第10話 向日葵は空に散る

 俺と絵空の話を物語として読んだとき、多くの人たちはがっかりするだろう。

 夢の世界で起きた非現実的な出来事だけど、手に汗握るファンタジーではない。出会うことのなかった男女のやりとりだけど、胸高鳴る展開はない。

 いつまでも同じようなことをうだうだぐちぐち言ってちっとも前に進まないし、野郎は気持ち悪いことしか妄想していない。山も谷もあるにはあるが、せいぜい低い小山に浅い落とし穴程度。見ていて何が面白いんだって感じだ。

 本人にとっては重大なことでも他人にとっては些細なことで、個にとっては一大事でも世にとってはたかがその程度のこと。まあ、他人の人生ってそんなもの、所詮は他人事というやつだ。

 それでも、もしもこれを物語にするとしたら、何か得られるものはあるだろうか。命の尊さ? いやいや、絵空ならまだしも、俺がどの口で語るんだ。

 深く考えるのはよそう。簡単に、誰でも分かるものでいいじゃないか。そう、これは、この物語は。


「現くーん! 早く早く、みんな待ちくたびれてるよ!」


 これは向日葵のような笑顔を浮かべる絵空の可愛さを浴びる物語である。うん、これで十分じゃないか。

 黒色のワンピースを翻し、両手を挙げて大きく振る絵空に頬を緩めながら俺はそう思う。絵空の可愛さを浴びて、満たされる。それ以上に何の意味を必要とするのか。


「もう、現くんってば。気持ち悪いこと考えてないで早く歩いてよ」

「え、また口にしてた?」

「ううん、顔に出てた」

「表情から読み取れるほど付き合いが長くなったということか」

「誰が見ても分かるくらい気持ち悪い笑みを浮かべてたんだよ」

「手厳しい!」


 そんな、嬉しいこと言ってくれるじゃないか。自分でも自覚できるほどだらしなく頬を緩めていれば、絵空にぴしゃりと跳ね除けられる。悲しい。

 何もそこまで正直に否定しなくてもいいじゃないかとしくしく泣いてみせれば、先に進んでいた絵空はまったくもうと頬を小さく膨らませて、駆け寄ってきた。そして、慰めるのではなく俺の背中を押す。


「時間は有限なんだよ」

「特に絵空の時間はなあ」

「二人でいられる時間が、だよ!」

「うっ、今の言葉ぐさっときた。心が抉られる」

「頑張って乗り越えて」


 クジラの花火を見てから、そして海のような向日葵畑で話してから、更に日が経った。

 本当なら一刻も早く現実の絵空が目を覚ませるようにしないといけないのに、俺たちはまだ夢の世界にいた。というのも、絵空がお別れ会をやると言って聞かないのだ。これが最後になるのかもしれないなら、半端なものじゃ満足しないとわがままを言ったから。

 俺はいいんだけど、絵空は本当にそれでいいのかという心配に対しては今の私にとっては現くんを優先したい。なんて、俺なんかにもったいなすぎる言葉を躊躇うことなく言ってくれた。喜びに打ち震えて、目の奥が熱くなったことは絵空には言っていない。


「一生懸命準備したから早く見てほしいの」

「俺、途中から準備に参加させてもらえなかったからなあ」

「主役が見ちゃダメでしょ」

「あ、俺が主役なんだ」

「うん」


 まあ、確かに。この夢が終わったら俺は消えてなくなる可能性が高いからな。文字通り、俺は夢のように消えていく。

 ということはさすがに言えなかったけど、この数日で俺が自殺により命を終えた存在であることを絵空は受け入れてくれたのか、はたまた受け入れてはないけど頭の整理はついたのか、ブラックすれすれの冗談を言ってくれるようになった。そして、二人の時間を終えようとしていることもさり気なく話題にあげられるようになった。

 本当に逞しい子だ。俺自身は自殺をしたことについて気にしていなくて、俺が気にしているのは自殺したことに対して絵空がどう思うのか。ただそれだけであるということを察するなり、ブラックジョークのネタにして、今まで通りに振舞ってくれているのだから。

 それが、どれだけ俺の心を救っているのか絵空は知らないんだろうな。


「やっぱり会場は学校なんだな」

「当然だよ! みんなを忘れちゃダメだからね」

「みんな」

「うん、みんな」


 学校が会場という時点で察しはついていた。準レギュラーからレギュラーに昇格する勢いで現れる彼? 彼女? 性別は分からないあいつらもお別れ会の参加者になるのだろう。

 今度は何をしてくれるのだろう。昇降口に入ってすぐに見せつけられたラインダンス。それともキレッキレのパラパラ。サンバもあり得るな。可能性がありすぎて想像ができない。

