。あいつの手下連中が、雛狩りに協力しないか、って話を、街のごろつき相手に片っ端から持ちかけてたからな。間違いないぜ」


 訊ねてみると、意外とあっさり吐いてくれた。なるほど、こいつは別にヤミアデミアの手下ではないんだな。

 誰に指示されるでもなく、個人的に盗みを働けば、盗った分がそのまま自分の利益になる。どうせ盗むならその方がいい、とでも考えたんだろうか。


フィオラ:「数撃ちゃ当たるってか。単純だけど、一番めんどくせえ方法取ってきやがったな。流石大盗賊の頭領さまだ」

カデア:「人件費も、例の薬物を売り捌いた金で簡単に払えるんだろうな……ちなみに、そのヤミアデミアが集めているごろつき連中はいつ来る予定なんだ?それらしい奴は、今日の密猟者の中には見当たらなかったそうだが」

ジェイク:「予定か?それなら明日の夜だぜ。だから俺ぁ、大急ぎで今日のうちにやっちまおうと思ったのさ」

サウリル:「それで捕まってんじゃ、元も子もないわね……」

クセナウイ:「なんだ、面白そうな話が聞こえてくると思ったらお前たちか。あたしも聞かせてもらってもいいか?」

ウルリサ:「あ、メゼー。どうぞ、丁度伝えに行こうかと思っていたところです」


 話していると、クセナウイが興味津々な様子でやってきた。

 ヤミアデミアに関する話は、フィオラやヤザンだけの問題ではなく、キャラバン全体でも気にすべきものだ。相談の意味も込めて、同席してもらうことに。


ジェイク:「メゼーってこたぁ、キャラバンのお偉いさんか。……なぁ、取引しないか?俺は雛を諦めるし、なんならヤミアデミアに繋がる情報も提供する。それを聞いた慈悲深いあんたは、潔い俺のことを見逃す気になってくれる。どう?」

クセナウイ:「何が潔い、だ。図々しい男だね……けど、そうさね。このままグリフォンの餌にしちまうよりかは、利益がありそうだ」

ジェイク:「だろ?へへ、さっすが姉御。話が分かるお方で─────」

クセナウイ:「─────ただし。ちょっとでも怪しい素振りを見せたら、すぐにでも縛り直して、煮るなり焼くなりさせてもらうからね」

ジェイク:「へ、へへ……まさかそんな、ここまで言っておいて裏切るなんて……ねぇ?しませんよ」

カデア:「すげーな。完璧な三下のムーヴだ」

フィオラ:「ここまで綺麗だと、逆に感心しちまうな。……もう一発くらい殴ってみたら、もっといい出してくれるんじゃね?」

ウルリサ:「やめておきなさい。……はぁ。命乞いするくらいなら、最初からこんなこと、しなければいいものを」

シヴァニカ:「正論は、時に人を傷つけるわよ。銃弾より深く、ナイフより鋭く」


 釘もしっかり刺しておいたところで、詳しい話を聞いてみることに。


 営巣地襲撃の募集が行われている件の街・ルードゥークにある〈夜明けの鴉亭〉という宿屋に、アルナブというタビットの男がいるらしい。

 なんでも、捨て子だった彼を拾い、魔法の手ほどきをしてくれていた養父が、二年前にヤミアデミアに殺されてしまったらしい。そのうえ、現在は奴にこき使われているのだとか。

 逆らうこともせず、というかそんなことを考えてなどいないらしい臆病な彼だが、しかし逆らう手段が存在するなら話は変わるだろう、とジェイクは言う。だから、我々がその"手段"となり、彼の復讐に力を貸せばいいのだ、と。


ジェイク:「……てな感じで。どう、そんなに悪い話じゃないだろ?」

ヤザン:「ふむ……俺も、奴に憤りを覚えている身。他人事とは思えんな」

フィオラ:「そうか、お前にとっちゃ、街の人間たちの仇でもあるか。……ならこの話、乗らない訳にはいかねーな」

カデア:「あぁ。いけ好かない魔女に、一泡吹かせてやろうぜ…………はっ」

ウルリサ:「……」(私達の復讐には反対気味なのにね、という視線)

