88 逆ハーレムルート? いいえ瘴気です。

 ユウヴィーは恋愛のことを悶々と考えている時に学園長室に呼ばれるのだった。


 恋愛しなくてもこの世界って割と瘴気の問題があって死ぬよなぁと思いながら学園長室に到着し、ノックをし来たことを伝える。


「入れ」


 学園長のスターロード卿の声が室内から聞こえ、ユウヴィーは入る。


「失礼します」


 室内には見知った王族が座っていた。


「あーん?光の大聖女がオレ様より優雅に参上とはおもしれぇ女だな」

 フリーザンネック王国のフォーラズ王太子が以前会ったときと変わらずにオレ様節をカマしながら不敵に笑っていた。


(久しぶりに会ったが本当にこいつは王太子なのだろうか?)


「また会えた事を久しく思う。壮健そうで何より、ユウヴィーどの」

 イケボと微笑みを浮かべて挨拶してきたのはハマト皇国のリンクだった。無理して陽キャ演じてたが今はすっかり落ち着いた真面目イケメンになってた。


(間違いなく皇子)


「ユウヴィー、君の噂は我が商会連合国家ギルドフリーデンにも広く伝わってるよ。帰国後から君と懇意があった身として鼻が高いよ。重ねて感謝を」

 優雅に一礼する彼は褐色銀髪のイケメンのイクシアスだった。甘ったるい香水が鼻孔を刺激した。ユウヴィーは、相変わらず女遊びしてるのかなと思い、少しだけジッと見てしまった。それに気づき不敵な笑みを浮かべてきた。


(チャラ男は変わらずだわ)


「ユウヴィー! 元気か? こっちは元気だぜ! いざとなったら守ってやるぜ」

 聖教公国の聖剣士マックスは脳筋具合が加速したように感じつつも、屈託のない笑顔にユウヴィーは少しだけ癒やされる。彼はこの中で場違い感があったが安心した。なぜならユウヴィーは貧乏子爵家であり、王族関係者が一同してる中では胃が痛くなりつつあったからだ。


(熱血さは健在ね)


「ふーん、あんたと実戦で瘴気対策できるのは楽しみだ」

 リレヴィオンが不穏な事を言った事でユウヴィーは自分と関わった国の王族などが一同してるので察した。


(もしかして、逆ハーレムルート? いやいや、このゲームにはそんなルート無かったと思うけど)


「リレヴィオン殿、集められた理由となる瘴気の件、私から説明させてもらっても良いかな?」


 エリーレイドの兄であり、サンウォーカー王国の外交責任者であるレイバレットが居た。

 ユウヴィーの鼓動が少しだけ跳ね上がる。


(深刻な瘴気が起きている、それも各国に……って事ね)


 自身のドキドキの正体は、今起きている瘴気問題が死に直結するからだと思っているユウヴィーだった。


+


「瘴気汚染した大型のカラスのような魔物ですか?」


「ああ、今の所は数は少ないため、対処出来ているが各国に出現していることが問題となっている」

 

 レイバレットの説明によると、大型のカラスの魔物の巣があり、勢力圏を伸ばしているという事だった。

 幸いにも各国に空を飛ぶ瘴気汚染の魔物を放置した場合、世界的に危険と判断し、見つけ次第駆除しているとのことだった。

 対処方法もその瘴気汚染された魔物そのものも焼却すれば消えることがわかっていた。


 ただ、光の魔法を扱えることから、徴収されることになったユウヴィーであった。今までの功績も含め、念には念を入れた対応だった。


 各国の騎士団が導入されており、迎撃した際の瘴気汚染を防ぐ為に、光の魔法を使うユウヴィーはその浄化を担う事になった。

 ユウヴィーは前線で戦う日が来たのかと思ったが、レイバレットから比較的安全な位置であることを告げられる。


「前線というよりも後方要員となる」

 王命だった。

 

 今回は各国と協力し、瘴気汚染カラスの駆除をおこなう大規模作戦だと言われるのだった。


 話が終わるとそれぞれの国の攻略対象者がユウヴィーに一斉に話しかけてきたのだった。攻略対象者同士は互いに牽制しているのか、ユウヴィーを取り合いするかのようだった。自身の国がどれだけユウヴィーに救われて改善されたのか、一斉に喋りだすのだった。


 さすがにユウヴィーは一人ひとりしか話を聞けないため、たしなめようとするものの、収まるどころではなくなったのだった。


「ああん、オレ様の話をさえぎるとはいい度胸してるな?」


「野蛮さが君の国の美徳なのかな?」


「ああん?」


 フォーラズ王太子とリンク皇子が言い合いをしていた。


「まあまあ、落ち着きなよ」


 イクシアス王子が甘ったるい香水を撒き散らしながら二人を諌め、毒気を抜かれたのか二人は言い合いが終わる。


「ふーん、まだまだ子どもなんだね」


 せっかく言い争いが終わったのに、場の空気を読まないリレヴィオン王子。


「おチビは、なかなか大人だな。はっはっはっはっ」


 そんなリレヴィオン王子の頭をわしわしと雑に撫でるのは聖剣士マックスだった。


(お前、そいつ王族やぞぉぉぉ)


 と内心ヒヤヒヤしているユウヴィーだったが、リレヴィオン王子は口をとがらせながら撫でられた後に、口をとがらせているだけだった。


(お、もしかしてデレているのか?)


 ユウヴィーは攻略対象者たちが互いに交流をしているのを見ながら今回の瘴気問題もきっと解決できると感じていた。


「各国の諸君、それとユウヴィー嬢。積もる話もあるだろうが、瘴気に関する資料と各国が行った対策を確認してくれ、準備ができ次第対応をよろしく頼む」


 レイバレットが全員に言うと、それぞれがうなずき資料を手に取り、ユウヴィーにしばしの別れの挨拶をしながら学園長室を出ていくのだった。


「ユウヴィー嬢、我々は、我が国の辺境の地に向かってもらう」


 攻略対象者たちが学園長室から退出した後に、レイバレットはユウヴィーに声をかけた。


「どのあたりでしょうか?」


 広げられた地図は、サンウォーカー王国の辺境の地であり、ユウヴィーの実家がある領地の隣接した未開拓の地だった。





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