月を射て
きゅうせいしゅはあくをたおしてせかいをすくう
ーわるものはすくわないのか
微睡みのなか、見る夢のように丸いテーブルを囲んでいた。おまえはどう思うのだ?セシル。世界最終救世は成し遂げられるぞ。おれは答えた。すでにわたしは神の盾を彼に託した。救世主は彼が救ってくれるだろう、開闢先輩。そう聞くとおれは夢を認識した。そろそろ朝なのだ。月の向こう側へ、行くのだ。
セイントメシアナインスを先頭にパープルアップル攻略部隊が永遠の夜の世界、宇宙を進んでいた。セイントメシアナインスはネオスターシステムとティガーの秘密兵器を搭載し、テンスとの交戦時より遥かに性能をあげている。らしい。……。まるで遠足の引率だな。俺は後ろのアームヘッドを見た。彼らの年齢を足しても俺には届かない。……というほどでもないが、俺の半分の歳に達しているやつもいない。長い付き合いだな。俺は自分のアームヘッドの魂に語りかけた。無言の同意を得て眼前の人工天体を見据えた。あれが俺の物語、最後のステージだ。精々ぼろを出さないようにしなければ。
「マキータさん」
エーデルワイスから通信だ。
「なんだい。礼三郎さん」
「生き延びてくださいよ」
礼三郎の言葉に俺ははっとする。
「……いつも惨めに生き残ってきた。俺は君たちを守るよ」
答えになっていないな。俺は苦笑した。
「秋那さんを待ってあげてください」
礼三郎の言葉は深刻げだ。
「今でも待っているさ。だが俺は喪って生き延びすぎた気もするな。俺は災い魔というよりも死神だ。君も気を付けろよ」
俺は少し感傷的になりすぎているかもしれないな。
「死神はもう死んだ」
通信に割っていったのはティガーだ。
「礼三郎先輩たちを死なせないでくださいよ」
「……わかっている」
「……。アームヘッドの連携が鍵です。テンスメシアにはどのアームヘッドが単機で挑んでも勝てません。ナインス、エーデルワイスD装備、シュヴァリエ、アマリリス、ピットギアス、ギュルヴィの指揮を任せますよ」
「未確認のアームヘッドも出ると思われます」
長内くんの意見ももっともだ。スカージもいるのだ。
「おそらく、質でも数でも向こうが上だ」
ゾディアークと交戦した多量の護衛アームヘッドを思い出す。
「そこで僕の出番と言うわけだね」
「そうだ、キディさん。君のアームヘッドのアームヘッドコントロール能力で敵のアームヘッドの制御を奪う。ティガーと長内さんとクロワさんは彼の護衛だ」
「任せてね」
アマリリスはダッシュの頃から寄生アームヘッドの母艦機能を活かした対多数戦法を得意とする。エーデルワイスはD装備を利用した敵の人工天体の破壊を担当する。D装備はエーデルワイスの主機能を強化する装備であり宿命打破装置(フェイト・バスター)と呼ばれる。ごてごてしたなんかが付いている。ナインスは……敵主力の足止めだ。セイントメシアテンス、そしてヴェノムスカージ。どこに潜みなにをしでかすか、わからない。だが彼らと俺の目的は一緒だ。決着だ。決着をつけねばならない。リベンジを終わらせる。ヒレー、俺はおそらくリベンジが終わるまであなたのところへは行くことができない。
だが最後の物語は始まったばかりだ。悲劇の到来を告げるように死の光が一つこちらへ向かってきた。
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