サウリル:「……やめときなさい、ウルリサ。メゼーに冷水掛けられるわよ」

クセナウイ:「別にそこまでしないよ。……で、そのアルナブとやらのとこには、あんたが案内してくれるのかい?」

ジェイク:「あぁ、もちろん。あの街は今、治安が悪いからな。土地勘無しに彷徨くのは危険極まりないってもんよ」

フィオラ:「治安悪くしてる一因の癖に、良く言えたもんだなおい。……まいいや。んじゃクセナウイ、またちょっくら出張してきても?」

クセナウイ:「あぁ、頼んだ。間接的に営巣地を守ってくれる訳だからね、報酬はちゃんと出してやるから安心しな」

フィオラ:「ども。おら、行くぞこそ泥」


 かくして、一行は再び別行動を取ることに。

 ヤミアデミアとの直接対決……とまでは行かないだろうが、それなりに強力な蛮族が出てきそうな予感はするな。脳筋野郎ならなんとかなるが、果たして。


 ◇ 我らこそDawnbringer夜明けをもたらす者 ◇


 キャラバン本隊のキャンプから見て北西側、ルードゥークの街。

 もともとは鉱山街だったが、それが閉鎖されてしまうと、マーティアスやサンシャイン駅からあぶれた無法者たちの流入先となってしまい、治安が悪化。

 しかし、彼らを相手にする違法なカジノやアウトローな酒場が増えてくると、それを中心に経済が回りだし、経営者たちによる統率が始まった。

 結果、治安は安定。ただの無法都市から立派な犯罪都市へと姿を変えた……という感じらしい。


ジェイク:「さて……早速アルナブのところに行く訳なんだが。付いてくるか、どこか適当な酒場で待ってるか。どっちがいい?」

フィオラ:「もちろん付いてくぜ。監視の意味も込めてな」

カデア:「けど、この大人数で彷徨くのは結構目立つからな。余所者、それも黄金のキャラバンの所属がいるとなれば尚更だ」

サウリル:「そうね。少なくとも、あたしとウルリサは大人しくしておくべき。……けど、こんなガラの悪い街で女二人きり、ってのもね」

ヤザン:「なら、俺たちの代表者であるフィオラにだけ行ってもらうというのは?」

フィオラ:「おっけー。……いやでも、酒場か……酒場か……」

ウルリサ:「……終わったら奢ってあげるから。真面目に仕事してきなさい」

フィオラ:「冗談だ、じょーだん。流石に飲まねえって、この後バチバチにやり合うことになるかもしれねーのに」


 ひとまずは、プラトーンの面々を酒場で待機させて、フィオラだけアルナブの元へと向かうことに。

 そうしてジェイクに付いていくと、大通りから脇道へと入ってしばらく歩かされて、一軒の宿屋の前に到着する。

 朝日が地平から顔を覗かせている看板と、その上部に止まっているかのように取り付けられた鴉のオブジェ。どうやらここが〈夜明けの鴉亭〉のようだ。


フィオラ:「おじゃましまーす。……おー、いい雰囲気だな。しかも一階は酒場になってるタイプか」

ジェイク:「あんまり目立たないようにしてくれよ?……ほら、周りの連中も、いきなり知らない顔が来たからピリついてる」


 店の外からは馬鹿笑いをしている楽しそうな声が聞こえてきていたが、フィオラが扉を開けた途端、店内は一斉に静まり返って、代わりに剣呑な眼差しによるお出迎えをしてくれる。

