第四話 "キャラバンの仕事"

 ~ あらすじ ~


 待機させているゴールデングリフォン達と合流するために、北東のダドワミへと移動を始めた一行。

 その道中、商人の男・デミルと遭遇し、彼の頼みで、ダドワミにいる恋人・トレミのもとへ〈黄金の蜂蜜酒〉を届けてやることになったのだが……なんとダドワミは、"奈落の魔域”に飲まれてしまっていた。


 ……というのは半分不正解で。ことの真相は、数十年前に亡くなった商人の亡骸が魔域に飲み込まれ、彼の思いが形となった空間に、一行が迷い込んでしまった、というものだった。

 最終的に、魔域からは無事脱出成功。そしてデミルの亡骸の側に落ちていた〈黄金の蜂蜜酒〉を、本物のダドワミで待っていたトレミの元へと届けることが出来た。


 旅は道連れ世は情け、例え急ぎの旅であろうとも、人の心まで失ってはいけない。

 そんな訳で、少しばかりの寄り道を挟んだ後、一行は街で待機していたゴールデングリフォン達と合流。そのままキャラバン本隊との合流を果たすべく、旅を再開したのだった。

 ちなみに買い物は一旦保留とした。アルケミストを生やすかもしれないことを考えると、使わなくていいお金は使わずに生きていきたいのである。


 なお、本編四話がまだ投稿されないのにどうしてこっちが投稿されているのかについては、エターナルの海に還ってしまったからというのが回答になります。

 人は何故、キャンペーンを完走できぬのか。


 ~ あらすじおわり ~


 ◇ 導入 ◇


 グリフォン達の背に乗せてもらい、三人は黄昏時の草原を翔けていく。

 雪に足を沈めながら移動していた今までとは、段違いの進軍速度。これならば、キャラバンにもあっという間に追いつけるだろう。


フィオラ:「……おっ、なんか大人数で集まってんのが見えてきたぞ。あれがお前らのキャラバンか?」

サウリル:「どれどれ……あの馬車と騎獣は、そうね。"黄金のキャラバン"で間違いないわ」

ウルリサ:「やっと戻って来られたわね。早速、メゼーに報告しにいきましょうか」


 快適な空の旅を終えて、地面に降り立つ。そして姉妹がキャラバンの面々に話をつけてくれて、メゼーとの面会の許可を貰うことが出来た。

 ここまではトントン拍子だ。次は、あの古びた手槌の謎を解明しなくてはいけないが……メゼーは何かご存知だろうか。


 まずはメゼーが乗っている馬車に通される。その馬車馬(かどうかは知らない。〔ダウレス〕や〔ジャイアントリザード〕など、多岐に渡る騎獣を繰っているらしいので)に乗っていたのは、キャラバンの長と言うよりは、山賊の女親分といった風体のリカントの女性、メゼー・クセナウイだった。

 動物の種類については……記載が無いな。イラストの耳の感じからすると、イヌ科っぽくはある。


クセナウイ:「どうも。話はあの子らから聞かせてもらったよ。うちの一員になりたいんだって?」

フィオラ:「おう。……おう?そういう話だったっけ……まぁいいか」


 まぁ、タダで情報だけ教えろ、というのもアレだし、後ろ盾や拠り所がないまま一人旅を続けるのもなんだ。

 一日二日で切って良い縁でもないだろうし、しばらくはここで世話になるとしよう。そんな訳で、一旦素直に頷いておくことに。


クセナウイ:「うちは来る者拒まず、去る者追わず、なんでね。そして、働かざるもの食うべからず、でもある」

フィオラ:「そりゃ構わねえよ。金もそんなにある訳じゃねえから、なんか仕事もしねーとな、とは思ってたとこだ」


 かくして、意外とすんなり仲間として迎え入れられた。

 なので、早速手槌について訊ねてみるか……と思ったのだが。


フィオラ:「ところで、この手槌……あー……地元のおっさんから、『黄金のキャラバンを頼れ』って言葉と一緒に渡されたんだけどよ。なんか知ってるか?」

クセナウイ:「ふむ……済まんが、あたしは何も知らない。だが、うちは大所帯だ、もしかしたら誰かしらは知ってるかもしれない。まずは、顔を広げてみることだね」

フィオラ:「なるほど。ま、気長にやっていきますか」


 どうやら、彼女が知っているという訳ではないようだ。何かしら関係はあるのだろうが。

 ひとまずはアドバイスに従って、知っていそうな奴と顔見知りになることから始めよう。という訳で、サウリルとウルリサの指導の元、仕事を覚えることに。


 ついでに買い物をしていいとのことだったので、〈幸運のお守り〉を買っておいた。金に困ることが多い気がしたので、剥ぎ取りの出目を良くして稼ごうかな、という魂胆である。

