宿敵の復活
生きていたスカージ!
「貴様……なぜここに?」
「ハハハ、ご挨拶だな。テーリッツ、我らは相棒ではなかったのか?」
冷たい声が嘲笑う。
「ほざけ、貴様がここにいる理由がなんであろうと打ち倒すのみだ!」
「……なるほど!素敵なことを言うようになったじゃあないか!それでこそ我のテーリッツよ」
スカージが外套を捨て去り異様な腕がその姿を現す。背中から生えたそれはかつてのマーダーマスターを禍々しく、呪いそのものに作り替えたかに見えた。
「敵の事情は知らぬ、ただ滅ぼすのみとか。素敵だぞテーリッツ。良かろう事情などどうでもよい!我がインフェクターの錆びにしてくれよう」
「待て、ヴェノムスカージ」
この人工惑星全体に響くような声が俺の体を震わせた。
「何者だ!」
その問いにスカージが答えた。
「我の邪魔をするというのか?パープル・アップル!」
パープル・アップル?この惑星型アームヘッドは意思を持っているとでもいうのか?
「余は勇者を丁重にもてなすのだ」
突如床が下に向かって動き出す!
「いったいなんだ?」
あまりのことに混乱する。深呼吸して落ち着け?スカージはパープル・アップルと関係が有るのか?ならばここにいる理由も……。
「我はこやつに魂を拾われたのだ」
スカージが疑問に答えるかのように言った。
「おまえに勝つためにな」
ふと気づくと巨大なスクリーンの前にいた。そこに巨大な顔が映った。
「ようこそ、勇者よ。余がパープル・アップルであるぞ」
「俺を待っていたとでも言うのか?」
「然り、余がその気であれば彼の星なぞ既に宇宙の藻屑であろう」
「何が目的なのだ?」
パープル・アップルの真意は読めない。
「余の目的、それは救世主を創ることだ」
パープル・アップルの顔画像が微笑んだ。
「救世主?」
否応にでもセイントメシアが浮かんだ。
「やつはな、狂っているんだ」
スカージは囁いた。
「そのためには神のアームコアを創る必要が有るのだ。彼の星にはその犠牲になってもらわねばならぬ」
「何をふざけたことを……」
「余は見たのだ、シンギュラリティがすべてを滅ぼすのを。そして我が宿命を悟った。新たな神を創るのだ、シンギュラリティを打ち倒すために」
「な?狂っているだろう?」
スカージが笑った。
「そのために生命エネルギーがいる。余はこの宇宙のエネルギーを必要とする」
「話は終わりか?リズの負の遺産よ?俺も寿命が少ないんでな。さっさと終わらせてもらおう」
バスターブレードをパープル・アップルの顔画像に向けた。
「そうだ、勇者よ。余はその勇気を喝采する。余は時に考える、既に救世主は居るのではないか?と。だからこそヴェノムスカージで勇者を試すのだ」
「良かったな、長話は退屈だっただろう?」
スカージが巨大な背中の手で手招きする。
「我の中で眠れ。マキータ・テーリッツ」
「歴史の闇に帰れ!スカージ!」「大いに戦え勇者よ。彼の星の命運はおまえに託された」
パープル・アップルの顔画像が消えた。スカージが勝てばヘブンを吸い尽くすつもりだ!
バスターブレードを不気味な手に向かって降り下ろす!仮にこれがアームホーンだとしてもフレームのないバスターブレードからのテトラダイ汚染は無い!
「インフェクター」
右腕主腕の半透明の槍が光はじめた。
「この槍はインフェクター。毒で相手を汚染する」
インフェクターと呼ばれた槍がこちらを向く。
本能的に危険を察知しアナザーエイジを後退させる。
「そうだ、これはテトラダイではない。全てを穢し滅ぼす」
地面の金属が錆び始めた。
「なあに心配するな、パープル・アップルの修理費用は出さずとも良い。ここで死ね!」
インフェクターを構え突進するヴェノムスカージ!
「来い!リンゴの下僕!」
フィジカルライフルで牽制する!
「我が!この我が!しもべ……!しもべだと!我は主だ!」
冷たい声に怒りがあらわだ。フィジカルライフルの弾を融かしながらインフェクターは不気味な光を強める。
「我に融けてなくなれ、貴様はそのために在るのだ!」
「やなこった」
バスターブレードで地面を斬る!
下の階層だ!
「逃げた!つもりか!」
スカージが上から迫る!落下の衝撃をバスターブレードで殺すと上から落ちてくるスカージにめがけフィジカルライフルを放つ!インフェクターで防御されるが落下時の動きが制限されたスカージにいくつかの弾を命中させる。
「危ない」
アナザーエイジが横に避ける。
インフェクターがアナザーエイジがいた地面を融かしそのままヴェノムスカージはさらに下の階層に落ちていった。
「……さすがだ。テーリッツ」
下から不気味な声が響く。
「やはりこのような武器は貴様には通用せぬというわけか。」
アナザーエイジの足元から五本の剣が飛び出す!
「我が剣を見よ」
これはスカージの背中の手の指先だ!五本の剣がアナザーエイジを囲み、握りつぶすかのように迫る!アナザーエイジの宇宙用ブースターをふかす!宙に浮いたアナザーエイジを見失い地面を握りつぶした巨大な手はかつて階層間の壁だった地面を放り投げて下から本体を現した。
「ここからが本番だ」
アナザーエイジはバスターブレードを盾めいて構え、第二撃に備えた。
「終わりだと言ったのだ」
巨大な手は指先を飛ばした!ジャベリン!否!ホーンスラスターソード!この手はスターシステムだ!かつてのスカージのように五本の剣がアナザーエイジに向かって放たれた。バスターブレードが剣を弾く!
だがそれまでだった。残りの四本の剣がアナザーエイジの両手足を飛ばした。四肢を喪いアナザーエイジは行動不能だ。……こんなところで終わるとは……。雪那、秋那、ティガー、ミザリー……、幸太郎……すまない。
「ハハハ、よくやったと我は思うぞ」
インフェクターを持ち、スカージが迫る。もはやこちらが虫の息と知り余裕を見せているのだろうか?……死なばもろともだスカージ。アナザーエイジの自爆機構を用いてお前だけは倒す。……残りはみんながなんとかしてくれるだろう。……我ながら無責任だ。
「辞世の句とやらは思い付いたか?」
「俺たちは」
「うん?」
「やはり運命共同体だったのかもな」
だからここで共に滅ぶのだ。
「急に殊勝なことを言うようになったではないか?では介錯してやる」
インフェクターが降り下ろされる!自爆装置が起動……。インフェクターが宙を舞った。思わず自爆装置のボタンを弾き飛ばした。
「大丈夫か?そのアームヘッドのパイロット?」
乱入した白いアームヘッドから声がする。懐かしい声が。
「幸太郎?」
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