第六話 "腐った太陽" / 後編

 動き出した魔動機たちは、〔シャザーレィ〕〔ブルドルン〕〔ザーレィ(こいつだけ後方に配置)〕。低レベ帯でお馴染みの顔ぶれが揃っている。

 ブルドルンはともかく、シャザーレィの攻撃は、精神クソザコのフィオラにとっては大変辛い。更に言うと、二足歩行でないので〈投げ〉が通らない。せっかく買った〈イージーグリップ〉の出番はお預けだ。

 蹴りも……シャザーレィには当たるかどうか微妙なところだ。仕方がないので、大人しくパンチで戦うとしよう。〈アイアンナックル〉売ったの失敗だったな……


 今回のバトルギミックは〔幻影投影装置〕。各エリアにこの装置がひとつずつ設置されており、通常移動によって搭乗することで、隣接するエリアに自身の幻影を出現させ、そのエリアへの近接攻撃が可能になる。ひとつの装置に乗れるのは合計で二部位まで。

 ……つまり、前線にいるシャザーレィとブルドルンで、後方エリアにいる後衛に射撃とパンチの両方を飛ばすことができちまうんだ、って訳ね。殺意やばい。

 幸い、今回はソロプレイなので後衛などというものはそもそも存在していないが。複数人で辿り着いた場合、きっと後衛PCの悲鳴が飛び交っていたことだろう。是非とも聞きたかった。


 先制判定、無事成功。フィオラもプラトーンも前線エリアに置いて……とりあえず後ろのザーレィからやるべきか。あいつなら蹴りでもなんとかなりそうだし。

 MPは戦闘後に〈魔香草〉で回復できる、ここは惜しまず【キャッツアイ】【ガゼルフット】の両方を使用。《シャドウステップⅠ》で回避振り直しを宣言し、幻影投影装置へ搭乗。後方のザーレィへ二連キックを叩き込む(コロコロ)24ダメージを与えた。

 プラトーンは……相手、魔動機なんだよな。例の麻痺毒は効かないものとするのが丸いかな……?

 ということなので、デバフをばら撒くことはせずに、頭数を減らすことを優先してもらう。装置を使って同じくザーレィを攻撃、これで撃破成功。


 敵の一手目。まずはシャザーレィが光条を放つ(コロコロ)出目が良く抵抗成功、フィオラに5点のダメージ。胴体の体当たりには〈ブレードスカート〉で9点を返す。

 ブルドルンは……命中13か。フィオラには当たりそうにないので、プラトーン部隊に両手のハンマーを振り下ろす。合計で11ダメージを受けた。


フィオラ:「背負ってる砲塔、厄介だな……!」

ハリス:「ブルドルンの方は受け持とう。気を引いている間に、向こうを頼みます」

シヴァニカ:「いい壁ね。安心して、至近距離から撃てるわ」


 ハリスは《挑発攻撃Ⅰ》のような能力を使うことができるのだが、これもまた魔動機相手には効かないだろうということで無効にしている。

 代わりといってはなんだが、防護点がとても高いので、それだけでタンクの仕事は十分こなしていると言える。グリフォンの代役として不足無しだ。


 こちらの二手目、ブルドルンは放っておいてシャザーレィを叩く。(コロコロ)一発命中、9点与える。素手でもまあまあ通るな。

 プラトーンの行動、サウリルの【断空魔法】で追撃。10点を与え、シャザーレイの胴体が残り12点になった。パンチがもう一発当たれば落とせそうだ。


 敵の二手目、シャザーレイの砲塔はクールダウン中なので通常攻撃2発をフィオラへ。(コロコロ)《シャドウステップⅠ》のお陰で命拾いをした。知ってはいたが、やはり回避型でのソロプレイにおいて最強の宣言特技だなこいつ。ヴァグランツの使用許可が出ているゲームブックでは今後もお世話になるかもしれない。

 ブルドルンは変わらずプラトーンを二発殴り、9点与えた。


 三手目、パンチ二発でシャザーレイ胴体を粉砕、砲身へプラトーンが通常攻撃で6点。敵は再びフィオラへ光条を撃ち、6ゾロで17点を叩き出す。ブルドルンはプラトーンへ11点。