 2000Gしたけれども、それくらいならすぐに取り返せる……と思う。うん。


 ◇ 卵と手槌と魔女と ◇


 買い物を終えて、チャレンジの時間がやってきた。経験点もいいが、金も欲しいな……600G貰える『狩猟(スカウト+敏捷/目標12)』と、経験点120を貰える『力仕事(戦士系技能+筋力/目標10)』に挑もう(コロコロ)どちらも成功。

 プラトーンの二人+一匹には、3点疲労するだけでいい『給仕』をやっておいてもらう。これで300G獲得。

 姉妹がキャラバンでの仕事をこなして稼いだ金をうちの女が使っていいんだろうか、という疑問がないでもないが、まぁヨシとしよう。


 ちなみに、『ゴールデングリフォンの子供に名付けができる』という報酬が書かれているチャレンジもあったが、成功できる気配がまったくなかった(レンジャー+精神/目標値12)のでやめておいた。流石にそんなことをしている場合ではない。


 仕事をする傍らで、情報収集もこなしていく。訊ねるのは、〈時の卵〉と〈古びた手槌〉、それから……"三彩の魔女"ヤミアデミアについて。

 ガメルを支払うことで、いくらか達成値にボーナスを貰えるようなので、惜しみなく突っ込んでいく。(コロコロ)900G支払ったが、すべて成功。

 ……チャレンジで貰った金が一瞬で消えてしまった。背に腹は代えられないということで受け入れよう。


 それぞれについて得られた情報は下記の通りだ。


 〈時の卵〉:黄金九至宝についてであれば、"無法都市"ヒューマに住んでいる遺跡荒らしの男、ヘキマ・オーマならば知っているかもしれない。

 丁度キャラバンはヒューマ方面へと進む予定なので、このまま同行していれば立ち寄ることができるかも。


 〈古びた手槌〉:手槌に刻まれている蠍の紋章が、"黄金の魔法王"マイドゥルスに仕えていた魔法鍛冶師、ヌイ・アッシャールのものだと判明。

 近々、ヌイに関係する遺跡へ調査へ向かうカビ(オーレルム地方語で『部族』の意。ちなみにメゼーは『長』)がいるらしく、もしかしたら手を貸して欲しい、という話が来るかも。

 ちなみに、ヌイはこの槌で『紅金くがね』という特殊な金属を加工して、黄金九至宝や呪具を作り出したと言われているらしい。


 ヤミアデミア:大平原北部で活動している、盗賊団頭領のディアボロカデットウィッチ。ゴールデングリフォン達の長であるブワナ・ペサが、ヌイ・アッシャールの遺産について知っているはずだと(何故か)信じている。ゴールデングリフォンの子供が密猟者に攫われたのも、情報を引き出すために行なったものらしい。


 ……といった感じ。

 つまり、この手槌はヌイ・アッシャールとやらのもので、かつヤミアデミアが狙っている可能性が高い、ということか。……面倒なことになりそうだ。

 〈時の卵〉については、後日専門家(?)に訊ねてみるとしよう。せめて在り処のヒントくらいは分からないと探しようもない。


フィオラ:「有益っちゃ有益な情報だけど、だからなんだ、って感じだな……結局、なんでこの手槌を託されたのか、これで何すりゃいいのか、さっぱり分からん」


 仮にこの手槌で卵を作れるんだとして、道具はこれだけでいいのかとか、肝心の材料はどこにあるんだとか、足りていない情報が多い。

 どちらについても、もう少し詳しく調べてみると必要がありそうだ。


 そんなこんなで仕事と情報収集を続けて、数日が経過。するとある日、クセナウイからの呼び出しを受けた。

 彼女の待つ天幕へとやって来ると、姉妹と、カビの主だった面々、といった顔ぶれが並んでいた。結構大事な話がありそうな雰囲気だ。


クセナウイ:「集まったな。実は別のカビから、依頼の話が二つほど来ていてな」


 このキャラバンは、カビ同士で様々な目的や行動指針を持っている。そして時折、こうして他のカビに協力を募り、助け合って活動しているのである。


クセナウイ:「ひとつは、ディクシャのところから。ヒューマへ向かうので、その護衛を頼みたいというもの。もうひとつは、ルドラのところ。遺跡の探索に向かいたいが、人手が足りないので手を貸して欲しい、という話だ」