 誰が何をしても、何が増えていても、もう驚かないぞと固唾を飲んで絵空に促されるがままに校門をくぐる。そして出オチ。


「ぎゃあ」

「こちら、スペシャルゲストの二宮金次郎像さんでーす!」

「待て、この間の肝試しではなかった。絵空の中学校には二宮金次郎像はなかった!」

「おお。現くん、鋭い。そう、何を隠そうこの二宮金次郎像さん、現くんが通っていたであろう学校がらやってきたのです!」

「…………俺、絵空に自分が通っていた学校を教えていないよな」

「うん、聞いてない」

「なのに、どうして俺が通っていた学校の二宮金次郎像だと」


 ようこそ! お別れ会へ。そう書かれたのぼり旗を薪と一緒に背負い、本の代わりに達筆な字で会場はこちらと書かれた看板を持つ二宮金次郎像がいた。

 本を持っていなかったから一瞬何の銅像か分からず、ただただなんだこいつと悲鳴をあげてしまったじゃないか。絵空はしたり顔をしているし、やられた。心構えをしていたが、見事に驚かされた。

 絵空の紹介を受けて、二宮金次郎像はぺこぺこと頭を下げる。銅像のくせに滑らかな動きだ。頭を下げる度にのぼり旗がこっちに振り下ろされるので危ない。三歩ほど下がってから片手をあげて挨拶をしてみる。すると、どうだろう。この二宮金次郎像ってやつは無機質な目を輝かせて握手を求めてくる。不覚にも可愛いと思った。

 それはそうと、どうして絵空が俺の学校を知っているのか。冷静になって振り返ってみれば楽しいことが多かった場所だが、振り返ってから現在に戻れば息苦しくて胸が痛い思いをするので避けていたのに。もしかして、調べたのか? それ、ストーカー行為だぞ。絵空みたいに可愛い女の子にされるなら両手を広げて歓迎したいけど。

 なんて、図書館で絵空の過去が載ったアルバムをじっくり見ていた俺に特大ブーメランで刺さることを考える。


「だって、彼が教えてくれたんだもん。ちなみに自分から来てくれたんだよ、自分も仲間に混ぜてほしいって」

「なんで会話ができているんだ!」

「あっ、私は喋ってる内容は分からなかったよ。身振り手振りでなんとなくこう言ってるのかなあって。人体模型くんが翻訳してくれたの」

「なんで人体模型とは会話できるんだよ!」

「だって喋ったから」

「は?」

「あのね、現くん。人体模型くん、喋れるようになったよ」


 ここに来て衝撃の新情報がぶっ込まれる。どんな冗談だよと笑おうと思ったが、絵空があまりにも真剣な目をして言うものだから、嘘でも冗談でもなく本当の話だと信じるしかなかった。

 つまり、なんだ。新キャラ紹介をする勢いで人体骨格を連れてラインダンスの出迎えをした人体模型はついに言語を習得したと。そして性別は男で確定だと。

 お前らはいったいどういうジャンルを目指しているんだ。学校で語られる動く人体模型って七不思議代表のホラーじゃないのかよ。ラインダンスをするのもある意味ホラーだったけど、言語を習得したらそれはもうホラーよりミステリーの方が強くないか。


「それでね、今二宮金次郎像さんも人体模型くんに教わってるんだって」

「言語を?」

「言語というか、発声方法を」

「あ、ああ、そうだよな。二宮金次郎像といえば勤労と勤勉の象徴だし、知識量そのものは人体模型より上で言語そのものは習得しているか。いや、どんな比較だよって話だけど」


 余談だが、最近では二宮金次郎像は歩きスマホを助長させる存在として撤廃されるようになったらしい。もしくは、薪を置いて座りながら本を読む姿に変更されたとか。そして世間は仕事をサボって本を読むなもしくは休憩時間はちゃんと休めという声に別れたとか。手厳しい。

 コミカルな動きで愛着が芽生えそうな二宮金次郎像を目の前にした俺は今、そんな世間の声に共感するよりも時代の移り変わり移り変わりにより姿を変えられてはいろいろ言われている二宮金次郎像に同情する。


「あれ。昇降口で出迎えラインダンスはないのか」

「同じ展開はつまらないじゃん」

「待て待て。あいつらが予想外な動きをすることが一番怖いからやめてくれ、素直に繰り返してくれ」

「ふっふっふー」

「怖い怖い、まじそれ怖いから」


 二宮金次郎像と戯れてから、ようやく昇降口に向かう。いつだったか、人体模型と人体骨格が肩を組んでラインダンスをしていた場所。二度目は叫ばないぞと勇気を振り絞って入れば、あの二体はいなかった。

 拍子抜けしていると、絵空がすかさず恐ろしいことを言う。俺がびびる姿を見て楽しんでるだろ。そう言って小突けば、絵空はちろっと舌を出して笑う。ぐうっ、可愛い、許した。