 フィオラが残り9点、プラトーンが残り23点。結構ギリギリの戦いになってきたな……さすがに〈魔晶石〉をケチっていい状況ではなさそうだ。


 四手目、〈魔晶石〉をひとつ使って【キャッツアイ】を掛け直し、フィオラはシャザーレイへパンチを二発、18点を与えて残り6点。プラトーンの攻撃で丁度落としきって、どうにか安全を確保。

 残るブルドルンがプラトーンへ13点与え、残り10点。ウルリサが回復しながら耐えれば、どうにかなりそう……かな。

 もしも倒されてしまっても、『現在の話数*200(=1200)G』で最大まで回復するらしい。買いたいものは買った後なので、これくらいの出費なら許容範囲か。


 五手目、フィオラの蹴りがクリティカルしてトータル42点をブルドルンの半身に与え、一瞬で破壊成功。プラトーンはウルリサに自己回復してもらっておく。ブルドルンの最後のあがきでプラトーンへ更に7点。


 六手目、フィオラの二連キックとサウリルのリプスラでぴったり削りきって、無事に戦闘終了。軽いノリで三体も配置したが、割とギリギリだったな……

 流石にそろそろ敵の強さも上がってきているので、3~4人想定の敵配置にするのは危険かもしれない。


フィオラ:「な、なんとかなったな……平気か、お前ら」

サウリル:「ど……どうにか……」

カデア:「険しい道程だな、マジで……薬草とかって持ってきてたっけか」

フィオラ:「少しなら。一旦休憩しとくか、あたしもギリギリだ」


 念のためにと買っておいた〈救命草〉2本に〈救難草〉3本で回復を行う。(コロコロ)(〈救難草〉でピンゾロをする)戦闘中に一回も出ないと思ったらここで出るんかい。

 ……まぁ、安全圏までは回復できたしいいか。フィオラは28/32、プラトーンは39/67まで立て直した。無事に帰れたら〈救難草〉10本くらい買っとくか。

 〈魔香草〉も1本ずつ使い、フィオラは全快、プラトーンは21/36に。サウリルが仕事すると、突然MP消費が激しくなるな……こっちももうちょっと持っておいた方がいいか。