 どっちも行きたいんだよなぁ、という気持ちでいっぱいな今日このごろ。

 しかし現実は非情である。片方しか選ぶことが出来ないので、どちらを優先すべきかを少し考えることに。


 結果、ヒューマへ向かうディクシャに着いていくことに決めた。

 手槌についてはまあまあの収穫があったが、卵は未だに手掛かりがない。ので、何でも良いから情報を手にしておこう、という考えである。

 あとはまぁ……遺跡の調査、正直全然活躍できそうにないので……(知力B1)(魔法系技能無し)


フィオラ:「よし。あたしはディクシャの方で頼むわ」

クセナウイ:「分かった。ウルリサ、世話役の仕事の一環として、フィオラに同行してやってくれ」

ウルリサ:「分かりました。サウリル、一人でも頑張るのよ?」

サウリル:「そっちこそ、ちゃんと見張っててよね。その人のこと」


 どうやら、姉妹の片方だけが同行してくれるらしい。まぁサウリルは火力担当なので、いなくてもどうにかなるにはなるか。

 かくして、一度クセナウイの元を離れ、ディクシャが率いる隊の方へと。


 待っていたのは、野性味溢れていたクセナウイとは真逆に、気品を感じられる身なりをした、人間の女性だった。

 ……年齢、35か。鯖を読んでまだアラサーだと名乗っていそうな気がする、なんとなくだが。


ディクシャ:「今何かすごい失礼なことを考えていませんか??」

フィオラ:「気のせいだ、気のせい。それより、護衛の仕事って話で来たんだけど」

ディクシャ:「……まぁいいでしょう。えぇ、ヒューマまでの往復という短い間ではありますが、よろしくお願いします」


 彼女の率いるカビは、交易を主な仕事としており、一年の大半はキャラバンの本隊から離れて活動しているらしい。

 丁寧な物腰で頭を下げるその姿からは、クセナウイとはまったく違った雰囲気でありつつ、指導者としての風格を感じられる。

 この分だと、カビごとにメンバーの特色とかも違っていそうだ。サウリルも、多分クセナウイや他のメンバー達の影響を受けて、あのようなパワータイプに育ったんだろう。


ディクシャ:「また何か失礼なことを考えていませんか??」

フィオラ:「大丈夫。こんどはあんたに関することじゃないから」

ウルリサ:「……つまり、さっきは考えてたの?」

フィオラ:「…………よし。仕事の話しようぜ!!」

ディクシャ:(クセナウイ、相変わらず癖の強い人を寄越しますね……)


 雑談もそこそこに、準備を整えた後、ヒューマへ向けて出発する。


 ◇ いざ"無法都市"へ ◇


 その日の夕暮時。そろそろ野営の準備に取り掛かろうか、となった頃のことだ。

 ふいに、近くの鳥達が啼き、飛び立った。そちらに注意を払うと……(危険感知、自動失敗)なにもわからないことがわかった。


フィオラ:「おー、綺麗だな。夕日をバックに鳥の群れが……」

ウルリサ:「あら、本当───って、言ってる場合じゃないわ!敵襲、敵襲!」


 鳥に気を取られていると、いつの間にか周囲を取り囲まれていた。身なりから推測するに盗賊だろうか。

 キャラバンともなると、やはり積み荷を狙った輩と関わることは避けられないらしい。もちろんくれてやる道理はないので、さっさと追っ払うとしよう。

 そんな訳でチャレンジの時間が再び始まった。


 今回も、バランス良く経験点とガメルを頂くことにして……『物理ダメージで13点以上』と『先制判定(目標11)』を選択。プラトーン組には『15点の物理ダメージを受ける』をやっておいてもらう。(コロコロ)先制は出目が悪く失敗。