「会場は二年C組でーす」

「お、おう」

「私の教室なんだよ」

「ああ、なるほど。てっきり音楽室とか美術室に行くのかとばかり」

「それも考えたんだけど、やっぱりお別れ会といえば教室かなあって」


 会場という名の教室に向かう道中で絵空が中学二年生だということが発覚した。中学生なのは知っていたけど、そうか、中二か。学校に慣れてきて、進路の心配もまだしなくて、一番楽しい時期じゃないか。みたいなことを言ったらおじさんみたいなこと言っていると笑顔で胸の柔らかいところを刺された。

 俺はまだ若い。その言葉を言うこと自体、おじさんの入り口をくぐったも同然なのかもしれない。いや、いや、若いはずだ。俺の自殺がニュースや新聞に載るなら若くして失われた命と題名がつくはずだ。……まあ、中学生からしたら十分おじさんなんだろうけど!


「でも、現くんが大人だとは思わなかったなあ」

「え、何。俺って若く見える?」

「というより、社会人になった大人はみんな理性的だと思ってた。ほら、私の周りの社会人ってお医者さんとか看護師さんとかだから」

「やー、あんな人間度高くなきゃやってられない職種と並べられてもなあ」

「人間度って」

「協調性、他人の心への共感度が高く、どんな相手でも寄り添おうとする。そんでもって、誰が聞いても大変な仕事だね、偉いねって言うから社会的地位も高い」

「確かに、病院で働く人たちはすごいなあって尊敬してる。いつも助けてくれてありがとうって思うし」

「看護師とかは給料が高いからやってられるって声も聞くけどな。そうだとしても、根本には他人の命を救いたい、心に寄り添いたい、人生を支えたいって気持ちがないと続けられないだろ」


 いいなあ。その肩書きがあるだけで人の役に立てる職種って。その仕事をしてれば感謝と尊敬を受け取れるなんて羨ましい。それだけで価値を保証されるなんて、格の違いを見せつけられているようで息苦しくなる。

 そこに至るまでに莫大な資金と途方もない時間と汗水涙を流す努力があるのは知っている。その報酬は重たい責任を背負っている分だけ与えられているというのも理解している。軽率に羨ましいと言う奴らに対して、それだけの努力をしたのだから当然だ、羨ましいならやればいい。って返してもいいくらいだ。そして、俺みたいな奴はこう言う。

 誰もがお前たちみたいにもがき苦しみながら努力できると思うな、と。


「……本当に、ろくでもない奴だな」

「現くん、今にも死にそうな顔してる」

「残念ながらもう死んでるんだよな」

「だったらいちいち今にも死にそうなくらいしんどいって顔しないでよ。人生、死は一回きりで十分でしょ。苦しい思いをしながらなら、なおさら」

「そうだな。苦しみながら死ぬなんて二回もしたくない」


 もやもやと、わだかまりが詰まったような感覚に喉元が襲われて気持ち悪い。いつの間にか階段を上る足が止まっていた。隣に並んでいたはずの絵空は二段くらい上にいた。

 やれやれと呆れたように息を吐いてから、絵空は俺の頭をわしゃわしゃと撫で回す。それからパチンっと乾いた音をたてた小さな手で両頬を包まれる。

 勢いがついていてちょっと痛いぞ。俺が抱いたほんの少しの不満など気にせず、絵空は俯いた俺の顔を強引に上げる。にっこりと細められた焦げ茶色の目には確かに、今にも死にたいと言いたげな俺の顔が映っていた。


「だから顔上げてよ。現くんの二回目は私が、死にたくないと泣きながら迎えられるようにするんだって決めてるんだから」


 物騒で熱烈な口説き文句だ。

 いつもの向日葵のような笑顔を浮かべながら、その目はいつになく真剣で、絵空は本気なのだと分かる。向日葵畑で言った通り、自殺した俺の終わり方を決めるのは自分だと、本気で思っているらしい。

 俺としては、絵空といる時間をずるずると引き延ばせるのだから嬉しいんだけどなあ。なんて思いながら階段を上る足を動かす。そして、案内された二年C組の扉の前に立つ。

 絵空がうきうき、わくわくと落ち着きのない様子で扉を開けてほしいと言うので条件反射で扉の上部を確認した。黒板消しは挟まれていなかった。


「何を企んでいるの?」

「それは開けてみてからのお楽しみだよ」

「企んでいるのは否定しないんだな」

「はっ!」


 誘導尋問には引っかからないぞと、絵空は両手で口を覆う。その反応が答えみたいなものだよなあと思いながら、あとあるとしたら……と、黒板消し以外にありえる罠を考える。

 そうだな、扉を開けた瞬間にチョークが飛んでくるとか、足元に水の溜まったバケツを置くとか、いやこれはもう嫌がらせの域になるな。じゃあ、安全が確保された上で何かが起こるとみていいか。

