呑まれる意思

テンスの姿は赤きドラゴンのように歪み、肥大化している。傷ついた触手の化け物は恨めしげにタイムスリップ消失する。テンスはナインスの姿に気付かぬかのように周りを見回す。

「幸太郎!」

マキータは叫んだ!テンスがナインスを見た。テンスが人工天体の破片を蹴って跳ぶ!

  


「テーリッツさん!」

エーデルワイスがテンスとナインスの間に割って入ろうとする。

「あれはもう幸太郎さんじゃありません!」

テンスがベルフェゴールにした怪物的戦闘を礼三郎は目撃している。

「やめておけ」それを制止したのはアダマンティンである。「サダヒコ!」「あれは二人の闘いだ」

  


テンスの目がアダマンティンに向いた。

「おっと」

アダマンティンのそばにある破片がテンスの尻尾の斬撃で微粒子に還る。「おいおいあなたの相手は俺では無いぞ」

アダマンティンはエーデルワイスの手を取り高速離脱する!

「マキータ・テーリッツ!期待しているぞ!」

サダヒコは激励を込めて叫ぶ。

「あれは抑止力、現実の保全者そして救世主。俺のようなヴィールスが気に喰わんのだろう」

「メシアの概念にとり込まれてしまったのか?」

「そうだ、あれがある意味レイラインの最終形態。放置すれば我々教団としても困るな」

「だったら!?」

「礼三郎、もし我らの決戦を邪魔されたら厭だろう」

サダヒコはロマンチストなのだ。テンスの致命打をナインスは神盾で捌いていく。

「本来ならば共に世界汚染に抵抗すべき力が争っているのは悲しいことではあるな」

「けっ、詩人ぶるなよサダヒコ。ほくそ笑んでろよ」

突如一機のアームヘッドが割り込んできた。

「スカジ!?それにその声は!」

ヤリヒコだ。

「二人に、いや三人にか。最後のお別れに来たぜ。俺の最後は感動的だったか?」

ヤリヒコはマキータとの闘いのあとに死んだ。

「ふん、言わなくていいぜ。俺はネタバレが嫌いだからな」

「行くのだな?」

「あの化け物を息子が追い払ったらな」

「ふざけるなよ!」

マキータは叫んだ!今度はお前が機体に乗っ取られるだと!この闘いはスカージのものでもセイントメシアのモノでもない。俺とお前のけじめだ!神盾が光った!

「幸太郎を取り戻す」

「ギャギャギャギャ」

テンスが呻いた。

「行くぞモンスター!」

  


テンスの攻撃は一撃一撃が致命的。この盾が無ければ既にやられている。テンスはむしろ先程のアダマンティンをこの世界に害を成す疫病菌と見なし滅ぼそうとしてナインスはその邪魔をする害虫と思っていた。

「ギャギャギャギャ」

テンスが羽を広げ翔ぶ!

「逃がすか!」

「ギャギャギャギャ」

鬱陶しい!とばかり尻尾をテンスがナインスに向ける!

「俺の幸太郎を返してもらう」

ライトブレードムスタングが展開!四基のジャベリンが発射!

「ギャギャギャギャ」

テンスが初めて両手を広げた!

「ギャギャギャギャ」

ジャベリンを弾く!

「そこだ!」

  


ライトブレードがセイントメシアテンスを貫いた。

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