 更にボーナスチャレンジで、『解除判定(目標12)』に挑む(コロコロ)無事成功、プラトーンは6ゾロチェックに失敗し、合わせて経験点120と1200ガメルを獲得。


 さて、無事にとっちめた訳だが。


フィオラ:「大した事ない奴らだったな。……で、どうする。どっから来たのか追ってみるか?」

ディクシャ:「そうですね……他のカビやキャラバンが狙われることもあるかもしれません。日が落ちきってしまう前に、彼らの拠点を探して来てもらっても?」

フィオラ:「おしきた。ウルリサ、グリフォンちゃんはまだ頑張れそうか?」

ウルリサ:「えぇ。足跡、辿るのを手伝わせるわね」


 たかが一度襲撃に失敗した程度で壊滅する賊ならそれでよし、そうでないなら大本を叩けて尚良し。

 一行は野営準備を中断し、連中がやって来た方面へと調査に向かう。すると、そのアジトを発見することが出来た。

 解除判定、ここで扉を開けた、とかそういう話なのかな。じゃあそういうことに。


フィオラ:「おっじゃましまーす!!(勢い良く蹴破る)」

賊:「な、なんだぁ!?扉が吹き飛んだぞ!」


 ダイナミックにエントリーすると、数人の居残り組の姿があった。

 数は……(魔物の初期配置リストを見る)一人用だとちょっと物足りないな、三人用で行こう。〔匪賊の首領〕が一人、〔見習い暗殺者〕が二人だ。


フィオラ:「殴って良いのは殴られる覚悟のあるやつだけ、ってな。今度はあたしらが襲撃させてもらうぜ」

ウルリサ:「えぇ。覚悟しなさい、悪党共」


 こうして、チャレンジではない通常の戦闘が始まった。


 今回のバトルギミックは『盗賊の弓兵』。こちらからは干渉できない弓兵が、ギミックとして戦場に存在しているようだ。

 連中はラウンド終了時に、2d+1点の物理ダメージを与えてくる。命中力は12と控えめではあるが、相変わらず紙装甲であるフィオラにとっては、どんな攻撃だって死ぬほど痛い。

 一応、付いてきてくれているモブのメンバー達が弓兵を倒してくれるらしく、3ラウンド目で攻撃は打ち止めとなるようだが。記述的に《かばうⅠ》が無効なので、グリフォンを頼ることはできない。頑張って避けるとしよう。


 先制は無事奪取、こちらの手番から。

 暗殺者の攻撃に対する回避力判定はピンゾロチェックであるため、さっさと首領を落とすことに。念のために《シャドウステップⅠ》は回避の振り直しを宣言し、二連キック(コロコロ)一発当たって9点、そこにプラトーンの……そうだ、サウリルがいないんだ。火力がちょっと減って5点、合わせて14点。グリフォンの《かばうⅠ》もどきはまだ使わなくてもいいだろう。

 敵の反撃。二体の暗殺者が捨て身覚悟の特攻をフィオラに放つが、勿論回避。首領の《全力攻撃Ⅰ》、ギミックの弓兵も同値でギリギリ避けた。無傷でこちらの二手目がやってくる。


 実は蹴りだとあまり命中に余裕がないことに気がついたので、ここはパンチを二回。(コロコロ)二発とも当たり、プラトーンも合わせて17点。撃破に至った。

 後は……ほぼ消化試合だな。自動失敗稼ぎをするのもなんなので、ここで戦闘は終了とする。剥ぎ取り品は合計200G、〈幸運のお守り〉の効果はあんまりなかった。

 ま、まあまだあと8話もあるし……レイトゲームキャリーって奴よ。


フィオラ:「もう終わりか、呆気ねえな……まいいや。荷物検査と行くか」

ウルリサ:「えぇ。盗品があれば返してあげたいし……あら?これは……」


 賊共を縛り上げた後、アジトを捜索してみると、なんと一般人が囚われているのを発見した。……付いてきたカビの皆さんが。

 探索判定に強い人、次のプラトーン編成タイミングで雇うことにしよう。あまりにも道中が辛い。


 その後は特に何事もなく、翌朝。ヒューマへと到着した。

 ……どんな街だったっけ。鉄道が街のど真ん中を通ってる、以上のことはそんなに覚えてないな(BIGを開く)(以下、オーレルム地方ガイドより引用)