 だったらなんでもこいと扉を勢いよく開ける。そして、即前言撤回する。時間にするとコンマ数秒の出来事。


「…………」

「あれ、反応薄くない?」

「…………」

「おーい。現くーん」

「…………意識が飛びかけてた」

「感動しすぎじゃない?」

「ああ、感動のあまり発狂しそうになったよ」


 自然と身体が動きそうになるくらい賑やかで、鳥肌がたつくらい美しくて、気を失いそうなくらい奇怪で不気味な光景だった。

 扉を開けてその光景に直面した俺は数秒前の考えを撤回し、意識を手放しかける。ふらりと後ずさりした俺の背を絵空が軽く叩いたことで、寸前のところで堪えることができたけど。

 だって、こんなの想像できるわけないだろ。人体模型と人体骨格と美術室に飾られた石膏像たちと音楽室に置かれた楽器たちがゴスペルを歌って出迎えるなんて。人体骨格は身体中の骨を使って、楽器たちは本来の役割を全うして、歌うというより伴奏をしているという方が正しいか。


「というか、喋れるようになったのは人体模型だけじゃなかったのかよ!」

「れんしゅウ、しま……シ、た」

「あ、喋り方は片言なんだな」

「ハイ。ぼクいがいは、うたシカ……まニあわなかッタ、です」

「むしろなんでゴスペルに間に合うんだよ」


 ぎこちない音声のようにガタガタでガビガビの声が人体模型から発せられる。その言葉に同意するように彫刻たちは頷く。

 いやいや、なんでゴスペル歌える奴らが会話の発声はできなくて、一番高らかに歌っていた人体模型の喋り方は電波の悪いラジオのように途切れ途切れなんだよ。じっとりと睨みながら、責めるように言えば人体模型は愛故に成せる技だとか言い始める。

 やめてくれ、人体模型からの愛なんて受け取りたくない。いや、嫌いというわけじゃないんだよ。何度か遊んでいるし、それなりに情も芽生えている。人体模型に芽生える情ってなんだよ、字面だけ見るとかなりやべー奴だ。とにかく、愛を貰うなら無機物じゃなくて可愛い女の子がいい。


「そう! 絵空のような可愛い女の子からとか!」

「うわ、びっくりした。突然おっきな声出すんだもん」

「あっ、ごめん」

「謝るなら私よりも人体模型くんだよ。現くんが振るから落ち込んじゃった」

「いや、振ったつもりはないんだ。だからといって愛を受け止めたつもりも……ああ、違う違う、嫌っているわけじゃないんだ。不気味だとは思っているけど、嫌ってはいない、愛着はある、まじで!」


 絵空が指さした先には体操座りをして床にのの字を書いていじける人体模型の姿があった。慌ててフォローをしようとするが、出てくる言葉は逆効果になりそうなものばかり。人体模型は剥きだした眼球をきらりと光らせる。それは涙目なのか? 涙で潤んだ目ということか?

 人体模型の両肩を揺すり、元気出してくれーと声をかけ続ける。しばらくすると人体模型は本当に嫌っていないかと確認してくる。お前は面倒臭い彼女かと突っ込みながら、本当に嫌っていないから安心しろと念を押す。そして、人体模型は嬉しそうに両手を挙げて万歳をした。石膏像たちは人体模型に良かったなとでも言うように肩を叩き、共に万歳をしていた。


「……俺はどうして人体模型相手にこんな必死にならないといけないんだ?」

「お友達を励ますのは当たり前のことだと思うなあ」

「友達」

「うん、友達」


 種族を越えた友情にしたって、守備範囲が広すぎではなかろうか。とは、さすがに直球で言うことはできず黙り込む。

 けど、それは絵空にお見通しのようだ。絵空は人差し指をぴんっとたて、ちっちっちーなんて言いながら左右に振る。それから、にんまり笑う。


「お別れ会に自分も参加したいって言って、準備も率先してやってくれたんだよ。それを友達と言わずになんて言うの」

「絵空が誘ったんじゃなくて?」

「誘おうか悩んでたから人体模型くんたちから声かけてくれたんだよー」

「あそブノ、とても……たの、シカッた、です」


 蹲っていた人体模型が立ち上がり、俺の手をとる。硬くて冷たくて無機質な手だ。どうせ握られるなら絵空のように小さくて柔らかい手が良かったなとか茶化してやりたかった。けど、声が上手く出ない。

 目の奥が熱くなり、視界がぼやける。天井を見上げた。鼻がつーんとしてきたので、ずずっと吸い上げれば絵空たちが笑う。

 ちくしょう、なんだこれ。奇妙な光景だし、人体模型ルートとか意味分からんものが浮かんできたじゃないか。どんなものでも擬人化するジャパニーズ文化をもってしても、さすがに人体模型はないだろ。


