林檎の帰還

ゾディアーク・アナザーエイジは信頼のおけるアームヘッドだ。ダークサードが最終反乱で喪われて以降、俺はこのアームヘッドに乗ってきた。俺とアナザーエイジはトンドルの近くを"飛んで"いた。アームヘッドは長い歴史の末に宇宙戦闘能力を獲得していた。もっとも星と戦うなんてしていないが。

  ……見えてきた。いやその表現は正確ではない。ヘブンにいるときからそれはすでに見えていた。惑星型ファントム、パープル・アップル。リズ連邦が残した遺産のなかでもっとも大きく最悪のものの一つだ。まさか実在していたとは、リズそのものよりも巨大に成長したそれは再び故郷に舞い戻ったのだ。

  


人造アームコア製造計画、自然アームコアに依存せずアームヘッドを量産することが可能になれば帝国にたいして圧倒的に有利になれる。だがそのための施設を作るのに地上は狭すぎた。宇宙に飛ばした建造用ファントムに宇宙空間で建造させたのがこのパープル・アップルだ。しかし計画は大きく遅れた。なぜならばその機能を満たすためには施設をより大きくより時間が必要だった。リズも帝国も滅び、本来の存在理由を失ってからも歴史から姿を消していたそれは小惑星帯で不気味な生長を続けていたのだ。そして完成したのだ。なぜ帰ってきたか?その理由を知ってゾッとした。材料が必要なのだ。大量の生命が、アームコアの製造の為に必要だった。だからこそパープル・アップルは自らの内臓を稼働させるために産まれ故郷に帰ってきた。

「里帰りの邪魔をしてごめんな」

パープル・アップルはトンドルの近くで不気味に静止していた。正確にはヘブン十三月とともに公転を続けている。

  


しからばそのうちに砕くのみ。パープル・アップル内部に潜入し、内部施設を破壊しコンピューターを乗っ取って宇宙の果てに行ってもらうしかあるまい。

「……そう簡単にはいかないか」

パープル・アップルの表面をはい回っているものがいる。リズの放った建造用ファントムだ。その名もレディバグ。おそらく今は建造を終えて保守点検をしているのだろう。さてどうする?

  


これは偵察だ。しかし、時間がいつまでも有るわけでもない。リンゴの気分がいつ変わるともわからない。

「マキータ・テーリッツ、突入するぞ」

「へ?」

デオチさんがすっとんきょうな声を出す。

「指令、まずいですよ!」

「元指令だ、俺はな!」

アナザーエイジはリンゴに向かってナイフを突き立てる!

  建造用ファントムレディバグをアナザーエイジのブレードが貫く!その刃はパープル・アップルの表面に突き刺さる!他のレディバグが異常を察知しアナザーエイジを取り囲もうとする!

「ぬるい!」

アナザーエイジは刃を軸に一回転しながらフィジカルライフルを放つ!レディバグが沈黙!これで終わりではない。どこかに突入孔があるはず!アナザーエイジは地面を蹴って進む!集まってくるレディバグ!俺はその数を注意深く見る、内部のメンテナンスに多くのレディバグを用いているはず。ならば多くのレディバグが出てくる場所の近くに内部への突入孔が存在するに違いない。群れに突撃!

  「弾がもったいないからな!」

アナザーエイジはレディバグを切り伏せながら群れの奥深くへと進む!建造用ファントムにおくれは取らない!視界がどんどん黒く染まっていく。レディバグはアナザーエイジを圧殺するつもりなのだ!

「フォール!!!」

調和能力!アナザーエイジは影に潜り込む!

  レディバグの隙間の影から飛び出たアナザーエイジはバスターブレードで棒高跳びめいて跳躍!目敏くレディバグが出てきている突入孔を発見する!

「指令!」

シュヴァリエからの通信!

「長内くん!どうした?」

「気を付けてください!強力なアームコア反応があります!」

……なんだと?

  パチパチパチ、拍手をする警戒色のアームヘッド。俺には見覚えがあった。

「スカージ!」

「フフフ、久し振りだな。テーリッツ」

スカージは笑った。

  

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