『広大な大平原のほぼ中央に位置するヒューマは、草木の少ない大平原の都市にしては珍しく、巨木によって築かれた城壁に囲われています』

『きらびやかな歓楽街(駅周辺)から離れれば離れるほど、食い詰めた荒くれ者や破落戸の吹き溜まりとなっていき、加速度的に危険度が増していきます』


 ……だそうだ。巨大なスラム街といったところか。

 こんなところだからこそ、交易での利益を上げられる……のか?わからん。あいにく商売の話には、PLもPCも疎い。


ディクシャ:「取引のために、二日ほど滞在することになります。三日後の朝の出発までは、自由にしてもらって構いません」


 ディクシャとはここで一旦別れることに。宿や食事代は、彼女と同じ店を利用すれば経費で落としておいてくれるようだ。ありがてぇ。


フィオラ:「さて。自由時間も貰えたことだし、個人的な野暮用を済ませますか」

ウルリサ:「野暮用……あぁ。どこか当てがあるの?」

フィオラ:「なんか、遺跡荒らし?とかいうのがいるらしい。そいつなら、黄金九至宝について知ってるんじゃねえかって話」

ウルリサ:「ヘキマ・オーマのこと?それなら、向こうに屋敷があるわ。行ってみましょうか」


 という訳で、件の遺跡荒らしのもとへ向かう。屋敷はこれでもかという程に知名度が高いらしく、街の人間なら誰でも知っていた。ので、道に迷うことはなかった。

 面会にこれといった手続きも必要なく、そのまま応接間に通される。やがて姿を現したのは、筋骨隆々の小柄な中年男性。髭もたっぷりと貯えているが、ドワーフではなく人間のようだ。

 ……ドワーフと間違うレベルの髭、四十五歳で貯えるの難しくない?現実でもたまに見かけなくはないし、意外と十数年そこらでできるもんなのかな……


ヘキマ:「いかにも、ワシがヘキマ・オーマだが……何用かね?」

フィオラ:「うーん……単刀直入に訊いとくか。おっさん、〈時の卵〉っつー単語を耳にしたことは─────」

ヘキマ:「─────あるとも、あるとも!かの魔法王マイドゥルスの遺産のひとつ、またの名を"金の卵"!時を巻き戻し、人々に救いをもたらすもの!」

フィオラ:「うわ、食いつき方えぐ。……うん、それについて知りたいんだけどよ。落ち着いて喋ってくれていいからな」

ヘキマ:「あぁ、済まん。現役を引退してからというものの、語り合う相手もおらず、退屈しておったものでな」

ウルリサ:「あら。では今は、遺跡には潜っておられない?」

ヘキマ:「うむ。息子のカデアに後を継がせたのだ。……しかしあやつと来たら、家を出たきり一度も帰ってきておらん。手紙だけはしっかり寄越すんで、生きているとは思うんだが……」


 髭のことはさておき、爺さんの昔話と共に卵についての情報をいくつか得られた。


 まずひとつ。マイドゥルスが覇を唱えて以降、オーレルム全域において"黄金神鳥"と呼ばれる神鳥、そしてそれが人々に"金の卵"を与え、時を戻す奇跡を起こした、という伝承が複数見つかったらしい。