「絵空」

「なあに」

「お別れ会って、大事だな」

「でしょでしょ」

「もう、腹も胸もいっぱいかも」

「何言ってるの。ここからが本番だよ!」


 隠し持っていたクラッカーを絵空が鳴らしたのを合図に、人体模型も人体骨格も鳴らし始める。美術室の彫刻たちはパフパフラッパを鳴らし、音楽室の楽器たちが負けずと賑やかな演奏をする。

 ああ、うん。感動したし、涙腺は緩みそうになった。だけど、やっぱこの光景は笑ってしまうくらい不気味だな。


▷▶▷


 お別れ会といえば、居酒屋とかで酒を飲みながら飯を食い、恒例のビンゴ大会だのクイズ大会だの、だらだらゲームをやって景品で盛り上がる。その盛り上がりも格差がある。親しくしていた先輩同僚後輩などなどならまだしも、関わりが少ないけど同じ部署だからって理由で参加させられたお別れ会ってものはつまらないのなんの。名前もお別れ会なんて可愛らしいものから送迎会っていう堅いものに変わって、節度をもって理性的でなきゃならないし。

 大人になってから開かれる別れを惜しむ会っていうのは形式的なものだったり、あるいはそれにかこつけて飲みたいだけの奴らによる強制招集だったり、すごくつまらないものだ。

 そもそも、大人になってから惜しむ別れというものが減る。社会人の人間関係構築ってそれこそ仕事を円滑に進めるための作業になるし。


「これは俺の椅子だァ!」

「ギャッ」

「ちょっと現くん、大人気なーい」

「ふっ。勝負事に情けは無用というもの」

「この歳になって椅子取りゲームとかちょっと、みたいなこと言ってた人が一番本気なんだけどー」


 だから、絵空主催のお別れ会がこんなにも白熱して、汗までかくことになるとは思っていなかった。暑い。

 俺の尻に弾き飛ばされ、硬い悲鳴をあげて倒れた人体模型はキィッとハンカチを噛む仕草をして悔しがってみせる。俺は遠慮なくドヤ顔で見下ろした。

 ところで人体模型よ。お前はいつの時代の生まれだ。その仕草は古いぞ。


「だって、ハンカチ落としにフルーツバスケット、黒板使ったマッチ棒パズルゲーム、それでもって椅子取りゲームだろ」

「マッチ棒パズルゲームは盛り上がったねぇ」

「二宮金次郎が賢すぎて困ったわ。歯が立たない」

「ダンスバトルも最高だったよ」

「ああ。さすが、人体模型や人体骨格がラインダンスをして出迎えたり、美術室の机の上でパラパラを踊る石膏像がいる中学校なだけあるよな。レベルが高い。……絵空を除いて」

「体育はー、基本お休みなんですーっ」

「にしても酷かったぞ」


 絵空が黒板に書き出したお別れ会進行スケジュールは懐かしさを覚える子どもの遊びばかりだった。ハンカチ落としとか小学生の遊びだろとまで思ったくらいだ。しかし、ここは中学校である。俺がどれだけ言おうと、現役女子中学生と中学校に住む備品たちの意見が一致して、多数派の言う通りにゲームは進められる。

 そして、ヤケクソになった俺は大人気ないと言われようと本気を出した。後半のゲームに関しては俺と人体模型が取っ組み合いをする勢いで白熱していた。絵空は人体骨格と男の子って子どもだよねーと談笑していたのを聞いて、もしかしてその人体骨格は女なのかと動揺したのは内緒の話。


「楽しい時間ってあっという間に過ぎるよねー」

「日が沈むからそろそろ解散しようって流れから、まさかのここからが我々の時間だつって人体模型たちが弾け出したのはびびった。あいつらのジャンルはなんなんだよ、まじで」

「丑三つ時に寝始めるってのも謎だよね」

「そこからが更なる本番なんじゃねえのって思わず叫んだな」

「私たちは眠い通り越して深夜テンションでハイになってるから尚更ね」


 椅子取りゲームを始めたのは日付が変わった頃。そんな時間まで小学生のお遊びをするのかと笑われてしまいそうだが、これが意外と盛り上がるんだ。というのも、人体模型たちにとっては初体験であり、俺たちにとっては真夜中の学校で椅子取りゲームというアホみたいな状況に笑い転げるしかなかったから。

 椅子取りゲームを終えて、いい加減休憩を挟むかと並べた椅子を片付け始めたとき、人体模型たちは電池が切れたおもちゃのように停止した。最初は聞こえていた寝息が次第に小さくなっていき、完全に事切れる。