 剥ぎ取りの成果は500G。若干の赤字になってしまった。


 ◇ 神殿の暗部 ◇


 一息ついたところで、改めてこの部屋の探索を行うことに。(探索判定、目標14。両名失敗)3点疲労を得て、〈魔晶石〉が入った箱を見つける。

 ……入ってる、なんてものではなかった。なんとその量、3点サイズが36個。金額にして10800G相当である。


フィオラ:「うわ、すげえ量……あたし一人じゃ、使い切るのにどんだけ掛かるかわかんねえな」

ヤザン:「これが普通の冒険であれば、なんとも魅力的な成果だが……今の我々には、これを使う宛てがあるからな」

カデア:「あぁ。これだけの量があれば、あの炉も動かせるかもしれない。やってみようか」


 どうせ一人では使い切れない量だと分かっていても、心惜しいと思ってしまうのは、ソード・ワールドプレイヤーの性という奴だろうか。


 そんな思いと共に、炉の前まで魔晶石を箱ごと運んでくる。そのまま、一欠片ずつ焚べていくと……合計で90点分となったところで、炉が動き出した。


ウルリサ:「動いたわね。これで、入り口の近くにあった、昇降機?が使えるようになったかしら」

フィオラ:「じゃないと困るな。こんだけ大飯食らっておいて何もなしじゃ、あまりにも切ないぜ」


 とはいえ、それでも18点分は残っているのだ。ありがたく頂戴していくとしよう。

 動き出した炉に背を向けて、一行は来た道を引き返す。防衛システムのレーザー光線は今度は飛んでこなかった。


カデア:「どれどれ……うん、ボタンが点灯してるな。これなら動いてくれそうだ」

ヤザン:「ボタンは四つあるな。点灯しているのは……『1』と書かれているが」

シヴァニカ:「それが現在地の階層、ということだと思うわ。……ハリス、取引場所があるのは?」

ハリス:「済みません、そこまでは。順番に探索していくしかないですね」

フィオラ:「りょーかい。じゃ、まずは『2』からだな」


 昇降機に乗り込み、ひとつ下の階層へと降りる。そこに広がっていた光景は、一階とあまり変わらない。強いていうなら、道は昇降機の片側にしか伸びていないか。


 その道を進んでいくと、落盤でも起きたのか、瓦礫によって塞がれてしまっていた。どかすことも出来そうにないので、これ以上先へは進めない。


サウリル:「ここはハズレか……じゃ、戻ってもうひとつ下に……おや?」

カデア:「……さっきも見た魔動兵器だな。シャザーレィだっけか」

フィオラ:「動きは……しなさそうだな。潰された時に、動力がイカれちまったか」


 が、瓦礫の下敷きになっているシャザーレィを発見した。無事そうな部品を回収(戦利品判定2回)し、400Gの成果を得た。

 加えて、鍵の形状をした、小さな魔動機械が転がっていたのを見つける。


シヴァニカ:「〈魔動式扉鍵〉……と書いてあるわね。どこかの扉の鍵、かしら」

ウルリサ:「上の層には、それらしい扉は無かったわね。下にあるのかしら」

カデア:「なら、早速降りてみるか。ここにはもう、調べられそうなとこも無い─────っ、不味い、天井がまた崩れそうだぞ!」

フィオラ:「おっと、仲良く生き埋めにされんのは御免だな。さっさと撤収しようぜ」


 去り際、再びの落盤が起こり、危うく巻き込まれそうだったが、カデアが気づいてくれたので回避することができた。

 情報収集といい、さっきのレバーといい、彼には頭が上がらない。その調子で今後もメインスカウトとして頑張ってくれ。


 再び昇降機に戻り、次は三層目へと。ここも二層と同じく、まっすぐに道が一本伸びているのみだ。

 違う点があるとすれば、床が水浸しになっており、昇降機が設置されている縦坑に滝のように水が流れ落ちていること。一層で聞こえたのは、これの音だったのだろうか。


カデア:「この分だと、下は水没してそうだな。間違えて降りないように、帰りは気をつけよう」

ハリス:「ここも、少々歩きにくくなる程度には、水嵩があるな……足を取られないように、お気をつけて」


 穏やかではあるが、水の流れに逆らうようにして、ゆっくりと奥へ向かう。

 やがて突き当りにたどり着くと、そこには魔動機製の大扉が。天井に作られた排気口らしき穴からは、大量の水が流れ出てきている。


シヴァニカ:「この扉に、さっきの鍵を使うのかしら。やってみる?」

カデア:「罠は……無さそうだな。それじゃ、やってみようか」


 本当は罠があったらしいのだが、鍵さえ持っていれば問題はないようだ。

 なので、特に何事もなく扉は開き、奥へと続く道が開かれる。先には、とても広い空洞が広がっていた。


ウルリサ:「随分と広い空洞ね……あちこちに採掘の跡のようなものがあるし、ここも採掘現場だったのかしら」

カデア:「かもな。……。待て、人の声がする。慎重に行こう」