 これこそが〈時の卵〉であり、"黄金神鳥"は〈時の卵〉から生まれた魔法生物である……という説を、彼は唱えているそうだ。

 いくらマジックアイテムとは言え、金属で作った卵から魔法生物が孵るなんてことがあるのかはさておき。"黄金神鳥"という存在自体は少し気になる。

 何者かが、各地で〈時の卵〉をばら撒いているということか……?だとすれば、そいつが卵の作り方を知っている可能性があるか。


 もうひとつは、彼が知る最も新しい神鳥と卵の伝承がある地が、"太陽王国"マーティアスの近くで行われた、英雄と魔神の戦いの地だということ。

 戦いが起きたのは〈大破局〉の末期。比較的最近の出来事である。魔法文明時代から存在しているという話も合わせて考えると、件の神鳥はまだご存命であるのかもしれない。

 ひとまず、目的地の候補として覚えておこう。


フィオラ:「……あ、そうだ。ついでにこの手槌も見て欲しいんだけど」

ヘキマ:「な……なんと。それは紛うことなき、ヌイ・アッシャールの刻印!一体それをどこで?」

フィオラ:「どこでって言われると、地元の商人から託されたんだけども……とにかく、これは間違いなくヌイとやらの道具なんだな」


 ついでに、手槌についても太鼓判を押してもらった。

 集めるべき情報はしっかり揃っている。この調子で、少しずつ〈時の卵〉を手に入れる算段を立てていこう。


 ◇ メイドの土産 ◇


ウルリサ:「そろそろ日も暮れるわね。泊めてもらう訳にはいかないし、宿に戻らないとだわ」

フィオラ:「すっかり話し込んじまったな。……いや、おっさんの話ばっか聞いてたような気はするけど」

ヘキマ:「ははは。なに、いい退屈凌ぎにはなったぞ。……しかし、君の冒険に同行できないのは心惜しいな。あと十年若ければ……」

フィオラ:「流石にそこまでさせんのは悪いって。それに、私情十割の旅だぜ?」

ヘキマ:「それは全くもって構わんのだ、ワシとしては……はっ、そうだ。ワシが行けぬのなら、ワシの従者を連れて行かせれば良い。少し待っていてくれ」

フィオラ:「えっ。……行っちまった。そこまでして付いてきたいのか、あたしの旅に……?」

ウルリサ:「あなたの旅というか、黄金九至宝の実物を目の当たりにできるかもしれない機会に興奮している……のかしら?いずれにせよ、凄い探究心ではあるわね」


 まぁ、実物を家に飾ることができたら、トレジャーハンターとしてはこの上ない誉れではあるか。

 あるいは、単純に冒険心が踊りまくってるだけなのかもしれないけど。

 結果よりも過程を楽しむタイプ、嫌いじゃないぜ。PLもPCも。


ヘキマ:「お待たせ。ということで、この子を連れて行ってはくれないか。ガンの腕前は確かなものだ、きっと戦闘で役に立つとも」


 待っていると、連れてこられたのはルーンフォークのメイド・シヴァニカだった。

 これまたいかにもテンプレな……というか立ち絵がサンプルPCのマギシュールンフォちゃんのシルエットなんだよな。専用立ち絵が用意されないレベルでテンプレな経歴と容姿ということですかね。

 ……まぁ公式設定的には、従者や小間使いとして生きていないルンフォの方が少数派なんだっけか。とはいえ、何一つ固有の設定がないのは可哀想だ。喋らせるときに非情に困るというリプレイ的な面での問題もある。


 ということで、せめて経歴表だけでも振ってあげることに(コロコロ)(コロコロ)『大きな嘘をついている(いた)』『監禁されていたことがある』『何かの大会で優勝したことがある』と出た。たぶんイカサマとか八百長がバレて捕まったんだろうなこれ。

 そこからどういう経緯でヘキマ邸のメイドになったのか、までは考えないものとするが……脳裏に某リゼロのピンク髪の方のメイドの姿がよぎったため、とりあえず彼女をだいたいの言動のベースとして採用する。

 いわゆる駄メイドという奴かもしれないが、"無法都市"なんて呼ばれてる場所にお住まいなんだ。ちょっと性格に難あり、くらいで丁度いいだろう。多分。


 なお某リゼロはアニメの内容しか把握していないので、本当にふわっとした認識しか持ち合わせていないという弁明を先にさせてください。

 だって無理だよ……巻数が四十近くまで行ってるラノベ今から追えないよ……


シヴァニカ:「よろしく。銃撃なら任せて頂戴」

フィオラ:「おう、よろしく。ちなみにお嬢さん、銃以外に得意なものは?」

シヴァニカ:「……?……冒険に、戦闘能力以外の何が必要なのか、分かりかねるわ」

ウルリサ:「…………ヘキマさん。彼女は本当にメイドで合ってる……?」


 彼女の能力、『後衛に編成時、プラトーンの攻撃が遠隔・遮蔽無視になる(《ターゲッティング》《鷹の目》を習得しているものだと思われる)』以上にはなにもない。

 もしかしなくてもメイドの振りしたただの用心棒なのでは、彼女。

 しかも防護点-1とか書いてあるんだよな……うーん……まぁ1点くらいならいいか、HPが上がれば相殺できるし。

 サウリルが抜けていて前衛の枠が空いているので、ひとまず前衛に加えておく。グリフォンの《かばうⅠ》との兼ね合いがあるので、攻撃が遠隔化しても仕方ないというのもある。


 新たなメンバーが加わったところで、ヒューマですべきことは終わった。翌日の買い物タイムは特に何も購入せず、そのまま街を出立、キャラバンへの帰還を目指す。


ディクシャ:「……あら?あれは、ルドラのところの馬車かしら。……でも、変ね。人手を借りているとはいえ、賑やかすぎるような……」

ウルリサ:「……!蛮族もいるわ!襲われているんじゃないかしら?」


 するとその道中、賊に襲われている仲間を遠くに発見。ルドラというと、サウリルがヘルプに行った方のカビか。


フィオラ:「おうおう、遺跡帰りを襲うたぁお目が高いな。……あれ。でもあの蛮族と連携してる人族もいねえか?」

ディクシャ:「人族と蛮族の混成した賊……まさか、ヤミアデミアの手下?」

シヴァニカ:「なんでもいいけど。早く助けに行ったほうがいいんじゃないかしら」

フィオラ:「確かに。じゃ、ちょっくら助太刀しときますか!」


 そんな訳で現場に急行、四話のクライマックスとなる通常戦闘が始まった。


 相手は……〔腕利きの傭兵〕と〔ボルグハイランダー〕くらいが丁度良さそうだ。ルルブⅠ時代の最強モブと名高い腕利きさんの実力を見せて頂くとしよう。

 先制判定、目標値14。ここは"剣の恩寵"を切って(コロコロ)確実に成功させておいた。


 バトルギミックの確認。戦場にはカビ・ルドラの馬車が存在(自陣後方と前線に三台ずつ)しており、ラウンドの終わりに、ランダムな敵1体に「残っている馬車の数*2」点の確定ダメージを与えてくれる。