 そのことに気付いた俺たちは顔を見合わせ、笑った。絵空は少し寂しそうに、俺は名残惜しみながら。


 感謝の意を込めて、俺たちは一体一体丁寧に手入れをし、あるべき場所へ戻すことにした。

 理科室に人体模型と人体骨格。大きくて複雑な作りだったから手入れが大変で、重いから運ぶのにも一苦労した。

 美術室に石膏像。でこぼこな作りだからか、よく見ると細かなところに埃が溜まっていた。数が多くて教室から美術室まで何往復したことか。

 音楽室に楽器。これが一番大変だった。手入れ方法がよく分からなくて音楽室で各楽器の取り扱い説明書を探すところから始まったし、ピアノの運搬方法に頭を抱えた。そもそも、どうやって教室に入ってきたのか。絵空と話し合った結果、軽量のピアノをイメージしてみたらどうだろうとなり試行錯誤、なんとかなった。もっと早く思いついたら理科室の方も楽だったのにと笑った。

 校庭に二宮金次郎象。これはこれで悩みの種になった。なんたってこいつ、俺の中学校から来たというのだ。さすがにそこまで運ぶ体力は残っていなくて、絵空の中学校の良さげな場所に飾ることにした。ちなみに、ピアノのときと同じように軽量化した。素材は発泡スチロールかなにかかと思う軽さだった。はるばるここまで来てくれてありがとうな。


「あんなに賑やかだったのに、静かになったねー」

「真夜中の学校って本来こんなものだよな」

「行ったことあるの?」

「忘れ物取りにね。なんで夜になってから気付くんだって怒られる怒られる」

「さては、夜に宿題を開くタイプだね」

「やらない子よりましだろ」


 二宮金次郎像を校庭に飾った後、静まり返った校内を歩き回る。といっても、皆を片付けるために一通り回ったし、感傷に浸るのはそのときに済ませてしまった感じがある。

 俺たちの話し声と足音しか響かない廊下を歩き進め、さてこれからどうしようかと悩み始めたところで階段が目に入った。


「屋上って開いてるのかな」

「開かぬなら開けてしまえ屋上の扉」

「文字数はちゃめちゃだよ」

「いい単語が浮かばなかった」


 何度か足を運んでいる中学校だけど、屋上にだけは行ったことがないことを思い出した俺たちはジャンケンをしながら階段を上る。絵空はジャンケンが弱かった。一階分の差が開き始めたところで止めた。

 待望の屋上を焦らすように、来る時を引き伸ばすように。ゆっくり、時間をかけて階段を上る。けど、こういうときの四階分の階段はあっという間で、すぐに屋上に辿り着いた。


「絶景かな! とまではいかなくても、いい景色だね」

「周辺に高い建物がないから結構遠くまで見えるな」

「あそこ、ホテル代わりにした家具屋さんだよ」

「じゃあ、あっちが野宿用の道具を拝借したアウトドア用品店か」

「返したっけ?」

「いんや、いつもの公園に置いてある。しかも設置したまま」

「現くん、それはもう借りるって言わなくない?」


 四階建ての公共施設は高い。加えて、この中学校の周辺は住宅地が揃っており、かなり遠くまで見渡せる。屋根の色が個性的だったり建物の形が特徴的だったり。そんな建物を目に入れては夢の世界で起きたことを笑いながら話し合う。


 いつのことだか、思い出してごらん。あんなこと、こんなこと、あったでしょう。

 話し続け、少しずつ口数が減っていく。ついには沈黙が流れ、どうしようと思い始めた矢先に懐かしい歌を絵空は口ずさむ。曲名は忘れた。中学生の絵空にとってはまだ最近のことかもしれないけれど、社会人の大人になった俺にとっては卒業式なんてもう遠い記憶なんだなあ。

 音楽の授業とか卒業式の練習とかで何度も繰り返し歌わされていた記憶しかないのに、改めて聞くととても懐かしくて切なくてそして愛しい気持ちが込み上げてくる。

 そうだなあ、春夏秋冬いろいろなことがあって、節目を迎えては新しい場所に期待に胸を膨らませて、毎日が楽しくて。俺にも、目に映るもの全てが眩しいくらい輝いているように見えて、負けじと笑っている頃があったんだよなあ。


「なあ、絵空」

「なあに、現くん」

「俺、今から絵空が怒ること言う」


 そんなこと、すっかり忘れていた。俺はその思い出を置き去りにして大人になり、それが未練になったんだろうな。

 手すりから離れて、楽しかった絵空との思い出から遠ざかる。夢の世界には本当にたくさんのものがあった。現実じゃ考えられない不思議なものからあまりにも現実通りの懐かしいものまで。それらを振り返ってこう思うなんて、本当に俺はどうしようもない奴だ。絵空に平手打ちの一発や二発されても文句が言えないな。


「やっぱり、俺は自殺して良かった」


 心から、そう思った。

 絵空はそんなこと思ってほしくなかっただろう。自殺したことを後悔して、自分が生きてきた時間は尊いものだと思ってほしかっただろう。けど、俺は俺にも尊く愛しい日々があったのだと思い出せたことに満足してしまった。最期の最後に思い出せてよかった。自殺したかいがあったと思ってしまった。