フィオラ:「オッケー。たいまつも消しとくか。代わりにランタン点けて、シャッター降ろしとくぜ」

ヤザン:「その方がいいな。何かあっても、すぐに光源を用意できる」


 本当はそこまでしなくてもいいんだろうけど、雰囲気重視でそうすることに。

 せっかく買ったから使いたいよね、という気持ちも若干あった。


 そうしてひっそりと進んでいくと、空洞の中心部に、なにやら人影が見える。数人の大柄な者が、座り込んでいる子供を取り囲んでいるような状態だ。


フィオラ:「シヴァニカ、見えっか?」

シヴァニカ:「えぇ。……銀色の短い髪に、ヘキマ様程じゃないけど、顎髭がある重装備の男。あいつが、リーダー格っぽいわね」

ハリス:「銀髪に、顎髭─────まさか、ラウダ騎士団長か?」

ウルリサ:「団長がこんなことを……許せないわ。すぐにでも乗り込みましょう」

フィオラ:「おうおう、いつになく血気盛んじゃん。……ま、さっきの魔動機どものせいで、あたしも鬱憤溜まっててな。サンドバッグが欲しかったとこだ」

カデア:「なら、さっさと行くか。全員、武器を構えて」


 一行は呼吸を合わせ、連中へと一斉に駆け寄っていく。

 突然の来訪者に、連中は驚いているようだ。慌てて武器を構え、子供たちを後ろへと下げる。


ハリス:「貴様が首謀者だったとはな、ラウダ・シラージュ。この背信者め!」

ラウダ:「おや、忠犬ハリス。よくここまで来られたな」

ヤザン:「っ───ファディヤ!平気か!?」

ファディヤ:「兄さん!さすが、助けに来てくれたんだ!」

ヤザン:「あぁ。待ってろ、すぐに連れ出してやるからな」


 片や、剣を向けあっての前口上。片や、笑顔で感動の再会。

 それぞれの関係性というものがよく分かるやり取りをしばし眺めていると、やがて騎士団長様の方から、じりじりと距離を詰め始めた。取引相手か神殿の者かは分からないが、仲間を二人連れている。


ラウダ:「見られたからには、黙って帰す訳にはいかないな。お仲間と一緒に死んでもらうぞ、忠犬め」

ハリス:「貴様こそ、ティダン様へ懺悔する準備は出来ているだろうな?……あぁ。それとも既に、ティダン様からは見限られたか」


 お互いの挑発の言葉が皮切りとなり、ついに鍔迫り合いが始まった。

 他の面々もそれに続き、空洞内に剣戟と雄叫びをこだまさせる。


 六話クライマックス、ラウダ騎士団長との戦闘開始だ。


◇ 正しき騎士道に勝利あり ◇


 敵の配置は〔ラウダ(悪の騎士)〕〔匪賊の首領〕〔堕ちた魔法使い〕。魔法使いは操霊魔法を習得している。

 ……ラウダのデータ、やはり神聖魔法の記述がない。まだ二剣の神に乗り換えてはいないようだが。

 そして魔法使いだが、操霊魔法というのが非常に厄介だ。《魔法拡大/数》もしっかり習得しているので、匪賊のことも強化できてしまう。そうなるとあまり無視できない。

 プランとしては……まずは首領をボコし、プラトーン(ハリス)にはルワダを止めておいてもらうか。展開的にも、まずはそっちの二人でやり合っていて貰うのが美しい流れというものだろう。


 あ、バトルギミックの詳細は割愛する。ソロだとどうしても、後方エリアが関係するものはね……


 先制、無事にこちらが取得。ルワダには当然かけらを5個突っ込んだため、HPが69もある。そのうえ防護点は7、【ビートルスキン】搭載なので足せば9だ。頑張れハリスくん、多分かなりの数の攻撃を受けてもらうことになる。


 まずは……ハリスにはラウダへ挑発をしてもらい、ヤザンの力で首領に1点、ルワダに5点を与えよう。生きている間は、両名にデバフを入れつつ、ルワダのこともちくちくと削っていく作戦でいく。

 続くフィオラは、いつも通り練技二つと《シャドウステップⅠ》の回避の方を宣言、首領へキックを二発。(コロコロ)出目が腐った、一発しか当たらず12点。最近キックが二回当たることの方が珍しくなってきてしまった。


 敵の反撃、ルワダは【ビートルスキン】【マッスルベアー】を入れつつプラトーンへ《囮攻撃Ⅰ》。必中するので無条件に打撃点+2の言い得特技になっている。

 (コロコロ)いきなり6ゾロして最大打点の15点、そこへ首領が《全力攻撃Ⅰ》で追撃して10点。残り14点になった。

 魔法使いは、《魔法拡大/数》で【プロテクション】をすることに。長期戦になるのだ、一番こちらに効くのは防御を固められることだろう。


 こちらの二手目、プラトーンが非常に不味いので一旦ウルリサで自己ヒール。これで残り24点、このラウンドはなんとか耐えられるはず。挑発はしないでおく。

 フィオラは再び首領へキックを二発。(コロコロ)またも一発しか当たらない……のこり4点、プラトーンになんとかしてもらうか?