 流石は犯罪都市、どこの誰かも分からない新顔に対しては、まずは警戒から入るようだ。抗争や摘発を恐れているんだろうか。

 ましてやこの女、ソレイユだし元々はそっち側アウトローだったしで、見た目だけで十分な威圧感を与えていそうだし。


フィオラ:「別にシマ荒らしとか、武力抗争とか、そういうのとは一切関係……いや、あるか……ヤミアデミアの子分がいるんだったな、この街」

ジェイク:「そゆこと。あんまりデカい声で話すと、そいつらに動きがバレちまうかもしれないから、なるべく穏便にな」


 冷静に考えると、この街は既にヤミアデミアの手が回っている場所で、我々はそこへ自ら踏み込んだようなものだ。

 となると、あまり街中で派手なことはしない方がいいか。


ジェイク:「さて、と……(挨拶代わりにガメル硬貨を差し出しながら)ちょいとアルナブに話があるんだけど、今どこにいる?」

店員:「(硬貨を一瞥、無言で受け取る)……二十六だ」

ジェイク:「ども。行くぜ、そこの部屋にいるらしい」

フィオラ:「ひゅう。めっちゃシンプルでスムーズなやり取り、そしてお互い慣れた手つきだな」

ジェイク:「この街じゃ、どいつもこんなもんさ」


 クールなやり取りを見届けて、客室の並ぶ二階のへと上がる。

 その中から二十六と書かれた扉を見つけて、ノックも無しにジェイクが踏み入ると、そこには黒い毛並みに白い斑模様のタビットがいた。


ジェイク:「よっ、アルナブ。お前に紹介したい人と、いい話を持ってきたぜ」

アルナブ:「い、いい話?……君がそう言う時って、大体厄介事じゃ……」

ジェイク:「そう警戒しなさんな、今日は本当にいい話なんだから。なぁ?」

フィオラ:「まー……いいかどうかで言うなら、いい話寄りではあるな。少なくとも、損をするのはヤミアデミアとその手下だけだ」

アルナブ:「や、ヤミアデミア!?まさか、あの人に何かするつもり?」


 その名前を出すと、彼は怯えるようにして部屋の隅へと逃げ込んだ。

 話に聞いていた通り、なかなか臆病な兎である。


アルナブ:「駄目だ、そんなこと。もしも失敗したりバレたりしたら、どんな目に遭わされるか……!」

ジェイク:「そうか。いやー、残念だなぁ。そうなると、俺らがお前に会いに来たという結果だけが残り、あの女の手下たちにも伝わっちまうなぁ」

アルナブ:「ひぃぃ!!(ベッドから掴み取ったシーツにくるまる)」

フィオラ:「うわ。お前、しっかりクソ野郎だな……」


 そして臆病な彼に対してこの仕打ちである。遠回しに、お前に選択肢は存在していないという、あまりにも無慈悲な宣告。

 やっぱりこいつ、この件が終わったらグリフォンの前に突き出しておいた方がいいんじゃないだろうか。あまり美味しくないかもしれないけど。


 そんなこんながありつつ、アルナブの恐怖が落ち着くまで数分待って、改めてこちらの事情を説明すると、彼も覚悟を決めたのか、ヤミアデミアについて知っていることを話してくれると約束してくれた。

 ただし、身を守るためにも、この街を出て、黄金のキャラバンの元へ連れて行って欲しい、という条件付きで。


アルナブ:「どの道、この街に居続けるのは危険だから……きっと今日の深夜にでも、あの人の手下が、僕のところに押しかけてくるに違いないんだ」

ジェイク:「だろうな。なんならそうさせる為に、一階で堂々と、お前を探してるって話をしてきたんだから」

フィオラ:「……お前、長生きできなさそうだな……」


 アルナブの代わりにこいつを置いていった方がいいんじゃないのか。

 そんなことを思いつつ、プラトーンの面々と合流。我々もなにかちょっかいを掛けられるかもしれないので、足早に街を出ることになった。

 ……意外と何事もなかったな。てっきり、手下に襲われるものだとばかり思っていたのに─────


モヒカン:「ヒャッハー、略奪だァ!」「金出しな、金!無けりゃ身体で払ってくれてもいいぜェ!」


 ……なんてフラグを立てたら、帰り道でしっかり襲われました。

 顔ぶれをよく見てみると、先程〈夜明けの鴉亭〉で見かけた客も混じっているようだ。カモだと思われて、後をつけられたんだろうか。馬鹿な奴らだ。


カデア:「この上なく分かりやすい賊が来たな……おい、ジェイク。あれはヤミアデミアの手下か?」

ジェイク:「いや、絶対に無いな。あいつはもっと狡猾で、用心深い。あんな顔に『わたしはアホです』って書いてあるような奴、それこそ営巣地の襲撃に雇ったりもしないだろうさ」

フィオラ:「言いたい放題だなおい。ま……いいか。暴れたいってんなら、付き合ってやるのがあたしの流儀よ」


 こうして、今話二度目のチャレンジが幕を開けた。


 〈夜明けの鴉亭〉の客がいるのは、先程フィオラがジェイクに同行してしまったことによる影響らしく、そのせいで各種判定の目標値が2上昇しているそうだ。いやらしいところにペナルティ仕込んできやがる。

 すると……達成値が関係しない〔18点の物理ダメージを与える〕とかどうだろう(ダメージを計算する)うわ、出目9要る。けど他に挑戦する気になる項目もないし、これと〔回避力判定/目標値15〕にしておくか……(コロコロ)回避の方だけ成功。プラトーンには〔危険感知判定/目標値16〕をやってもらう(コロコロ)(自動失敗)はい。

 ……結果、経験点を120獲得。先程とはえらい違いである。



 そんなこんなで、一行は無事にキャラバン本隊へと帰還。改めて、アルナブから話を聞くことに……なるのだが、文字数がアレなのでここで区切る。

 後編、営巣地防衛戦へ続きます。

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