 絵空はぱっちりとした大きな目を更に大きくする。動揺して、絞り出すように掠れた声でどうしてと呟き、ふらふらとした足取りで俺のもとに来る。裾を摘む力は弱々しく、そんな絵空の目に映る俺はひどく穏やかな顔をしていた。


「そうしなきゃ、俺はこうして絵空と出会うことはなかった。こんなにも生きることに全力な子がいるのにって胸を痛めることもなかったし、この一瞬に全力を注ぐなんてこともできなかった」

「そんなの、生きていればいつかは」

「生きていればそういう出会いがあって、機会もあったかもしれない。けど、それは可能性であって不透明な未来なんだ。それに、生きていたら絵空に出会うことはない」


 焦げ茶色の目が揺れる。太陽が昇っていたらきらきらと輝いていたことだろう。月が照らしていたら静かに光っていたことだろう。残念ながら、もうじき白もうとしている空には絵空の涙を照らす光はない。

 涙を拭うように、絵空の頬に手を添える。小さくて温かい頬だ。それに比べて俺の手は冷えきっている。絵空もそれを感じたようで、堪えていた涙が途端に溢れてくる。


「ここは絵空にとっては終わるべき夢であり、俺にとっては終わりゆく現実なんだ」


 絵空は感情も表情も豊かだ。いつも笑顔だけど、その笑顔も種類豊富で違いが分かりやすい。

 自分の病気について触れそうなときには困ったように笑っていたし、俺が突拍子もなく手放しで絵空の可愛さについて語れば本気で困った顔をする。寂しさを誤魔化すように笑うこともあれば、胸の内を吐き出しているうちに本当に寂しそうな顔をする。頬をむくれさせて怒った顔も、ちょっとドン引きと嫌そうな顔も、人間ってこんなにも表情を変えて感情を表現できるんだって感心するくらい豊かだった。

 けど、泣き顔だけは見たことなかったな。


「なん、で……なんでそんなこと言うの。死ぬってどういうことか分かってる? 何もできなくなるんだよ。当たり前の日常がなくなる。私にだってある当たり前が、朝起きておはようって寝る前におやすみって挨拶することも、誰かの名前を呼ぶことも、呼ばれることも」

「そうだな」

「何かを見て綺麗と思うことも、ううん、見ることすらできない真っ暗で、何もできなくなって、自分が終わっちゃうんだよ。自分がいなくなった後、みんながどうしてるか知ることもできないし、自分がこれからどうなるかも分からない、その先は何もないんだよ」

「そう、その先があった今が奇跡なんだ」


 屈んで、ぽろぽろ泣いている絵空と目線を合わせる。額をこつっと合わせてから笑えば、堰が切れたように声をあげて泣き始める。

 俺を泣かせるって言ったのに、絵空が泣いちゃったな。そうからかえば誰のせいだと思っているのと、胸をぽかりぽかりと弱々しく叩かれる。

 そうだなあ、俺のせいなのかな。俺のせいだといいな。こんな俺のために泣いてくれる人がいるって分かっただけで、俺は十分幸せ者だ。


「絵空は俺の心を救ってくれた。だから、俺も絵空の命を救いたい」


 絵空にはたくさんのありがとうを伝えたい。

 俺に出会ってくれたこと。向日葵のような笑顔を向けてくれたこと。

 生きるということは辛いもので、苦しいことに襲われても耐え忍ぶ必要がある。その分目に映るもの手に届くもの全てを楽しむものだと教えてくれたこと。

 そして、俺のしたことを怒ってくれたこと。俺のために泣いてくれたこと。

 何度ありがとうを言っても足りない。どれもこれも、絵空がしてくれたこと全部がすっごく嬉しかったんだ。言葉にできないくらい、感動をしていたんだ。

 だから、次は絵空が救われる番だ。


 喉が痛くなりそうなくらい声をあげて泣きじゃくる絵空を抱きしめて、背中を擦る。ぐずぐずと鼻をすする音が聞こえてきて、きっと酷い顔をしているんだろうなあと笑いそうになる。そして、我慢できず、ついつい笑ってしまった。

 涙をいっぱい目にため、目元を赤くした絵空に睨まれるが、全く怖くないし、なんなら可愛いぞ。いわゆる上目遣いというやつだ。


「最期の最後までそういうこと言うの」

「初めて絵空の泣き顔を見れた記念すべき人だけど、やっぱり笑った顔が見たいからな」

「……もう、本当酷いよ」


 頬を小さく膨らませ、絵空は顔を伏せる。まだ鼻は鳴ってるし、目元はぽってりとしているけど、涙は止まったようだ。絵空は数年分の涙を流したと赤くなった鼻先を撫でながら言った。その一言でちょっとだけ空気が和んだ気がする。