 敵の二手目、挑発が入っていないのでランダムターゲットとする……前に、魔法使いが《魔法拡大/数》【ファイア・ウェポン】で前衛二体を強化。

 強化された二体は、挑発を受けていないのでランダムターゲットで攻撃することに(コロコロ)首領の攻撃はフィオラが回避、ルワダはプラトーンへ8点与える。


 こちら三手目、プラトーンは……うーん、回復しておくか……再び自己ヒールして残り26点、フィオラは首領にようやく初登場の〈イージーグリップ+1〉でとどめを刺す(コロコロ)13点与えて無事撃破。HP-9、生死判定は気絶で済んでいるだろう。あとでお話を聞かせてもらうのに支障は無い。


フィオラ:「脇役は大人しく寝とき、なァ!……おし。いい夢見ろよ」

ルワダ:「ほう、中々やるみたいだ。……おい、あの魔法を。俺ごとで構わん」


 敵の三手目、魔法使いには……巻き込み【ダーク・ミスト】を撃たせる。ルワダは固定値で絶対に抵抗するし、プラトーンに回避は関係ない。精神が低く、回避に頼り切っているフィオラにピンポイントで刺さる択だ。

 これに見事抵抗失敗、そこへルワダの攻撃。(コロコロ)なんとか避けたが、回避の要求出目は6。

 ……とはいえ、デバフ込みでこれか。プラトーンが攻撃してくれれば出目7要求になると考えると、このまま押し切れそうだ。


フィオラ:「っぶねぇ!……さっすが騎士団長、いい筋してんじゃねえか」

ハリス:「えぇ。性根は腐っているようですが、実力は変わりありません。油断はなさらずに」


 こちら四手目、プラトーンが6点とデバフを与える。フィオラは大量入手した魔晶石をさっそく使って練技を掛け直し、ルワダへ二連キック。(コロコロ)ようやく両方命中、からの一回転をして17点。


 敵四手目、魔法使いは……ひたすら【アース・ヒール】する係に移行した方がいい気がする。のでそうさせて、5点回復。ルワダは練技を掛け直し、フィオラへ攻撃。(コロコロ)〈ブレードスカート〉が発動するが、1点しか通らない。とにかく固い、手数で戦うフィオラにとっては嫌な相手である。


 だがしかし、この後は案外一方的な戦いになった。HPが4点まで減った所を投げ飛ばし、屑鉱石の山に叩き込んで決着。魔法使いは、ルワダが気絶するや否や、子供を数人連れて逃走してしまった。後で追いかけるか。

 結局回避型というのは、圧勝か惨敗の二極になりがちである。〈イージーグリップ〉も手にしてしまった今、魔法やブレスなどで殴ってくる敵が出てこない限り、基本的には負け無さそうだ。この後ガオンによる強化もあるし。