 耐久力は〔木の扉(HP20,防護6)〕。フィオラより固い。守ってくれたら追加報酬を出すと言われているが、守ってもらいたいのはこっちの方です。


 改めて、戦闘開始。まずは腕利きさんをどうにか倒そう、【ガゼルフット】からの〔輝く肉体〕、《シャドウステップⅠ》は回避振り直しを宣言。これで腕利きさんへパンチを二発(コロコロ)とも外れた。出目が非常につらい。

 プラトーンで7点削って、《かばうⅠ》はこのターンは無し。馬車のヘルプは(コロコロ)ボルグハイランダーの方へ。12点というだいぶヤバい確定ダメージを出してもらい、敵の手番に移る。


 まずはボルグハイランダーが《斬り返しⅠ》を宣言。ギミック的に馬車を狙わせた方がいいのかもしれないが、正直直接こっちを殴られる方がよほど怖い。のでフィオラに斬りかからせる。

 (コロコロ)やべ、ピンゾロした。腕利きさんの命中固定値は……13、なんとか避けられるだろう。こっちに《シャドウステップⅠ》を使用して振り直し、どうにか避けた。

 続く腕利きさんの攻撃は難なく回避、ひとまず無傷でやり過ごした。が、ここからは〔輝く肉体〕のデバフ無しでの真っ向勝負だ。早いところ倒れて欲しい。


 2ラウンド目、再びパンチが両方外れた。さっきの回避ピンゾロといい出目が終わりに終わっている。大丈夫かこれ。

 またプラトーンに削ってもらって、《かばうⅠ》は……まだ必要ない、馬車は再びボルグハイランダーへ12点を与えた。


 敵の手番、《斬り返しⅠ》は二発とも回避。腕利きは《手早い斬撃》によって達成値16の攻撃を繰り出す(コロコロ)なんとか回避。ようやく出目がまともになってきた。


 3ラウンド目は2ラウンド目と同じ流れになり、ボルグハイランダーが落ちた。腕利きの攻撃も同値でなんとか回避。

 4ラウンド目、相変わらずパンチが当たらないが、馬車がダメージを出してくれるので耐え続ければなんとか……と思っていたら、《シャドウステップⅠ》を使った上で攻撃がヒット、17点を受ける。

