第6話

 試験は朝早くから行われるが、昨日は追い込みをかけて深夜3時まで勉強に取り組んだためか、試験会場へ向かうバスの中では虚ろな目をしていた。窓ガラスに反射する自分の顔を見て、あぁクマがすごいなと妙に落ち着いていた。

 会場には同じ年頃の高校生たちに混じって、ちょっと年上の人も見掛けた。そうだ、ここは色んな人が集まるのだ。

 試験開始と同時にシャープペンを走らせる。カリカリ、カリカリ、芯の削れる音が響く。

 そら先生に教えられたことは、全て頭に入っている。そのつもりで挑んだが、いざ目の前にすると怖い。間違っていたら?解けなかったら?その時、私は。






 * * *






 試験の日を思い出して、腹痛を起こす。酷いと頭痛までしてくる。そんな日々を過ごした、今日。合格発表の日。

 大学の構内に張り出される番号を見に行く、なんて言うアナログな方法は、怖くて出来なかった。番号が見つからなかった時、何度も何度も、繰り返しなぞるように見入ってしまう。そう思ったから、自宅でPCを覗き込む方法をとった。

 昨日、親や家庭教師の事務所に黙ってこっそり交換した宙先生の連絡先に、メッセージを送った。一行だけ、受験番号だけ。

 連絡先を交換したはいいものの、特に何もメッセージのやり取りをすることも無く半年が過ぎて、初めて送ったメッセージが、それだ。

 ドクン、ドクン。発表まであと、5分。PCの画面を睨み付けるように、目が霞むくらい、穴が空く程に。

 マウスをクリックして、画面を更新する。アクセスが集中しているためか、ロードが長い。長い。長い。グルグルと回るロード画面のアイコンが、煩わしくて、苛立ってしまう。

 もう一度、更新をクリックすると、画面が切り替わった。同時に、スマートフォンが鳴る。発信者の名前は、宙先生。

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