 先に精算しておくと、剥ぎ取り成果は550G、名誉点は16点だった。


 ◇ 日はまた昇る ◇


フィオラ:「出荷準備完了、っと。この屑鉄……もとい、屑野郎はどこに運べば?」

ハリス:「私が神殿まで連れていきましょう。皆さんは、子どもたちの解放を」

フィオラ:「了解。……っと、そういえば一人そそくさと逃げてった奴がいたんだったな。あいつも追わないとだけど─────」

ヤザン:「─────ファディヤ!怪我はないか?」

ファディヤ:「平気だって、もう。兄さんこそ無理してない?」

シヴァニカ:「……こういう時、空気を読んであげるのが、大人の女というものね」

カデア:「言うじゃん。……ま、感動の再会に水を差すもんじゃないな」


 無事に悪党どもの叩きのめした後、兄妹の微笑ましいやり取りを背に、一行は逃げた魔法使いを追って正規の出入り口側へと進む。

 そして、もうじき外まで辿り着く、というところまで来ると……


リーム:「皆さん。ご無事でしたか」

サウリル:「あれ、リーム司祭……もしかして、こっちで張り込みを?」

リーム:「えぇ。そうしたら、何やら慌てた様子の方が、子供と一緒に駆けていましたので、このように(簀巻の賊を冷たい目で見る)」


 なんと、リーム司祭の機転の利いた張り込みによって、あいつも捕らえられていた。子どもたちも無事である。

 状況を察したのか、警備をしていた背信者どもも降伏することを選んでおり、大人しくお縄についている。今回の一件、まずは一段落、といったところか。


リーム:「此度の協力に感謝します。きっと、ティダン様もお喜びでしょう。ハリスも、お疲れ様でした」

ウルリサ:「こちらこそ、手助けして頂きありがとうございました。どうかこの街を、再び正しき日の光が照らさんことを」


 こうして無事に賊と背信者を捕らえ、子供たちも奪還。

 彼ら(ファディヤ以外)の扱いはリームに任せ、一行はキャラバンへと戻ることに。


ヤザン:「……しかし……捕らえられていたのは、子供だけだったな」

ウルリサ:「そうね。……どこへ行ったのかしら、あの人」

カデア:「(ひそひそ)この『どこへ行ったのか』は、心配から来てるものじゃないんだろうなぁ……ヤザンの妹も加わって、不穏な空気が加速しそうだな」

フィオラ:「(ひそひそ)おい、やめろよ。思ってたけど言わないようにしてたのに」


 ……ただひとつ、疑問を残して。

 再び行方知れずとなったサヤリは、今何処に。


 ◇ 成長処理 ◇


 リームから6000G、キャラバンからは3000Gを報酬として受け取り、合わせて9000Gを得た。経験点はトータル2100。お金がまた貯まってしまった。

 能力値成長は生命が上がり22に。スマルティエの装飾品4つでB4になる、ここで買い揃えておくか。


 技能成長は……スカウトを4に上げておくか。610点余っているが、〈アルケミーキット〉を付けるための装備枠が余っていないことに気がついたので習得は見送り。

 (装備枠でなく概念的な意味の)両手も〈イージーグリップ〉で埋まっているので、〈ディスプレイサー・ガジェット〉で無理やりキットを付けるか、〈ウェポンホルダー改〉と〈カードシューター〉でどうにかするかしか無いか。


 ということで買い物。とりあえず……〈シンプレート〉をいい加減+1のものに買い換えるか。なんだかんだ蹴りを使うシーンは多そうだ。

 ほぼ使い切ってしまった薬草類も補充しておこう、〈救難草〉と〈魔香草〉を10本ずつに、〈ヴィゴラスハーブ〉〈ヴィゴラスタブレット〉を2個ずつ。

 そしてスマルティエブランドのものを計3つと〈スマルティエの宗匠の腕輪〉を購入(普通のものを割ってもB3維持できるように)、これで生命がB4に。


 5000Gほど残っているので、プラトーン装備の見直し。

 ヤザンも狩人の特性を持っていて、カデアには隠密の特性がある。ので、ヤザンに〈狩人の麻痺毒〉を移し、カデアには〈隠密の七つ道具〉を新たに持たせる。これでスカウト技巧・観察判定に+1され、より頼れるスカウトに。

 この二人はステータスも能力も優秀なので、多少の雇用費を払ってでも採用し続ける価値があるだろう。男女比が偏らないというのも大きい(気にする派)。

 他は……お金の余裕も出来てきたので、グリフォンの防具を良いものに買い替えたいんだけど、肝心の本人がいないんだよな……復帰したら買ってあげるか。


 とりあえず今の段階ではここまで。七話冒頭でなにかあれば、その時にでも追加で買うとしよう。


 次回、『密猟者たちの狂想曲』へ続きます。まーた不穏なタイトルだなぁ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る