 とはいえ、敵も既に虫の息。プラトーンと馬車の攻撃によって仕留めきり、どうにか無事に戦闘を終えられた。

 ……フィオラさん、結局1ダメージも与えられないまま終わってしまった。決して命中が低い訳ではないはずだが。

 次の成長でグラップラーを上げるのは厳しそうだし、【キャッツアイ】でも取っておくかな……MPが6しか無いので、〈魔晶石〉も買っておくか……


 ◇ 世間は狭い ◇


フィオラ:「強敵だったぜ……牽制合戦が一生続く戦い、苦手なんだよなぁ……」

シヴァニカ:「私、かなり仕事してた。褒めてくれてもいいのよ」

フィオラ:「ああうん、マジで助かった。……?……おい、なんかおかわりの部隊が来てねえか……?」

ウルリサ:「おかわりというか……あの数、あっちが本隊なんじゃ」


 戦闘終了後、一息つく間もなく再びの襲撃。ここから連戦は流石に不味いぞ……

 と、思ったのだが。


ディクシャ:「あれは……ゴールデングリフォンの群れ!私達の本隊からも、助けが来てくれたみたいね」

フィオラ:「おー、すげえ……大量の賊どもが一網打尽に」


 颯爽と現れたグリフォン達が、瞬く間に応援部隊を蹴散らしてしまった。

 その後、誇らしげな声を響かせて、彼らは来た方へと戻っていく。


ウルリサ:「後でお礼を言いに行かなくちゃ。……と、ルドラ様の無事を確認した方がいいわね、ひとまずは」

ディクシャ:「そうですね。お互い報告し合うこともありますので、少し時間を頂きます。その間に、手当てなどをしておいて頂ければ」

フィオラ:「りょーかい。……今のうちに、サウリルと合流しときますかね」


 ということで、剥ぎ取りを終えた後(成果1250G)、サウリルを探す。

 そして発見した彼女に声をかけると、見知らぬ男と共にこちらへ歩み寄ってきた。


フィオラ:「お疲れさん。……そいつは?彼氏でもできた?」

サウリル:「たった一週間で出来りゃ苦労しないわよ……って、そうじゃなくて!あんたの為に連れてきたの!〈時の卵〉について知ってそうだったから!」

フィオラ:「なんだ、違うのか……つーか、やけに協力的じゃん。嬉しいけどよ」

サウリル:「それは……まぁ……いいでしょ。別に」

カデア:「はは、素直じゃないねぇ。さて、自己紹介しようか。俺はカデア・オーマ、この辺じゃ有名な遺跡荒らし、ヘキマ・オーマの一人息子さ」

フィオラ:「おう、よろし……ヘキマのおっさんの息子?マジで?」

シヴァニカ:「あら、坊っちゃん。お元気そうね」

カデア:「なんだ、シヴァニカまで一緒なのか。てことは、親父に会ったのか?」

フィオラ:「まー、色々あって……まいいや、お前からも色々聞かせてくれ。なんでもいいから情報が欲しくてな」


 かくして、カデアからも色々と話を聞けたうえに、プラトーンのメンバーとして旅に同行することになった。

 まさか、こんなにすぐに息子さんと遭遇することになるとは。というか急に大所帯になったな。次回から五人+一匹パーティか。


 ちなみにカデアから聞けた話は、だいたいキャラバン本隊で聞いたものと同じだった。うーんこの。

 強いていうなら、ヤミアデミアと関係を持っている組織に、違法薬物を扱っている奴らがいるという話は初出ではあったか。


 その後、両カビ共無事に本隊への帰還を果たし、我々はクセナウイへ報告に。

 『次も頼む』と言ってもらえた、と上機嫌で煙管をふかす彼女から報酬を受け取り、今回の話は終了となった。


 情報がいろいろと手に入り、旅の目的に大きく近づけた……ような気がする。

 しかし、まだまだ先は長い。今後も新たな仲間と共に張り切っていこう。


 ……そう言えば、ニオに関する話はひとつも出なかったな。あいつ、何処で何をしているんだろうか。よく考えてみると、吸血鬼になった目的すら分かっていない。

 吸血鬼になった後のことは考えていない、という可能性も十分考えられはするが……何はともあれ、あいつに関する情報も、どこかで得られるといいなぁ。


 ◇ 成長処理 ◇


 今回の報酬は、基本額としての3000ガメルに加えて、ルドラの馬車を守った(と言っていいのかはアレだが)礼として追加で3600ガメル、計6600ガメルを頂いた。いきなり大金持ちだ。

 経験点は1580点、グラップラーを5にするには少し足りない。予定通り、エンハでも上げておくとしよう。

 名誉点は、腕利きさんが持っていた欠片5個(ステに反映されていたのは1個分)から26点。6の目が4つ並ぶという恐ろしい結果が出た。戦闘中に出て欲しかった。


 能力値は敏捷が伸びた。あと2回伸びれば、腕輪込みでB4に届くので優先したい。

 技能の成長は、エンハを2にして【キャッツアイ】を習得しただけで終了。次回はたくさん経験点がもらえるといいなぁ。


 さて、大金を得られたので買い物をしよう。とりあえず練技用の〈魔晶石(3点)〉を4個買っておく。

 デモンズラインの時に大暴れしていた〈ブレードスカート〉も買っておこう。彼の活躍に今回も期待。

 あとは……プラトーンの装備でも買うか。リストを覗きまして(ぺらぺら)カデアが装備できる〈狩人の麻痺毒〉というものに、プラトーンの攻撃に命中・回避デバフを付与するというえげつない効果が付いていたのでこれを購入。たった2000ガメルで手に入っていい効果ではないような気がする。

 シヴァニカの装備は、あまりコスパが良くないものが多かったので保留。そもそも最終メンバーに残っているか怪しいからな、この子……



 成長処理は以上。ようやく物語が本格的に動き出してきたが、次回は何が待っているだろうか。希望としては〈紅金〉とかいう金属の実物が欲しいところ。


 第五話、『過去からの呼び声』に続きます。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る