うばわれたもの

◎これまでのあらすじ◎

運命を越えて再会したマキータと幸太郎を待っていたのは決着を求める死闘だった。理性を捨てた狂戦士形態に苦戦するマキータのまえに現れた救世主は幸太郎の部下のはずのキディ・ムーンライトだった。


アマリリス!キディ・ムーンライトのアームヘッドの名前である。俺を送り届けたあいつのアームヘッドにティガーも興味を持ったようだった。アマリリスは異なる歴史をたどったヘブンのセイントメシアであり、(その世界における同盟国)トンドルの技術が使われている。それは一種の精神支配だ。トンドルには寄生アームヘッドが存在し天州連邦政府は手を焼いていた、それがキディの幸太郎が生き延びた世界では味方らしかった。アマリリスは寄生アームヘッドの母艦となるアームヘッドだ。そしてその主戦術は撃破されたアームヘッド及びシビルヘッドを乗っ取ることだ。今行っているように!本体が戦闘能力と高速移動能力を持ち、なおかつ寄生アームヘッドにおける女王を保護している。兵隊寄生アームヘッドを散布し即席の死体アームヘッド軍隊を作る。アームヘッドの絶対数に劣る正統天州の切り札なのだ。アマリリスはテンスを死体とともに囲み同時攻撃、時間差攻撃を仕掛ける。アマリリスの得意技ペーパートライアングルはなにも生者との連携でなくともよい、というより死体を寄生アームヘッドで操る方がより精密な連携が可能であるとすら言えるだろう。本能で動く黒い形態のテンスはその死の腕をふるうことなく攻め立てられる。理性があればこのような手にかかるはずもない。俺は幸太郎がやられてしまうのではと危惧したが、敵を心配したのも一瞬だった。赤く変化するセイントメシアテンス!

「チート野郎め!」

キディが毒づく。キディもまたこの好敵手がなすがままにされるほどの凡才であるとは夢にも思っていないのだ。赤い殺意が死体シビルヘッドを切り裂いて弧を描く。

  


「第四形態!」

そう叫んだ聖なる救世主のもとへ赤い殺意が戻る。殺意はその形状を敵たちに見せた。赤い盾だ。

「防御特化形態だ。キディ、そしてマキータ。俺を貫いて見せるがいい」

赤い姿となったテンスは盾を構えながら死体シビルヘッドのもう一方へ突進する。

「まだ寝ていろ!」

  あっという間だった。死体シビルヘッドは盾と地面のあいだに押し潰される。

「どうした!」

幸太郎が叫ぶ!テンスが盾を投げる!赤い盾は再び赤い殺意となりナインスへと向かう!フィジカルライフルで狙うがあれは”盾"なのだ。銃弾程度で止められるものではない。加えてあの質量、覚醒壁を突破しうる。だが"盾"は急にテンスのほうへと戻った。アマリリスが盾を飛ばしたテンス本体を狙ったからだ。盾はテンスの手へと戻りアマリリスの体当たりを防いだ。

「その可動性能の低い機体でよくも俺に白兵戦を挑む気になったな、キディ」

幸太郎がキディを挑発した。

「お前には返して貰うものがある」

「なに?」

 「ミザリーを返せ、村井幸太郎」

「……どういう意味だ?」

キディの言葉に幸太郎は困惑しているようだ。

「お前がそのアームヘッドのためにミザリーに何かしたのを僕は見たぞ」

「……ふふ」

「何がおかしい!」

「……少し事実を知らぬゆえの見解の相違があるようだ」

「なにを言っている!」

 「……良いだろう。パープル・アップルに来い。そこで決着をつけよう。ミザリーもマキータが俺に勝てば返す。せいぜい手勢を揃えて来るがいい」

テンスが再び姿を変える。

「これが第五形態だ」

緑の翼をテンスは飛び立つ。

「マキータ!決着をつけよう!今度はお互い全力でな!」

  

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