 このまま立ち話もなんだからと俺たちは座ることにした。壁にもたれて胡座をかいていると、絵空はぽすりと肩に頭を預けてきた。


「もし、今の現くんが生きてたとしたら……目が覚めることができたら、何かやりたいことある?」


 遊び疲れ、泣き疲れ、瞼を重たそうにしている絵空が小さな声で尋ねてくる。

 実現不可能なもしも話をして、何の意味があるのだろう。それは俺があの日、海で絵空の一番やりたいことをやろうと言ったとき以上に酷い話じゃないだろうか。意味もなく聞いているわけじゃないというのは分かるのだけど。

 絵空の意図を汲み取ろうとしばらく考えていると、控えめな視線を向けられた。まあ、何でもいいやと腕を組み、考える。

 やりたいこと、やりたいことか。未練なら一応ある。自殺したくせにあるのかと言われてしまいそうだが、大往生を遂げない限り未練のない死っていうのはないと思う。俺の場合、追っていた連載漫画の最終回を読み逃してしまったとか、そういうもの。

 でも、絵空が聞いているのはそういうのじゃないだろう。でも、それ以外のものを考えてもなかなか浮かばない。だって、夢の世界でこれ以上ないだろうってくらい楽しいことを絵空としたから。


「そうだなあ」

「なんでもいいの。あれが食べたいとかどこか行きたいとか」

「んー……あっ、一つだけある」

「なになに?」

「浴衣を着た絵空が見たい」


 ふと、浮かんだことをそのまま口にする。微睡んでいた絵空の目が丸くなる。それからすぐに眉を下げる。

 困らせるつもりはなかったんだけどな。肩に乗せられた頭を撫でながら、ゆっくりと続ける。


「夏祭りに行ったし、海で花火も見た。なのに、絵空はずっとその黒色のワンピースしか着てなかっただろ」

「そ、それはそうだけど、そんなことなの? もっと自分のことで」

「そんなこと、じゃない。俺にとっては重要な事だ。可愛い女の子の浴衣姿だぞ」

「現くん、本当に最期の最後まで気持ち悪いこと言わないと気が済まないの?」


 重たい瞼を上げて、呆れたとでも言いたげな目を向けられる。そんな顔するなよと笑いながら頬をつつけば、絵空はくすぐったそうに笑う。

 俺はこういうことしか言えないんだよなあ。だって最期だから。もしも、もしもこの夢の世界での出来事が絵空の記憶に残るのであればしょうもないことばかり言う男だったなあって思い出してはくすっと‪する存在として残りたいし、残らないのであれば本当に馬鹿なことばかり言うなあと笑う顔を俺はこの目に焼き付けたい。‬‬

 それにしても、やっぱり浴衣を着た絵空はひと目見たかったな。いつも、どこでも、黒色のワンピースを身に纏う絵空はまるで、まるでさ。


「喪服よりもずっと似合うよ」

「……じゃあ、ちゃんとみててね」


 喪に服しているようで、辛い。

 俺なんかのためにそこまでしなくていいんだ。寂しいけど、でも俺のことなんて忘れて明日を、その先を長く楽しんでほしいんだ。


 俺の言葉に薄く微笑み、絵空は言葉を残す。それからは一言も語らず、小さな唇から零れるのは寝息だけだった。

 とても幸せそうで、安らかな寝顔だ。ぽってりと赤くなった目元を、涙が乾いた頬を、手の甲で撫でる。睫毛が微かに揺れるけれど、焦げ茶色の目が露わになることはもう二度とないだろう。俺は深く息を吐き、空を見上げる。

 重い足枷から解かれていくように黒く塗られていた空が、鮮やかに晴れるように東の空が赤く染まっていく。目の奥が熱くなるくらい、綺麗な空だなあ。

 ぼんやりしていると、優しい風が頬を撫でる。視界の端にふわりと散っていく、向日葵の花びらが映る。同時に、肩に乗せられていた重みがなくなった。


「おやすみ、絵空。いい現実を」


 目の奥が熱くなり、染みるように痛い。

 喉も熱くなり、乾くようにひりつく。

 地面の色が点々と濃くなる。


「きみと一緒に生きることができたなら、きっと鮮やかで楽しい人生を生きれたんだろうなあ」


 そうしたら、何か違っていたのかな。孤独感に苛まれることも、虚無感に襲われることも、希死念慮を抱くこともなかったのかな。もう、どれだけ考えてもどうしようもない、たらればだ。

 でも、そうだなあ。きっと、こんな俺だからこそ絵空と出会ったわけで、そんな俺じゃなきゃ縁が結ばれることはなかったんだろうな。

 そうか、そうだよなあ。でも、やっぱりさ、こう思っちゃうんだよなあ。


「絵空と一緒に、生きたかったなあ」


 自殺をしたことに後悔はない。それは本音だ。けど、呟いたことで芽生えていた欲を自覚してしまった。

 ははっ、おめでとう、絵空。最後の最後に、きみの狙い通りになったよ。

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